漢方と西洋医学の両方から解明するアトピーの原因
突然、腕や足がかゆくなるアトピー性皮膚炎。
かゆみがひいたと思ったら、またかゆくなるの繰り返しで、一生、このかゆみが続くのではないかと思ってしまうほどです。
放っておいても痒みを感じる部分がどんどん広がっていくことが多いので、いち早く治してしまいたいところです。
今回はそんなアトピーの原因を西洋医学と東洋医学の両方から分析してみたいと思います。
今回の動画を見ていただくと、西洋医学のアトピー性皮膚炎の原因と、東洋医学のアトピー性皮膚炎の原因は、それぞれ違ったものであることがわかります。
そして、実際に漢方薬ではどうやって治すのかも紹介していきます。
西洋医学的なアトピーの原因
西洋医学的なアトピーの原因だと考えられるものは…いきなり身も蓋もない話なのですが「原因不明」です。
世界的な医学書であるMSDマニュアルを調べてみると、この医学書の他の病気のところには「原因」という項目があるのですが、アトピーに関してはその項目自体がありません。
その医学書から、原因らしき部分を抜粋しますと以下のような感じです。
(抜粋)
→ アトピー性皮膚炎の原因は分かっていませんが、遺伝子が関わっており、喘息や花粉症とともに、しばしば家系内に遺伝します。
抜粋終わり
これ以上、解説の仕様がないですね。
「アトピーの原因はわからない、おそらく生まれつき」以上です。
ここで1つ、疑問に思う人もいるかもしれません。
「あれ?だったら病院は原因がわからないのになぜ治療ができるの?」ということです。
実は、西洋医学の治療って、ほとんどの病気に関して、原因がわかって治療しているわけではないのです。
原因はわからないけど、表に出ている症状を一時的に抑えることを治療と呼んでいます。
僕的には、症状を抑えているだけでは、延々と治らないので、それは治療ではなく、応急処置だと思うのですが、世間一般ではそれを治療と呼んでいます。
アトピーが発生するメカニズム
アトピーが発生する西洋医学的メカニズムは「遺伝」です。
そしてアトピーになる人には、皮膚の角質層の【保湿をしてバリアーとなる機能】の遺伝子がない、らしいです。
ただ、しっかりと読み込んでいくと結局、「原因もメカニズムもわからない」ということを「いかにもわかっているかのように、わかってないということを書いている」なんとも面白い文章になってます。
医者って「私には治せない」ということを絶対に言いませんが、医学の本にも、そんな無駄に強気な感じが出ているのが面白いなと思います。
概要欄に貼っておきます。
医学の基礎知識をお持ちの方は、読み込んでみてください。
ちなみにアトピーというのは「奇妙な」とか「不思議な」という意味になります。
となると「あなたの湿疹はアトピーですね」という診断は、「不思議な皮膚炎ですね」ということになり、「最初っから診断してねぇじゃんか!」というギャグみたいな診断名になっているのです。
漢方が考えるアトピーの原因
漢方的にアトピーの原因を考えてみたいと思いますが、ここで大きな誤解があるので、その話からしておきたいと思います。
西洋医学は、体内の部分的な機能を見て、通常の機能が、どううまくいっていないのかを調べて、アトピーになったメカニズムやそれを引き起こした原因を調べます。
例えば、アトピーは原因がわかっていないですが、「遺伝的に皮膚のバリアーがおかしいのではないか」とか「免疫の反応が過剰過ぎるのではないか」と考えます。
ただ、結局は「多分、その辺だと思うんだけど、どこにどう問題があるのか全然わからない」と言うのが西洋医学が考えるアトピーのメカニズムです。
それをメカニズムと呼んでいいのかどうかわかりませんが。
漢方は、西洋医学のように遺伝的にどうとか、皮膚のバリアーがどうとか、など部分的に考えたりしません。
漢方では、アトピー性皮膚炎という症状が同じでも、その原因は人それぞれ違うと考えます。
実際、同じアトピー皮膚炎でも、湿疹を細かくみていくと、ガサガサに乾燥する人もいれば、反対にジュクジュクになったり、皮膚をかくと壊れやすい人もいれば、あせもや菌が原因の湿疹と混ざっていたり。
アトピーとして括って考えると、みんな同じような皮膚炎だと考えがちですが、細かくみると、みんな、もはや違う病気なんです。
また、女性と男性でも大きく変わってきます。
女性の場合は月経があるので、血の巡りとアトピーの関係が深かったり、男性の場合は、熱がこもりやすく、暑くなるとひどくなりやすかったり、また、そんな傾向とは全然関係が無いという人もいます。
つまり、人それぞれ原因が違うのです。
漢方の場合は、体を総合的に分析して、『その人のアトピーの原因』(これを証とも呼びます)を探し出して、それに対応した最適な漢方薬を選んで治療していきます。
漢方から考えるアトピーの原因
病院やあまり漢方の医学理論をわかっていない漢方薬局では、アトピーといえば、十味敗毒湯などを処方することが多いですが、このチャンネルお決まりのやつを言いますね…
十味敗毒湯はアトピーを治療する薬ではありません!
十味敗毒湯にアトピーを治す効果があるわけではないし、アトピーを治す成分が含まれているわけでもありません。
漢方の場合は、湿疹だけでなく、全身の症状や生活環境などを総合的に分析して、アトピーの原因を解明していきます。
それでは、大まかではありますが、どんなタイプの原因があるのかを紹介していきます。
ちなみに、これ以降の説明に出てくる肝の臓とか、腎の臓というのは、東洋医学の考える臓器のことで、皆さんがよく知っている、西洋医学における各臓器とは関係ありません。
【表の熱証】
表の熱証タイプは、かゆみがひどく、熱感が強いというのが特徴です。
ステロイドを使っていると、皮膚の熱感に気づきにくいですが、ステロイドを塗る前の元の自分の体の状態を考えると、この証は湿疹という症状の標準的な基本の原因であることが多いです。
【上焦の熱証】
上焦というのは、漢方では肩から上の部位を表します。
このタイプの特徴は、湿疹が肩から上の首や顔、頭などに湿疹が集中していることです。
逆に、肩から上に湿疹が集中していない場合は、こちらの証ではありません。
【胸脇の熱証】
胸脇というのは、漢方で胸あたりのことを指します。
肝の臓が熱を持ちすぎて、炎症反応を抑えられなくなり、その影響が原因でアレルギー反応が過剰になった結果、湿疹やかゆみが発生します。
かゆみがひどい場合は、前の表の熱証タイプと、この胸脇の熱証タイプの2つが合わさっていることが多いです。
【燥証】
皮膚や体の水分が少なくなり乾燥してしまっているタイプです。
かくと出血しやすいのもこのタイプの特徴です。
【裏の実証】
大腸に不要な熱がこもり、その熱が体に広がり、その影響で便秘になりやすい人にアトピーが発生している場合、これが原因です。
体に広がった熱を外に逃がそうとして、湿疹が発生します。
便秘でも硬くて便が出し辛くなるタイプで、
のぼせやすさも特徴だったりします。
【瘀血の証】
血熱と言って、血に不要な熱がこもって、血の巡りが悪くなり、かゆみなどの炎症熱が血の巡りから解消できない場合の原因です。
元々、PMSや月経困難症があったり、月経周辺で湿疹が悪くなったりするのが特徴です。
【水毒の証】
体の水の巡りが悪い状態で、かくと汁が出やすいアトピーの人の原因はこれです。
皮膚は潤いが必要なのですが、湿疹がある部分の皮膚は炎症によって壊れているので、
水毒の証が原因だと、皮膚の再生が悪く、少しかいただけで破れて、また湿疹がひどくなります。
【脾胃の虚証】
脾胃というのは、漢方で胃腸のこと全般を表します。
消化器は、皮膚を再生させるためのエネルギーを食べ物から得るところです。
こちらが原因の場合、皮膚が弱くなり、少しかくだけで破れたり、赤くかゆい炎症状態の皮膚を正常で丈夫な皮膚に作り替えていくことができません。
まとめ
西洋医学におけるアトピーの原因は、実は何もわかっていません。
単にステロイド剤や免疫抑制剤で、一時的に痒みを誤魔化しているだけなので、根本治療にはまったくつながりません。
漢方治療の場合は、先ほどあげたような、人それぞれの原因を分析して、その原因に合わせて漢方薬を選びます。
ちなみにアトピーを治す漢方薬の候補は、全部で40種類ほどあるので、あなたのアトピーの原因が、40タイプのどれに当てはまるかしっかりと分析し、40種類の漢方薬の中から選んで合わせる感じです。
その中の1つである十味敗毒湯を体質分析せずに飲んだところで、まず体質と合っていない可能性が高いので、効果すら感じないでしょう。
漢方薬を選ぶ際に必要なのは、体全体を見てどんな風に体内のバランスが崩れているのか、アトピーの原因である「証」や「体質のタイプ」を見極めることです。
そして、〇〇の証を診断してから、証に合わせて漢方薬を選びます。
今回、いくつかのアトピーの原因でもある「証」を紹介しましたが、実際は、こんなわかりやすい1つの証ではなく、3、4個の証が重なって、アトピーを発生させています。
例えば、「表の熱証」+「胸脇の熱証」+「水毒の証」みたいな組み合わせが、標準的なアトピーによくある体質だったりします。
「アトピー」というたった一つの症状でも、本当に、人それぞれ原因が違い、原因が違えば、当然、選ぶ漢方薬も変わるのです。
「西洋医学では原因がわからない」、だからと言って、十味敗毒湯という漢方薬が都合よくアトピーを治してくれるというわけではないのです。
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◯ メルクマニュアル(家庭版)
◯ メルクマニュアル(プロフェッショナル版)アトピー性皮膚炎
◯ 今日の治療指針:医学書院
◯ 治療薬マニュアル:医学書院
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