漢方薬相談ブログ

インフルエンザに麻黄湯という病院のデタラメな選び 方

インフルエンザに麻黄湯という病院のデタラメな選び 方

  1. インフルエンザや風邪で使う漢方薬
  2. 漢方薬の風邪を治す治療原則
  3. 麻黄湯の目的
  4. 風邪の漢方治療はタイミングが命

インフルエンザになってしまったという患者さんから相談の電話がかかってきました。

うちにすぐに相談に来たかったみたいですが、その時にうちが休みだったので、とりあえず検査だけしてもらおうと先に病院に行ったらしいのです。

しかし、病院では検査だけで済まずに麻黄湯を出されました。

出ました!医者お得意のマニュアル処方!

『インフルエンザに麻黄湯』です。

うちの患者さんは、医者が出す保険適応の漢方薬はド素人同然のマニュアル処方であることを知っているし、以前の僕の話を覚えていてくれて、麻黄湯は使い方を間違えると副作用も強く、風邪が余計にこじれることを覚えておいてくれたので、当然、医者の漢方薬を飲む前に電話をくれた訳です。

患者さんが覚えていた通りで、インフルエンザが4日も経過して発熱の峠を過ぎてるタイミングで麻黄湯なんて飲むことは理論的にありません。

医者は『インフルエンザ=麻黄湯』と西洋医学の薬のようにマニュアルを見て、処方したと思うのですが、具体的に麻黄湯が、どのように効いてインフルエンザをどのように治すと思ったのでしょうか?

いくら、マニュアル処方だって言ったって、医者が処方するからには「なぜ効くのか?」、その根拠と理論が必要なわけです。

何せ医療の専門家ですから。

でも麻黄湯に直接、インフルエンザをどうこうする成分なんかは含まれていません!

おそらく、医者の根拠は「漢方薬のメーカーから貰った資料やマニュアルにインフルエンザに効くと書いてあった」という『誰かの受け売り』の根拠しかないのかもしれません。

インフルエンザや風邪で使う漢方薬

麻黄湯にインフルエンザというのは、西洋医学的なルールから、勝手に決められた事です。

漢方の理論なんかは完全に無視です。

漢方は西洋医学とは一切、関係ないので漢方の医学理論の中に、そもそもインフルエンザなんて病名は出てこないし、風邪とインフルエンザを違う病気と分けて考えません。

そもそも、風邪という病名に合わせて処方するのではなく「発熱、頭痛、鼻水、咳、喉痛」という状態に合わせる漢方薬が何種類か存在しているといった感じです。

風邪の状態によく使う漢方薬はこれらになります。

風邪によく使われる漢方薬:
麻黄湯、葛根湯、桂枝湯、麻黄二桂枝一湯、桂枝二麻黄一湯、桂麻各半湯、人参湯、柴胡桂枝湯、香蘇散、半夏厚朴湯など

細かくみていけば、もっと候補になる漢方薬はありますが、これらは風邪の状態の時に治してくれると考えられる、代表的な処方です。

まさか、この中で「麻黄湯だけインフルエンザに使って、後は諸々の風邪に使うもの」なんてテキトーな分け方はしません。

漢方薬の風邪を治す治療原則

まともに漢方を勉強していたら、インフルエンザから4日経って、麻黄湯を処方する時点で、この医者は漢方のことを理論的には何もわかっていないとわかります。

それは漢方薬で風邪を治す場合の目的を考えればわかります。

漢方薬の風邪の治療目的はイメージ的には、スムーズな発熱による免疫強化と汗やオシッコ、便からウィルスを追い出すことです。

漢方薬はこの目的を達成できるものを選ぶのですが、その人の体力や体質に合わせて漢方薬を選ぶ必要があります。

麻黄湯は、まだ体力があって、抵抗力が高い状態の人に合うもので、漢方薬の構成が非常に単純です。

(ちなみにこれ普段の体力のことではなく風邪に対する体力の消耗度です)

構成は麻黄、杏仁、桂枝、甘草の4つの生薬でつくられています。

漢方薬は構成されている生薬が少なくなるほど効果が強く尖る感じになります。

漢方薬は平均的には8つくらいの生薬で構成されていることが多いので、4つが少なく強いことがわかります。

漢方の場合、効果が強いというのは『体に変化を与える力が強い』ことになるので、誤った診断をした場合は『悪くなる効果も強い』ということです。

風邪を治す場合に守らなければいけない臓器があります。

それは絶対に胃腸を壊さないことと、イタズラに体力を消耗しない事。

食べられなくなったら、途端に風邪のウィルスの勢力が勝って、体の状態はひどくなっていきます。

体力を消耗すると免疫など風邪のウィルスに対抗する力が失われるので、無駄に体力を消耗させてもいけません。

漢方の風邪の治療原則:
目的:適切な発熱によって免疫を高め、汗やオシッコ、便からウィルスを追い出す。
守らなければいけいない条件:胃腸を壊さないこと。体力を消耗しないこと。

こうやって書くと簡単にみえますが、風邪といっても詳しく診ていくと人それぞれ、食べられない状態だったり、体力がなかったりするので、その人の状況とタミングに合わせて漢方薬を選ぶ必要があります。

麻黄湯の目的

麻黄湯の作用は温めて、体の表面の水の巡りを促し、気の上衝を鎮め、咳を鎮めることです。

ちなみに麻黄湯だけが、この作用ではなく葛根湯、桂枝湯、麻黄二桂枝一湯、桂枝二麻黄一湯、桂麻各半湯も似たような作用です。

では似ているから、この中のどれを使ってもいいのかというと、そんないい加減な選び方はしません。

同じ風邪の人でも微妙な体質の違いを見極めて使い分けるのです。

(漢方薬は微妙な体質の差を見極めて使い分けるほど治癒率が上がります)

この時に麻黄湯は別格になります。

これらの候補になる漢方薬のグループの中でダントツに作用が強いのです。

作用が強い漢方薬は、受け取る人の体力が必要な条件となります。

そして、『麻黄は胃腸を壊しやすい副作用』があります。

風邪治療の際に守らなければいけない胃腸や体力が壊される危険性を孕んでいるのです。

でも、強い作用だからこそ必要な時があります。

インフルエンザのような強い抵抗反応を示している時です。

インフルエンザの場合、1日、2日目までは麻黄湯が有効なことが多いのです。

しかし、これはインフルエンザだったら無条件に麻黄湯が良いというような単細胞的な考えで使うのではありません。

そこにはちゃんとした根拠が必要となります。

インフルエンザの1日目、2日目であってもすでに高熱が出ている場合や体力がなくなっている場合は、麻黄湯を使うと、いたずらに高熱が続いて、より体力が奪われるだけなので、この場合は、漢方薬の強さランクを落として麻黄湯より下のランクの漢方薬を使います。

麻黄湯を使うのは、インフルエンザ初期で、熱が徐々に上がってきて、体力がまだ消耗していない状態で胃腸がやられていなくて、やたら関節が痛む場合です。

当然、この時点で胃腸がやられている場合は麻黄湯は使いません。

しつこく言いますが『インフルエンザ=麻黄湯ではない』からです。

麻黄湯は医者が考えるような麻黄湯の不思議成分が効くのではなく、初期には強い発表という作用が効果的な場合が多い。というだけです。

麻黄湯は体が強い病気に対して抵抗を示している時は麻黄湯の作用が耐えられる状態です。

しかし、発熱は体力を奪いますので、何日も麻黄湯を飲むと余計に体力が奪われます。

なので、使うとすれば、せいぜい、インフルエンザ3日目までで、ほぼ最初の1日、2日を経過したら、次の漢方薬をどれにするかを考える必要があります。

となるとインフルエンザから4日経って、熱も下がっている人に麻黄湯なんて、こんな間の抜けた選び方は普通はないわけで。

患者さんの問診をとると、案の定、今は熱は下がり、関節の痛みはなくなっています。

しかし、今は強烈な咳が現れてきたとのこと。

この場合、初期の熱が気管支や肺に熱をこもらせ、その熱を発散させようとして咳が出ているので麻黄湯は合いません。

一体、何のために4日経過してからの麻黄湯なのでしょうか?

風邪の漢方治療はタイミングが命

風邪を漢方薬で治す場合は、その人の状態が今どのステージにいるのかの確認が重要です。

  • 風邪から何日経っているのか?
  • 発熱、鼻水、咳、喉痛、頭痛などの症状が何から始まって、どんな感じの流れで今の状態になっているのか?
  • 胃と食欲の状態は?
  • オシッコの出具合と便の状態は?

最低でもこれらを調べて漢方薬を選ぶ必要があります。

麻黄湯はメーカーの営業が持ってきたやマニュアルや資料に『インフルエンザに麻黄湯って書いてあった』というようなあやふやな根拠で選ぶことはありません。

「インフルエンザの場合は治すまでに3回は漢方薬の種類を飲み変えていく」と考えたほうがいいです。

麻黄湯だけを1度に1週間とか10日間とか処方する医者は要注意です。

そこの漢方薬はインフルエンザに限らず、飲まない方がいいでしょう。

無知すぎて漢方薬で病気を治す理論をわかっていない可能性が高いからです。

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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ 漢方概論:創元社
◯ 漢方方意ノート:創元社
◯ 漢方臨床ノート(論考編):創元社
◯ 金匱要略ハンドブック:医道の日本社
◯ 傷寒論ハンドブック:医道の日本社
◯ 素問:たにぐち書店
◯ 漢方治療の方証吟味:創元社
◯ 中医診断学ノート:東洋学術出版社
◯ 図説東洋医学:学研
◯ 中国医学の秘密:講談社
◯ 陰陽五行説:薬業時報社
◯ まんが漢方入門:医道の日本社

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

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