同じ種類の漢方薬を飲み続ける危険性!
漢方薬は飲み続けるもの…
3ヶ月から6ヶ月でジワジワと効いてくるなんて言われていたり、ひどい医者になると5年間、同じ種類の漢方薬を出し続けていたり、さらに「漢方薬で治すには10年かかる」といったウソを平気でついていたりします。
(この話は大げさではなく、本当にあった話です)
ここまで、ひどい話じゃなくても、それでも一般的には『漢方薬は飲み続けないといけない』という感覚がありますよね。
これって、半分正解、半分間違っています。
というよりも、根本的に『漢方薬を続ける、続けない』という考え方自体が間違っている場合もあります。
今回は、ずっと同じ種類の漢方薬を飲まれている方は危険がありますよというお話です。
こちらの記事を読んでいただくと、なぜ同じ種類の漢方薬を飲み続けてはいけない場合があるのか、その理由がわかり、それを回避するにはどうすれば良いのか、ということを解説しています。
漢方薬の効果の法則
『漢方薬は効いてくるまでに3ヶ月から6ヶ月はかかる』ということに関して、僕が持っている漢方の専門書を徹底的に調べてみたのですが、そんな記述はどこにも書いてありませんでした。
それどころか、昭和の漢方の巨匠達の手記からは2週間から4週間で効かなければ、即、違う種類の漢方薬に切り替えていることがわかりました。
なので、効くのに3ヶ月から6ヶ月はかかる、という話は全くのデタラメなのです。
かといって、『漢方薬はすぐに効き始める』というわけでもありません。
漢方薬はその効果を発揮するのに「時間がかかる」とか「かからない」のではなく、
1 『漢方薬は体質と合っていなければ、10年飲もうが効かない』
2 『漢方薬の効く時間は、その人の体質と漢方薬の種類の組み合わせによる』
というふたつの法則があるのです。
要するに漢方薬が効くかどうかは、人それぞれで体質と漢方薬がぴったりと合っていないといつまで経っても効かないのです。
『めまいに苓桂朮甘湯が効くって書いてあったから、効くまで飲み続ける』
これ、残念ながらめまいという症状は体質のことではないので、こんなデタラメな根拠で何年飲み続けようが永遠に効きやしません。
なので、東洋医学的な体質を判断せずに、医者や一般の人がやるような、ネットを見て病名や症状をマニュアル的に当てはめた方法で漢方薬を選んでも、自分の体質に合わせていないので、どれくらいで漢方薬が効くかどうかは、ただの『運まかせ』
本当に効いてくるのかすら、わからないのです。
体質と合っているかどうかがわからない漢方薬を飲み続ける意味はありません。
漢方薬の効果は病院の薬とは全く違う
漢方薬は効くのに時間がかかるというのは、おそらく、効果を感じられなくても同じ種類の漢方薬を飲ませ続けることしかできないパターンが多く、それについて言い訳をするために出てきた、『なんちゃって漢方医が編み出したデタラメな説明』ではないかと考えられます。
そうすれば、同じ漢方薬を飲み続けてもらって、全く体の変化がなくても、『漢方薬は、もうちょっと飲まないとわかりませんよ』なんて、最もらしい言い訳をしながら治療を延長できます。
実際のところ、漢方薬は体内の機能に変化を与えながら、少しずつ体のバランスを整えていくものです。
例えば、慢性的な頭痛に対して、『肩から上、特に頭に余分な熱がこもって、その影響で頭痛が発生している』と体質判断し、それに対して清熱薬という「肩から上の熱を体の下の方に降ろし巡らせることによって、頭痛を取り去る効果」のある漢方薬を選んだとします。
そして1ヶ月飲んでもらった結果、なーんにも変化がない!
病院の薬を処方する場合は、痛みを起こす体内の物質を止める効果が薬の臨床試験で証明されているので、「効くはずですよ」と言えます。
ところが、漢方薬の場合は、痛みの物質を止めるなんて効果も無いし、そんな成分も含まれていません。
漢方薬にあるのは「余分な熱を巡らせる」とか「滞った水を巡らせる」みたいな効果で、頭痛1つとっても、『熱の滞りが原因』『水の滞りが原因』『胃の不調が原因』『冷えが原因』など、40パターンくらいあります。
漢方薬の効果は、『その人の体質に応じた変化』を与えるものです。
病院の薬のように、痛みを抑えにかかるのではなく、
冷えていることで痛みが発生しているのなら、温める漢方薬で治す、といった感じです。
しかし、漢方薬を飲む前に診断する体質はあくまでも推測ですので、「実はその人の頭痛の原因が熱と気の滞りが本当の原因」なのに、「冷えて頭痛が起こっている」と診断し、温める漢方薬を渡してしまった場合、「温める漢方薬はその人の頭痛の原因を増幅させる」ことになるので余計に頭痛をひどくすることにつながってしまいます。
これが『漢方薬の副作用』です。
この副作用が厄介なのは、「ある漢方薬だったら、こんな副作用がある」という決まったマニュアルがない、というところです。
その人の体質と合わせた漢方薬によって、あらゆる副作用の発現が考えられるのですが、これも最初に体質を分析していなければ、漢方薬が原因で起きる副作用なのかどうかも判断できないのです。
ですので、医者や一般の人がネットなどで調べながら選んだ漢方薬だと、「治りもせず、副作用が起こっている。でもその副作用が飲んでいる漢方薬のせいだとは気づかずに飲み続ける」という状態が起こりやすくなります。
漢方薬の治療は、効果の検証ももちろん大事なのですが、同じくらい、体質と合っておらず副作用を起こしていないかどうかのチェックもすごく重要なのですね。
で、さっきの話に戻りますが、1ヶ月、飲んでもらって、なーんにも効いてこない場合、次の4つのことが考えられます。
1『そもそも頭痛は熱が原因ではないかもしれない』
2『効果が出るのにもうちょっと時間がかかるかも』
3『熱が原因というのは合っているけれど、選んだ漢方薬の冷やす力が足りない』
4『選んだ漢方薬自体が間違っている』
頭痛の原因が熱ではないと考えると、他にいろいろな原因が考えられますので、体質の分析のし直しが必要です。
『もうちょっと時間がかかるかも』、この考えは危険です。
今の「全然、漢方薬が効いてない!」という状態からは、とりあえず逃げられるわけですが、何の解決にもならないので、この原因かどうかは慎重に考える必要があります。
冷やす力が足りないというのも、どれくらいの強さに調整すればいいのかを再度検討する必要があります。
選んだ漢方薬が間違っていたとしたら、熱が原因だったとしても「よく似た、違う働き方をする漢方薬」というのは何種類もありますので、選び直すのも大変です。
これらは、マニュアルだけで処方している先生では、手の打ちようがありません。
最初から頭痛→五苓散といったように、マニュアルを見て漢方薬を選んでいるので、他の要因を考えようがないからです。
同じ漢方薬を飲み続ける場合の注意点
本来は、1ヶ月(処方する先生が決めた区切り)などの区切りごとに2つのことを考えなければいけません。
1 同じ漢方薬を続けるかどうか?
2 違う漢方薬に切り替える方がよいかどうか?
「1」に関しては、処方する先生自身が気をつけないと、心が弱いとすぐに『同じ漢方薬を続けましょう!』というところに逃げてしまいます。
同じ漢方薬を続けることは、絶対にダメなことではありません。
しかし、そこには『根拠』とそれを支える『理論』が必要です。
『漢方薬は自然のものだから…』なんて言い訳にも根拠にもなりません。
同じ漢方薬を続ける場合の重要な条件
同じ漢方薬を続けてもらう場合は、『治療が進んでいるのか?』を確認することが必須です。
この確認というのが難儀で、漢方は常に全身から治療の進み具合を検討しますので、その効果で患者さんが気になっている症状から治り始める、とは限りません。
頭痛は変わらなかったけれど、「目の充血はどうか?」「耳鳴りはどうか?」「便の状態はどうか?」など、全身の状態を探って、「今の頭痛は熱の影響ではないのかどうか」を調べます。
例えば、頭痛については特に変わらなかったけれど、目の充血がなくなり、便秘が徐々に解消されてきた…となると、『これは熱症状が和らいでいるかもしれない』と判断し、同じ漢方薬を続けてもらいます。
逆に全身の状態をいろいろと調べても、『熱の影響が無さそう』だと判断した場合は、体質を再検討して2の違う種類の漢方薬への切り替えを検討します。
こういった確認をしないで続けてもらうのは、無責任としか言いようがありません。
ちなみに、うちでは、全身の状態を確認して、症状の変化がなかった場合は長くても2ヶ月程度しか、同じ漢方薬を続けることはないですね。
その2ヶ月というのも、よほど、体力のないタイプの人限定です。
だいたいは、1ヶ月で漢方薬の変更を念頭において再度、体質判断をします。
逆に→
1 漢方薬を飲んで1、2ヶ月経っても症状や全身の状態に変化がないのに、明確な根拠もなく同じもので続けさせようとしている。
2 気になっている症状以外の全身の状態から漢方薬の効果を分析しようとしない。
この2つにあてはまる先生の漢方薬は飲まない方がいいと思います。
なぜならば、漢方薬は都合の良い魔法の薬ではなく、体に変化を与えて調整していくものなので体質に合っていない漢方薬を飲んでしまうと、体に余計な変化を与えてしまい、それが副作用となり、真面目に続けるほど体はおかしくなっていくからです。
同じ漢方薬を2ヶ月以上、納得いく根拠もなしに飲み続けている人は、今すぐに自分の体質を再チェックしてもらいましょう!
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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ 漢方概論:創元社
◯ 漢方方意ノート:創元社
◯ 漢方臨床ノート(論考編):創元社
◯ 金匱要略ハンドブック:医道の日本社
◯ 傷寒論ハンドブック:医道の日本社
◯ 素問:たにぐち書店
◯ 漢方治療の方証吟味:創元社
◯ 中医診断学ノート:東洋学術出版社
◯ 図説東洋医学:学研
◯ 中国医学の秘密:講談社
◯ 陰陽五行説:薬業時報社
◯ まんが漢方入門:医道の日本社