漢方薬相談ブログ

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AIに選んでもらった漢方薬では治らない理由

AIという言葉が、いろいろなところで使われています。

漢方の業界でも『AIが選んでくれる漢方薬』みたいな宣伝のものがあったりしました。

結論から言うと、AIに漢方薬を選んでもらっても治りません。

また、そんな方法で選んでもらった漢方薬にはとんでもないリスクも待っています。

今回は、

『なぜAIが選んだ漢方薬では治らないのか?』

をお話ししたいと思います。

そもそもAIって?

先にお断りしておくと、僕はハイテク大好き!です。

うちも遠隔治療として、ネットで漢方相談してます。(AIでなく僕が選んでいますが)

Webサイトも自分で作っていますし簡単なプログラムなら組めます。

何が言いたいかというと、アナログ丸出しの漢方家がAIのことをディスりたいというわけではないということです。

AI、漢方治療の両方向から、かーなり冷静に問題点を解説します。

AIという言葉がもてはやされていますが、専門家から言わせると、そもそも本当の意味でのAIというものがないそうです。

今あるのは、答えの決まっているものを高速で選んでいるだけらしいです。

現時点では、自分で考えたり答えのないものを推測したりは実質はできないそうです。

これが、AIがまともな漢方薬を選べない理由になります。

漢方薬を選ぶシステムをつくってみたが…

実は昔、漢方薬を選ぶシステムを作ったことがあります。

僕が漢方の修行をさせてもらっていた頃の話です。

たくさんの漢方薬をおぼえなくちゃいけなかったのですが、いちいち漢方の本から探し回るのが面倒だったので、プログラムにしちゃえと思って作りました。

15年以上前の話なのでAIというものではないですが、アルゴリズム(漢方薬を選ぶルール)は『病名やいくつかの症状を入力したら、ある漢方薬が答えとして導きだされる』という設定にしました。

当時はまだ漢方を勉強したてのヒヨッコです。

「漢方のヒヨコあるある」ですが、漢方のこと自体をよくわかっていない時期だったので『西洋医学の病名や症状を当てはめていけば、漢方薬が選べる』と本気で思っていたのですね。

これ、いわゆるなんちゃって漢方の代表的な考え方で、『病名漢方』とか、『症状漢方』『マニュアル漢方』と専門家からバカにされる方法です。

結果は酷かったです。

なぜなら、入力する症状が増えれば増えるほど、漢方薬も増える。

皮肉なことにその人の状態を詳しく知ろうと思えば思うほど、たくさんの種類の漢方薬が答えとして出されます。

ある漢方薬の対応する症状の設定を少なくしたり、特徴的なものにすれば、導き出される漢方薬も絞れるのですが、そうすると「治す漢方薬を導き出すためにやっているのか」、「何かの漢方薬という答えを出すために無理やりなルールを設定しているのか」わからなくなりました。

要するにある漢方薬を答えとして出すために病名や症状の設定ルールを制限すれば、答えが絞られます。

でも、それは本末転倒!

勉強してくほどわかるAIで出せない理由

アルファ碁とか、将棋のAIなどは、今までなかったような戦術を生み出したりします。

これが、新たな発想をしているように思えるのですが、実は既存の答えのあるものを組みあわせているだけ。

これが、漢方薬AIの致命的な問題になります。

漢方は最初の勉強したての素人時代は、『漢方薬に書いてある病名や症状を当てはめていき、それで選んだ漢方薬をしばらく飲み続ければ治る!』という勘違いから始まります。

これがさっきの『なんちゃって漢方』ですね。

でも、そこを越えて勉強すると、「あれ、そう言えば体質って何?」という疑問にブチあたります。

なぜなら、西洋医学の病名も症状も体質ではないからです。

そう、漢方薬によく書いてある病名や症状というのは、体質を分析するためのヒントでしかないのです。

例えば、葛根湯は、風邪に対応しているかのように誤解されていますが、僕が読んでいる本の葛根湯の対応する病名欄には、風邪だけでなく、病名だけで言うなら、肺炎、喘息、中耳炎、副鼻腔炎、高血圧、肩こり、破傷風、ひきつけ、慢性関節リウマチ、神経痛、蕁麻疹、花粉症、乳腺炎、うち身、アトピー、大腸炎、下痢症などがあり、僕はフレグモーネス(蜂窩織炎)という病気も治したことがあります。

この病気のどれかに効くというわけではなく、『これらの病気でなおかつ葛根湯体質だったら効くよ』という意味なのですね。

例えば風邪でも葛根湯が効く体質の人もいれば、麻黄湯が効く人、桂枝湯が効く人、桂麻各半湯が効く人とその人の体質によってさまざまなのです。

要は、漢方では西洋医学の病名は関係なく、今のあなたの体質(状態)が何なのか?を分析して漢方薬を選ばないといけないのです。

症状なんて現実は、どの病気も似たり寄ったり

さっきのことに加えて、症状なんて、病気が違っても似たり寄ったりなんですよ。

例えば、アトピーと蕁麻疹なんて症状にしてしまえば、どっちも湿疹。

逆に冷えでは「手足が冷える」「手は冷えるけれど足が冷える」「年中冷える」「冬だけ冷える」などなど、冷え1つとっても、ものすごいタイプが分かれます。

しかも漢方薬って、このタイプ別に選ばないといけないようになっているのです。

こんな問診は、専門家のフィルター(経験や感性)にかけないとできません。

単に症状を打ち込んでも、それはウソの情報になるので、ウソの漢方薬が処方されることになるのです。

答えのない漢方治療

もっと大きな問題が2つあります。

1つは漢方薬は、『飲んだ後にちゃんと合っている漢方薬かどうかがわかる』のです。

本来の漢方薬の選び方は、全身の症状から、体質分析結果である『証』を診断して、その『証』に合わせた漢方薬を選びます。

でもこの時の体質分析結果や選んだ漢方薬は、すべて推測!

治る漢方薬だったのかどうかは、飲んだ後の変化で初めて確認されます。

『飲んだ後の結果から合っているかどうかを確認する』のが漢方治療の原則なので、これに『漢方薬は西洋医学の病名や症状とは関係ない』という事実が合わさります。

つまり、過去に〇〇の病気が治った人のデータがあっても、体質分析の結果が違えば、同じ病名の違う人には通用しません。

例えば、Aさん、Bさんのアトピーの人がいて、Aさんが良くなった漢方薬でBさんがひどくなることがあるなんて漢方ではザラ。

かといって、体質分析が同じであっても(これもほぼ有り得ないが)、今度は病気が一致しません。

データの整合性がとれないのです。

漢方のAI化にあたっての致命的な問題

漢方薬というには、病院の薬のように症状を抑えることが目的ではなく、体に変化を与えて調整します。

変化を与えるので、時には治っているのに、まるで漢方薬で余計にひどくなったように感じることもあります。

例えば、月経不順を治すはずが、漢方薬を飲んで更に月経期間が早くなったりすることがあります。

これには2方向の答えがあって、「血の巡りが良くなっている途中で、だんだんと良くなってくる」というパターンと「単に体質と漢方薬が合ってない」という悪いパターン。

正反対のパターンがありますが、これは、その人の体質や状況によるので、一定の答えを出すことができないのです。

それこそ、人間の思考でもって新たに対策を考え出す必要があります。

漢方のAI化にあたっての最大の問題

AIはディープラーニングといって、最初に考えや理論、ルールを決めて学習させていきます。

この時にその設定がまずいとAIもまずい判断をします。

わかりやすく言えば、ルール設定をした人がアホだとアホAIに育つということです。

将来はわかりませんが、今のところ、本来の漢方薬は、病名や症状だけでは選べないし、体質は、あまりに人それぞれ、治り方も副作用も人それぞれすぎます。

だから現時点ではAI化できない。

つまり、そんなこともわからない先生が、AIを作れば、ちっとも治らない『アホ漢方AI』ができるということですね。

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ブログの著者 国際中医師 松村直哉

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