うつ病やパニック症に効く漢方薬
半夏厚朴湯や抑肝散がうつ病やパニック症の治療に役立つかのように説明されていますが、これはとんでもない間違いです。
当たり前の話ですが、治るには、何らかの効果が必要となりますが、これらの漢方薬に精神を癒す効果のある成分などは含まれていません。
漢方薬で精神疾患を治療する場合は、体質に合わせて選びますので、この2つの漢方薬以外にも色々な漢方薬を使います。
今回は、なぜ、漢方では精神疾患治す場合も体質に合わせて選ばないと効果がないのかを説明したいと思います。
また、半夏厚朴湯や抑肝散、加味逍遙散以外で他にも使う漢方薬を紹介したいと思います。
病院のうつ病の薬の効果って
漢方薬の説明の前に、そもそも病院のうつ病の薬って、どんな効果で効くのか、ご存知ですか?
おおきく2つの効果があります。
1「精神を安定させる」とされているセロトニンの濃度を増す効果で不安を和らげる。
2ノルアドレナリンを増やして興奮させる。
かなりおおまかになってしまいますが、要は、「精神を鎮静させて落ち着かせる」か、「興奮させて元気にするか」というものです。
ちなみに精神薬は、業界的に、昔から大きな2つの問題に直面していて、『そもそも、うつ病の状態にセロトニンやノルアドレナリンが関係しているのか、実はわからない』ということと『精神薬が実際にセロトニンやノルアドレナリンを調整しているのかわからない』という問題が明確に解決しないまま、今も薬が処方されています。
精神薬というのは、簡単に言えば、嫌なことがあっても、お酒で酔っ払えば、何も考えなくてもいい状態になったり、楽しくなったりするというのと変わりません。
「ドラッグをキメて、一定時間だけ何もかも忘れる」という状態を作り出しているのです。
実際に精神薬は比喩ではなく、どれも麻薬(ドラッグ)です。
また、精神薬も病院の薬の例に漏れず、『あくまで一定時間だけ、効果があるだけ』なので飲み続けたところでストレス耐性や精神が変わることはありません。
お酒でいえば、酔いが覚めれば、普段の状態に戻って、『精神的苦痛はぶり返します』
もし、飲み続けることによって精神が変わるなら、危険すぎて、絶対に処方されることはないと思います。
半夏厚朴湯はうつ病の漢方薬ではない
ネットで調べると、うつの漢方薬として、代表的なものが『半夏厚朴湯、そして抑肝散、柴胡加竜骨牡蠣湯や加味逍遙散』と続きますが、もちろん、うつ病やパニック症に効く漢方薬は、これだけではありません。
一般的には、体質分析できる先生が、ほぼいませんので、マニュアルにわかりやすく処方できるようにこれらの漢方薬が、勝手に代表的な感じになっています。
残念ながら、こららの漢方薬に『精神をなんとかする成分は一切、含まれていません』
うつ病やパニック症も、他の病気と同じように漢方では、体質を分析して、その体質に合わせて選びます。
それでは、うつ病やパニック症でよく使う漢方薬はどんなものがあるのかを紹介します。
うつ病に効く漢方薬
うつ病に効く漢方薬には、下記の大体20種類くらいあります。
『三黄瀉心湯、黄連解毒湯、温清飲、加味帰脾湯、大柴胡湯、柴胡桂枝湯、四逆散、逍遙散、加味逍遙散、大承気湯、桃核承気湯、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、桂枝加竜骨牡蠣、香蘇散、九檳呉茯湯、人参湯、十全大補湯など』
この20種類の中から、自分の体質に合ったものを選びます。
20種類の中から、たった1つだけに絞らないといけないし、どの漢方薬にも精神を調整する成分なんて含まれていませんので、当然、「やる気がおきない」、「吐き気がする」、「眠れない」、「悩みがぐるぐる回る」みたいな問診だけでは、どの漢方薬が良いのか、選びようがありません。
たったそれだけの問診では、この20種類は『全部、あてはまることになります』
だったら、どの漢方薬を飲んでもいいのか?というと当然、体質に合わせずに選んでも治りません。
半夏厚朴湯や抑肝散が精神に効くかのように説明されていても、自分の体質と合っていなければ全く効果がないのです。
漢方薬の場合は、病院の薬と違って、うつ病やパニック症に効く漢方薬があるわけではなく、『あなたの体質に合うもの』が治してくれるものなのですね。
なぜ体質から選ばないといけないのか
病院の薬は脳内のセロトニンやノルアドレナリンを増やて、「酔っ払ったような」、「精神的な反応が麻痺したような」状態を作り出します。
そして、この状態を治療と呼んでいます。
漢方の場合は、治療の根本の考えが違います。
漢方では、『心身が繋がっている』と考えます。
これは漢方とは関係なく、当たり前の話で、高熱が出ている時にやる気が溢れて、「ガンガン働けそうだ」と思う人はいないし、嘔吐しまくっている時に「さわやかな気分だな」と思う人はいません。
また、逆に嫌なことを言われると、胃がキュッとなったり、大勢の中で発表しないといけないようなプレッシャーがかかったりするとドキドキと動悸が発生したりします。
こういった症状が、「気分と症状は何も関係ない。たまたま起こっただけ」なんて考えている人はいないと思います。
つまり、心と体はつながっているのですね。
『精神的ストレスは、体の症状となって現れ、症状は精神に影響するわけ』です。
うつ病やパニック症を漢方薬で治療する場合は、心身をともに治すことがポイントになってきます。
ですので、うつ病やパニック症に効く決まった漢方薬なんてものは存在しません。
なぜなら、例えば、うつ病の人が10人いたとして、やる気が起きない状態は共通していたとしても、体全体を細かくみていくと10人が10人とも、状態が違ってくるからです。
ちなみにこの定義から考えると、病院の精神薬はかなりの悪手になってきます。
病院の精神薬は正に麻薬なので、副作用が強く、効きすぎて午前中はぼーっとして、やる気が起きなかったり、食欲不振や吐き気が発生したりすることが多いですが、その体の症状が精神に悪影響を及ぼすからです。
皮肉な話ですが、一定時間、気分を安定させてくれても、継続して飲むことによって、副作用によって体調が悪くなり、体が悪くなるから、精神も悪くなるという、負のジレンマに陥っていくのですね。
うつ病、パニック症の漢方薬は体質から選ぶ
うつ病やパニック症に限らず、漢方薬は、『体質に合わせて最適なもの』を選びます。
そして、その体質は『全身の症状と状態を総合的に判断して診断』します。
漢方では、体の状態も精神と密接に関わっていると考えるので体の状態を治す漢方薬を選ぶ必要があります。
また、漢方では気という概念があり、これは、神経の働きや流れと捉えます。
更に感情と臓器には関係性があると考えられているので、原因になっている臓器も探し出します。
例えば、肝の臓がダメージを受けていると、イライラや焦燥感を生み出し、胃腸が弱っていると答えのない悩みを繰り返し考えてしまったりします。
最終的には、精神の状態と体の状態を両方向から考えて、調整できるものを選びます。
例えば、半夏厚朴湯は、胃腸の不要な水を尿利に導いてオシッコとして排出します。
胃腸に不要な水が溜まっていると胃もたれや吐き気が起こります。
そこから食欲不振も起こります。
気、つまり精神は、内に溜まって言いたいことがいえない、解決しないことがわかっているのに悩みのループに入ってしまっているという人の気を発散させてストレスを解消します。
胃腸を治すと同時に部屋にこもりっぱなしで、空気が澱んでいる状態から、バーンと窓をあけてさわやかな感じすることが治療です。
半夏厚朴湯のポイントとなるのは、「胃腸に不要な水が溜まっている」ことですので、胃もたれや、吐き気がない。もしくは、胃もたれでなく胃痛だったりすると、それは熱のこもりが体や精神にが影響している可能性があるので、違う漢方薬を選ぶ必要があります。
うつ病やパニック症が月経に関わる女性ホルモンと関連している場合もあり、この場合は、ホルモンの調整や血の巡りを整えてくれる効果もないと効きません。
当然、体の状態がこういった場合は、半夏厚朴湯は全然、効かないわけです。
一般的には、なんとなくうつ病に効くかのように解説されていたりしますが、漢方薬でうつ病やパニック症を治す場合は、『精神も体もどんな状態なのかをどれだけ、詳しく分析できるか』にかかっています。
うつ病だから、半夏厚朴湯や柴胡加竜骨牡蠣湯を飲めば良いというものではないのです。
うつ病やパニック症に効く、なにか決まった漢方薬というものはありません。
ストレスの状態と体全体の状態を調べて、それに見合う漢方薬を20種類の中から選びます。
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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ ツムラ医療用漢方製剤マニュアル
◯ オースギ医療用漢方製剤マニュアル
◯ 漢方方意辞典:緑書房
◯ 漢方診療医典:南山堂
◯ 類聚方広義解説:創元社
◯ 勿誤薬室方函:創元社
◯ 漢方処方応用の実際:南山堂
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅠⅡⅢ:薬局新聞社刊
◯ 平成薬証論:メディカルユーコン