桂枝茯苓丸の本来の効果と副作用
病院ではツムラの25番として、よく出されている桂枝茯苓丸。
ネットなどを調べてみると「桂枝茯苓丸がニキビに効く」とか「子宮筋腫に効く」かのように説明されていたりしますが、そもそも、漢方薬は、ニキビとか子宮筋腫など、何か特定の病名や症状に効くようにできていません。
そこで桂枝茯苓丸は実際は「どんな病気や症状に効果があるのか?」を解説したいと思います。
『病院の薬』は、薬を作る際にネズミやウサギを使って、その薬には「どんな効果があって」「その効果にはどんな有効成分が関係していて」ということが、研究によってわかっていますので、薬の効果や成分の説明ができますが、漢方薬には、西洋医学的な効果や成分が存在しません。
そもそも漢方と西洋医学とは何の関係もなく『治療や薬の効果の考え方自体』が根本から違うのです。
ツムラなどの保険適応の漢方薬メーカーが提供している医者の使うマニュアルには、桂枝茯苓丸の効果が次のように書かれています。
『ホルモンに対する作用(ラット)』『子宮に対する作用(マウス)』『更年期障害に対する作用(ラット)』
何これ?という感じですね。
何が怖いって、漢方薬は「2千年間、人間に漢方薬を飲んでもらって、その経験データを蓄積して体質を分析し、それに合わせて選ぶ」という薬なのに、ネズミの実験には意味がないのです。
そして、これが病院の薬の効果の根拠だった場合、桂枝茯苓丸の『どんな成分』が『体のどこに』、『どのように効いたのか』が、ハッキリとわからなければ、薬として成り立ちません。
これだけでは『桂枝茯苓丸でニキビが治りました!』という、何もかもざっくりしている、怪しいネットページがおすすめする、サプリの口コミと変わらないわけです。
では『桂枝茯苓丸には効果がないのか?』というと、そうではありません。
漢方で桂枝茯苓丸の効果というのは『桂枝茯苓丸の条件が合う体質の人』ということになります。
何を言っているのかわからないと思うので、今から詳しく説明します。
桂枝茯苓丸の効果とは桂枝茯苓丸的な体質のこと
実は桂枝茯苓丸の効果の考え方は、漢方の治療派閥によって異なってきます。
大きくは『日本漢方』と『中医学』によって効果の考え方が変わってきます。
同じ桂枝茯苓丸なのに、派閥によって効果も合わせるタイプも変わってくるのです。
まずは『日本漢方』が考える桂枝茯苓丸の効果から。
日本漢方では方証相対といって、『桂枝茯苓丸的な体質の人』は『桂枝茯苓丸で治る』ということになります。
つまり、本来の漢方では、「どんな効果があるのか?」を考えるのではなく「桂枝茯苓丸が合いますよ」と言われている「条件」に「あなたの全身の状態」が「合うかどうか?」が、重要になります。
『桂枝茯苓丸の合う体全体の条件=桂枝茯苓丸の効果』なんですね。
なので、桂枝茯苓丸の効果を知りたい場合、『自分の体質が桂枝茯苓丸の条件に合うかどうか』を考えれば、効果を知ることができます。
日本漢方が考える桂枝茯苓丸が合う体質の条件とは…
【病位】少陰病、実証から虚実中間証。
【脈侯】脈力中等度、沈遅・沈渋で緊張がある。
【舌侯】紫紅色・乾燥した白苔。
【腹侯】腹力中等度、下腹部に充実した抵抗と圧痛。
【証】瘀血の証、気の上衝による精神症状。
これが、桂枝茯苓丸が合う人の体の状態を示しています。
意味不明ですよね。
でも、これが「あなたの体が、この状態であれば、桂枝茯苓丸が合います」という桂枝茯苓丸で治せる、体質の条件となります。
そして『桂枝茯苓丸の合う体の条件=桂枝茯苓丸の効果』となるわけですね。
もう少し、効果だけをわかりやすくすると、『上熱下寒という足は冷えて、上半身がのぼせている人で、血の巡りの悪い人の巡りを改善する効果』になります。
子宮筋腫やニキビに直接、効く成分や効果なんてものはなく、体がこんな状態であれば、子宮筋腫やニキビの人に使う。と言う意味で、体が違う状態であれば、同じ子宮筋腫やニキビでも、他の漢方薬を探す必要があります。
だから桂枝茯苓丸を処方された際にネットなどで、効果自体を確認したり、どんな病気や症状に効くかを調べても意味がありません。
自分自身の体が上記のような桂枝茯苓丸に合う条件なのか?を全部チェックする必要があります。
またネットなどでは、桂枝茯苓丸の条件の症状が書かれていて、それを治してくれると勘違いされていますが、書いてある症状は、症状から原因を分類していく際の情報にしかすぎず、「その症状を治す」という意味ではありません。
【脈侯】と【舌侯】に関しては、かなり東洋医学の知識が必要となるので、今回は割愛します。
ここでは効果として重要な【病位】と【証】を紹介します。
桂枝茯苓丸の効果(日本漢方)
病位とは、病気が発生してからどれくらいの時間が経過しているかの時間軸を示しています。
極端に言えば、風邪で使う漢方薬は、何ヶ月も前から患ってる病気では使わないので、病気の時間軸は非常に重要になってきます。
桂枝茯苓丸の病位は、少陽病となっていて、これは5つある時間軸の2番目になるので、急性から、すこし時間が経った慢性の病気に使う。という条件になっています。
何ヶ月か前からその病気や症状を患っている人ですね。
次に、実証から虚実中間証。
これは、体が弱くも強くもない中間的な人のことを示しています。
次に『証』は、全身の症状や体の状態から判断していきます。
証とは、その人の病的な体の状態や症状の原因とも言えるもので、体がその状態であれば、桂枝茯苓丸が効果を発揮する。ということになります。
証というのは病的な状態のことですが、それを治すのが、その漢方薬と言えるので、証=効果ともいえます。
それでは解説します。
【瘀血の証】
血の巡りが悪い状態です。
血が不要な熱を持って、血の巡りが悪くなっている状態です。
漢方薬の場合は、血の巡り自体がサラサラかどうかではなく、血の巡りが全身を満遍なく巡っているかをみていきます。
漢方では、血の巡りの悪い状態は、大きく2つあります。
桂枝茯苓丸は、血が不要な熱を帯びて、血の巡りが悪くなっている状態で、反対の当帰芍薬散は、冷えて血の巡りが悪くなっている状態です。
どちらも症状としては、足が冷えていたりするので、「足の冷え」だけでは、冷えによる足の冷えか、熱による足の冷えかはわかりません。
足の冷え、のぼせ、頭痛、不正出血などが現れます。
効果は、血の不要な熱をとって、血を巡らせることです。
【気の上衝による精神症状】
気が肩から上に滞っていて、頭痛やのぼせ、めまいや耳鳴りを引き起こします。
精神症状として、イライラ感や焦燥感を引き起こします。
ここで話している症状は単なる例です。
「足が冷える」という、1つだけの症状では、それが何の原因なのかはわからないので、全身の症状を組み合わせて分析していきます。
そもそも、症状だけを当てはめて考えても、全部が当てはまらないでしょうし、反対にどれかの症状があてはまったらいいのであれば、漢方薬は、どれもこんな感じで症状が書いてあるので、どの漢方薬を選んでも一緒のことになります。
例えば、頭痛とのぼせに足の冷えがあるが、手は冷えないなどの状態であれば、当帰芍薬散ではなく、桂枝茯苓丸が合うのではないかと考えます。
「足が冷える=桂枝茯苓丸」というわけではありません。
人によっては、この他の症状も考えられますので、症状を当てはめても無意味です。
この東洋医学的な考え方は、病院では全く考慮されていません。
注意してほしいのは、症状ではなく、分析した結果の2つの「証」が、全てがピッタリと当てはまらないといけないということ。
例えば、桂枝茯苓丸の2つの証に胃もたれやむくみなどが加わってくると、瘀血+気の上衝による精神症状+胃もたれや水の巡りも良くしてくれる、他の漢方薬を探す必要が出てきます。
『当てはまる証の違い』で選ぶ漢方薬の種類が変わるのですね。
更に証だけでなく、さっきの虚実、病位などの他の条件も、全部、あてはまって、初めて桂枝茯苓丸が合う体質となります。
「どんな病気に使うのか」、「どんな効果なのか」を考えるのは無意味です。
一例を出すと、桂枝茯苓丸は、ブドウ膜炎や乳腺症に使うこともあります。
桂枝茯苓丸がどんな病気にでも使えるのではなく、「桂枝茯苓丸が合う体質であれば、そういった病気にも使うことがある」というものなので、あくまで基本は、『桂枝茯苓丸が合う体質かどうか』になってきます。
ややこしく細かいですが、だからこそ、一人一人の体質に合わせた治療ができるのですね。
桂枝茯苓丸に限らず、漢方薬の副作用は、特定の症状が発生するわけではなく、自分の体質と桂枝茯苓丸の効果が合っていなければ発生します。
例えば、手も足も体も冷えて、血の巡りが悪いのであれば、桂枝茯苓丸は冷やして血の巡りを巡らせるので、余計に手足が冷えることが発生したり、血の巡りの効果がその人の体質にとっては、強すぎて頭痛やめまいが余計にひどくなったりします。
合っていなければ、出てくる症状なので、その人の体質と桂枝茯苓丸の効果を照らし合わせて、その症状が副作用なのかどうかをみていく必要があります。
桂枝茯苓丸の効果(中医学)
中医学は、日本漢方とは、桂枝茯苓丸が合う条件も効果の考え方も違ってきます。
【効果】活血化瘀
【脈侯】渋・細
【舌侯】紫
【適応症】下腹部の圧痛、抵抗、あるいは痛み、腫瘤、月経不順、月経困難、不正性器出血、下肢に冷え、静脈のうっ滞、あるいは、のぼせ、頭痛、肩こりなどの症候を伴うもの。
中医学は伝統的な漢方に西洋医学の考え方を混ぜて、学校で教えやすいように作り直された教育用の漢方なので、日本漢方よりは、西洋医学的でわかりやすいです。
効果にある活血化瘀は血が滞って、うっ血している状態を巡らせる効果です。
症状を当てはめて選べそうですが、実際は症状を当てはめて選ぶわけではありません。
頭痛、肩こりなどを見ればわかるように、似たような症状が書いてある漢方薬はいくらでもあります。
中医学には、副作用の記載はありません。
僕は国際中医師という中医学の医師である認定を受けていますが、中医学の説明はわかりやすくて良い一方で、実際には、どうやって体を分析すれば良いのかわからないし、治らないのでやめました。
(どうやっても、症状をあてはめて自分の思い込みで選んでいる感じしかしない)
今回は、こういう効果の考え方もあるという意味で紹介しました。
桂枝茯苓丸の効果(病院)
最後に保険適応のツムラの桂枝茯苓丸の添付文書から引用したいと思います。
ツムラの桂枝茯苓丸の効能効果
〈ツムラ25番桂枝茯苓丸添付文書より引用:体格はしっかりしていて、赤ら顔が多く、腹部は大体充実、下腹部に抵抗のあるものの次の諸症;子宮並びに附属器の炎症、子宮内膜炎、月経不順、月経困難、帯下、更年期障害(頭痛、めまい、のぼせ、肩こり等)、冷え性、腹膜炎、打撲傷、痔疾患、睾丸炎。
これが効能効果?
これは効能効果ではなく、桂枝茯苓丸が合うかどうか調べるための特徴的な症状を条件として示しているだけで、当然、「この症状を治す」ものではありません。
このマニュアルを見て「おかしい」と思わないのが不思議です。
次のページに薬効薬理が書かれていますが、先ほど、紹介したネズミの実験結果。
そもそも、薬効薬理という効果のしくみをネズミで実験していて、効能効果に「体格はしっかりしていて、赤ら顔が多く」って書いてあって…そんなネズミだけ集めたの?
医者の使っている漢方薬マニュアルは、全く理屈が通っていません。
ここから原因を分析して、桂枝茯苓丸と合うのかを考えないといけないのに、原因の分析を放棄している感じです。
さっきの中医学と同じで、こんな感じの病名や症状は、そもそも、いくつかでも当てはまればいいのか、全部が当てはまらないといけないのか、何個以上か当てはまればOKなのか、わかりませんよね。
もちろん、症状をあてはめるわけではありません。
似たような症状が書いてある漢方薬は他にもいくらでもありますので、「だったら、どん漢方薬を飲んでもよいのか」という話になってきます。
これでは、その人に合わせて選んでいることになりません。
医者は一人の患者さんに時間をかけないし、漢方の医学理論を知らないからなのか、テキトーに選んでも、それがおかしいと思っていないのかな。
当然、こんなレベルな選び方で治るわけがなく、治るか治らないかは単なる運任せとなります。
副作用は、発疹、発赤、かゆみ、食欲不振、胃部不快感、悪心、下痢等と書かれています。
って、下痢等の「など」って何?他、何があるかわからないってこと?
漢方薬は合わなければ効果がないし副作用にもなる
漢方薬は、効能効果に書いてある病名や症状だけを見ると似たような病名や症状のものが、いくらでもありますので、実際は、病名や症状だけで合わせるのは不可能です。
そして効果が高いかどうかよりも『自分の体質に合っている確率が高いかどうか?』が重要です。
そして、漢方薬は症状を抑えるものではないので、『漢方薬が合っているかどうか?』を知るためには体質(証)を判断していないと、合っているかどうかさえ確認できないので、東洋医学的な体質を分析、判断しないで、効果があるかどうかは確認できません。
また、あなたの体質と漢方薬が合ってない場合は、副作用となり、病気はよりひどくなる可能性もあります。
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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ ツムラ医療用漢方製剤マニュアル
◯ オースギ医療用漢方製剤マニュアル
◯ 漢方方意辞典:緑書房
◯ 漢方診療医典:南山堂
◯ 類聚方広義解説:創元社
◯ 勿誤薬室方函:創元社
◯ 漢方処方応用の実際:南山堂
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅠⅡⅢ:薬局新聞社刊
◯ 平成薬証論:メディカルユーコン