漢方薬相談ブログ

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年齢によって漢方薬は使い分けます(麻黄附子細辛湯や八味丸)

前回まで漢方薬には女性しか飲まない漢方薬があったり、夏に飲む漢方薬とか冬に飲む漢方薬があるというお話をしました。

一般的には漢方薬は病院の薬のように症状を一時的に抑えるために飲むものではなく、体の中の熱や冷えをコントロールすることによって治療するのですね。

なので、月経の状態が、悩みの病気に関わっていれば、女性だけが飲む漢方薬を使ったり、体を冷やす力が強い漢方薬は、暑い夏に使ったり、逆にそんな冷やす漢方薬は寒い冬にはなかなか使わなかったりするわけです。

次に漢方薬では特にお年寄りが飲む漢方薬というものもあります。

ご注意いただきたいのは、漢方薬はあくまで最優先は体質に合わせて選ぶものですので、お年寄りが飲む漢方薬は若い人が飲んじゃいけないということではありません。

例えば、若い人が何か大病をして、体力、気力、免疫力、筋力などが落ちちゃって、今の体質が老人のような状態になっていれば、これはイレギュラーですので、お年寄りに使う漢方薬を使うことがベストだったりしますので、やっぱり、漢方薬は常に『その時のその人の体質に合わせる』というのは基本です。

ちなみに子供にしか使わない漢方薬というものはないですが、子供は比較的、体内の要素を強く動かす作用の漢方薬で合わせていった方が、早くよく効く傾向があります。

とはいえ、強く動かす漢方薬は体の負担も大きいので、これも「子供だったら絶対」ではないですね。

お年寄の薬

お年寄りに使う漢方薬というのは以下のものです。

真附湯、麻黄附子細辛湯、八味丸、六味丸、当帰飲子、補中益気湯、麦門冬湯などです。

医者は漢方の東洋医学理論を理解できないので、年齢なんか何も考えず、冷えとか疲れていたらすぐに『真附湯』を出したり、咳が強かったら『麻黄附子細辛湯』を出したりしますが、真附湯や麻黄附子細辛湯の「附」とは猛毒のトリカブトのことです。

トリカブトの漢方的な効果や性質は『大辛、大熱、有毒』でかなりキツイものです。

この「大」とうものがつくと体に負担を与えます。

大熱というのは温めるなんて遥かに通り越している効果です。

温めるというよりも沸騰させるみたいな。

年齢が高くなってくると筋肉が衰え、代謝が弱くなり、自分で熱を作り出す能力が弱くなるので、薬としては外側から熱をいれてやらないとよくならないので附子を使います。

余談ですが、附子をただの鎮痛剤だと誤解して関節の痛みなどにやたら大量に出す残念な先生が結構いたりします。

基本的に熱を作り出せない状態というのは、高齢の人の状態なので高齢でない方には使いません。

麻黄附子細辛湯であわや救急車!

昔、うちの嫁さんが、普段の風邪よりも強めの咳をした時に強めの咳だから強めの漢方薬である麻黄附子細辛湯で治そうと思ったのか、それを出されて飲んだことがあります。

なんと、たった1包、40分位で「元の強めの咳」は3倍位の超強めの咳までひどくなり、呼吸困難まで伴って、救急車を呼ぼうかどうかまでになったことがあります。

なんでこんなことになったかというと、確かに冷えはあったのですが、お年寄りほど冷えてはなかったのです。

附子の効果には『大熱』の他に『大辛』があります。

「辛」とは発散させたり、気を巡らせる効果です。

漢方では咳のタイプにはよっては、温めながら、発散させて早く追い出して治すという治療方法があるので、「温める」ことも「辛」の発散も『効果』としては別に間違っていないですよね。

では、なぜ、嫁さんは呼吸困難レベルの咳までひどくなったのか?

それは漢方薬の効果は強さや度合も考えないといけないのです。

漢方薬の強さと体質のレベルを合わせる

例えば、最初に紹介した真附湯ですが、温める力がかなり強いものです。

麻黄附子細辛湯と同じ附子が入っています。

同じような効果のもので人参湯があります。

人参湯も温める効果があり、全体的な効果も真附湯に似ていますが、似ているからといって、どっちでもいいのか?というとそんなわけがありません。

仮にわかりやすく数値で示すと真附湯が(+10)の力で温めるとすれば、人参湯は(+7)くらいです。

漢方薬の効果のことを誤解している人(医者も含めて)が多いですが、漢方薬は病院の薬のように何か症状を抑えたり、治したりする効果も成分もありません。

単純に言えば、冷えている人には、温める漢方薬を選び、不要な熱がある人には冷やす漢方薬を選びます。

(実際は温める冷やすだけでなく、気がどうとか肝臓や腎臓がどうとかもっと複雑ですが)

この時に冷えているから温める漢方薬を選べばいいのではなく、冷えているレベルがどれくらいなのか?
を調べないといけません。

冷えレベルが(−10)とむちゃくちゃ冷えている人や(−7)の人もいます。

(−5)くらいの人もいます。

それでは(−5)の人に(+10)の真附湯を選んだらどうなります?

(+5)の熱が余りますね。

これは体内に不要な熱として残ります。

症状だと「のぼせ」とか「頭痛」「吐き気」なんかで現れてきたりします。

つまり、漢方薬は強さの度合いを合わせないといけないのですが、高齢の人は、総じて自分で熱を作り出すのが、弱っていたり、エネルギーを作り出すのが弱かったりする傾向があります。

ですので、若い人に使う漢方薬よりも温める力が強かったり、エネルギーを加えていくという方向性のものが付加されていたり、乾燥を強く潤すというものが多いのです。

でも、高齢でない人は、そこまで強い作用や、やたらエネルギーを足しても全部、余分に余ってしまって、その余分が今度は『副作用』となるのです。

そう、うちの嫁さんにとって麻黄附子細辛湯は温める力も発散させて追い出そうとする力も強すぎて、盛大に熱がこもり、追い出す力が強すぎて咳が止まらなくなったのです。

お年寄りの漢方薬はお年寄りに使う理由がある

その他、八味丸、六味丸も腎虚という腎の臓が衰えた方に使いますが、この腎の衰えも若いひとの腎の衰えと加齢による腎の衰えは性質が違うので、やはり若い人には使いません。

男性不妊は腎虚だからといって八味丸や六味丸をすすめたりする先生がいますが、若い人の腎の衰えは若い人用の漢方薬があります。

麦門冬湯や当帰飲子は潤す力が強いので、お年寄りのように乾燥気味だとちょうど潤されてよいのですが、お年寄りでない方に使うと、かえって水が増えて、水の巡りが悪くなったりします。

とこんな風に漢方薬は、年齢や体のいろいろな状態によって、何百種類も漢方薬が用意されいますので、高齢でないのに、お年寄りの方に使う漢方薬を処方されたら、『なぜ、イレギュラーの処方を使う必要があるのか?』をしっかりと説明してもらったほうがいいと思います。

【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ 漢方方意辞典:緑書房
◯ 漢方診療医典:南山堂
◯ 類聚方広義解説:創元社
◯ 勿誤薬室方函:創元社
◯ 漢方処方応用の実際:南山堂
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅠⅡⅢ:薬局新聞社刊
◯ 平成薬証論:メディカルユーコン

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

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