漢方薬相談ブログ

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不妊症や月経不順の治療に普通は八味丸なんて使いません

病院の漢方特集みたいな雑誌を読んでいると、医者が不妊症や月経不順などに「八味丸を処方している」みたいな記事がよくあります。

そもそも、医者は患者さんの体質もみずにマニュアルでしか漢方薬を選ばないので「この処方の仕方ってマニュアルに載ってるのか?」と思いながら、医者が使う漢方薬マニュアルを見てみたら、月経不順や不妊症の欄に八味丸はありませんでした。

医者がマニュアルで出さないなんてめずらしい…

雑誌の医者の紹介記事を読んでいるとベタベタのマニュアル感丸出しの医者が自分の頭で考えて『体質を分析する』なんてことはしなさそうな感じ。

医者がマニュアル以外でどうやって漢方薬を選んでいるんだ?

違う意味で不思議になりました。

結論からいうと、雑誌には月経不順や不妊症の際に処方する漢方薬の紹介しかなく、医者自体に対するインタビューは、いかにもな感じで、雑誌から推察するに、せいぜい、症状を2、3個だけ聞いて漢方薬を処方しているといった感じ。

よくある病名漢方より、ちょっと毛の生えた、これもよくあるパターンです。

この雑誌以外でも、実際に、ごくたまに不妊症で八味丸を処方するという医者はいました。

どの医者も例外なく体質をみていませんでしが、多分、八味丸は腎虚の人用の薬で、不妊症や月経不順は腎虚とも捉えることができるので、それで腎虚の代表的な八味丸を結局、マニュアル的に処方しているのでしょう。

八味丸とは

八味丸は、
塾地黄、山茱萸、山薬、澤瀉、茯苓、牡丹皮、経皮、附子の生薬で構成された漢方薬です。

どんな体質(証)の人に合うかというと腎の臓が衰える腎虚の証燥証水滞の証気の上衝血証という証(体質的原因)をもっている人に合わせて選びます。

代表的な症状は『下半部の麻痺、夜間頻尿、多尿、腰痛、腰に力が入らない、疲労感、無気力、難聴、皮膚の乾燥、コロコロ便、手足のほてり又は冷え、むくみ、頭痛、のぼせ、心悸亢進、息切れ、呼吸困難、吐血、血尿、貧血』が条件にあります。

漢方薬って、ざっくりとどんな感じの人に使うのかというイメージ的なものがあるのですが、この症状からわかりますでしょうか?

そう、八味丸を使うのは『老人』です。

応用される病気も『脳梗塞、高血圧、糖尿病、白内障、緑内障、前立腺肥大、萎縮腎、坐骨神経痛、腰痛、老人性掻痒症、乾癬、腎炎、狭心症、不整脈、貧血』です。

漢方は基本的にはその人の病的な体質である『証』に合わせるので、『この病気には使う、この病気には使わない』という病名からの選び方は存在しません。

体質は人それぞれなので、どんな病気であろうと全ての種類の漢方薬は候補として考えられるのですね。

しかし、そこにはそれなりに、八味丸などのその漢方薬を使う病気の傾向というものはあります。

例えば、当帰芍薬散が合う体質の男性も可能性としてはゼロではないですが、まず当帰芍薬散が合う男性なんていません。

そこからいくと八味丸はやっぱり老人用なのです。

ですので、どんな病気に応用するかという欄に月経関連のことは1つも載っていません。

医者はなぜ不妊症に八味丸を使う?

では、なぜそんな老人用の漢方薬である八味丸を不妊症などに使うのでしょうか?

それは多分、漢方の医学理論では、ホルモンや精力の関係は漢方では腎の臓が担っているという考え方があるからではないかと思います。

確かに漢方の医学理論では、妊娠するための精の力は腎の臓に宿っていると考えられますので、「それを強くしたら、不妊症や月経不順を克服できるのでは?」と考えたのではないかと思います。

ただ、もしそれが八味丸を選んだ根拠だったら…

あまりに単純!!

不妊症に関わる月経は何も腎の臓の精だけで成り立っているわけではありません。

他にも血の巡りや気(ホルモン)や冷え(寒熱)などが関わっています。

どちらかというと、腎虚よりも血や気の問題の方が大きいパターンが多いです。

どっちにしろ、漢方薬は選ぶ際にかならず全身をみないといけないので、「腎虚で腎の気が落ちてるから」というサプリみたなノリでは選びません。

だから、八味丸の病気への応用欄に月経関連の病気は載ってないのです。

そして、何よりも八味丸だけが腎虚の漢方薬ではないということ。

他にも腎の臓の精を補う漢方薬はあります。

最も代表的なのが八味丸というだけ。

『八味丸だけが腎虚の薬ではない』上に、八味丸は老人用の薬の代表なのです。

ですので、全身の問診をとらずに漢方薬を選べば、

『不妊症や月経不順は腎虚かも → だから腎虚の薬の代表の八味丸』と医者お得意の『暗記型単純ストレート思考』で考えたのではないかと思います。

いや、もしかするともっと単純で、これもよくある「前の漢方の勉強会で小耳に挟んだだけ」という理由かもしれません。

どちらにしろ、月経関連で悩んでいる女性の全身の症状を調べていけば、「下半身に力が入らない」とか「頻繁に多量にオシッコにいく」とか、老人っぽい症状は出てこないわけです。

そうなると血の巡りや気(ホルモン)の問題を踏まえつつ、腎虚に対応する漢方薬というものがあるので、問診をとっている途中で「これ、絶対、八味丸じゃないわ」と気づくわけです。

そもそも、医者は体質を分析するための全身の症状などの分析をしませんので、気づきようもないでしょうけれど。

不妊症や月経不順であっても、体質によっては八味丸が合う人もゼロではないと思いますが、八味丸を候補にするなら、その前に考えるべき漢方薬はいろいろ山のようにあります。

不妊症や月経不順で八味丸を飲んでいる人は、かなり、あなたに合う可能性が低い漢方薬ではないかと思いますので、一度、まじめに全身の状態を分析してもらって、本当に八味丸で良いのかどうかを再考してもらったほうがいいと思います。

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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ ツムラ医療用漢方製剤マニュアル
◯ オースギ医療用漢方製剤マニュアル
◯ 漢方方意辞典:緑書房
◯ 漢方診療医典:南山堂
◯ 類聚方広義解説:創元社
◯ 勿誤薬室方函:創元社
◯ 漢方処方応用の実際:南山堂
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅠⅡⅢ:薬局新聞社刊
◯ 平成薬証論:メディカルユーコン

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

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