漢方薬相談ブログ

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葛根湯の本当の効能効果

病院で医者から漢方薬を処方されたり、あるいは、自分で漢方薬を選んで飲んでいても、一向に効果がわからないという人は結構、多いと思います。

それは、なぜか?

答えは簡単で、漢方薬は体質に合わせて選ぶ薬だからです。

漢方薬は病院の薬とは目的も効果も全く違うものなのに、体質なんか無視して、医者や漢方の医学理論を知らない人は意味不明な方法で漢方薬を選んでいます。

漢方の正しい医学理論を則って選んでいないので、効くわけがありません。

葛根湯の効能効果は効能効果のことではない

こんな話をすると、それぞれの漢方薬の『効能効果』に書いてある病名や症状をちゃんと当てはめて選んでいますよ。と言う方がでてきそうですが、あの病名や症状って、「書いてある病名や症状を葛根湯が治す」って意味じゃありません。

つまり、それぞれの漢方薬に書いてある『効能効果』は効能効果のことはないのです。

あれは、体質を分析する上で参考にする情報というだけであって、モロ、あの通りに効果があるというわけではありません。

それでは、実例をみながら葛根湯の漢方としての本当の効能効果をみていきましょう。

保険適応の葛根湯の効能効果

葛根湯の効能効果の解説の前に最も漢方の医学理論から外れた、よくわからない説明をしているツムラの葛根湯を例にしてみます。

ツムラ1番 葛根湯 添付文書より引用:
■効能又は効果 自然発汗がなく、頭痛、発熱、悪寒、肩こり等を伴う比較的体力のあるものの緒症:感冒、鼻風邪、熱性疾患の初期、炎症疾患、(結膜炎、角膜炎、中耳炎、扁桃腺炎、乳腺炎、リンパ腺炎)、肩こり、上半身の神経痛、蕁麻疹

効能効果と書いておきながら何を書いているのかわかりませんね。

ここに書いていあるのは効果ではなく、病名と症状だけですね。

その病気や症状を『どんな効能や効果で治すのか』効能効果については、何も触れていません。

これが医者が使っているマニュアルです。

解説すると初期の風邪や炎症性の病気、肩こり、上半身の神経痛、蕁麻疹の病気の人の中で、汗が出ない、頭痛、発熱、悪寒、肩こりがあって、比較的体力があるのなら、葛根湯が合いますという話。

いやーすごいですね。

そもそも、冬に風邪ひいて、自然に汗ダラダラなんて、よほどの高熱でない限り、誰もいないと思います。

ということは、冬の風邪は、まず汗なんて出ないので、冬の風邪だったら、なんでもかんでも葛根湯を使うのでしょうか?

そんなわけありません。

次に蕁麻疹で発熱、悪寒のある人って、そういないだろって話。

極めつけは「比較的体力がある」というくだり。

漢方は、体力がどれくらいあるか?というのを分析するので、一見、おかしくないようにみえますが、医者って漢方の医学理論を知りません。

大体が、このマニュアルだけみて、病名と症状をあてはめて漢方薬を処方します。

その医者が「比較的体力がある」タイプって、どんなモノサシで、その人の体力をはかっているのでしょうか?

「なんか体力ありそう・・・」みたいな超適当な感じか、ここのところはオールスルーでしょうね。

残念ながら、この条件にピッタリ当てはまる人なんていないし、この条件に似たような漢方薬なんて山のようにあるのです。

そして、現実では、風邪の初期に葛根湯という超マニュアル手法で大して理由なく、右から左に処方しているだけです。

こんな調子で漢方薬が効果を発揮するわけがありません。

葛根湯の本当の効能効果

漢方薬というのは、咳を抑えたり、熱を鎮めたりする直接的な効果があるわけではありません。

西洋医学と漢方薬は何の関係も接点もありませんので。

葛根湯の漢方的な効能効果には3種類あります。

1つは、うちでもやっている日本漢方の葛根湯の効能効果。

2つ目は中医学の葛根湯の効能効果。

もう一つ古方的な葛根湯の効能効果がありますが、これは、漢方のエキスパートでも理解するの難解ですので、今回は割愛、また、中医学は、理論倒れで僕は治せると思っていないので、今回は割愛します。

要するに葛根湯の効果といったて、日本漢方や中医学、古方という、いろいろな治療流派の考え方によって、何種類もあるということです。

日本漢方の葛根湯の効能効果

日本漢方では、効能効果だけに注目して選びません。

葛根湯の効能効果と一緒に葛根湯を飲むべき状態なのかも調べる必要があり、この2つが揃って、初めて葛根湯の効能効果となります。

葛根湯の効能効果は、

1表の寒証の温という効果。
意味不明ですね。でもこれが1つ目の効能効果です。

表の寒証というのは、体の表面が冷えている状態を指します。

体表面の冷えを温めて、汗を出させます。

2表の実証の発表という効果。
体表面の水の巡りを巡らせて、水の巡りを整え、汗が出るようにします。

体の中に部分的に溜まった水や血など溜まったものを外に出させます。

3脾胃の熱証の発散という効果。
消化器にこもった不要な熱を外に追い出します。

証というのが『病気状態』のことを表していて、その証を調整するのが効果です。

例えば、体の表面が冷えているという表の寒証という病的状態があって、それを治す効果が、温という温め効果です。

葛根湯を飲んでもよい状態とは?

次に葛根湯を飲んでもよい状態とはどんなものなのか?

葛根湯は、太陽病、実証という人に使います。

太陽病とは、『病気の初期である』ということです。

そして、実証というのは、普段から体力があって、熱が出やすかったり、イボができやすかったり、便秘になりやすかったりと何かを溜め込んだりするタイプのことです。

簡単に言えば、風邪の初期をすぎて、熱が出て、汗が出ているタイミングでは葛根湯は合いません。

このタイミングの風邪で葛根湯を使うとより悪くなります。

主に下記の葛根湯で治る可能性のある病気の中で、『太陽病、実証』という条件と『表の寒証の温という効果』『表の実証の発表という効果』『脾胃の熱証の発散という効果』必要な体の状態であれば、葛根湯で治るよ。という意味で、葛根湯に鼻水や咳を止めたりといった、病院の薬のような直接的な効果はありません。

葛根湯を使う可能性のある病気:風邪、肺炎、麻疹、副鼻腔炎、頭痛、高血圧症、肩こり、痙攣、破傷風、子供のひきつけ、肩関節周囲炎、関節リウマチ、神経痛、鼻炎、気管支喘息、乳腺炎、打撲、アトピー、蕁麻疹、大腸炎

これらの病気に葛根湯が効果があるのではなく、これらの病気があって、更に葛根湯の条件にあっていて、葛根湯の持っている効果であれば、治せそうな状態の人であれば、葛根湯を選ぶべき。ということで、病名が同じでも、条件が違ったり、必要とする効果が違う場合は、葛根湯は合いません。

漢方薬の効果は、『その人の体質がどんな効果が必要か?』を考えて選ぶのですね。

こんなふうに、漢方の基礎知識がなければ、選べないので、医者が行なっている病名や症状だけをマニュアルをみてあてはめているような漢方は、本来の漢方理論からしたら、何をやっているのか意味不明です。

なので、当然、効果も発揮しないし、治りません。

ちなみに葛根湯は麻黄という生薬が含まれていて、麻黄は胃もたれや胃痛がある人、胃の弱い人が飲むと、余計に悪くなりますので、胃腸の調子が悪い人は、葛根湯は使えませんので、他の漢方薬を探す必要があります。

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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ ツムラ医療用漢方製剤マニュアル
◯ オースギ医療用漢方製剤マニュアル
◯ 漢方方意辞典:緑書房
◯ 類聚方広義解説:創元社
◯ 勿誤薬室方函:創元社
◯ 漢方診療医典:南山堂
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ 平成薬証論:メディカルユーコン
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅠ:薬局新聞社刊
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅡ:薬局新聞社刊
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅢ:薬局新聞社刊

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

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