漢方薬相談ブログ

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これであなたも薬膳師!体に良い食べ物の秘密は〇〇だった(後編)

  1. 食べ物にある属性「四気」
  2. 臓腑(入経)
  3. 五臓六腑とは
  4. 食べ物は旬のものがよい
  5. 毒性
  6. まとめ

薬膳の詳しいお話は、後編になります。

前回、薬膳の効果は、血管を拡張するとか、ビタミンや鉄分を補給するなどの西洋医学や栄養学とは、全く関係がなく、薬膳独特の効果の考え方があること。

そして、「効果は味と関係している」ということをお話しました。

前回の味が効果と関係する話は、薬膳の基本中の基本になりますので、ぜひ、みてもらえたらと思います。

これであなたも薬膳師!体に良い食べ物の秘密は〇〇だった(前編)

今回は、食べ物には属性があって、その属性が体に影響を与える。という解説をしたいと思います。

例えば、属性には、「熱いとか寒い」という体を温めたり、冷やしたりする性質があります。

冷えている人は、温める食べ物が良い効果となり、冷やす食べ物は、悪い効果となります。

その他にも「四気」や、どの臓器に効いていくのかという「入経」、四季のいつに食べればよいのかという「旬」という要素もありますので、それらの要素を詳しくお話していきたいと思います。

食べ物にある属性「四気」

薬膳的効果、つまり東洋医学的な食べ物の効果の考え方は、結構、具体的だったりします。

食べもには自然属性があります。

その属性は「寒熱」というもので、温めたり、冷やしたりする性質です。

厳密には、寒熱は温めるか、冷やすかだけでなく、何段階か段階があります。

その段階は、「熱→温→平→涼→寒」という順になります。

熱からだんだんと冷えに向かう段階を示していて、平というのは温めも冷やしもしない中間のもので、温は熱よりも1段階弱い熱で、涼は寒よりも1段階弱い冷えとなります。

一概には言えませんが、香辛料は、体を温め、夏野菜は体を冷やします。

体の冷えた状態に良い効果がある食べ物が熱性、温性の食べ物で、逆に熱のこもった体に良い効果がある食べ物が寒性、涼性の食べ物です。

気をつけないといけないのは、食べ物には、他にもいろいろな効果がありますので、単純に肝熱という指標だけで、「冷えているから温める食べ物で良い」とはなりません。

東洋医学は、いろいろな効果を総合的に考えて、全体なバランスとしてはどうなのかを考えていく必要があります。

臓腑(入経)

入経、帰経といって、食べ物が五臓六腑のどこに作用していくかが設定されています。

五臓六腑とは、肝、心、脾、肺、腎、小腸、大腸、胆、胃、膀胱、心包となります。

この臓腑は、西洋医学の臓器とは、似ているところはありますが、全く同じ概念ではありません。

作用していくというのは、その臓に効くという意味ではなく、その臓に影響を与えるということになります。

例えば、肝の臓は、アトピーなどの湿疹に関わるアレルギーの反応や特に月経に関わる血の巡り、精神面ではイライラや焦燥感などに関わっていて、熱のこもりやすい臓器という性質をもっています。

健康であっても、熱がこもりやすい臓器なので、温める食べ物だと、より温まりやすくなります。

元々、肝陽亢盛といって、肝の臓の熱がこもりやすい体質の人が、温める食べ物を食べすぎると余計に肝の臓が熱をもつことになり、この場合は、湿疹がひどくなったり、月経が遅れたりなどが悪い効果として現れます。

重要な原則なので、何度も説明しますが、東洋医学の薬膳や漢方では、誰にでも良い効果というものは存在しません。

体が冷えている人にとっては、温める食べ物は良い効果ですが、肝の臓に熱がこもっているタイプは、余計な熱が肝の臓に増えて、いろいろな症状が出てくる原因にもなるのですね。

実は、この悪い影響も単純ではなく、前に解説した味による作用なども合わせて考えます。

「下半身を温める」とか、不要な熱は「発散」させるなどの作用もあったりするので、複合的に合わせていけば、効果的に使えます。

ですので、食べ物も漢方薬も、「自分のどの部分の弱点をどうしたいのか?」をものすごく細かく分析していけば、良い効果を得ることができるわけです。

つまり、入経とは、『自分の五臓六腑はどんな弱点を抱えていて、どんな効果を与えれば、良い効果となるのか」を考えないといけないということになります。

五臓六腑とは

それでは、五臓六腑の解説をしていきます。

肝の臓は、先ほど、少し触れたように、喘息や湿疹、蕁麻疹などのアレルギー反応のコントロールに関わっています。

他にも体全体の血の巡りや女性の場合は、特に子宮などに対する血の巡りにも関わっています。

熱がこもりやすい臓器で、体の熱のコントロールとも関わっています。

胆は胆汁を貯めておくところになります。

心の臓は、体全体の血の巡りに関わっていて、精神を総合的にコントロールしています。

小腸は、栄養素となるものと体内に不要なものを分ける腑となります。

体内に不要なものは、水分であれば、膀胱へ、固形物であれば、大腸へと運びます。

脾の臓は、食べたものから、必要な栄養素を抽出したり、その栄養素や液体を運ぶ役割があります。

また、「血を体内に留める」ということもやっています。

胃は、食べたものの消化を行う役割があります。

肺の臓は、呼吸と気と水の巡りのコントロールに関わっています。

呼吸によって、外界から気を得て、全身に散布し、体の中の水を広めることにも関係しています。

大腸は、体内に不要な固形物を小腸から受け取り、排出します。

腎の臓はオシッコなどの体内の水の循環と排出に関わっています。

体全体を温めたり、冷やしたりすることにも関わっていて、人間が動くための根源的なエネルギーを貯めておく場所でもあり、元気と疲れの元だったりします。

また、子を成す生殖や血を作る大元でもあります。

膀胱は、体に不要になった水を溜めておくところです。

三焦とは、栄養物を身体中に巡らせたり、不要なものを回収してくる道のことを指します。

イメージ的には体中の血管みたいな感じでしょうか。

心包は、もやっとした概念的な解説が多く、心の外周を守っているとか、心に関わる巡りとの関係とも言われています。

全身の問診をとっていけば、どの臓器が、どんな不調になっているのかが見えてきます。

薬膳の場合は、「肝の臓に良さそうなもの」を選ぶのではなく、「今の自分の五臓六腑の状態に合うもの」を選ぶ必要があります。

すなわち、『どこがどう悪いのかがわからなければ、どの食べものが良いのかわからない』ということになります。

食べ物は旬のものがよい

食べ物には四季に応じての旬があります。

最近は、どんな食べ物でも、ビニールハウス栽培で年中、手に入りますが、自然界では旬にできるものがあります。

旬のものには、薬膳的には2つの意味があります。

1つは、その季節にとれるものは、その時期に、最も栄養価が高く、美味しい。というものです。

もう一つは、その季節から受ける悪影響を和らげてくれるというもの。

例えば、夏は不要な夏がこもり、水分が必要となるので、夏野菜は、体を冷やして、水分を補給するものが多いです。

トマトとかきゅうりなどですね。

冬は、体が冷えるので、生姜のような温めて、寒さを体の外へ飛ばす散寒をするものがあります。

他にも秋には、夏に溜まった水を出すものとか、春は、肝の臓の気を鎮める食材が有効だったりします。

ですので、トマトを真冬の寒い時にバカバカ食べると、冷えによる弊害が出てくる可能性があります。

この辺りは、日本人であれば、深く考えなくとも、「あーこの時期には、この野菜は食べないよね」とわかると思います。

従来もっている季節感でOKですし、旬のものは、スーパーに行った時にたくさん置いてあって、安いものが大体そうなんですね。

例えば、春は、植物の芽が育ち、植物だけでなく、万物が伸びたり、上昇しようとする傾向がありますので、気や熱がこもりすぎないように酸味のあるものを食べます。

ところが、この酸味は、いきすぎると「収」といって、体内に気を集めて出さないようにしますので、食べ過ぎると、気が上昇していこうとする法則とは逆行してしますので、よくありません。

これが、薬膳や漢方薬の難しいところで、ある効果は、程よく補充すると良い効果となりますが、それが不足しても、多すぎても毒となるわけです。

その人の丁度を保つ、ど真ん中を狙って、『常に調整しないといけない』のが東洋医学の難しいところなのですね。

毒性

食べ物の要素として、最後に「毒性」があります。

薬膳や漢方の世界では、毒性は3つのランクに分けられています。

大毒、中毒、小毒、無毒ですね。

東洋医学の世界では、「毒=食べてはいけないもの」ではありません。

毒性が強いものは、体質をものすごく選びますが、効果も高いです。

もちろん、体質と合っていなければ、そのまんま毒となりますし、長く食べ続けることができるのは、基本的には無毒のものです。

例えば、お米は、当然、無毒ですが、ニンニクは、小毒となっています。

ニンニクは短期間で、元気になれますが、薬膳的には食べ続けてもよいものではないということになります。

サプリメントは、ニンニクを更にエキス化、つまり、何個ものニンニクを食べることになるので、漢方家である僕からみると、まず、ニンニク系のサプリメントを続けようとは思いません。

小毒は、加熱すれば、少量ならOKだったりしますが、中毒、大毒になると、これは漢方薬の領域で、漢方薬の中でも、ある決まった体質にしか使わない。という感じで、扱いがかなり難しくなってきます。

まとめ

2回にわたって説明してきた、五味という味による、昇降、収散、潤燥という効果、四気という温めたり冷やしたりする性質、入経という、どの臓器をどう助けないといけないのか、があって、旬、つまり季節性と体の関係を考えて、毒性のあるものを避けるのが薬膳ですね。

ある食材が体に良いから食べるのではなく、『自分の体にとって、どんな要素が必要なのか』を考える必要があるので、それには、『自分の体質は、現在どんな状態なのか』がわからなければ、始まらないわけです。

漢方薬でもそうですが、似たような頭痛の人でも、全身を分析して行った時に冷えが原因の頭痛の人は温める漢方薬でよくなりますが、熱がこもっていることが原因の頭痛の人にとっては、その漢方薬が毒になります。

東洋医学の世界では、「誰にでも良いもの」は、誰にも悪い影響がないので、それは「誰にも効果がないもの」と同じなんですね。

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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ 医心方:出版科学総合研究所
◯ 東方栄養新書:メディカルユーコン
◯ 中医薬膳学:東洋学術出版社
◯ 薬膳素材辞典:源草社
◯ 食養生の知恵 薬膳食典食物性味表:日本中医学院
◯ 薬膳と漢方の食材小事典:日本文芸社
◯ 素問:たにぐち書店

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

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