
漢方薬が効かない理由を徹底解説!病名や症状から選んでも効くわけがない!
十味敗毒湯の「効能又は効果」の欄には、「化膿性皮膚疾患」と書いてあります。
ということで、「ニキビなんかで十味敗毒湯を出されて飲んでみたけれど、何ヶ月飲んでも、ニキビはなくならない。漢方薬って効果がよくわからない」
こんな人って多いのではないでしょうか。
なぜ、効かないのでしょうか?
それには漢方薬に対する大きな誤解が関係しています。
結論からいうと、「効能又は効果」の欄には病気や症状が書かれていますが、この欄の病気や症状に合わせて漢方薬を選んでも無意味なので病気や症状から選んだ人は、効果がなくても当然なのです。
例えば、十味敗毒湯であれば、医者が使うツムラのマニュアルには、「効能又は効果」の欄には「化膿性皮膚疾患、急性皮膚疾患の初期、じんましん、急性しっしん、水虫」と書かれています。
「効能又は効果」の欄に、そう書いてあるのだから、当然、湿疹を治す漢方薬と考えますが、そもそも、この説明自体がおかしいのです。
「効能又は効果」というのは、「どのような効果なのか?」ということですよね。
なのに病気や症状のことしか書いていない。
普通に日本語で解釈すると、「化膿性皮膚疾患の効果」ということになり、つまり、「白く膿んだ湿疹ができる効果なのか?」ということになります。
これは、医薬品を解説する際のルールに基づいてみれば意味がわかるのですが、普通に読むと意味不明です。
いずれにしろ、漢方薬の効能効果の説明には2つの大きな誤解があります。
今回のお話では、こういった効能効果を元に病名や症状から漢方薬を選んでも、なぜちっとも効かないのか?その理由をお話したいと思います。
ネットで調べたら出てくる漢方薬の説明や漢方専門と謳っている病院の先生でも誤解して、漢方薬を選んでいる場合が多いので、ぜひ、最後まで見ていただけると嬉しいです。
病院の薬の効能効果
1つ目の誤解を理解するためにまずは、病院の薬の効能または効果の欄を見てみましょう。
これ、後で、漢方薬の効能効果ともつながってきます。
病院の薬の効能または効果の欄にも病名や症状が書かれています。
例えば、花粉症や蕁麻疹で、よく処方されるアレグラには次のように書いてあります。
アレグラ錠(添付文書)より引用:
効能効果 アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、 皮膚そう痒症、アトピー性皮膚炎)に伴うそう痒
これも先ほどの話と同じで、効能または効果の欄にアレルギー性鼻炎と書かれているだけ。
つまり、普通に日本語で考えれば、『アレルギー性鼻炎の効果』になるわけです。
これだと「アレルギー性鼻炎になる薬」となりますね。
もちろん、そんな効果ではなく、アレグラの効果は、花粉症などの鼻炎や蕁麻疹、アトピーのかゆみを発生させるアレルギー反応を抑えることです。
そして、「効能または効果」に書かれていることは、実は、その薬の効果のことではなく、その薬を使う対象の病気や症状のことが書かれているわけです。
実は効能効果と無関係。
最終的に、それらの病気や症状に対応しているという意味では間違っていないのですが、少なくとも効能効果ではないわけです。
そして、その薬の本来の効果を知ろうと思ったら、同じ添付文書にある、『薬効薬理(作用機序)』という項目をみないとわかりません、
この薬効薬理こそ、「効能又は効果」のことなのです。
気をつけないといけないのは、薬をもらうときの処方箋には、「アレルギー性鼻炎を治す薬です」と、かなりざっくりと都合の良い説明がされていますが、本来の効能効果を知ろうと思ったら、見るところは『薬効薬理(作用機序)』になります。
この時に、薬効薬理には、『薬のどんな成分』が『体のどの部分』に『どう作用するのか』ということが書かれていて、この『薬の成分→作用する体の部分→どうのような作用か』がわかっていないと薬としては成り立ちません。
「薬効薬理」に関しては、添付文書のURLを貼っておきますので、詳しくはこちらをみてください。
漢方薬の効能効果
それでは、先ほどの病院の薬の添付文書を踏まえて、次に漢方薬の「効能又は効果」をみていきましょう。
漢方薬にも『効能または効果』という欄があります。
例えば、十味敗毒湯なら、効能または効果の欄に「化膿性皮膚疾患、急性皮膚疾患の初期、じんましん、急性しっしん、水虫」なんて書かれていたりします。
インターネットの漢方薬の効果の説明は、この部分を参考にしているものが多いです。
病院の薬の添付文書でも、効能又は効果の欄に書いてあることは、効果のことではなくその薬を使う対象だとお話しましたが、漢方薬においては、使う対象にすらなっていません。
漢方薬においての効能効果の説明は、実は治療とは全く関係ない他の事情で書かれているのです。
これが大きな誤解の1つ目となります。
法律上の漢方薬の効能効果
漢方薬は、法律上は医薬品という分類になります。
医薬品として販売するには、医薬品の法律に則って、説明をする必要があります。
医薬品として販売する場合は、当然、ルールとして「効能又は効果」があって、「成分や分量」、「用法、用量」、「薬効薬理」などが書かれていないといけないのです。
ところが漢方は、『2千年前』に中国で発展した医学で、病院の西洋医学は『2百年位前』から薬の治療がヨーロッパやアメリカで発展してきました。
何が言いたいかというと、病院の薬と漢方薬は、治療上では何の接点も関係もないものなのです。
医薬品としての販売上は関係あったとしても、漢方薬の「治療」としては、西洋医学上の医薬品の法律なんて、何の関係もないわけです。
しかし、漢方薬も薬としての効果がある以上、副作用なども発生するため、販売する法律上は西洋医学の医薬品の扱いにせざるえませんでした。
そして、西洋医学の薬の医薬品のルールを無理やり漢方薬にあてはめました。
2千年前から存在している漢方薬が、たかだか2百年前の西洋医学のルールに従わないといけないなんて、おかしな話ですが、医薬品として販売する法律上は仕方がなかったのです。
つまり、漢方薬を出した医者の説明や薬局でもらう処方箋、インターネットの漢方薬の効能効果の説明やドラッグストアなどの漢方薬の外箱に書いてある『効能又は効果』は治療とは、全く関係のない『建前上、法律上』のものになります。
十味敗毒湯の「効能又は効果」の欄に皮膚疾患と書いてあるからといって、ニキビやアトピーに効く効果ではないのです。
それはあくまで、医薬品として販売する法律上の建前の説明なのですね。
めまいに苓桂朮甘湯とか胃もたれに六君子湯なんて説明されているのは、建前上の説明なだけであって、こんな建前の解説を鵜呑みにして、漢方薬を選んでも効果があるわけがありません。
なぜなら、治療とは無関係だから。
なので、病名や症状に合わせて漢方薬を選んでも本当に無意味なのです。
漢方薬は、病名や症状から選ぶのではなく、その病気や症状の『原因』を分析して、原因から最適なものを選ぶ必要があります。
漢方薬の薬効薬理の無意味さ
「効能又は効果」は、実際は、その薬が対象としている病気や症状のことで、実際の「効能又は効果」は、「薬効薬理」というところに書いてあります。
そして、一部の漢方薬には、この薬効薬理が書いてあります。
ところが、これも漢方薬に対してはとてもおかしな点があります。
十味敗毒湯の「薬局薬理」には、抗アレルギー作用(マウス)とあります。
他にも好中球活性化作用(invitoro)とあります。
これは何かというと、マウスの実験で抗アレルギー作用が、わかったということなのです。
そして、(invitoro)というのは、ビーカーの実験で好中球活性化作用がわかったということ。
そもそも、「薬効薬理」もあくまで漢方薬を医薬品として販売する形式上の説明なので、そもそもが、どうでもいい実験になるのですが、仮にこれが、漢方薬に対して正しい実験だったとしても、これでは、漢方薬は薬として認めてはいけないことになります。
なぜなら、十味敗毒湯の「どんな成分」が「体のどこの部分」に「どのように効いたから」マウスに抗アレルギー作用が発現したのか?が何もわかっていないからです。
こんな実験では、まだまだ途中の段階なので、普通ならまともな薬として認められません。
また、漢方薬は、4千年前から人間に漢方薬を使って、どんな結果が出たかをデータ化して、それを体質分析という形で体系化した方法で選ぶので、西洋医学の薬の方式でマウスやビーカーで実験しても、少なくとも治療とは何の関係もないのです。
病院の薬だって、本当は人体実験がベストなのですが、それは倫理的にできません。
漢方薬は、4千年も人体実験をしてきて、なおかつ、体質や原因を分析する理論や漢方薬を選ぶ方法が完全に理論化されています。
それをわざわざ、ネズミで実験して、しかも中途半端で終了。
どれだけ、正当な東洋医学理論を学ぶのが嫌なのかが伝わってくるようです。
漢方薬は体質に合わせて選ぶ
十味敗毒湯の「効果」は、正式な東洋医学理論では、2種類の異なった考え方の効果があります。
1つは、中医学という派閥からみた効果で、去風化湿、清熱解毒というもので、これは、余分な水を排出して、熱を鎮めるという効果です。
この効果を応用的に考えて、化膿傾向があって、膿んだりジュクジュクする熱感の強い湿疹に使うこともある。という感じになります。
あくまで『そういった傾向の人に使うことがある』という意味で、そういった人に効くという意味ではありません。
僕がやっている日本漢方では、効果ではなく『どんな原因の人に合わせるか?』ということを考えます。
十味敗毒湯は、「表の熱証」、「表の湿証」、「胸脇の熱証」、「胸脇の熱証による精神症状」という原因を持っている人に対して選ぶ漢方薬となっています。
証というのは、「原因」とか「体質」という意味です。
表の熱証というのは、皮膚表面などに熱感が強いという意味で、「表の湿証」は皮膚表面などに不要な水が溜まっている状態、「胸脇の熱証」は肝臓に熱がこもっていることを示し、「胸脇の熱証による精神症状」はイライラや焦燥感などからのストレスが強いことを示します。
漢方では、これらの状態を治すことが効果となりますので、原因を分析したことがイコールそのまま効果となります。
例えば、ある湿疹が表の熱証だと分析したのであれば、効果は、そのまま皮膚表面の熱を冷ます効果となります。
他にも十味敗毒湯が合うかどうかの条件は色々とあって、日本漢方の場合は、中医学よりも詳細な感じになっています。
いずれにしろ、十味敗毒湯は、湿疹が乾燥して、出血している人には効かないということ。
その状態であれば、同じアトピーでも他の漢方薬を探す必要があります。
ちなみに日本漢方では、アトピーであれば、原因別で、40種類の漢方薬の中から選びます。
十味敗毒湯はそのうちの1つでしかありません。
まとめ
そもそも、漢方薬の「効能又は効果」の説明は、医薬品として販売する上での建前上の説明であって、本来の「効能又は効果」とは無関係ないので、病名や症状から漢方薬を選んでも意味がありません。
漢方薬は、病名や症状から考えるのではなく、その人の病気や症状の原因を分析して、原因、つまり現在の病的体質から漢方薬を選びます。
ですので、同じアトピーの人でも、人それぞれ原因が違い、その原因は40種類くらいにわかれて、その原因別に漢方薬を選びます。
アトピーやニキビに十味敗毒湯、めまいに苓桂朮甘湯など病名や症状から漢方薬を選んでも効果があるわけがありません。
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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯アレグラ錠の添付文書◯ 漢方概論:創元社
◯ 漢方方意ノート:創元社
◯ 漢方臨床ノート(論考編):創元社
◯ 金匱要略ハンドブック:医道の日本社
◯ 傷寒論ハンドブック:医道の日本社
◯ 素問:たにぐち書店
◯ 漢方治療の方証吟味:創元社
◯ 中医診断学ノート:東洋学術出版社
◯ 図説東洋医学:学研
◯ 中国医学の秘密:講談社
◯ 陰陽五行説:薬業時報社
◯ まんが漢方入門:医道の日本社
