漢方薬相談ブログ

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病名と症状から漢方薬を選んでも意味がない理由を専門的に解説します!

  1. 漢方薬の効果と病院の薬の効果の違い
  2. 漢方薬の効果って?
  3. 漢方薬の選び方

普段の内容は、医学的知識のない人でも理解できるようにできるだけ簡単に話していますが、「専門的なことを簡単に話す」というのは厳密に言うと、『わかった風になれるウソの話』になってしまうので、今回はあまり簡単にしたり、端折ったりせずに書いています。

もちろん、一般の方も漢方薬を知る上で読んでいただけたら嬉しいです。

世間には漢方専門医や漢方薬局が存在していますが、99%と言ってもいいくらい、西洋医学的な捉え方の症状、病名に合わせて漢方薬を選ぶ『なんちゃって漢方』をやっている先生しかいません。

一般の人にとってわかりやすい漢方の本やインターネットの情報はデタラメに近いので、本来の漢方を学ぶためには、読んでもチンプンカンな漢方の専門書を選ぶべきですが、皮肉な話で、それはそれで理解ができないという、なんとも言えないジレンマに陥ります。

僕もかつて、漢方薬の選び方や体質に関して、あちこちフラフラと理解できずに悩んでいた時期もありましたが、今は、しっかりとした明確な根拠を持って治療ができるようになりました。

今回は、漢方薬の効果と 病院の薬の効果との違いや、本来の漢方薬はどうやって選んでいくべきなのかを話していきたいと思います。

漢方薬の効果と病院の薬の効果の違い

医者も薬剤師も一般の人も、漢方薬のことを知ろうとする時に、とても大きな勘違いをしています。

それは、漢方薬の効果と西洋医学の薬の効果が同じだと考えてしまうこと。

前回のアカデミック回でも漢方を学ぶにあたって最も重要な第一歩は、『西洋医学と漢方の東洋医学は、全くの別のジャンルであるという意識から始めないといけない』『考え方が根本から間違っていると、どれだけ勉強しても意味がない』とお話ししました。

医者が患者さんに伝える漢方薬の説明や、ネットの漢方薬の説明を見ていますと、西洋医学と漢方(東洋医学)が混同されているのが、よくわかります。

例をあげると、「風邪に葛根湯が効く」とか「胃もたれに六君子湯が効く」とか「足が攣ったのに対して芍薬甘草湯が効く」みたいなものです。

病院の薬は、「風邪に効く」なんて曖昧なものではなく、細かく見ていくと「熱を下げる」とか「喉の炎症を抑える」とか「咳を止める」という効果があります。

そして、この効果は、薬に含まれている”体内で症状を抑えるように働く成分”が実際に行います。

これが西洋医学的な治療の根拠ですね。

次に漢方薬の場合、「葛根湯が風邪を治すといったって、体のどこに、どのように、何が効くのでしょうか?」

これ、説明のしようがありません。

例えば、ツムラさんの葛根湯の説明書の部分には、「🔳効能又は効果」とあって、そこには「自然発汗がなく、頭痛、発熱、悪寒、肩こり、等を伴う比較的体力のある次の諸症:感冒、鼻風邪~」と書かれています。

効能効果と言っても、単に『症状と風邪という病名が羅列されているだけ』

これを詳しくみていくと、おかしなことだらけです。

そもそも風邪に対して選ぶはずなのに「咳」や「喉の痛み」が書かれていません。

この時点で、このマニュアルからいけば、咳や喉の痛みのある人は、葛根湯が、[当てはまらない]ことになります。

もし、ここに書いてある症状が当てはまるかどうかで葛根湯を選ぶなら、大概の人の風邪には合わない漢方薬になります。

実は、この葛根湯にある『効能効果』は、ここに書いてある症状や病名を自分の症状に当てはめるために書いてあるものではないのです。

ここに書かれているのは、漢方薬を医薬品という区分で販売する上で販売の法律上、設定したもので、実は、本来の治療や効能効果とは、何の関係もないものなのです。

本来漢方薬は、体質に合わせるものであって、症状や病名は体質のことではありません

そして、葛根湯に解熱したり、鼻水を止めたりする”成分”は含まれていないし、特定もされていません。

ですので、病院の薬と同じように考えると「どこにどのように何が効くか?」と言うことが何1つわからないのです。

もし病院で漢方薬をもらっているなら、具体的な効果を聞いてみてください。

医者には、患者さんが納得いくような具体的な説明が一切できないと思います。

漢方薬の効果って?

では漢方薬の効果とは何なのか?

ここで西洋医学や病院の薬と切り離して考える必要があります。

まず、「何かの成分が症状を抑える、治す」という考えを捨てる必要があります。

病院の薬のほとんどは、対症療法を目的としていますが、そもそも漢方薬の使用目的は症状を一時的に抑えることではありませんし、 もっと深く話すと症状の捉え方自体が西洋医学と東洋医学では全く違ってきます。

本来、症状とは、体内の不調を知らせるための情報でしかありません。

これが一定の条件でまとまったものが病気や病名ですね。

西洋医学では、この症状を一時的に抑えることを「治療」と呼んでいます。

薬剤師や医師もそのことをわかったうえで薬を処方しているのですが、薬が症状を抑えるのは一時的で、一定時間が経つと、薬の成分は体の外に排出されますので、症状は再発します。

一方、漢方では症状を本来の見方で捉えます。

すなわち『症状は、体内の不調を知らせるものである』ということ。

例えば、骨が折れたところが痛くなるのは、骨周辺がダメージを受けたということを知らせるためで、頭が痛くなるのは、血管が詰まったことを知らせるため、オシッコが出なくなるのは、膀胱に菌の繁殖を知らせるため…だったりします。

漢方に限らず、人体の『症状』とは、体内の問題を知らせてくれている情報であり、本来の漢方では、その情報を使って、体内の原因、体質を突き止めます。

漢方薬は、症状を抑えるように働くわけではないので、効能効果の説明に書いてある「症状」を当てはめていって漢方薬を選んでも、本来のルールを無視しているわけですから、本当に無意味なことで、そんな選び方をしても効くわけがありません。

漢方薬の選び方

病院や漢方薬局、ネットでは、「十味敗毒湯がニキビに効く」とか、「柴胡加竜骨牡蠣湯が睡眠を安定させる」とか説明されていたりします。

でもこれらは完全にデタラメで、そこには何の「作用機序」も「根拠」も存在していません。

先ほど、お話ししたように、あくまで『漢方薬を医薬品として販売する上での設定』だけであって、実際の治療とは本当に何の関係もありません。

では、漢方薬はどうやって選べば良いのでしょうか?

漢方薬は、治したい症状や病名ではなく、その症状の原因を調べて、その原因に対して最適なものを選びます。

ちなみに病名は「西洋医学のルールで決めた一定の体の状態を示したもの」ですので、東洋医学である漢方薬を病名から選ぶことは不可能です。

症状の原因とは何かというと、例えば頭痛なら、「気の巡りが滞ったから頭痛が発生した」とか、「血の巡りが滞ったから頭痛が発生した」とか、「水の巡りが滞ったから頭痛が発生した」というものです。

他にも熱の巡りや冷え、臓器自体のダメージなどなど、頭痛になる原因は色々と考えられます。

それでは、あなたの頭痛が、「血の巡りが滞ったことが原因である」とか、「水の巡りが滞ったことが原因である」というのは、どうやって分析していくのでしょうか?

ここで大事になってくるのが、問診です。

体の他の部分の症状や頭痛が発生した環境などを組み合わせて、『総合的』に分析していくのです。

例えば、真夏の暑い日にエアコンをかけず、体は動かさずじっとしていて、その結果、頭痛に見舞われたという人がいたとして、冷えが原因で頭痛になったと思いますか?

可能性としては、熱の巡りが悪くなり、頭に熱がこもって頭痛が発生した、と考えられます。

漢方の考えでは、原因を取り除けば、結果的に症状もなくなるので、この場合、清熱と言って、冷やす漢方薬を合わせてあげれば、頭痛は治ります。

実際は、こんな単純な1つの原因ではなく、暑い部屋だったけど、足は冷えているとか、女性の場合、熱だけでなく月経の関係で血の巡りの悪さも要素として少し関わってくるとか、かなり複雑になってくるので、頭痛の原因を調べるのにも『全身の症状の確認』必須になります。

ちなみに頭痛に対してマニュアル的に選ばれる漢方薬の代表である「五苓散」は、水の巡りのバランスが悪くなった結果、頭痛を起こしている時に使うもので、熱が原因の頭痛の場合は、五苓散ではまったく治りません。

頭痛と『水の巡りが悪い』という原因がつながってそうだ、と分析したなら五苓散が良いかもしれないし、さっきのように暑さや熱が原因の頭痛なら『熱を冷ます』別の漢方薬の方が良いかもしれません。

頭痛や咳、たった1つの症状であっても、その原因は全身を分析してみないとわかりません。なので最初は、「あらゆる原因がある」と仮定して探っていきます。

この時に考えられる漢方薬の候補は、40種類ほどあり、分析前は、この40種類の中のどれがあなたの頭痛に合うのかは、まだわかりません。

やってはいけないのは、とにかくこの段階で、『頭痛だから五苓散じゃないか?』と全身を調べもしないで決めつけないことです。

40種類の漢方薬全部に可能性があると、先入観なくして考えるのがベストです。

そして「全身の症状」、「環境」、「普段の生活リズム」などなど、あらゆる情報を分析していくと、徐々に40種類の中の漢方薬から、最も最適な可能性のある1種類が見えてくるので、1種類になるまで、分析を繰り返していくのです。

漢方薬は「合わせる」とか「選ぶ」というよりも、最初の多数の候補の漢方薬の中から原因と関係ないものを削っていって、『最終1種類にまで絞り込む』というのが正しい方法です。

これを『鑑別』と言います。

漢方薬は、特定の効果や成分があるわけではありません。

症状を起こしている原因に対して、その原因を解消していく効果があるので、効果を元に考えるのではなく、『症状の原因』診断すれば、自ずと選ぶべき漢方薬は決まってくるのですね。

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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ 漢方概論:創元社
◯ 漢方方意ノート:創元社
◯ 漢方臨床ノート(論考編):創元社
◯ 金匱要略ハンドブック:医道の日本社
◯ 傷寒論ハンドブック:医道の日本社
◯ 素問:たにぐち書店
◯ 漢方治療の方証吟味:創元社
◯ 中医診断学ノート:東洋学術出版社
◯ 図説東洋医学:学研
◯ 中国医学の秘密:講談社
◯ 陰陽五行説:薬業時報社
◯ まんが漢方入門:医道の日本社

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

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