月経過多や妊娠時で出血が止まらない場合はどうすればいい?
子宮筋腫や子宮内膜症などを持っていると、月経の時に結構な出血があったりしますよね。
当然、病院は止血剤(トラネキサム酸など)を出しますが、それでも止まらない時があります。
『止血剤』って、いかにもすぐに血と止めてくれそうな名前なのに血が止まらない。
漢方で血を止めないといけない場面になった場合、止血するだけが血を止める方法ではありません。
他にも3つの止血する方法があります。
もちろん、大怪我してブシュー、ダラダラなんて出血の場合は、漢方薬よりも病院の薬よりも外科的な処置をしたほうがいいですが、月経過多や妊娠時の出血であれば漢方薬でも対応できます。
ただ、妊娠時の出血はケースバイケースですね。
外科的な問題のことがありますので。
病院の止血剤
病院では基本、止血といえば、当然、血を止める作用の薬を使います。
血を止めなくちゃいけないのだから、当たり前ですよね。
トラネキサム酸などが代表的です。
いろいろな薬がありますが、要は血をゼリーのように粘らせたり、血の詰まりを起こさせる物質を作りやすくしたり、血の巡りを悪くしたりして血を止めます。
薬はいろいろあっても、血を止める方法としては、どれもこんな感じです。
そして、漢方でも代表的な作用は、イメージとしては血を足しながら、血にゼリーみたいなものを加えていって止血します。
血の巡りがよかったら、血がブシューブシューですから、治療の大きな方向性としては『血の巡りを悪くする作用』といってもいいかもしれません。
漢方の止血薬のいろいろなバリエーション
血を粘らせて止血する。
病院の薬も同じような作用で止血しますので、この辺は皆さんのイメージ通りですよね。
でも、漢方ではそれ以外にも『止血する方法』があります。
代表的な働きは4つです。
1 血をゼリーのように粘らせて止める。
2 血の巡りを良くして止める。
3 熱を取り去って止める。
4 緊張をゆるめて止める。
「1」は病院の薬でもおなじみの作用ですね。
でも、「2」の血の巡りを良くしたら、なんだかダメっぽいですよね。
血のいきおいがよくなって、よけいに出血しそうです。
でも、逆に血を止めないで血を巡らせないと血が止まらないという、頭がこんがらがりそうな効果で治すことができる場合もあります。
ここが漢方薬のすごいところですね。
「3」は漢方では熱が出血を余計に促すと考えられますので、不要な熱を落とすことによって、出血を減らします。
「4」は通常の出血ではなく、月経過多などの関連で使うことがあります。
筋腫などの人で、月経が始まると筋肉の緊張が強いと絞るように出血しますので、気や筋肉を緩めて、出血を減らしていきます。
血を巡らせて止血する。
西洋医学は意外と思考が単純なので、血の巡りが良くサラサラなのは、血糖が少ないとか、脂が少ないとか、血管自体が細くないとか、どれも部分的な血の巡りのことを説明していて『一体、どこの血管や血の巡りのことを言ってるのか?』がわからないような説明をします。
でも、漢方では血の巡りの考え方が西洋医学とは違います。
漢方で人の体を見る場合、とにかく全身からみたバランスが重要。
『全体的に整っているのか?』
漢方では血の巡りが悪いことを『瘀血』と言いますが、瘀血は、糖や脂が混じって、血がドロドロなんて単純な話ではなく、体のどこに血が偏って流れているかをみていきます。
昔、うちの患者さんで妊娠8ヶ月後くらいに出血した人がいます。
もうすぐ、出産なのに大ピンチ!です。
当然、普通であれば、血を止めにいきますね。
でも、この方、以前から他の病気の治療もしていて、いわゆる瘀血の状態がひどかったのです。
特に月経時は、大きなレバー状の血の塊がゴロゴロと出るくらいの。
「もともとの体質や月経状態を知っていた」というのと、「今回の出血の状態」をお聞きして、今回の止血はいわゆる「止める」ではなく、『巡らせて止血する』のが良いと判断して、血の巡りを良くする漢方薬を飲んでもらいました。
そうしたら、1、2日、出血が増え、その後、見事にピッ!と血が止まりました。
血の巡りの悪さが出血を招く
漢方の血の巡りの悪さは、全身の血の巡りのバランスだという話をしました。
でも、これだと意味がわかんないですよね。
大丈夫、ちゃんと説明しますよ。
実は、血は全量が全身をくまなく巡っているわけではありません。
病院の説明だと、常に血が全身をグルグル巡っているイメージを持ちますけれど、常にMAXで血が巡っていた場合、走リ始めたら、脳血管が切れてお陀仏です。
なので、人間の体は必要な時に、必要なところに、必要な量だけ流れるように、とっても繊細なバランス調整がされているのです。
体ってすごい!
ものを食べたら、胃の血の巡りが多めになり、走り始めたら足の血の巡りが多めになります。
そうやって、臨機応変に血の巡りを調整しているのです。
なので、漢方的に血の巡りが良いというのは、『血の巡りの調整がうまい!』という状態ですね。
病院が説明しているのは、あくまで、血がネバネバと血の質のことを言ってるだけ。
重要なのは全身の巡りのバランス
この血の調整がうまくいかないと、そこに血が滞ります。
集まりすぎて、遅くなっちゃうのですね。
そうすると、血の塊なんかもできやすくなるのです。
子宮筋腫や内膜症の人は、こういった状態になっていることが多いです。
ただでさえ、滞りやすいのに、病院の止血剤でさらにネバネバにしたらどうなります?
余計にたまりやすいところには、更にたまっちゃうのです。
高速道路の渋滞と同じ。
どんどん、溜まっていっちゃうと、巡りが悪くなって、さらにたまります。
そして限度を超えると出血するのです。
なぜ血を巡らせても出血がひどくならないのか?
だったら、逆に巡らせれば、いいのです。
そこで溜まっている塊がなくなれば、スイスイと血が巡って、必要なところに流れていこうとするのですね。
結果的に血だまりがなくなり、出血がなくなるのです。
ただし、気をつけないといけないのは、血を巡らせる漢方薬は『堕胎』にも使います。
漢方薬はとにかく体質に合わせて選ばないといけないので、普通に止血しないといけない場合もあるし、血を巡らせて止血しないといけない場合もありますが、巡らせる場合は、かなーーーり慎重に詳細に具体的に体質を分析しないとエライ目に合います。
マニュアルだけ見て漢方薬を選んでいる病院とか、「止血」って症状だけで漢方薬を選んでいるような漢方薬局などでは、こんな治療はしないほうがいいですね。
カケごとみたいな治療になってしまいます。
まとめ
止血は、単に血を止めればいいというものではありません。
体質や状況によって変わります。
病院の止血剤を飲んでも止まらなかったり、余計にひどくなる人は、おそらく、あなた自身の原因があるので、それに合わせて漢方薬を選ぶのも止血の方法の1つです。
漢方では、出血をヒドくしそうな血の巡りを良くするものでも、止血できるのですね。
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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ 図説東洋医学(基礎編):学研
◯ 図説東洋医学(湯液編Ⅰ):学研
◯ 図説東洋医学(湯液編Ⅱ):学研
◯ 漢方概論:創元社
◯ 漢方臨床ノート(論考編):創元社
◯ やさしい中医学入門:東洋学術出版社
◯ 中医診断学ノート:東洋学術出版社
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ まんが漢方入門:医道の日本社