
漢方薬の治療効果に対する大きな勘違い
漢方薬は体質に合わせて選ぶものだということは、なんとなく知っていると思います。
実際、漢方薬は、病院の薬と違って、自分の体質に合わせて選ばないと、全く効果がないのです。
また体質と合っていない漢方薬を飲むことによって、かえって体が悪くなることもあります。
では、では、この『体質』って一体何でしょう?
冷え性の体質?
下痢体質?
実は、体質って、あなたがよく感じている症状のことではありません。
漢方の健康の考え方
体質の前に、そもそも健康ってどういう状態なのかを考えてみましょう。
漢方の健康の考え方って、実は、ものすごく単純です。
1 生きていくために酸素と水、食べ物を取り入れる。
2 取り入れたものを体内で使えるようにする。(消化や吸収など)
3 エネルギー(栄養素など)を全身に運ぶ。(血や水を巡らせる)
4 細胞でエネルギーを使う。
5 使った後のエネルギーをゴミを捨てる場所(大腸や腎臓)に運ぶ。
6 いらないゴミを捨てる。(便やオシッコ)
どんな人もこの6つの活動を毎日やっているだけです。
そして、この6つの活動は、とても複雑で難しいことをしているため、毎日、自動で、できるように自律神経にまかせています。
もし、自律神経が一連の作業を自動的にしてくれなかったら、大変です。
「あっ心臓を動かすの忘れた!」なんてなったら死んじゃうし、「食べたけど、消化の命令するの忘れた!」なんてなっても大変です。
1日の「やらないといけないことリスト」でビッシリ、埋まり、仕事どころじゃないです。
そして、体内は非常にデリケートな状態になっていますので、外側の世界のものは、毒になります。
ところが、空気を吸ったり、水を飲んだり、食べ物を食べたりと、常に体の外側から毒と一緒にいろいろなものを取り入れないといけないので、体は常に毒と異物にさらされているのです。
それを守ってくれるのが、免疫です。
そして、これらの一連の活動は、非常に疲れます。
1日の終わりには、臓器も神経もヘトヘトになっていますので、睡眠が必要なのです。
活動をするためのエネルギーを得るのに6つの働きがあり、それを自動で動かすための自律神経があり、外敵から守るための免疫があって、それらの活動を休めたり、修復したりする睡眠があります。
健康って、つまるところ、この6つ+A(自律神経)、B(免疫)、C(睡眠)の3つの合計9つの働きが、うまく回っていれば、よいことです。
病院の治療の勘違い
病気というのは、要は、この9つの働きの何かが、うまくいかないことです。
そして、この働きが、うまく繰り返されている間は、健康ですが、何かのきっかけで、一連の動きの連携がダメになります。
例えば、添加物など、異物のたくさん入っているものを食べれば、体は、その異物に反応して、アレルギー反応(免疫反応)を起こし、これが、何度も何度も繰りかえされれば、アトピーになったりします。
人間の体はよくできていて、何らかの原因で、普段の活動がうまく、まわらなくなると文句を言います。
その文句が、「頭痛」や「めまい」などの症状です。
胃や肝臓というのは、しゃべれませんが、症状という形で、自分たちの仕事がうまくいっていないことを伝えるわけです。
病院の治療は、症状を薬の力で無理やり抑えることなので、この文句を、無視することを治療とよんでいます。
ですので、胃や肝臓などの文句は無視するわけですから、本質的な問題は何も解決しません。
体質って何?
体質には、2種類あります。
1つは、生まれつきの体質。
生まれつきの体質というのは、さっきの健康を保つためのしくみの中で、何かがうまくいかない弱点をもっていることを言います。
例えば、胃の消化や吸収が悪いとか、大腸の機能が弱くて便秘気味とか…
背丈や体格、運動神経などと同じで、どれだけ気をつけたって、私たちは何かしらの弱点をもって生まれてきています。
逆に完璧な体質の人なんていません。
つまり、生まれつきの体質とは、健康を保つための9つの働きのどこかに弱点がある状態のことを言います。
そして、体質にはもう一つあります。
日々の生活の中から影響を受けて、体の働きがうまくいかなくなる状態です。
暑すぎると体内に熱がこもり、それが胃だったりすると消化吸収が悪くなります。
逆に冬が寒すぎて、冷えると体全体の機能が衰えて、消化吸収だけでなく何もかもが不調になってきます。
風邪ウィルスが体内に入れば、いつもの体の働きをむちゃくちゃにします。
つまり、病気とは、『生まれつきのマイナス要素の体質+日々の生活の中の悪影響による病的体質』の2つで発生します。
病院お治療と漢方の治療の大きな違い
病院の治療は、主に体の機能がおかしくなり、その異常を伝えるために発生させた『症状』を抑える(黙殺)ことです。
そして、漢方薬の目的は、症状などから、体の中のどこに異常があるのかを見つけ出して、その異常が正せるような漢方薬を選びます。
例えば、頭痛なら、水の巡りが悪く、それが原因で痛みを発生させていれば、上焦の水滞の証の利水といって、肩から上、顔などに滞っている水抜きをしてあげることによって、頭痛がなくなります。
この頭痛が、不要な熱のこもりや血の巡りの悪さが原因だったら、水の巡りを整える漢方薬は、全く治りません。
ですので、『頭痛』という症状だけで、漢方薬を選んでも治ることがありません。
その頭痛の原因が、『水なのか? 血なのか? 熱なのか?』ということを調べるために漢方では常に全身の状態を調べる必要があります。
悲しいことですが、病院やほとんどの漢方専門だと言ってる先生は、体質(体内の不調の原因)を分析できない人が多いので、漠然とその症状だけ(頭痛なら頭痛のことだけ)に合わせて漢方薬を選ぶので、治せない人が多いと思います。
病気とは、9つの活動が何からの原因でうまくいかなくなった状態。
そして、体質は、生まれつきの弱点+今の体が受けた悪影響による体質があって、漢方薬が治すのは、この2つの状態を治すことが目的です。
生まれつきの体質の弱点は背丈などと同じで、変わることがありません。
普段の生活から受ける悪影響は、その都度、めまぐるしく変わり、その都度、病的体質を作り出します。
漢方薬は、病院的な治療というよりも、常にベストな状態を保って、大きな病気や老化を防いでいくものだと考えていただいたほうがよいと思います。
よく漢方薬の効果や使い方を勘違いしている人がいるので、体質や漢方薬というのはこんな感じのものだと知っていただければ、幸いです。
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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ 図説東洋医学(基礎編):学研
◯ 漢方概論:創元社
◯ 漢方臨床ノート(論考編):創元社
◯ やさしい中医学入門:東洋学術出版社
◯ 中医診断学ノート:東洋学術出版社
◯ まんが漢方入門:医道の日本社
◯図解雑学 からだのしくみ:ナツメ社
◯図解雑学 病気のしくみ:ナツメ社
◯図解雑学 薬のしくみ:ナツメ社
