牛黄って本当の効果はそんなんじゃないですから!
この間、うちの患者さんと『世の中の漢方薬局の先生って、実は漢方のことを知らない先生が多いよ』という話をしていました。
そんな話の折に「じゃあ、先生、前から聞きたいことがあったんだけど、漢方薬局でよく牛黄とか、牛黄清心丸って売ってるじゃないですか。あれって本当に良いものなんですか?」という質問がありました。
良いものかどうかを言われると、良いものではありますが、ただ1つ大きな誤解?勘違い?があって、世間では、牛黄は誰にでも合うかのように売っていますが、当然、誰にでも合うものでもないのです。
そもそも漢方薬や生薬は、すべて良いもので悪いものなのですよ。
牛黄は体質を選ぶ
どっちなんだと怒られそうですが、要するに、その漢方薬や生薬(牛黄など)が、あなたの体に合っていれば良いものだし、あなたの体に合っていなければ悪いものです。
牛黄も当然、どんな体質の人が飲むべきかが決まっているものです。
ここで注意いただきたいのは、牛黄や牛黄清心丸をよくすすめている漢方薬局は、体質を分析できない先生が多いことです。
牛黄は悪いものではないですが、誰が飲んでもいいものではありません。
日本の漢方薬局では、『きつ〜い疲れに牛黄』とか『風邪に牛黄』とか、むちゃくちゃな使い方をしています。
そんな無茶苦茶ぶりのエピソードがあるのですが、僕の師匠(上海の外科医)が日本に来て、初めて漢方薬局に行った時にびっくりしたのが、牛黄の商品が山のように積まれていたことです。
『えっなんで牛黄を山積みにして売ってんの?』
なぜ、驚いたかというと中国の先生なので、『牛黄なんて滅多に使うものじゃない』ということを知っていたからです。
しかも、なぜか、そこらの栄養ドリンクみたいな宣伝文句。
これには驚いたそうです。
牛黄は生薬ですが、では漢方的には実はどんな効果なのでしょう。
牛黄の効能効果
漢薬の臨床応用(神戸中医学研究会)という書籍の「牛黄の臨床応用」のところをみると、感染性の敗血症期で『高熱、意識障害、煩躁、痙攣発作』がある時に、牛黄の鎮静や強心作用を利用するとされています。
その他にも子供の『高熱時の痙攣』
脳卒中で『意識障害で妄言を吐いている時』などにも使うようです。
脳卒中に使うので、『狭心症などの心臓病』にも使われます。
確かにこんな時は、『きつい、きつい疲れ』かもしれませんが、少なくとも、「最近、疲れ気味なんだけど、何かいいものない?」なんて相談できるような状態じゃないですよね。
上海の先生が、漢方薬局に山積みされていた牛黄清心丸をみて驚いたのは、「日本の漢方薬局にはそんなに意識障害とか熱性痙攣の人が多く訪れるのか!」というところです。
当然、そんわけなく、その後で実は、日本の漢方薬局は『漢方のことを知らない』ということを知り、後で2重に驚いたという牛黄です。
牛黄の効能効果はわかりやすくまとめると、強心、清熱、定驚(錯乱状態にあるような精神を抑える)と記されています。
牛黄の飲みどころの難しさ
ちなみにこの牛黄、確かに即効性があります。
疲れも吹き飛び、気を安定させる力もありますので、僕もお店にある牛黄ドリンクを飲むこともあります。
ただし、ただしですよ。
この効果は、強心からきているわけですよ。
ちなみにニンニクも即効性があるのは、強心作用があるからです。
強心というのは、心臓を強めてくれるので、これって、ターボみたいなものなのです。
ですので、例えば、痙攣してないけれど、牛黄を飲みたい場合、「体力があるけれど、うまく血や気を回すことができない」なんて時は、てきめんにいいわけです。
でも、回す体力がないのに、強心でグルグル血や気を回したら、どうなると思います?
そう、空回りです。
余計に疲れが増すわけです。
それと、気を奮い立たせ、体力を補うものは熱を生じさせます。
この熱がやっかいで、僕なんかは、熱証体質(不要な熱がこもりやすい)なので、牛黄の飲みどころを間違えると、元気になるどころか、『のぼせと動悸』に苦しめられて、飲む前よりも疲れることになります。
また、夕方に飲むと眠れなくなることもあります。
漢方薬の良い効果、悪い効果は表裏なのですね。
漢方薬局が風邪にすすめているのは、全く意味不明です。
清熱があるから、解熱できるとでも思っているのでしょうか。
風邪の時の解熱の仕方は、また全然、メカニズムが違うのでけれど。
漢方薬や生薬を飲む場合は体質をみてもらおう!
体質をみることができない漢方薬局ほど、牛黄、鹿茸と呼ばれる高貴薬が大好きです。
逆に体質も分析せずに牛黄関連の商品を勧めてきたなら、『あーこの先生、漢方のこと知らないんだな』とみても問題ないです。
疲れ、風邪なら、他にもいろいろな漢方薬が考えられるので、牛黄は言わば、漢方界のサプリメントみたいなものですね。
もちろん、僕も飲むことはありますが、効果が強い分、飲みどころが難しい生薬です。
いくら漢方界のサプリといっても体質をみてもらって、合うか合わないかをみてもらいましょう。
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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ 平成薬証論:メディカルユーコン