漢方薬相談ブログ

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半夏厚朴湯の本来の効果と副作用

  1. 半夏厚朴湯の効果(病院)
  2. 半夏厚朴湯の効果とは半夏厚朴湯の体質のこと
  3. 半夏厚朴湯の効果(日本漢方)
  4. 加味逍遙散の効果(中医学)
  5. 漢方薬は合わなければ効果がないし副作用にもなる

病院ではツムラの16番としてよく出されている『半夏厚朴湯』

多分、みなさん「半夏厚朴湯はうつ病を治してくれる漢方薬」と思われているのではないでしょうか。

実は、本来の漢方薬の効果から考えると半夏厚朴湯はうつ病に効果のある漢方薬ではないのですね。

漢方薬は西洋医学とは全く違うルールの薬となります。

残念ながら、漢方薬に『西洋医学的な、わかりやすい効果というのは存在しません』

そもそも漢方と西洋医学は何の関係もなく『治療や薬の効果の考え方自体』が根本から違うのです。

病院の薬であれば、効果の証拠となる薬効薬理が必要となります。

ネットなどの説明やツムラなどの保険適応の漢方薬メーカーが提供している医者の使うマニュアルには、半夏厚朴湯の具体的な薬効薬理は存在しません。

薬効薬理というのは、例えば、うつ病だったら、『脳や神経のどの部分』『薬のどんな成分』『どのように効いたのか』ということを証明したものになります。

でも、半夏厚朴湯に病院の薬のような薬効薬理はありませんので、漢方では『半夏厚朴湯の条件が合う体質の人』『半夏厚朴湯の効果』になります。

半夏厚朴湯の効果(病院)

半夏厚朴湯の効果を知るために、まずは医者が漢方薬を選ぶ際に使っているツムラのマニュアルにある半夏厚朴湯から引用したいと思います。

ツムラの半夏厚朴湯の効能又は効果

ツムラ16番半夏厚朴湯の添付文書より引用:
気分がふさいで、喉、食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う次の諸症:不安神経症、神経性胃炎、つわり、せき、しわがれ声、神経性食道炎、不眠症

一見、こういった病気や症状に効くかのように思ってしまいますが、よく読むと、これは効能効果ではなく、「こういった人に使う場合がある」ということが書かれているだけです。

なぜなら、効能効果なのであれば、精神に、何がどうやって効くのかが説明されていないといけないからです。

でも、『症状と病名がズラズラと並んでいるだけ』です。

例えば、デパスなら、同じ方式で「効能または効果」の欄に、うつ病における不安・緊張・睡眠障害と書かれています。

デパスの場合でも、この時点では、厳密には効能効果ではなく、どんな病気や症状に使うかが書かれているだけなのですね。

でもデパスの場合は、薬効薬理という欄があって、そこに「どんな成分が」「神経のどの部分に」「どのように効くのか」の根拠が示されています。

つまり、本当の効能効果は、「薬効薬理」をみないとわからないわけです。

西洋薬は、この薬効薬理が証明されているので、「なぜ効果があるのか?」という根拠と理由がはっきりとしています。

ところが、漢方薬の場合は、薬効薬理が書かれていません。

なぜか?それは、『漢方薬には有効成分も特定の効果も存在しないから』です。

つまり、薬効薬理がありませんので、効能効果に不安神経症と書かれていますが、それをどんな効果で治すのか、その証拠も根拠もないわけです。

医者の使っているマニュアルなのに、なぜ、こんな、書き方がされているのか?

それは、『漢方薬を西洋医学の医薬品の販売上のルールに無理やり当てはめているから』です。

医者が出す漢方薬はこんな感じで、治療とは無関係の販売上のルールを鵜呑みにして、何の根拠も考えずに、うつや不安神経症に効くと勘違いしているのですね。

これはネットの説明や通販で売っている漢方薬の説明も同様になります。

それでは、半夏厚朴湯の本来の効果を解説します。

半夏厚朴湯の効果とは半夏厚朴湯の体質のこと

実は半夏厚朴湯の効果の考え方は、漢方の治療派閥によって異なってきます。

大きくは『日本漢方』『中医学』によって効果の考え方が変わってきます。

まずは日本漢方が考える半夏厚朴湯の効果から。

日本漢方では方証相対といって、どんな効果があるのか?を考えるのではなく「これが半夏厚朴湯が合う条件ですよ」というものがあって、それに「あなたの全身の状態」が合うかどうか?が、効くかどうかに関わってきます。

『半夏厚朴湯の合う体全体の条件=半夏厚朴湯の効果』なんですね。

なので、半夏厚朴湯の効果を知りたい場合、『自分の体質が半夏厚朴湯の条件に合うかどうか』を考えれば、それは、すなわち効果であるということ。

日本漢方が考える半夏厚朴湯が合う体質の条件は…

【病位】太陰病、虚証。
【脈侯】沈弱・沈数など。
【舌侯】湿潤して無苔。
【腹侯】腹力やや軟で、心下痞し、微満して無力、多くは上腹部に振水音を認める。
【証】上焦の気滞と気滞による精神症状。脾胃の水毒。水毒。寒証。

呪文のような難しいことが書かれていますが、これが「あなたの体が、この状態であれば、半夏厚朴湯が合います」という半夏厚朴湯で治せる、体質の条件となってきます。

だから半夏厚朴湯を処方された際にネットなどで、効果自体を確認することは意味がありません

自分自身の体が、半夏厚朴湯に合う条件なのか?を全部チェックする必要があります。

半夏厚朴湯の効果(日本漢方)

ざっくりと説明すると半夏厚朴湯の効果は、胃腸にたまった不要な水をかき出す効果と胸から上に滞っている気と水を巡らせる効果になります。

効果としてわかりやすいのは【証】という部分ですので、この証を詳しく解説します。

『証』は全身の症状や体の状態から判断していきます。

証とは、その人の病的な体の状態や症状の原因とも言えるもので、体がその状態であれば、半夏厚朴湯が効果を発揮するということになります。

【上焦の気滞と気滞による精神症状】

胸から上に気が滞り、それが精神的にも影響していることを示します。

気の発散を行い、肺、喉あたりの水の巡りを良くするので、喉の詰まった感じがとれます。

ただし、焦りや、気や筋肉の緊張による喉の詰まりは原因が違うので効きません。

【脾胃の水毒】胃腸に滞った不要な水をかき出してくれます。

これによって胃もたれやゲップなどが解消されます。

【水毒】体全体の水の巡りが悪い状態を水の巡りを促して整えてくれます。

頻尿や逆にオシッコの少ない状態やめまいなどに対応します。

【寒証】体が冷えて、自分で熱を作り出せない状態を温めてくれます。

ここが結構、重要なポイントで、うつや精神不安の人でも『体が弱く手足が冷えているような弱い傾向の体質』という条件に当てはまらないと合わないということです。

ここで話している症状は単なる例です。

漢方の場合は、例に出した症状に効果があるのではなく、その症状の原因が水の巡りなのか?血の巡りなのか?という、原因を考えていかないといけません。

例えば、頭痛の原因が水の滞りなら、水の巡りに関わる半夏厚朴湯が合う可能性が出てきますが、その頭痛の原因が血の巡りだと半夏厚朴湯は、全く合いません。

症状の原因は、発生したきっかけや環境、他の症状と組み合わせて分析します。

重要なのは、半夏厚朴湯が合うかどうかは、4つの証、全てがピッタリと当てはまらないといけません。

どれかだけが当てはまるというのでは、半夏厚朴湯が合う体質とはいえません。

例えば、うつ病や精神不安の人でも血虚といって、血の少なさから、発生している場合があり、この場合は、血虚の証というのが原因なので、病名や症状が一緒でも原因が違うので半夏厚朴湯は合いません。

『当てはまる証の違い』で選ぶ漢方薬の種類が変わるのですね。

更に証だけでなく、さっきの虚実、病位などの他の条件も全部、あてはまって、初めて半夏厚朴湯が合う体質となります。

条件が多いですが、だからこそ一人一人の体質に合わせた治療ができるのですね、

加味逍遙散の効果(中医学)

中医学は日本漢方よりも簡単な感じになっています。

【効果】理気降逆・化痰散結
【脈侯】滑
【舌侯】紅、舌苔は白
【半夏厚朴湯が合う条件】咳、白色の痰が出て、喉の刺激感、しゃがれ声、胸が張って苦しいなどの症状があり、あるいは、呼吸困難や喘息を伴う。軽度のむくみを生じ、喉の詰まりを感じる。

中医学は伝統的な漢方に西洋医学の考え方を混ぜて、学校で教えやすいように作り直された教育用の漢方なので、日本漢方よりは、西洋医学的でわかりやすいです。

効果にある理気降逆は体の上の方で滞った気を巡らせて、体の下方に降ろします。

化痰散結は、水の滞りから生まれた痰を散らし、なくします。

一般的に、半夏厚朴湯が、うつ病や不安神経症に効くかのような説明が多いのは、気を巡らせる効果があるからです。

また、喉辺りの不要な水の滞りによって発生する詰まり感は、半夏厚朴湯の中の半夏の効果となります。

ここで注意しないといけないのは、半夏厚朴湯しか知らなければ、うつ病や精神病に効く漢方薬に見えますが、気を巡らせ、半夏が含まれる漢方薬は、他にもいくらでもあります。

他の漢方薬は、条件が少しずつ変わってきますので、同じうつ病や不安神経症で喉の詰まりがあっても、胃もたれがなかったり、のぼせがあったりなどすると、全く他の漢方薬を探す必要が出てきます。

漢方薬は合わなければ効果がないし副作用にもなる

漢方薬は、効能効果に書いてある病名や症状を治すわけではありません。

漢方薬は効果がどうのこうのではなく、『自分に合っている確率が高いかどうか?』が重要となってきます。

そして、漢方薬は症状を抑えるものではないので、『漢方薬が合っているかどうか?』を知るためには体質(証)を判断していないと、合っているかどうかさえ確認できないので、東洋医学的な体質を分析、判断しないで、効果があるかどうかは確認できません。

また、あなたの体質と漢方薬が合ってない場合は、副作用となり、病気はよりひどくなる可能性もあります。

医者のように体質が分析できない運任せのような低レベルな選び方だと、漢方薬の副作用を避けるために病院の漢方薬を飲まないことが1つの治療になるかもしれません。

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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ ツムラ医療用漢方製剤マニュアル
◯ オースギ医療用漢方製剤マニュアル
◯ 漢方方意辞典:緑書房
◯ 漢方診療医典:南山堂
◯ 類聚方広義解説:創元社
◯ 勿誤薬室方函:創元社
◯ 漢方処方応用の実際:南山堂
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅠⅡⅢ:薬局新聞社刊
◯ 平成薬証論:メディカルユーコン

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

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