漢方薬相談ブログ

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血虚の証とは貧血ではありません(漢方の病気の原因)

漢方というと、『症状をあてはめるだけで漢方薬を選べる』と勘違いしている人がいますが、漢方にも西洋医学のような検査や診断方法があります。

機械を使うわけではありませんが、患者さんから、症状をお聞きし、患者さんの自覚症状を聞くだけでは、主観の入った誤った情報も混ざる可能性もあるため、全身の状態を自分からも積極的に判断していきます。

全身の症状をお聞きし、全身の状態がわかれば、漢方的な診断方法で、『現在、どんな体質なのか』を分析していきます。

漢方には、いろいろな診断方法がありますが、まずは最初に『気血水弁証』といって体の「気」と「血」と「水」の巡りや過不足を調べていきます。

血虚の証

漢方では、体内の病気にさせている要素である「証」を診断します。

大体、何かの病気がある場合、漢方的には『証』という病的な状態が、3つ、4つあります。

例えば、あなたが、アトピー性皮膚炎で悩んでいる場合、血の巡りが悪い『瘀血の証』、皮膚の表面に不用な水が滞っている『表の水滞の証』、首から上だけに余分な熱が滞る『上焦の熱証』という3つの要素が原因でアトピーの湿疹を起こしている。

というものが、あなたの現在の体質ということになります。

『血虚の証』というのは、血が不足しているという状態です。

ここで、早とちりしちゃう人がいます。

『血が少ないから貧血のことでしょ?』

これは間違い!

完全な間違いでもないですが、いわゆる西洋医学的な貧血のことが血虚の証ではありません。

西洋医学では貧血とは、ある部分の血を取り出した時に多いか? 少ないか? みているだけです。

確かに、腕の部分を流れている血をみて、全身でも少ないという推測は成り立ちますが、あくまで目安ですね。

漢方では、量的に多いか? 少ないか? だけを見るわけではありません。

漢方では、活動したり、考えたりすることも『血』というエネルギーを使うと考えられています。

つまり、血は消耗していくガソリンのように考えるのです。

漢方の血とは、基本的には、体の中で作り出される血と使われてなくなる血のバランスをみています。

血が使われてなくなっていけば、体の中の血が不足するわけです。

いろいろな血虚の原因

漢方での血の不足とは、貧血のことだけではありません。

もちろん、単純に貧血のような血の不足も含まれます。

病院では、貧血は「鉄が不足していること」が大半の原因をしめますが、漢方ではそれだけではありません。

【漢方での血虚の原因(タイプ)と治療】
血の原料が不足していて血がつくれない。西洋医学での貧血はこちらの証に近いと思います。

生薬から血の原料になる鉄や栄養素的なものを漢方生薬から補います。

◉ 腎の臓の機能が弱っていて、血がたくさんつくれない。

漢方的な治療は、腎の臓の気を補う補腎と働きで、腎の臓を元気にして、血を作られるようにします。

◉ 月経過多で、失う方の血が多い。

漢方的な治療は、止血を行い、月経過多の原因に対応します。

月経過多の原因は、瘀血の証や気滞の証など、いろいろ考えられるので、止血以外の治療は、その人の体質をみて考える必要があります。

◉ 消化器が弱っていて、血がたくさんつくれない。

漢方的な治療は、胃や腸などの機能低下を助けます。

胃腸機能の低下も水の巡りの悪さや気が不足している気虚など、いろいろな原因がありますので、体質に応じた治療を考えます。

◉ 全体的な体力や気力が弱っていて、血が作り出すエネルギー不足に陥っている。

全体の体力を取り戻さないと消化器なども動き出しません。

また、全体的な体力、気力不足は、体を温める力も弱くなりますので、気を補い、温める治療を考えます、

◉ ストレス、悩みなどの思考することが多すぎて血を使いすぎている。

気の巡りや気を発散させることによって、堂々巡りのような思考から抜け出せるように促す治療を考えます。

以上が、主に漢方的に考えられる原因です。

血虚の治療

漢方は、体質全体を調整しますので、血虚だけを治療するということはありません。

体質は大体、3、4個の証が原因で病気になっていると考えますので、血虚の証だけを治すという方法はとりません。

体のいろいろな問題のうちの1つが血虚ということです。

【血虚の証の症状】
血虚の証の人にある症状です。

出血、貧血、顔色が白い、嘔吐、目の下の中の淵が白い、唇が白い、頭痛、めまい、立ちくらみ、手足冷え、皮膚が乾燥する、下痢、胃もたれ、食欲不振、のぼせ、手足のほてり、手足の冷え、オシッコが多い、オシッコが少ない、頻尿、微熱感、不安感、不眠、下腹部痛、眼精不良、月経困難、月経不順、月経過多、月経過少、PMS、手足の脱力感、やる気が出ない、寒がり、動悸、不整脈、むくみ、肩こり、物忘れ、腰の脱力、膝の脱力

どれかの症状があてはまったら、血虚でもなく、また全部の症状があてはまるから血虚でもありません。

血虚でもタイプによって症状が、変わってきますので、どれかの症状に当てはまるかどうかではなく、これらの症状から、どのタイプの血虚かを考えていきます。

貧血=血虚ではないのですね。

★当店では、しっかり全身の状態をみて、あなただけの体質を判断して、最適な漢方薬をお選びします

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→「お問い合わせ」はこちら まで。

【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ 図説東洋医学(基礎編):学研
◯ 図説東洋医学(湯液編Ⅰ):学研
◯ 図説東洋医学(湯液編Ⅱ):学研
◯ 漢方概論:創元社
◯ 漢方臨床ノート(論考編):創元社
◯ やさしい中医学入門:東洋学術出版社
◯ 中医診断学ノート:東洋学術出版社
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ まんが漢方入門:医道の日本社

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

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