PMS(月経前症候群)を漢方薬で治療する方法
PMS(月経前症候群)は症候群となっているようにハッキリとした原因がわかっているわけではありません。
全身、いろいろなところに問題があり、いろいろな問題が月経前の症状となって表れているのです。
婦人科では、治療にホルモン剤を使いますが、女性ホルモンが、多いか、少ないか、なんて、そんな単純な問題ではないのです。
その証拠に、皆さん、ご存知のようにホルモン剤で月経痛などが、和らぐことはありますが、むくみやのぼせなど、他の症状が出てきたりして、治療の意味がなかったりします。
病院のPMS(月経前症候群)の治療
婦人科での治療は、ホルモン剤、鎮痛剤、抗うつ剤です。
これらは、対症療法といって、PMS(月経前症候群)で起こる、いろいろな症状を一時的に抑えるだけで、要は病院に治す方法はありません。
なぜなら、PMSは人それぞれの無数の原因が絡み合っていて、何か1つの原因で起こっているわけではないからです。
ホルモン剤は、エストロゲンとプロゲスチンの入ったピルやゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト(リュープロレリン、ゴセレリン)などを使います。
ホルモン剤で問題なのは、血液検査でホルモン量を検査して、一見、ちゃんと調べてホルモン剤を投与されているように思いますが、ホルモンというのは非常い複雑なので、よほどの異常値でない限り、人それぞれなので、結局、その人の本当にベストなホルモン量なんてわかりません。
現にホルモン剤を飲むことによって、余計に症状がひどくなる人は、結構、いらっしゃいますし、PMSの治療関係の説明にも、『ホルモン剤でより悪くなる』と書かれています。
仮にその人の理想的なホルモン値がわかったところで、ホルモン量は日々、変わるし、何よりも問題なのは、ホルモン量やバランスは、人それぞれなのに、使用するホルモン剤のホルモン量や一定で、誰にでも使うものであるということです。
本当にホルモン剤で治療するなら、毎日、検査して、その人に合わせたホルモンのバランスと量が必要です。
もちろん、そんなことは不可能です。
鎮痛剤は、ご存知のように一定時間、痛みを止めるだけです。
PMS(月経前症候群)は、全身の状態が関係しているので、一時的な治療である鎮痛剤でさえ、効かないことが多いです。
抗うつ薬は、脳、中枢神経を麻痺させますが、一時的に脳を麻痺させても、何の意味もありません。
その他、下記のようなことも、PMS(月経前症候群)の治療方法として書かれていますが、読んでいただければ、お分りの通り、プロの医者が、わざわざアドバイスするようなものではなく、近所の親切なおばちゃんでもアドバイスできそうな一般健康論です
休養と睡眠を十分に取ります。
定期的な運動は、腹部膨満、易怒性(いらだち)、不安、不眠の軽減に役立ちます。
ストレス解消法(瞑想、リラクゼーションなど)を行います。
ストレスの多い活動を避けます。など。
メルクマニュアル 月経前症候群より引用
病院のPMS(月経前症候群)の治療方法
病院でも、漢方薬を使いますが、医者は、病気の原因である証とうものを分析できませんので、漢方薬の使い方が、まるでデタラメです。
要は、体質や病気の原因を何も考えずに、ツムラなどの漢方薬メーカーからもらったマニュアルだけみて漢方薬を選びます。
僕も医者が使っていマニュアルを持っていますので、そこから抜粋します。
ツムラ医療用漢方製剤より:
月経困難症:当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸、大黄牡丹皮湯、温清飲、桃核承気湯、温経湯。
このうちのどの漢方薬を選ぶのか、その根拠はありません。
通常は、その人独自の病気の原因(病気的な体質)を分析、判断して、その状態を調整できる漢方薬を選びますが、体質を分析できないので、多分、前の講演会で小耳に挟んだ、漢方薬を選んだり、ツムラなどの漢方薬メーカーの営業が持ってくる臨床データ(何人かの人に〇〇の漢方薬が効果的だった。という、人それぞれの治療をする漢方には何の役にも立たないデータ)を元に選んだりと、漢方の治療理論以外の理由で漢方薬を選んでいると思います、
本当のPMS(月経前症候群)の漢方治療の方法とポイント
それでは、本来のPMS(月経前症候群)の漢方治療の方法を紹介します。
ここからは、本当の漢方治療の方法です。
PMS(月経前症候群)は、月経周期やホルモンと関係していますが、その月経周期やホルモンは、血の巡りや水の巡り、血の量、気のバランスなどなど、全身の状態が関わっています。
簡単に言えば、月経は、自分の体と別ものとして機能しているわけではないので、全身の状態をみて、その不調を治していきます。
治療の目標としては、月経前や月経中に起こる症状をなくすことですが、漢方は症状を一時的に抑えるわけではないので、月経周期や月経の質(経血)や状態を整えることを第一の目標とします。
月経は、全身の状態を関係しますので、全身をみて、東洋医学的なPMS(月経前症候群)を発生させている原因である『証』を導きだします。
その人独自の病気の原因である『証』が分析できたら、その証(原因)を治せる漢方薬を選ぶのは難しいことではありません。
逆に『証』(原因)がわかってないのに、漢方薬を選ぶことは不可能です。
漢方的なPMS(月経前症候群)の原因(証)
漢方では、PMS(月経前症候群)という病名に効く漢方薬というものはありません。
ホルモン値なども関係なく、人それぞれの原因を調べます。
漢方では以下のような原因(証)でPMS(月経前症候群)が起こっていると考えます。
これらの原因は、人によって、それぞれです。
また、どれか1つが原因とも限りません。
普通は、複数、絡み合っています。
以下が、全てではないですが、PMS(月経前症候群)の原因となる原因(証)です。
【上焦の熱証】のぼせ、特に理由のないイライラ、頭痛や耳鳴り、めまいが起こるタイプの人に多い原因(体質)です。
後で出てくる「胸脇の熱証」などが併発していることが多かったり、水滞の証と合わさると、湿熱の証となり、膀胱炎や膣炎にもなりやすかったりします。
【胸脇の熱証】
胸あたりの熱と気の巡りが悪くなり、その熱が顔にあがっていて、気が滞ることによって、胸の張りや痛み、寝つきの悪くなるなどが起こるタイプの人に多い原因(体質)です。
上焦の熱証と合わさることが多いです。
【裏の実証】
腹部の深く、大腸に熱がたまることによって、その熱が子宮、卵巣などに影響し、血、熱、水の巡りが悪くなります。
便秘などが起こるタイプの人に多い原因(体質)です。
【脾胃の虚証】
胃や腸など、消化器全般が弱っていることで、血がうまくつくれず、血の不足が月経の経血に影響することが多いタイプの人に多い原因(体質)です。
【腎の虚証】
漢方では腎の臓は、月経などのホルモンのリズムをコントロールしています。
年齢が高くなると腎の虚証がPMS(月経前症候群)を引き起こします。
40歳以上の方に多い原因(体質)です。
【寒証】
冷えると血も水の巡りも悪くなり、子宮内膜がうまく作られなくなります。子宮や卵巣への血の巡りが悪くなるとホルモンバランスも崩れます。
冷え性のタイプに起こりやすい原因(体質)です。
【気証】
漢方では気はいろいろな捉え方がありますが、ここでは自律神経や女性ホルモンを分泌する視床下部に関係します。
寝つきが悪かったり、夜中や朝方に目が覚めるタイプの人に多い原因(体質)です。
【瘀血の証】
血の巡りが悪くなり、血の巡りが悪くなると、子宮や卵巣に巡る血が、うまく巡らなくなるので、月経が乱れます。
PMS(月経前症候群)はこの原因がベースになっていることが多いです。
【水滞の証】
水の巡りが悪くなって起こるタイプの原因体質です。
水の巡りは、むくみや吐き気、下痢などに関わっている子tが多いので、先ほどの【瘀血の証】と同じでベースの原因になっていることが多いです。
【血虚の証】
血が不足している状態です。血は月経の質やリズムの原料なので、こちらが少なくなると、PMS(月経前症候群)の大きな原因となります。
漢方を勘違いした先生が、よく『あなたのPMS(月経前症候群)は瘀血が原因』など、何か1つの原因でPMSになっているかのように説明することがありますが、現実は、【瘀血の証】と【水滞の証】は、PMS(月経前症候群)の方のベースにある原因です。
この2つの証、【瘀血の証】と【水滞の証】に更に【胸脇熱の証】と【腎虚の証】が合わさったりしているのが、現実のPMS(月経前症候群)の原因です。
気になる漢方薬の効果は?
漢方薬の効果は、つまりは、その「証(原因)」を治すということです。
ややこしいですが、例えば、水滞の証なら、水が滞っているので、水の巡りを促し、瘀血の証なら、血の巡りを促します。
なので、PMS(月経前症候群)の漢方治療で重要なのは、体質をどれだけ正確に診断できるか
これにかかっています。
体質さえ正確に診断できれば、使える漢方薬は自ずと決まってくるのですね。
ということで『PMS(月経前症候群)だったら加味逍遙散や温経湯』というのはあまりに低レベルで浅いマニュアルの選び方なので、そんな方法では、都合よく治らないことがわかっていただけると幸いです。
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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ 月経前症候群 メルクマニュアル(家庭版)
◯ 月経前症候群(プロフェッショナル版)
◯ 月経前症候群(PMS)
◯ 今日の治療指針:医学書院
◯ 治療薬マニュアル:医学書院
◯ 今日の治療指針:医学書院
◯ 治療薬マニュアル:医学書院
◯ツムラ医療用漢方製剤マニュアル
◯オースギ医療用漢方製剤マニュアル
◯漢方方意辞典:緑書房
◯漢方診療医典:南山堂
◯漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯中医処方解説::神戸中医学研究会
◯平成薬証論:メディカルユーコン