漢方の名医は古い書物から新しい知恵を得る
漢方治療は現在でもなお、2千年前の東洋医学の理論を守って治療します。
西洋医学は年々、新しい薬や治療方法が研究されて進歩していますが、漢方は未来のまだ見ぬ研究というよりは、より古い古典を深く深く研究することによって新たな治療方法を開発する感じです。
西洋医学とは逆ですね。
漢方の医学理論をよくわかっていない医者や研究者の中には、漢方を非科学的で古臭いと医学という人もいますが、その科学の結晶を集めた西洋医学が結局、その場しのぎの対症療法しかなく、慢性病に対しては、その場の症状をただしのいでいるだけというお粗末な状況です。
漢方の治療理論は2千年前から変わらない
漢方は2千年前からの古典の考えがずっと続いていて、今に至ります。
その時代、その時代で新たに書き加えられたりしていますが、『診断方法』や『使用する漢方薬自体』は2千年間、ほとんど変わっていません。
2千年前の古典で、ほぼ完成されていたのですね。
なぜ、2千年前の治療法が現在でも通用するかというと、人間の身体の構造や営みは変わっていないからです。
体を動かし働いて、自然のものを食べて、排泄して眠る。
2千年前の理論だからって古くはないのですね。
むしろ、漢方を勉強し始めたらわかるのですが、原典に近いものほど、『真理じゃないか』と思うような的を射たことに出会うことが多いです。
漢方は、今も治療方法が研究中
昔からある古い医学だからって西洋医学のように研究されないわけじゃありません。
むしろ、常に研究を積み重ねないといけない医学とも言えます。
漢方の場合は、その時々の人それぞれの体質に合わせますので、昔の本にいろいろな治った人の例がのっているからといって、その通りにしても治せません。
病院の薬で治らないのは、決まり切ったマニュアル処方で人それぞれの体質に合わせて考えないからです。
病院の薬の場合は、〇〇病という、ざっくりとした状態にわけて薬を処方します。
どの病気にどんな薬を処方するのか?
その薬は、どんな効果があるのか?
これらは医者が決めることではなく、製薬会社が薬をつくるさいに設定します。
だから、医者によって薬の使い方が変わることはありません。
マニュアルです。
ある意味、製薬会社の言う通りに使わないといけないのが病院の薬です。
臨機応変に人それぞれの状態に合わせる治療じゃないので、たまたま合う人もいれば、合わない人もいます。
漢方薬の効果は製薬会社が決定するわけじゃない
しかし、漢方薬は違います。
漢方薬は製薬会社が効果を設定するわけではなく、漢方薬のレシピは、2千年前からあるものです。
ツムラやクラシエなど、いろいろな漢方の製薬会社が漢方薬を販売していますが、漢方薬のレシピは、どこの会社も同じで2千年前から変わりありません。
クラシック音楽のように公共のレシピなのです。
その何百種類とある漢方薬の中から漢方医自身が患者さんの体質を考えて、それに合うと思われる漢方薬を自分で選び出すのです。
古典にはいろいろな治った例はあっても「この通りにしなさい」なんて病院の薬のような製薬会社が設定するようなマニュアルはありません。
漢方の古典には治療の考え方の一端が書いてあるだけです。
あくまで参考例であって指示ではありません。
自分で考え、自分で選び出します。
僕たちは、それらを参考にするだけで、マニュアル的に漢方薬を選ぼうとするのは、漢方的にはマヌケな先生になってしまいます。
漢方は2千年の歴史がありますので、いろいろな古典や書物がありますが、それらは全て、自分的な治療方法を考えるために参考にするだけです。
最近は漢方の医学理論を理解せずに漢方薬を処方する先生が増えたので『この病気にはこの漢方薬』というようなマニュアル本が売られるようになりましたが、そんなのは実践の治療書ではなく、漢方の勉強のお試しみたいなものですね。
漢方の名医は古い書物をたくさん読んで、それをマニュアルとして使うのではなく、自分の治療スタイルをつくるための肥やしにするのです。
漢方では化学的研究は無意味ですが、古典を更に深く研究していくことは、未来の治療の役に立ちます。
まさに温故知新ですね。
僕も全国とはいいませんが、関西の漢方の名医くらいにはなりたいものです。
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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ 漢方概論:創元社
◯ 漢方方意ノート:創元社
◯ 漢方臨床ノート(論考編):創元社
◯ 金匱要略ハンドブック:医道の日本社
◯ 傷寒論ハンドブック:医道の日本社
◯ 素問:たにぐち書店
◯ 漢方治療の方証吟味:創元社
◯ 中医診断学ノート:東洋学術出版社
◯ 図説東洋医学:学研
◯ 中国医学の秘密:講談社
◯ 陰陽五行説:薬業時報社
◯ まんが漢方入門:医道の日本社