漢方薬相談ブログ

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メニエール病(めまい)の漢方治療の方法

  1. 病名漢方(マニュアル)のメニエール病(めまい)の治療
  2. 人のよって様々なメニエールの体質タイプ
  3. メニエールの患者さんが生活で気をつけた方がよい点

病院でのメニエール病の治療の要点をまとめると...

1 問診で回転性めまいと、片耳の難聴と耳鳴りというメニエール特有の症状がみられるかを問診します。

そのほか、聴覚試験を行い、他の病気からの原因でメニエールのような症状が起こっていないかどうかを調べるためにガドリニウム造影剤を用いたMRI検査をします。
(実際にはMRI検査は飛ばしているところが多いです)

2 内耳の水の代謝が悪くなると考え、利水剤(イソソルビド、イソバイド、セファドール)を処方します。

いずれの薬も「モルモット、イヌ、ウサギ、ネコ」の利尿や眼圧を下げたり、血の巡りを促したりした臨床結果はありますが、実際に人に使った場合はメニエール発作時に一時的に効く人もいれば、全く効かず、薬を飲んでいようが発作が起こる人もいます。

また、利尿剤は、都合よく内耳の水の巡りだけを良くするわけではないので、利尿剤をよく飲んでいる人は、うちの相談に来た時に体全体の水の巡りがおかしくなっていることもよくあります。

例えば、便秘や軟便を繰り返すなどの便が安定していないなんてことがよくみられます。

どちらにしろ、そもそも病院の薬は、薬の成分で無理やり水の排出を促しますので、根本的に治ることはエビデンス上ではないです。

メニエールの治療は、これ以外の方法がないため、利水剤で治らなければ、後は『また聴覚検査をする → 利水剤を飲む』という同じことをエンドレスに漠然と続けるだけです。

ぶっちゃけ最初の1、2週間で治らなければ、結果の出ない同じことを続けるだけで症状は一向に治らなかったりします。

長いこと治療を続けていると医者の方からストレスとか、脳がどうとか言い出して心療内科をすすめられます。

病名漢方(マニュアル)のメニエール病(めまい)の治療

病名漢方とは、東洋医学的な体質を分析するための問診をとらず、患者さんの体質をみないでメニエールという病名に対して、あらかじめ決まっている漢方薬をマニュアル的に選んで処方する方法です。

病院が保険適応で処方している漢方薬はこのマニュアル方法で選びます。

詳しくはこちらをお読みください。「病院の漢方薬は効かないのか!?(病名漢方とは)」

漢方薬は本来、全身の体質を分析して選びますので、めまいと耳鳴りという『部分的な症状だけ』をみて選びません。

医者が使用している実際の漢方マニュアルに書いてあるメニエールに対応した漢方薬は次のものになります。

体質を考えない病名マニュアルで選ぶ代表的な漢方薬:
五苓散、半夏白朮天麻湯、苓桂朮甘湯

体質をみないので、この中から、「どこかの漢方の勉強会で小耳に挟んだ話」や「前にたまたま、治った人」の漢方薬を選ぶことが多いです。

平たく言えば、何も自分で考えないで『思い込みとあてずっぽう』で選びます。

それが病名や症状で選ぶ、マニュアル漢方です。

ちなみに五苓散や苓桂朮甘湯は構成されている生薬数が少なく、漢方では生薬数が少ないほど効果が強くなりますが、体質と合っていない場合は、効果の強さが裏目に出て余計に体がおかしくなるというリスクもあります。

詳しくはこちらの「漢方薬の副作用が病院の薬より怖い理由」を読んでみてください。

どちらにしろ、これらの漢方薬は僕ら専門家的には、手軽に試してもらえるような漢方薬とは思っていません。(飲んでもらう時はなんども体質分析を確認します)

人のよって様々なメニエールの体質タイプ

五苓散や苓桂朮甘湯をイソバイドのような利尿剤だと勘違いしている先生がいますが、多分、東洋医学的な効果がわからず、天然の利水剤だと勘違いしているのでしょう。

しかし、五苓散や苓桂朮甘湯は単なる利水剤ではありません。

そもそも、漢方ではメニエールなどを内耳の水の問題だけとは考えません。

メニエール体質で多いのは、水と熱の問題が結びついた『湿熱の証』とよばれるタイプと自律神経や精神状態、睡眠の状態が関わっている『気の上衝水毒証』タイプが多いです。

とはいえ、体質というのは人それぞれなので、漢方的にはいろいろな体質タイプがありますので、どんなタイプがあるのかを紹介します。

【上焦の水滞の証】 肩から上の体上部の上焦とよばれる部位の水の巡りの悪さが原因となって、めまい、耳鳴り、難聴を起こしているタイプです。

特に頭などの水の巡りが悪くなっているタイプです。

こちらの体質は、メニエールになった期間が短く、もっとも単純な体質タイプともいえますので、現実ではそんな単純な人は少ないです。

この体質の人に使うのが『五苓散』『苓桂朮甘湯』です。

【上焦の熱証】 顔に熱がこもってめまい、耳鳴り、難聴なども起こしているタイプです。

のぼせや頭痛なども起こしやすく、気温などが高くなると急にメニエール発作が起こったりします。

【脾胃の虚証、水毒の証】 食欲不振、胃もたれや吐き気、胃痛などがあって、なおかつめまい、耳鳴り、難聴を起こしているタイプです。

消化器系に問題がある場合は、五苓散や苓桂朮甘湯が合う可能性が低くなってきます。

【気証】漢方での気というのは、自律神経やストレス性の精神疾患、不眠なども含まれてきます。

寝つきが悪かったり、眠りが浅い、夜中に目が覚める、ストレスを受けると何かの症状が出てくるなどの症状があり、めまい、耳鳴り、難聴を起こしているタイプです。

現実のめまいの治療では五苓散や苓桂朮甘湯よりも、こちらの気証を調整する漢方薬を使うことのほうが多いです。

【瘀血の証】 血の巡りが悪いタイプです。月経リズムや経血との関わりが深く、月経不順や月経痛などがあり、めまい、耳鳴り、難聴を起こしているタイプです。

男性のめまいはこのタイプが多く、高血圧を併発していることも少なくありません。

【胸脇の熱証】 胸あたりの熱と気の巡りが悪くなり、その熱が顔にあがっていてめまい、耳鳴り、難聴を起こしているタイプです。

実は、メニエールでは、この体質タイプも多いです。

胸脇の熱証は、湿熱という状態になっていることが多く、水と熱の問題が合わさって起こっていることが多いです。

大まかなタイプにはわけましたが、実際には、【胸脇の熱証】+【瘀血の証】+【上焦の水滞の証】とか、【脾胃の虚証+水毒の証】+【上焦の水滞の証】+【寒証】(体の冷えが強い)など、何か1つのタイプだけの体質ということはありません。

合わせる漢方薬もどれか、一つの体質タイプを治すものではなく、複数の【証】を同時に治せるものを選びます。

メニエールの患者さんが生活で気をつけた方がよい点

漢方では薬だけの効果で治療しようとは考えません。

なぜなら、漢方の場合は、体を良い方向に調整することが、目的なので、当然、普段の生活も良い方向になるようにしていくことも治療になります。

なるべく『メニエールにならない法則に則った生活』をするわけです。

生活で気をつけることは、その人の体質タイプによって変わってきます。

「気証の人」であれば、睡眠やストレスのことに気をつけなければいけないし、「胸脇熱の証と水滞の証が合わさった人」は、室温など温度や水分の摂り方を工夫する必要があります。

西洋医学は『メニエールだったらこうしなさい』と生活で気をつける点も皆と一律同じことをアドバイスしようとしますが、メニエールといっても体質がみんな違いますので、その体質(証)に合わせて、生活改善を行います。

(逆にメニエールだからといって体質が同じにならない)

うちでは、普段の生活習慣のこともお聞きして、その人の生活で実行できそうなことをアドバイスしています。

一般的には苓桂朮甘湯や五苓散がメニエールに効く漢方薬みたいになっていますが、全くの誤解であくまでその方の体質自体を分析して、その体質に合わせて漢方薬を選ぶことによって初めてメニエールの漢方治療が成り立ちます。

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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ ツムラ医療用漢方製剤マニュアル
◯ オースギ医療用漢方製剤マニュアル
◯ 漢方方意辞典:緑書房
◯ 漢方診療医典:南山堂
◯ 類聚方広義解説:創元社
◯ 勿誤薬室方函:創元社
◯ 漢方処方応用の実際:南山堂
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅠⅡⅢ:薬局新聞社刊
◯ 平成薬証論:メディカルユーコン

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

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