漢方薬相談ブログ

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冷え症に効果のある漢方薬の選び方

冷え症という症状に対して、かならず効果があるという漢方薬は存在しません。

漢方薬は『証』という病的体質を診断して、その『証』に合わせて漢方薬を選びます。

『証』を診断する際には全身の症状その人の生活環境や生活リズム精神状態などを総合的に判断して『証』を診断します。

したがって「冷え」という症状は体質を分析する際の『単なる1つの情報』にしかすぎないので冷えという情報だえでは漢方薬を選ぶことは不可能になります。

冷えを中心とした病的体質を治すことによって結果的に冷えが治るというものです。

冷え症を中心とした体質を治す場合も病名と同じように冷え症によく使われてきた漢方薬を候補としてリスト化し、その中の漢方薬グループの中から患者さんの体質に合うものを選びます。

ちなみに漢方では冷え症は『寒証』といいます。

寒証とは大きなカテゴリーのことなので、、そこから更に「血の道症などが関わる寒証」「下焦の寒証」「裏の寒証」「表の寒証」という細かな診断にわかれていきます。

【全身的な冷え症でよく使用される漢方薬】
当帰四逆湯、四逆散、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、乾姜附子湯、人参湯、十全大補湯、桂枝人参湯、呉茱萸湯、大建中湯、帰脾湯、芎帰膠艾湯、麻黄附子細辛湯、苓甘姜味辛夏仁湯、真武湯、甘草乾姜湯、越脾加朮附湯、附子瀉心湯、小建中湯。

【血の道症などが関わる寒証でよく使用される漢方薬】
当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、温経湯、逍遥散。

【下焦の寒証でよく使用される漢方薬】
五積散、苓姜朮甘湯。

【裏の寒証でよく使用される漢方薬】
四逆湯、四逆加人参湯、茯苓四逆湯、通脈四逆湯。

【表の寒証でよく使用される漢方薬】
麻黄湯、葛根湯、桂枝湯、麻黄加朮湯、葛根湯加川芎辛夷、桂枝二越婢一湯、桂麻各半湯、桂枝二麻黄湯、小青竜湯、蕾香正気散、参蘇飲、桂枝人参湯。

実際の治療では、これらの漢方薬同士を合わせたりすることもあるので、更に候補の種類が増えます。

僕はこれらを冷え症を治す際の漢方薬の候補として頭のなかでリストアップします。

このリストアップ後、体質を詳しく分析して上記の候補処方の中から、体質的に合うものを選びます。

次に医者が使っている漢方薬マニュアルから見てみましょう。

【医者が使っているマニュアルにある冷え症・冷えで使う漢方薬】
加味逍遙散、桂枝茯苓丸、五積散、四物湯、十全大補湯、人参養栄湯、温経湯、苓姜朮甘湯、半夏白朮天麻湯

うわぁ、これは逆にいらぬ心配をしてしまいます。

病的体質である『証』が診れない医者が冷え症の漢方薬を選ぶ際に、こんなに候補の漢方薬の種類があって大丈夫でしょうか?

体質を診ずにマニュアルでやっているのに、こんなにたくさんの中から選ばないといけないお医者さんのことが心配になります…

マニュアル漢方の良いところは医者を含む、漢方の医学理論を全く知らない素人でも選べるやさしい設定のマニュアルのはずですが、9種類もあると心配になりますね。

ただ、この9種類の漢方薬を知っていれば、大げさでなく、あなたも医者と同レベルの漢方の知識を持っていることになります。

病院のすごくキレイなサイトなんかでは「おひとり、おひとりの体質に合わせた漢方薬を選びます」みたいなことが書いてありますが、保険適応の漢方薬を処方している病院で病的体質である「証」に合わせて漢方薬を選べる医者なんて、聞いたことがないです。

実際は、この9種類の漢方薬の候補からマニュアル的に選んでいるだけのことが多いです。

なんか趣旨を間違えてる?と思う漢方薬の候補

医者のマニュアル漢方で気になったのは加味逍遙散、桂枝茯苓丸、温経湯があって、人参湯や附子湯がないこと。

漢方では体質を分析する際に全身の症状をみます。

マニュアルでしか漢方薬を処方できない場合、漢方薬に設定されている適応症状の中に「冷え」があるものを選べばいいかもしれないですが、そんな方法でやると漢方薬に設定されている適応症状の中に「冷え」と書いてあるものなんて山のようにあります。

冷え症を漢方薬で治療する場合は『冷え』という症状があてはまるから、ある漢方薬を選ぶのではなく『なぜ冷えているか』を中心に『体質』を分析するのです。

そこからいくと加味逍遙散は主に「気」の調整をする漢方薬で、桂枝茯苓丸は「血の巡り」の調整する漢方薬で温経湯は「熱と血の巡り」を調整する漢方薬で主となる目的は血の道症という病態があって、その上で冷えがあるから、冷えも治っていくのですが、これらの漢方は血の道症に関わる冷え症を治すということが区別できていないと漠然と冷え症を治す漢方薬として考えていては冷え症も血の道症も治りません。

この違いをわかっていないと漢方薬は全然、効きません。

加味逍遙散、桂枝茯苓丸、温経湯は冷え症を治すことだけが目的ではないのです。

血の道症などが関わる寒証(冷え症)を治すことが目的です。

ここが、マニュアル的にしか漢方薬を選べないか、ちゃんと体質を分析診断して漢方薬を選ぶかの大きな違いが出てきます。

もはや、体質を診ないマニュアル漢方は漢方にすらはいりません。

素人の遊びレベルです。

だから、同じ冷え症でも、その人は全身的な、いわゆる冷え症なのか?

月経や女性ホルモンが関わる血の道症も治さないといけない冷え症なのか?

体表面が冷えている急性の表の寒証である冷え症なのか?

何の体質の冷え症を治すのか、治療目標がわかっていないと、漠然と加味逍遙散、桂枝茯苓丸、温経湯で冷え症を治すというような考えで漢方薬は選びません。

漠然と冷え症を治すことなら、むしろ、人参湯や附子湯が冷え症を治す候補の漢方薬に含まれていないことは「どういうことなの?」という感じです。

もともと、マニュアル的に選ぶためだから、細かな体質別の候補で考える漢方薬なんて必要ないかもしれないですが、それにしてもマニュアルは雑すぎますね。

候補になる漢方薬候補は増やすほど難しくなる

1つの症状や病気を治す場合、大体30種類〜40種類位の漢方薬の候補から、その人の体質に合う漢方薬を考えます。

候補となる漢方薬のリスト数は多ければ多いほど、良いです。

なぜなら、たくさんの可能性の中からあなただけの漢方薬を選ぶからです。

あなたの好みの食べ物を探すのに40種類のものから選ぶのと9種類のものから選ぶのとどっちがいいですか?

当たり前ですが、40種類から選ぶほうが『より良いもの』が見つかるのです。

つまり、『よりあなたの体質に合った、あなただけの漢方薬』が見つかります。

漢方薬は最初から冷えを治す効果があるわけではありません。

あなたの体質を調整した結果、冷えがなくなります。

もう一つ、大切なのは、たくさんの種類の漢方薬がその人に合うかどうかをチェックする際に、その人の体質に合わない漢方薬をはっきりさせておくことも重要です。

40種類の漢方薬の中から「これも合わない」「これも合わない」という確認作業をしていきます。

この消去法を使うことによって、より体質に合いそうな漢方薬に絞り込んでいくのです。

一方、先生側としては候補として考える処方が増えるほど大変です。

なぜなら、どの漢方薬も合いそうで、どの漢方薬も合わなさそうに見えるわけです。

9種類という数になると選ぶのは簡単ですが、治療が成功する確率も低くなるし、自分の思い込みで漢方薬を選びがちになります。

冷静にいろいろな分析をするのと自分の低いレベルの思い込みで漢方薬を選ぶのとでは、全く世界が違います。

たくさんの種類の漢方薬の中から思い込みを排除して冷静に選んでもらうほど、あなたの体質と漢方薬が合う確率は高くなります。

症状だけを当てはめて漢方薬を選ぶのは不可能

漢方薬は、その漢方薬を選ぶ条件となっている症状が当てはまるかどうかで選びませんが、仮に症状だけで選ぶとしても、大体、その漢方薬に合う条件になる症状は1つの漢方薬につき20位の症状があります。

また、ある漢方薬と他の漢方薬の条件となる症状は似通っていたりします。

陰証と呼ばれるグループに属する漢方薬はどれにも『手足の冷え』が条件としてあります。

候補となる漢方薬は40種類どころではありません。

適当に漢方薬を選ぶと副作用が待っている

要は勘であろうとレベルの低いマニュアルであろうと漢方は結果論なので、どんな方法でも治ればいいのです。

しかし、治ればいいですが、漢方薬のリスクは治らないことだけではありません。

体質と合っていなければ『誤治壊病』といって、今の病気が、もっとひどくなるか、今とは違う病的体質になるリスクもあります。

更に漢方薬の副作用が怖いところは、病院の薬と違って、だんだんと静かに悪くなっていくので、医者もあなたも漢方薬のせいだとは気づかないこともあることです。

誤治壊病を避け、あとあと選んだ漢方薬が本当に効いたかどうかを確認するためにも、やはり病的体質である『証』を診断し、たくさんの候補となる漢方薬の中から選抜したほうがいいのです。

たくさんの中から選びに選び抜いたエリート漢方薬はやはり効く確率が高いのです。

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◯ツムラの医療用漢方薬マニュアル
◯オースギの医療用漢方薬マニュアル
◯漢方診療医典
◯和漢薬方意典 緑書房
◯漢方診療医典 南山堂

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

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