
加味帰脾湯の本当の効果と副作用
病院ではツムラの137番としてよく出されている加味帰脾湯。
ネットなどを調べてみると「加味帰脾湯が不眠症に効く」とか「精神不安に効く」かのように説明されていたりしますが、そもそも、漢方薬は、不眠症とか精神不安などの何か特定の病名や症状に効くようにできていません。
そこで加味帰脾湯は実際は、「どんな効果」があって、「その効果はどんな仕組みなのか?」また「副作用」には、どんなものがあるのかを解説したいと思います。
加味帰脾湯を処方されたけれど、効果がわからない人は、今回の動画をみて本当に自分に合っているのかを確認してみてください。
加味帰脾湯の効果とは
効果には、根拠が必要です。
例えば、不眠症に使われるマイスリーという薬は、 ゾルピデム酒石酸塩というものが、いくつかの行程を得て、脳の活動を抑えて眠りに誘います。
「どう効くかわからないけど、これ飲んでみる?」なんてのは、プロが絶対にやっちゃいけないこと」ですね。
そして、加味帰脾湯の効果には、 次の4つのものがあります。
1上焦の清熱による気の調整効果:肩から上に不要な熱がこもって乱れている気を調整する効果。
2補脾の効果:胃腸の気を補って胃腸を強化する効果。
3補虚の効果:気や体力を補う効果。
4上焦の清熱効果:肩から上の不要な熱を冷やす効果。
となります。
「は?なにそれ?」
どれもわけがわからない効果ですよね。
でも、これが、加味帰脾湯の効果となります。
さっきのマイスリーのような「ゾルピデム酒石酸塩が、眠りやすいようにしてくれます」みたいな説明をしたいところですが、漢方薬に眠らせるような成分は含まれていません。
『病院の薬』は事前の研究によって、その薬には「どんな効果があって」「その効果にはどんな有効成分が関係しているか」ということが研究によってわかっていますので、薬の効果や成分の説明ができますが、漢方薬には、西洋医学的な効果や成分は存在しません。
また、加味帰脾湯に眠らせるための直接的な働きもありません。
そもそも漢方と西洋医学とは何の関係もなく『治療や薬の効果の考え方自体』が根本から違うのです。
ですので、漢方薬の効果は、西洋医学と同じように考えても意味がありません。
先ほどの4つの効果が合わさって、体全体のバランスが取れるようになると、不眠症は治ります。
なぜ、体全体のバランスが取れるようになると、不眠症が治るのか?
それは、不眠症や頭痛などの症状は、体の中のシステムがうまくいかなくなったことを知らせるためにあるものなので、体全体を調整すれば、そのシステムがうまく働くようになり、症状を発生させる必要がなくなるからです。
病院の薬は、症状自体を直接、強制的に変えようとしますが、漢方薬は、症状自体ではなく、症状の原因を治すのですね。
そして、加味帰脾湯の4つの効果というのは、「ああいったパターンで体の調子が崩れている人を治す」という効果になります。
不眠症の原因になっている、『体の調子が崩れているパターン』を見つけ出して、それに対応した漢方薬で調整すれば、不眠症はなくなります。
ですので、同じ不眠症の人でも、『体全体の調子が崩れているパターン』は、人それぞれですので、「不眠症」だけで漢方薬を選ぶことはできません。
ネットにある漢方薬の説明や医者が処方する時に「不眠症」という病名だけで漢方薬を処方しているのは、何の根拠もないことになります。
「よくわからないけど、マニュアルに書いてあるからこれでいっか!」という感じなっているのですね。
本当の加味帰脾湯の効果というのは、最初に挙げた4つの効果ですが、あの効果は、ああいった条件の体の状態の人に対する調整の効果です。
『加味帰脾湯が治せる条件が合う体質の人』は、加味帰脾湯を飲めば効果があります。
逆に加味帰脾湯が治せる条件と合わなければ、効果は全くありません。
つまり、『加味帰脾湯の条件が合う体質の人=加味帰脾湯の効果』となります。
なので、不眠症に加味帰脾湯が効くのか?と言われても、不眠症以前に加味帰脾湯が治せる条件と合わなければ、不眠症には全く効果がありません。
結局、病名や症状ではなく、体質を分析して、漢方薬を合わさないと、その漢方薬は効果を発揮しない!ということです。
加味帰脾湯の効果とは加味帰脾湯の条件に合う体質のこと
加味帰脾湯の4つの効果は、そのまま、あなたの体の状態が、そうであるかどうかという意味でもあります。
1肩から上に不要な熱がこもって、気が乱れて不眠症や抗不安が発生している状態
↓
1肩から上に不要な熱がこもって気が乱れている気を調整する効果
2胃もたれや軟便などから不眠症や抗不安が発生している状態
↓
2胃腸の気を補って胃腸を強化する効果
3気力や体力がなくて、不眠症や抗不安が発生している状態
↓
3補虚といって、気や体力を補う効果
4肩から上に不要な熱がこもって、不眠症や抗不安が発生している状態
↓
4肩から上の熱を冷やす効果
そして、4つの体の状態が合わさって、それが原因で不眠症や自律神経失調症、更年期障害、抗不安、貧血、不正出血などが起こっていることになります。
漢方では、何か1つの原因で不眠症が発生していると考えません。
体全体のアンバランスを見つけ出して、体全体を整えることによって、不眠症などの症状がなくなっていきます。
つまり、『4つの体の状態は、不眠症を起こしている原因』ということになり、同じ不眠症でも、体がこの4つの状態でない場合は、加味帰脾湯が治せる原因ではないことになります。
その場合は、他にも不眠症に使う漢方薬は11種類ありますので、他の原因なのかどうかを調べる必要があるのですね。
漢方薬は、漢方薬ごとに治せる体の状態の条件が示されているので、加味帰脾湯の4つの条件が原因で眠れないのであれば、加味帰脾湯を飲めば眠れるようになります。
漢方薬は『加味帰脾湯の条件が合う体質の人=加味帰脾湯の効果』となるので、全身の体の状態を分析せずに、漢方薬を合わせるのは不可能なのですね。
なので、ネットの解説や医者の選び方は、デタラメなのです。
加味帰脾湯が合う人の条件を詳しく解説します。
加味帰脾湯が合う人の条件
僕が実践している日本漢方では、先ほどの条件以外にも他の色々な条件があります。
これらが全てあてはまって、はじめて、『加味帰脾湯を飲めば効果がある』という状態になります。
なので、ややこしい話になりますが、加味帰脾湯の本当の効果を知りたい場合、『自分の体全体が加味帰脾湯のすべての条件に合うかどうか』を考えれば、効果を知ることができます。
加味帰脾湯が合う体質の条件とは…
【病位】太陰病より少陽病。
【虚実】虚証。
【脈侯】やや軟、やや弱。
【舌侯】湿潤して微白苔。
【腹侯】やや軟、時に臍上悸、臍下悸がある。
【証】1上焦の熱証による精神症状、2脾胃の虚証、3虚証、4上焦の熱証。
これが、加味帰脾湯が合う人の体の状態を示しています。
【証】というのが、冒頭で説明した1〜4の加味帰脾湯の効果のことです。
【病位】とは、病気が発生してからどれくらいの時間が経過しているかの時間軸を示しています。
極端に言えば、風邪で使う漢方薬は、何ヶ月も前から患ってる病気では使わないので、病気の時間軸は非常に重要になってきます。
加味帰脾湯の太陰病より少陽病というのは、病気が急性から、慢性化しつつある人から、完全に慢性化している人のことを示しています。
つまり、加味帰脾湯は、この最近、眠れなくなったという急性の人には合わないとも言えます。
例えば、風邪で使うことの多い葛根湯は、慢性的な病気で使うことはありません。
葛根湯に限らず、漢方薬は、病気のどの時期で使うのかが決まっています。
【虚実】というのは、どれくらいの体力があるのかを示しています。
漢方薬は、飲む人の体力と漢方薬の強さを合わせる必要があります。
例えば、インフルエンザに効く漢方薬だと勘違いされている麻黄湯ですが、非常に薬性が強いため、胃腸が弱く、体力のない華奢な人には合いません。
体の弱い人が麻黄湯などの強い漢方薬を飲むと胃痛を起こし、余計に体が悪くなります。
逆に体力がある人が、弱い薬性のものを飲むと薬性が弱くて効かないこともありますので、自分がどのくらいの強さの薬性が飲めるのかを知る必要があります。
加味帰脾湯は、虚証となっていますので、体の弱い人で不眠症などがある人に合うものです。
【舌侯】は舌の状態をみます。
舌の状態から、体に不要な熱がこもっているとか、水の滞りが多すぎるなどがわかります。
加味帰脾湯の湿潤して微白苔というのは、体に水が滞っていて、胃腸が弱っていることを示します。
【腹侯】はお腹の状態から体の状態をみます。
加味帰脾湯は、時々、胃あたりや臍あたりでドクドクと動悸を感じることがあることが条件です。
そして、【証】は、冒頭で説明した加味帰脾湯の4つの効果のことで、同時に加味帰脾湯が治せる体全体の状態のことでもあります。
加味帰脾湯が合うかどうか、つまり効果を発揮するかどうかは、自分自身の体が、このような条件にあてはまっているか?を全部チェックする必要があります。
漢方薬は、ある特定のパターンの体の状態に対して合うか合わないかを考えます。
どんな病気に使うのか、それが、どんな効果なのかを考えるのは、全く意味がありません。
加味帰脾湯の条件に合う状態で、なおかつ不眠症がある場合は、加味帰脾湯で不眠症は治りますが、加味帰脾湯に眠らせる成分はないため、加味帰脾湯の条件に合わない体の状態であれば、不眠症は、治りません。
加味帰脾湯に限らず、漢方薬の副作用は、特定の決まった症状が発生するわけではなく、自分の体質と加味帰脾湯の効果が合っていなければ発生します。
例えば、不眠症でも、寒証といって、冷えが原因で眠れない人は、加味帰脾湯は、冷やす性質があるので、余計に体が冷えたり胃痛が発生したりします。
これは、冷えている人が飲んだ場合は、冷やす効果が余計悪い方に働くという意味です。
漢方薬は、自分の体質と合わなければ副作用を起こしますので、医者のように不眠症に酸棗仁湯とか加味帰脾湯と、体質を分析せずに選ぶ場合は、副作用が起こる可能性はかなり高くなります。
漢方薬は合わなければ効果がないし副作用にもなる
漢方薬は、病院の薬とは全く違うものです。
病院の薬の場合は、ある成分が強制的に症状を一定時間だけ抑えるようになっています。
これを「効果」と呼んでいます。
漢方薬の場合は、漢方薬の条件にある体の状態を治すようにできています。
ですので、漢方薬の効果とは、その漢方薬に設定された『体全体の条件』ということになります。
これを体質とか病気の原因と呼んでいます。
ネットや医者の使っているマニュアルの効能効果に書いてある病名や症状だけを見ると似たような病名や症状が書いてある漢方薬は、いくらでもありますので、実際は、病名や症状だけで合わせるのは不可能です。
そして効果が高いかどうかよりも『自分の体質に合っている確率が高いかどうか?』が重要です。
漢方薬は症状を抑えるものではないので、『漢方薬が合っているかどうか?』を知るためには体質、つまり(証)を判断していないと、合っているかどうかさえ確認できないので、東洋医学的な体質を分析、判断しないで、効果があるかどうかは確認できません。
また、あなたの体質と漢方薬が合ってない場合は、副作用となり、病気はよりひどくなる可能性もあります。
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◯ ツムラ医療用漢方製剤マニュアル
◯ オースギ医療用漢方製剤マニュアル
◯ 漢方方意辞典:緑書房
◯ 漢方診療医典:南山堂
◯ 類聚方広義解説:創元社
◯ 勿誤薬室方函:創元社
◯ 漢方処方応用の実際:南山堂
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅠⅡⅢ:薬局新聞社刊
◯ 平成薬証論:メディカルユーコン
