あなたのアトピーに効く漢方薬の紹介
十味敗毒湯や消風散が、『アトピー性皮膚炎に効く漢方薬』かのように説明されていることがありますが、これは漢方薬に対する大きな誤解です。
何かの病気が治るためには、当たり前ですが、かならず効果と根拠が必要となります。
しかし、十味敗毒湯や消風散に、『かゆみや湿疹を直接、抑える効果はありません』し、「そういった成分」は含まれていません。
病名で、この2つの漢方薬を選んだ場合、効果の根拠がないのです。
漢方薬を使ってアトピーを治す場合、本来は、その人の体質に合わせて選びますので、アトピー性皮膚炎という病名に合わせて選ぶことはありません。
医者は、ほぼ100%、ほとんどの漢方薬局でも、体質を分析して、その体質に合わせて漢方薬を選ぶことはなく、勝手にアトピーに効く漢方薬があるかのように説明して処方しています。
0126漢方薬の選び方が、テキトーでいい加減なので、漢方薬を飲んでいても効果を感じていない人も多いのではないかと思います。
何がシャレにならないって、ネットなどでツムラやクラシエの解説を呼んでいると、その病気に直接、効く漢方薬があるかのように誤解させている感じがあるように思います。
ちなみに十味敗毒湯は、「乳腺炎」や「ものもらい」に使うこともあります。
今回は、十味敗毒湯や消風散以外にもある、アトピー性皮膚炎に効く漢方薬を紹介します。
また、なぜ、漢方では、アトピーの場合も体質に合わせて選ばないと効果がないのかも説明したいと思います。
皮膚科のアトピーに効く薬
漢方薬の説明の前に、そもそも病院でアトピーに効く薬はどんなものがあるのでしょうか?
大きくは、4種類になります。
1ステロイド剤。
2抗菌剤。
3抗ヒスタミン剤。
4免疫抑制剤。
実際の現場で使われているのは、ほぼ、『ステロイドの塗り薬』です。
ステロイド剤は、炎症を抑える薬です。
湿疹やかゆみは、体にとって毒物になるものから守るための「免疫の反応」によって発生しています。
その免疫反応を無理やり一定時間だけ、抑えるのが『ステロイド剤』ですね。
免疫自体は、人間の体を守るバリア機能なので、これをオフにしてしまうステロイド剤は、治療といっても微妙なのですね。
何が微妙かというと皮膚の免疫がなくなって、悪い菌が発生したりします。
そこで2の抗菌剤の登場です。
殺菌、抗菌することによって、ステロイドの副作用を抑えるためにステロイド剤と合わせたりもします。
一見、免疫を抑えることと、それによって菌による湿疹にならないように抗菌剤を使うとダブルで良いように思いますが、実際は、アクセルとブレーキを同時に踏むようなもので、「何やってるの?」みたいな治療になります。
3の抗ヒスタミン剤も免疫を抑えるものです。
花粉症によく使われますが、ステロイドに比べるとかなり弱く、ステロイドと合わせて、苦し紛れに合わせ技で出していることが多いです。
0154の免疫抑制剤は、ステロイドよりも、もっと強く免疫を抑えるものです。
免疫反応はアレルギー反応とも言いますね。
免疫反応はには何段階かの段階があります。
その元に近い深い部分を働けなくします。
バリアの主電源に近いところを働けなくする感じです。
まとめると皮膚科のアトピー性皮膚炎に効くとされている薬は、人間の体を守るバリア機能である免疫を働けなくするというものですね。
確かに免疫反応が、かゆみや湿疹を発生させていますが、かといって、免疫を停止させても困るわけです。
免疫のバリア機能自体は、人間の体の正常は反応ですから。
本来の治療は、免疫自体を抑えるのではなく、『なぜ、他の人と比べて免疫反応が強いのか』を解明して、それを調整する薬が必要なのです。
もちろん、病院にそんな薬はありません。
十味敗毒湯はアトピーの薬ではない
十味敗毒湯をネットで調べると、アトピーやにきびを治す薬のように説明されていますが、十味敗毒湯はアトピーやにきびに効く漢方薬ではありません。
確かにアトピーの方に使いますが、十味敗毒湯にステロイドのような、かゆみや湿疹を抑える成分はありません。
ネットや処方箋の説明の危険なところは、まるでその病気に効くかのように説明されていますが、漢方薬は、病院の薬のような成分や効果がないのです。
確かに十味敗毒湯は、アトピーの人に使いますが、熱性の湿疹で、皮膚表面に水の巡りの悪さも重なっているという体質に人に合うものなので、乾燥して出血しやすいアトピーの人や月経の不調があって、月経前や月経中に湿疹の様子が変わったりする人は、的はずれで合いません。
そういう人には、その体質の人に合う漢方薬があります。
漢方薬は、アトピーに効く漢方薬があるのではなく、どんな体質なのかが重要なのです。
漢方薬は病院の薬の副作用のないバージョンではないのです。
医者は、体質を分析し、診断することができませんので、体質を分析せずに、これらの漢方薬を処方しますが、実は、効果の根拠もなく『なんとなく効きそうだ」と勘違いして処方しています。
あえて言うなら、「マニュアルに書いてあった」が理由でしょうか。
漢方薬は体質に合わせますので、当然、十味敗毒湯や消風散意外にも色々とあります。
アトピーに効く漢方薬
アトピーに効く漢方薬は、40種類くらいあります。
漢方薬は以下のものとなります。
越婢加朮湯、治頭瘡一方、消風散、黄連解毒湯、黄連阿膠湯、十味敗毒湯、柴胡清肝湯、荊芥連翹湯、柴胡桂枝湯、小柴胡湯、逍遙散、加味逍遙散、大柴胡湯、柴胡桂枝乾姜湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、温清飲、当帰飲子、四物湯、白虎加人参湯、白虎加桂枝湯、調胃承気湯、防風通聖散、防已黄耆湯、桃核承気湯、桂枝茯苓丸、大黄牡丹皮湯、温経湯、当帰芍薬散、桂枝加苓朮湯、桂枝湯、桂枝加黄耆湯、五苓散、紫円、四君子湯、六君子湯、小建中湯、人参湯、補中益気湯、十全大補湯、四逆散など。
動画を一時停止して、参照してみてください。
これだけの種類があるので、乾燥タイプに効く漢方薬とか、ジュクジュクタイプに効く漢方薬とか、そんな単純なものではありません。
十味敗毒湯や消風散は、この中の一部ですね。
もちろん、十味敗毒湯や消風散が合う体質なら、それがアトピーを治す薬になりますが、体質と合っていなければ、飲んでも無意味です。
「漢方薬を飲んでいるけど、効果がよくわからない」とよく思われるのは、そもそもちゃんと選んでいないからです。
いわば、あてずっぽうで選んだ漢方薬を飲んでいるから効果がないのです。
『アトピーに効く漢方薬』があるのではなく、『アトピーで使うこともある漢方薬』があるのです。
ここのところを間違うと、全く自分に合っていない漢方薬を飲み続けることになります。
本来は、40種類の中から、たった1つの漢方薬に絞らないといけないし、どの漢方薬にもかゆみや湿疹を治す成分なんて含まれていません。
例えば、うつに効くとか勝手な説明がされている柴胡加竜骨牡蛎湯や胃腸薬だと勘違いされている六君子湯もアトピーの人に使うことがあります。
これだけの種類があるわけですから、当然「かゆい」、「湿疹がある」みたいな問診だけでは、どの漢方薬が良いのか、選びようがありません。
たったそれだけの問診では、この40種類は全部、あてはまることになります。
十味敗毒湯や消風散は、体質を無視して、勝手に代表的なものにしているだけで、本来は、この40種類の中から、自分の体質と合った漢方薬でなければ、飲むだけ無駄なのです。
なぜ体質から選ばないといけないのか
病院の薬は、かゆみを一定時間、抑えることを治療と呼んでいます。
漢方の場合は、『治療の根本の考え』が違います。
そもそも、湿疹やかゆみのアレルギー反応は、人体の正常な反応です。
問題は、アレルギー反応自体ではなく、「なぜ、それが人よりも強いのか?」
これが『真の原因』です。
その原因の後の強くなったアレルギー反応をいくらステロイドで弱めても、永遠に治らないわけです。
アレルギー反応が強くなっているのは、漢方では人それぞれだと考えます。
血の巡りの悪さや水の巡りの悪さが原因になっていたり、肝臓の不要な熱がオーバーヒートして、強くなっていたり、胃腸機能が弱っていることがアトピーの原因もあります。
要は、「湿疹」、「かゆみ」は一緒でも、原因は人それぞれなのです。
ですので、人それぞれの原因を治すために40種類の漢方薬があるのですね。
まとめ
アトピーに限らず、漢方薬は、体質に合わせて最適なものを選びます。
そして、その体質は全身の症状と状態を総合的に診断します。
免疫と関わっているのは、肝臓と腸なので、これらをチェックして、皮膚の湿疹状態には、血や水の巡りが、関わっているので、こららの機能のバランスがおかしくないかもチェックします。
女性の場合は、月経に関わる女性ホルモンとアトピーが関係していることが多く、この場合は、PMSや月経痛などの月経周期の状態も治す必要があります。
要は皮膚だけでなく、全身をチェックしていかないといけないのですね。
西洋医学の感覚しかないと不思議な感じかもしれないですが、『アトピーを治すためにはPMSが治らないといけない』、というのが漢方薬の治療の考え方です。
一般的には、十味敗毒湯が、なんとなく、アトピーに効くかのように解説されていたりしますが、漢方薬で、アトピーを治す場合は、皮膚の状態だけでなく、胃腸や月経の状態も精神も調べる必要があります。
「十味敗毒湯がアトピーに効く」など、漢方薬が特定の病気や症状に効果があるかのような説明は、はっきり言って、嘘なのですよ。
ただし、治療上は間違いですが、医薬品を販売する上での法律上では嘘ではないです。
漢方薬で根本治療する場合、アトピーに限らず、どんな病気だろうと体をどれだけ、詳しく分析できるかにかかっています。
漢方薬でアトピーを治療する場合、ストレスの状態と体全体の状態を調べて、それに見合う漢方薬を40種類の候補の漢方薬の中から、絞り込んで選ぶのです。
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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ ツムラ医療用漢方製剤マニュアル
◯ オースギ医療用漢方製剤マニュアル
◯ 漢方方意辞典:緑書房
◯ 漢方診療医典:南山堂
◯ 類聚方広義解説:創元社
◯ 勿誤薬室方函:創元社
◯ 漢方処方応用の実際:南山堂
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅠⅡⅢ:薬局新聞社刊
◯ 平成薬証論:メディカルユーコン