漢方治療を西洋医学的な有効成分やエビデンスで考えると治らない
今は少なくなりましたが漢方薬も、昔は怪しげな薬だと思われていました。
特に年寄りの時代遅れな医者の中には、オカルトか何かみたいに言う人もいました。
そう言われる原因は漢方にはエビデンス(科学的根拠)がないものだから怪しい!ということみたいです。
この時に医者の言うことを鵜呑みにしてはいけないのは「漢方は怪しい」とか言っている人に限って漢方の医学理論を全然、知らなかったりします。
治療経験上からみてみると女性よりも男性は西洋医学の方を好みます。
男性は、医療に関しては、漢方みたいな自分が全く知らないことよりも、公共的で権威的な担保がある西洋医学の方が、無難で安心という本音があるように思います。
反対に女性はすごいです!
うちの患者さんも、大半は女性なのですが「漢方はよくわからないけど、漢方薬で根本治療をしたい!」みたいな人が多いです。
女性は直感力が優れているので、直感的に「漢方なら根本治療できるかも!」と思うのでしょうか。
漢方のことを疑っている男性はよく「漢方は信じられない」みたいな話をされます。
しかしこれは大きな間違い。
そもそも、漢方治療は宗教ではないので、信じる、信じないの話ではありません。
漢方は、とても理論的な医学です。
こう書くと屁理屈に思う人もいるかもしれませんが、漢方は、なんかモヤモヤした理論で治療を行うわけではありません。
漢方を理論的な医学でなくしているのは、漢方治療の理論を理解できてないのに漢方薬を処方している医者だったりするのですよ。
ミクロの西洋医学とマクロの東洋医学
現在、医者や一般の人は、漢方薬が眉唾ものかどうかを判断する時、西洋医学の考え方から漢方を見ています。
『そもそも根元の原則や定義自体が違う』という観点から漢方を見ません。
西洋医学の世界では、
『人間の体の働きはロボットのように個人差がない同じ働きをしているはず』
『誰かの病気に効く薬は、同じ病気なら誰にでも効く』
『病気の原因は1つしかなく、1つの原因に対して1つの効果の薬を処方する』
というのが、大まかな西洋医学の考え方です。
体や病気を細かく、細かく、ミクロに見ていきますので、最終的に『病気の原因は何か1つではないか?』と考えます。
そして、この考え方のまま、漢方薬をみて「漢方薬は何の病気に効くのか?」「漢方薬の何の成分が効果を発揮しているのか?」と西洋医学の考え方と同じ考え方や西洋医学のルールで漢方をみようとします。
でも漢方の世界では、
『人間の体の働きには個人差があり、体内の働きは微妙に違ってくる』
『あなたに効いた薬が他の同じ病気の誰かに効くとは限らない』
『病気の原因は複数の原因が複雑に絡み合っていて、漢方薬は一度にいろいろなところに効果を及ぼしバランスをとる治療を行う』
という考えで動いています。
漢方には漢方の考えがあるので、西洋医学の細胞単位の化学分析から漢方をみようとしても意味がありません。
野球のルールでサッカーのことを語るようなものです。
ちなみに漢方は西洋医学と違って科学的ではないですが、その科学的な西洋医学では大半の病気の原因がわからず、行っている治療は対症療法といって一定時間、症状を抑えたり、一定時間だけ体の機能を薬の成分で強制的に変更するその場しのぎの治療で根本治療につながっていません。
自然物理の法則をあてはまる漢方
漢方も実は科学的な側面があり、自然の物理的な働きは人間の体内でも起こっていると考えます。
その考え方は、様々な要素が絡み合った結果を全体的に捉えていきますので、一見、非科学で眉唾っぽく見えますが、理論をしっかりと勉強すれば、非常にしっかりとした理論的な治療方法だということが、わかります。
体内の1つの臓器や1つの細胞に、フォーカスすれば科学的なエビデンスは出せますが、漢方の場合は、体全体のバランスをみています。
臓器1つ1つの機能だけでなく、臓器と臓器が組み合わさった時の働きなど、つながりと全体のバランスの不調をみていくのです。
体内全部の複雑な、つながりとバランスをみていくので科学的に証明できません。
また、証明する必要もありません。
悲しい映画を見てなぜ泣くのか?脳の中枢がどうとか、涙腺がどうとかを解明していく必要はありません。
悲しい映画を見れば泣くという結果がわかっていれば、ある程度、その人の好みなどを聞いて泣かせる映画を選ぶことができます。
ちなみに泣くという状態が涙腺から水分が排出されるということはわかりますが、悲しいという感情やそれが涙という機構につながるメカニズムは科学的に全く説明できません。
そもそも元の考え方が違う
漢方は2千年前から発達してきましたが、西洋医学は、その1800年後にヨーロッパなどで発達してきました。
漢方の恐るべきところは、2千年前だから原始的な治療かというと、2千年前に、すでにひとり、ひとり違う体質を診断して漢方薬を処方する方法は決まっていたのです。
ですから1800年後に発達してきた西洋医学なんて何の関係もありません。
漢方では『検査方法』も『治療方法』も『漢方薬の作用機序』も独自の医学理論で決まっているのです。
西洋医学や科学の助けも解釈も必要ないのです。
エビデンスがあっても問題のある西洋医学
現在、西洋医学は一時的に症状を抑える対症療法しかできない部分が、問題視されています。
体全体を見ずに1つの臓器や細胞だけをみて治療しても、一時的な変化を起こすだけで根本的に治せないからです。
エビデンスがあっても結局、薬の成分だけで症状を一時的に抑えても根本的に治らなければ意味がないのです。
現在の対症療法は問題の先送りでしかありません。
病院が皮膚科、消化器科、泌尿器科と分けようが、人間自体の体は分かれて機能しているわけじゃありません。
人間の体は全部の臓器がつながっていて、全部の組織や細胞がどこかに影響し合って、健康を保っています。
ミクロ的に体の部分にフォーカスすれば、科学的に研究しやすくエビデンスを構築しやすいですが、西洋医学だって根本治療を前提に体全体を見るとすれば、科学的なエビデンスを構築することは不可能になります。
漢方理論を理解できない人達の悪あがき
漢方薬を西洋学の病名に当てはめてマニュアル的に処方したり、漢方薬を化学分析して有効成分を探すようなおかしな方法は厚生労働省やツムラなどに代表される漢方薬メーカーが勝手にやりはじめたことで、漢方の病気の原因体質である『証』がみれない医師達が、自分たちの都合でやり始めたことです。
漢方薬の有効成分の1つが分かったところで、漢方薬を実際に治療で使おうと思ったら、そもそも漢方理論に基づいて使わないと漢方薬が効果を発揮しません。
漢方の「体質の分析方法」や「診断方法」「漢方を選ぶ方法」を無視して西洋医学的な勝手なルールで使うのだけが漢方薬としてもそんなもので治るわけがありません。
自分たちの都合で、おかしなことをしなくても、素直に漢方は漢方の医学理論で診断し、漢方の医学理論で治療方針を考えれば、根本治療ができるようになっています。
ひょっとしたら、将来、科学的に解明される日も来るかもしれませんが、どっちにしろ、手順として、まずは基本といわれている治療方法をマスターしてから、漢方にとって、イレギュラーな科学研究をするべきだと思います。
大体、スポーツでも楽器でも基本ができていない人が、いきなりオリジナルな方法で始めると、結局、うまくなれません。
膨大な漢方の医学理論がある中で、それを勉強しないで、西洋医学理論を無理矢理あてはめて漢方をやろうとしたり「エビデンスがない」と言う必要はありません。
僕からみると、保険適用で漢方薬を処方している医者は、自分達が漢方の医学理論を理解できないことを自分達側のルールで言い訳して、ごまかしているようにしか見えません。
頭の中で「科学こそ至上!」とガチガチに固めないで、『人間の感情や自然界の働きなど、全体のバランスというのは科学の解明が追いつかないことが、いくらでもある』ということに目を向ければ、漢方がなんとなく見えてくるんじゃないかと思いますよ。
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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ 図説東洋医学(基礎編):学研
◯ 図説東洋医学(湯液編Ⅰ):学研
◯ 図説東洋医学(湯液編Ⅱ):学研
◯ 漢方概論:創元社
◯ 漢方臨床ノート(論考編):創元社
◯ やさしい中医学入門:東洋学術出版社
◯ 中医診断学ノート:東洋学術出版社
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ まんが漢方入門:医道の日本社