不妊症に対する漢方薬の効果ってどんなものなのか?
誤解されている不妊症に対する漢方薬
一般的に漢方ってものすごく誤解されています。
病院、漢方薬のWebサイト。どこも漢方治療のことを伝えているというよりも、自分の都合の良い治療方法に「漢方風」の味付けをしているだけで、漢方の治療としては基本の体質診断すらしないところがほとんどです。
専門家のはずの医者や漢方薬局の先生が率先して間違っていて、なおかつ、簡単で、おかしな方法で漢方薬を処方するので、一般の患者さんが誤解してしまってもしょうがないのですが・・・
不妊治療クリニックなんかで漢方薬を処方する場合、ホルモンを活性化させるサプリみたいなノリで当帰芍薬散を処方したりしています。
一部の漢方薬局でも血の道症とよばれる婦人科系によく使うとされている漢方薬をマニュアル的に使ったり、漢方治療のできない病院と同じノリで女性ホルモンを活性化させる漢方薬があるかのように処方したりしています。
どちらも、とにかく『女性ホルモンが活性化すれば妊娠できる!』みたいな、モヤモヤした適当なエビデンス?にすがって漢方薬を処方しています。
こういった病院も漢方薬局も、共通しておかしいのは、誰にでも同じ漢方薬を処方していること。
誰にでも当帰芍薬散、誰にでも温経湯、誰にでも加味逍遙散。
20代の不妊症の人も、40代の不妊症の人もみんな同じもの。
裏の話でいえば、あなたであろうが、他の誰であろうが事前に処方する漢方薬を決めています。
漢方薬が、人それぞれの体質に合わせるのであれば、誰にでも同じものを処方したり、それを事前に用意したりするのっておかしいですよね。
しかし、現実には漢方薬を「西洋医学の薬の副作用のないバージョン」くらいにしか考えていないから、単に女性ホルモンを活性化するみたいに考えていて、こんな、なんちゃってサプリメントみたいな感じの処方になってしまっているのですね。
こういう低レベルの人間が、漢方の専門家とかと言って処方しているのを患者さんから聞くと、権威があれば、詐欺まがいの方法で処方してもいいのかよって思ってしまいます。
実際の漢方薬の不妊治療とは
では、実際は漢方では、どんな治療をするかというと、FSHがどうとか、LHがどうとか、そんな西洋医学の理論である女性ホルモンとは直接は関係ありません。
漢方の不妊治療の目的は非常にシンプルで『健全な体調』と『健全な月経』を目指す。これだけです。
健全な体調の上に、健全で安定した月経周期が続けば、準備万端で、あとはタイミングがあえば、誰でも妊娠できます。
しかし病院がやっている不妊治療は『とにかく女性ホルモンの活性化』で、「強いは正義!」みたいなゴリ押しです。
不妊治療の病院は人工の化学合成の女性ホルモンを使って排卵を促したり、高温期に体温やホルモン値を上げようとしたり、月経を任意の日数で来させようとしたり、月経期、排卵期、高温期、その時、そのステージに平均的で良いとされる状態にホルモン剤で活性化させればいいという考え方。
漢方薬でも月経をコントロールしようとしますが、その時、そのステージの場当たり的な治療はやりません。
その人の体質に適した安定した月経周期を治療目標とします。
なので、漢方では、かならず28日周期にする必要はなく、高温期で37℃位ないとダメだとは考えません。
月経全体のバランスを整えます。
そして漢方治療が不妊治療の病院の治療と違う点は、ホルモン剤で無理やり操作しようとは考えていないところ。
健全な月経リズムは、体全体の調子や食事、運動、睡眠、ストレスなども関係していると考えます。
女性ホルモンと普段の体調は結びついている
女性ホルモンは視床下部と卵包で分泌されます。
また基礎体温は体温も関連しますので、自律神経も関わってきます。
なので、女性ホルモンの分泌にはストレスや食事、睡眠のリズムも関わってきます。
卵子と精子が受胎してから赤ちゃんまで育てるのは良質な子宮内膜です。
内膜は血で構成されていて、血は食べたもので作ります。
食べたものから良い栄養素をとるのは、胃や腸、肝臓、胆のう、膵臓などの役割です。
良い血が作られても血の巡りが悪いと子宮内膜に運ばれません。
また血の中にある水は栄養素も運んでいますので水の巡りも悪いと質の悪い内膜や卵巣で卵子がうまく育たないかもしれません。
血の巡りや水の巡りも関わってきます。
巡りには手足の冷えなども関わってきます。
これら、たくさんある作業は、体内にゴミが残っているとうまくいきません。
ゴミをオシッコや便で捨ててるから、体内がクリーンになって、また新たな正常な働きができるわけです。
月経の経血も同じですね。
妊娠ができなかった場合は、子宮内膜は不要なものとなるので、ただちに捨てる必要があります。
これがうまくいかないと次の月経リズムをきれいな形で出発できません。
女性ホルモン値がどうとか、女性ホルモンを活性化させるとか以前に月経前後などで体調が悪かったり、基礎体温の形が悪かったりすると子宮、卵巣、その周辺の調子も悪いし、自律神経や視床下部のバランスも良くないし、ひいては体全体のバランスが悪いのです。
女性ホルモンだけの問題ではありません。
月経は女性ホルモンだけの問題ではなく、当たり前ですが体全体で健全な月経周期をつくりだしているのです。
女性ホルモンは薬で操作は不可能
病院のホルモン剤はホルモン剤で人工的に操作しようとしるのですが、女性ホルモンは「量が多いか、少ないか」といったような単純な構造で成り立っていません。
何かあるとすぐにおかしくなってしまうような絶妙なバランスを保っています。
活性化させれば、元気になって女性ホルモンが整うといったような、どこかのオッさんが好んで買うような栄養ドリンクのノリではないのです。
どれかのホルモンが活性化しすぎると、どれかのホルモンは低下します。
何種類かの波長が上がったり下がったりして、デザイン的な絶妙なバランスを保っているので、月経を整え、妊娠しやすくするのは、活性化させるのではなく、その絶妙なデザインのようなバランスに戻さないといけないのです。
このホルモンバランスは個人差があります。
どうやれば、その人にとって妊娠できる最もキレイなデザインになるかは科学的にはわかっていません。
ですから、現状、不妊治療の病院は、その人のホルモンバランスが乱れるか、良くなるかはわからない状態で、ホルモン剤を処方しています。
ホルモンバランスは先ほど、お話したように体全体の調子とも関わっています。
だったら、単純に体調をベストな状態にすればいいのです。
人間の体は誰しも妊娠する力を持っていますが、いろいろな部分の不調が重なって、バランスがとれなくなっているだけなのです。
ということで、漢方はその人の体質である『証』を見極めて、証に合わせて漢方薬を選び、体調を整え、その時に月経周期や基礎体温のことにもフォーカスして治療します。
月経と基礎体温のことを気にしながら全体の体調を整える感じです。
『健全な体調』と『健全な月経(安定した月経)』これが達成できれば誰でも自然妊娠できます。
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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ ツムラ医療用漢方製剤マニュアル
◯ オースギ医療用漢方製剤マニュアル
◯ 漢方方意辞典:緑書房
◯ 類聚方広義解説:創元社
◯ 勿誤薬室方函:創元社
◯ 漢方診療医典:南山堂
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会