体外受精は実はかなり確率の低い運任せな方法
先日、ある患者さんから質問がありました。
『体外受精って、絶対に成功しそうな方法に思えるのですが、どうなのでしょうか?』
患者さんのイメージでは、精子と卵子を人工的に受精させるわけだから、確かにこのイメージだけだと体外受精の成功率は100%に近そうですよね。
でも、実際の『体外受精の成功率は30%くらい』
わかりやすく言えば、『70%失敗する』のです。
成功率が高いどころか、逆に妊娠したらめずらしい位の成功率ですよね。
しかも、受精率や妊娠率ですら確率が低いのに出産までとなると、もっともっと低くなります。
なぜ、体外受精はうまくいかないのか?
西洋医学的に、なぜうまくいかないのか?
それは不妊症の医者にでも、聞いてみてください。
漢方というか、自然からみると体外受精って穴だらけです。
そもそも、自然排卵でなく、針で卵子を取り出している時点で、アウトっぽいですよね。
よく体外受精で、卵子のグレードなんかを調べていますが、あれだってどうなのでしょう?
確かに見た目は、悪いよりは良い方がいいです。
しかし、あれって、卵子自体の能力をどうやって判断するのでしょうか?
人間だって、見た目だけで野球がうまいとか、ピアノがうまいなんてわかりませんよね。
見た目が悪いよりは良いほうがいいとは思いますが、それが良いものかどうかはわからないはずです。
わかるのは『見た目的に悪くはなさそう』程度だと思います。
自然のメカニズムを無視しても…
受胎のメカニズムはご存知だと思います。
1億匹の精子が卵子に向かって泳ぎ、9千9百99匹が死ぬわけです。
そして、最後に残った1匹だけが受精します。
これって、かなり過酷な選別ですね。
なんのためにこんな大量虐殺みたいなことをしているかというと、強い精子だけが受胎できるようにしているためです。
当然、弱ければ、全滅です。
裏返せば、弱ければ、『受胎の能力がなかった』ともいえます。
体外受精は、この過程をとっぱらいます。
しかも卵子も本当に自然に排卵に値する良いものかどうかもわかりません。
なにせ、人工的に取り出すわけですから。
人間の体の機能に無駄はありません。
妊娠は、受胎のタイミングが合わなかったとうことも多いにありますが、同時に、タイミングだけでなく、『精子も卵子も受胎に必要なだけの生命力をもっていたかどうか』もテストもしているのです。
月経周期は赤ちゃんを育てるための準備でもある
体外受精のもう一つの問題は、月経日や排卵日を調整しようとすることです。
月経周期が、28日前後だと決まっているのは、なんとなく、そんな周期にしたわけではありません。
細かくみていくと、内膜を厚くしたり、卵子を徐々に育てたり、体温をあげて暖かくしたりといろいろな作業をしています。
こういう仕事のそれぞれが『それが完了するために必要な日数』でもあるわけです。
だから、月経周期が10日だけど正常なんて人はいません。
どんな作業もそれなりの時間が必要になります。
ホルモンというのは、これらの作業の命令書みたいなものです。
この命令書が発行されると、嫌でも仕事を進めようとするわけです。
さて、イメージしてみてください。
あなたの能力では、1週間かかる仕事をむちゃくちゃな上司に「3日以内にしないとクビ!だ」と言われたらどうでしょうか?
なんとか、やろうとはすると思いますが、『仕事の質はむちゃくちゃ』になりますよね。
これが、ホルモン剤のやっていることです。
ホルモン剤の強引な仕事っぷり
あなたの能力(体の状態)なんて知ったことじゃないのです。
とにかく、人工ホルモンさんが決めた納期に合わせるわけです。
採卵日は『病院の空いている時間』や『その日の予約が取れるか』どうかも関わってきます。
これらは、自然の体の状態とは何も関係がない余計なことです。
でも、現実は、これらのことに体を合わせなければ、採卵できません。
『体のためではなく、治療の予定に合わせるため』にピルで月経を強制コントロールして、スプレキュアなどで排卵日を強制コントロールするわけです。
十分に卵子を育てることができるかどうかなんて関係ありません!
なぜなら、ホルモンという命令書があるので、質はともかく、無理やり、卵子を大きく膨らませることはできるからです。
もはや育てるというよりも膨らませるですね。
自分の体の状態を一切、無視して、治療の予定に合わせさせます。
こんなの常識的に考えて、卵子がうまく育ってくれるわけがないですよね。
やっつけ感がハンパないのです。
月経周期や妊娠はホルモンだけの問題ではない
病院の大きな勘違いは、妊娠のための月経リズムや排卵が、ホルモンという命令書だけで成り立っていると考えていること。
妊娠につながる月経周期は体全体が関わっているのです。
内膜に関わる血の質や血の巡り、その血は、食べるものによって作られ、食べるものは胃腸によって消化吸収されます。
いきなり良質な血の状態で体内に入ってくるわけではないのです。
卵巣には水の巡りも関わっています。
水の巡りは腎臓の機能とも関わっています。
月経が全身と関わっているということは、全身のコンディションとも関わっているのです。
となると、少なくとも体外受精を受ける場合は、全身くまなく見直してみても、些細なことも含めて何1つ問題がない健康な状態でないと成功しそうにないですよね。
『血の巡りは悪いけれど、子宮内膜は厚くなる?』
『お腹や足が冷えているけれど、卵巣は卵子を超健康に育ててくれる?』
そんな都合がいいわけないですよね。
つまり、ホルモン剤は見せかけの卵子を作り、そして、それが本当に良いものかどうかわからないのに無理やり器具で取り出すわけです。
むしろ、この状態でうまくいくほうが奇跡です。
だから、成功率30%なのか。
そして、まだあります。
それは精子です。
体外受精の精子の問題
精子は、大量虐殺システムを生き残ったものだけが受胎できるようになっています。
それは言い換えれば、生命力に溢れているものを選ぶためですよね。
それを器具で楽々、受胎させるわけです。
本来なら1億人のうち1人しか採用しない超難関企業に縁故で就職できるわけです。
当然、競争してきていない者が役に立つわけがなく、就職後、あっさり退職していくわけですね。
それが受胎できなかった状態です。
さらに待ち構える妊娠後の難関
ホルモン剤は、その都度、その都度の月経のステージを誤魔化そうとします。
例えば、排卵を誘発するクロミッドは、薬の作用機序として、内膜が薄くなります。
つまり、排卵のために人工的なホルモン剤を使うことによって、着床後に失敗する効果も同時にあるわけです。
自然のホルモンは、さまざまな種類のホルモンと連携しながら、バランスをとっています。
そして、妊娠のための月経周期は、ホルモンだけの問題ではなく、実質的に内膜を厚くしてくための、その人の仕事のペース(日数)も必要となります。
外部のホルモン剤の都合で無理やり命令されたって、自分の仕事が、いきなり早くなるわけではないのです。
皮肉な話ですが、ホルモン剤で調整すれば、するほど、受胎後の状態が悪くなります。
よく考えてみたら、受胎後、赤ちゃんを育てるのは、人工のホルモン剤ではなく、自分の体のみの勝負となります。
でも病院は、別に出産までいくかどうかを気にする必要はありません。
なぜなら、不妊症専門の病院の仕事は、陽性反応まで。
流産して出産できなくても、目標は陽性反応なのです。
ですので、あとあと、受精卵を赤ちゃんにまで成長させることは考えなくてもよいので、後のことなんて考えずにホルモン剤を使いまくり、人工的な月経を作り出せばいいのです。
大事なのは、今、採卵できるか?戻せるか?『その時のその時のこと』しか考えていません。
体外受精は、受精という一部分だけをみれば、確実っぽいですが、ありとあらゆることが自然に反しているので、あんなに成功率が低いのですね。
僕は体外受精も妊娠のための1つの方法だと思っています。
うちでも体外受精と漢方薬の併用で妊娠した人が何人もいます。
ただ、質問にあったように一般的にあまりに誤解されたイメージがあり、冷静に考えられていないので『70%失敗する、運まかせな高額な方法』であるということを理解して挑戦してもらいたいと思います。
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