
今、飲んでいる漢方薬が自分に合っているかチェックする方法
最近、よく「のぼせと足の冷えがあって、病院から桂枝茯苓丸を処方されましたが、これって合ってますか?」という質問があります。
僕は、修行時代を入れたら、かれこれ漢方相談の経験が20年を越えますし、一応、国際中医師という中国政府から漢方の先生という認定をいただている専門家です。
ですが、2、3個の症状だけで、その漢方薬が合っているかどうかは、判断のしようがありません。
なぜなら漢方薬は、症状をあてはめて選ぶものではないからです。
実は、これには漢方業界のとてもとても深い問題が関係しています。
よく「今日、医者に漢方薬を処方してもらったのですが、合っていますか?」と質問されます。
まだ、飲んでもない時点で、うちに質問をしてきている感じです。
恐らく、漢方薬について何も説明されていないし、なんだったら、漢方薬を選ぶ時に医者が本を見ながら選んでいたり、ツムラの漢方薬のシートを見ながらだったり、ひどい先生になると、患者さんに「ほらここの漢方薬の欄にあなたの症状が書いてありますよね?」と責任転嫁していたりします。
普通の感覚の人なら、こんな対応をしてきたら、「あー漢方薬のことを何も知らないんだな」って気づきますが、現場では、説明もないままに、なんとなく流れていくので、いつのまにか漢方薬を出されていた。って感じになります。
で、いざ、家に持って帰ってきたら、本当に飲んでも大丈夫なのかわからない…
それで、うちに質問があるのだと思います。
あなたが、「医者の漢方薬は怪しいぞ、本当に飲んでも大丈夫なのか、専門家に聞いてみよう!」と思った感覚は大正解です。
漢方薬は、体質に合わせて最適なものを選びます。
そして、体質とは症状のことではありません。
ですが、現状、漢方薬は症状に合わせて選ばれていたりします。
これはもはや漢方業界全体の問題です。
今回は、医者や大半の漢方薬局は、漢方薬の選び方をどう間違っているのかを解説します。
体質と合っていない漢方薬は、効果を発揮しませんし、副作用になることもありますので、正しい漢方薬の選び方がわかるようになると思います。
そもそも間違っている漢方薬の選び方
病院では、症状をあてはめて漢方薬を選びます。
これは大きな間違いです。
漢方薬は、症状をあてはめて選んでも効果はありません。
なぜか?
漢方薬の効能効果に説明されている症状は、その症状を治す。という意味ではないし、症状があてはまったら、その病気や症状を治してくれるわけではないからです。
例えば、月経痛やPMSでも使う桂枝茯苓丸は、桂枝茯苓丸の効能効果に「のぼせや足の冷え」があります。
なので、のぼせもあるし足の冷えもある人は、「あっ私は桂枝茯苓丸が合っているかも」と考えますが、桂枝茯苓丸は、上熱下寒という体質と、プラス瘀血といって、血の巡りが悪い人の体質を治します。
上熱というのは、肩から上に不要な熱がこもっている人のことを指します。
下寒とは、下半身が冷えている状態です。
のぼせがあって、足が冷えたら、桂枝茯苓丸が合うと考えがちですが、のぼせは、人によって、頭痛の場合もあるし、また耳鳴りの場合もあります。
そして、頭痛、耳鳴りは、上熱の場合もあれば、上熱ではなく、上焦の水滞証といって、肩から上、頭の部分で水の巡りが滞っていることが原因で発生することもあります。
下寒もそうですが、足の冷えが、条件になっている漢方薬は、、桂枝茯苓丸に限らず、当帰芍薬散や四物湯、人参湯など、他にもいくらでもあります。
そして、桂枝茯苓丸は、少陽病といって、比較的体力がある人に使う漢方薬なので、足も手も冷える人には効果を発揮しません。
あくまで足は冷えるけれど、手は冷えないことが条件になります。
また、自分が気になっている症状だけで漢方薬は選びません。
全身の状態を全部、あてはめて考えていきます。
「寝つきが悪い」とか、「夜中に目が覚める」とか、「しょっちゅうオシッコにいく」とか、「下半身が重だるい」とか、全身、全部の症状を調べつくして、そこから体質を分析して、診断します。
例えば、「のぼせがあって、足が冷える」けれど、、「胃もたれ」があって、「雨の日に頭痛」があり、「むくみやすい」などの症状もあると、桂枝茯苓丸は、胃を補助するのは苦手ですし、雨の日の頭痛やむくみは水の巡りの問題もありますので、他の漢方薬も候補として考える必要があります。
この時に、胃もたれは、六君子湯とか、ひどいと胃腸薬を出したり、頭痛に五苓散を出したりする先生もいますが、基本的には、漢方薬は、まずは、全身の状態を1種類の漢方薬だけで治せるように考える必要があります。
なぜなら、漢方薬は、『特定のパターンの体質全部』を調整するように作られているからです。
医者の大きな勘違い
病院の薬は、ある1つの症状を一定時間だけ抑えるように作られています。
例えば、頭痛の原因には、漢方的には色々なことが考えられますが、原因がなんであれ、体は、その原因を知らせるために痛みを発生させようとします。
そして、鎮痛剤というのは、この痛みを発生させようとする生理活性物質を働けなくします。
すると、痛みは発生しなくなります。
ところが、痛み自体を抑えたところで、鎮痛剤は、原因には、何も作用しません。
頭痛の原因の1つに水巡りの悪さがあったりするのですが、漢方薬では、水の巡りを巡らせて頭痛が起こらないように治療します。
ところが、鎮痛剤は痛みを抑えても、水の巡りは一切、触りませんので、頭痛が慢性的だった場合は、鎮痛剤を飲んだところで、延々と治りません。
これを対症療法といいます。
わかりやすく言えば、原因をほったらかして、症状を抑えて、治したかのように誤魔化すわけです。
あまり認知されていないのですが、病院の薬のほとんどは、この『対症療法』というもので、要は、症状を一時的に誤魔化していることを治療と呼んでいます。
そして、医者は漢方薬の医学理論を知らないゆえか、どうも漢方薬も病院の薬と同じように考えていて、複数の症状を抑えてくれるものと思っているようです。
だから、効能効果の症状が、あてはまったら、その症状を治してくれると勘違いしています。
だから、患者さんが訴えている症状をいくつか都合よく当てはめて、後は不思議効果が勝手に治してくれると思っているようですね。
当然、そんな不思議効果はないので、医者の選んだ漢方薬だと、治るか治らないかは、あてずっぽうの運任せになるのです。
症状から選ばないわけ
漢方薬は、体質に合わせて選びます。
そして体質とは、その人の気になっている2、3個の症状のことではありません。
体質を分析しようと思ったら、全身の症状と状態を調べる必要があります。
また、体質とは、気になっている病気や症状の原因のことでもあります。
例えば、頭痛が水の巡りの悪さが原因の場合は、水滞証といいます。
ですので、水滞証とは、水の巡りが悪い体質のことを指し、同時に頭痛の原因のことを指します。
要は、頭痛は、何が原因で発生しているのかを全身の症状と状態から探っていくわけです。
頭痛が発生する原因としては、大きくは、8つの原因があります。
頭痛によく出される五苓散は、水の巡りを巡らせる専門の漢方薬ですが、頭痛の原因が水の巡りの悪さではなく、血の巡りの悪さだった場合は、原因と漢方薬の効果がズレているため、五苓散は全く効きません。
漢方薬は、原因と漢方薬の効果を合わせないと効果がありません。
不要な熱がこもっていることが原因で、頭痛が起こっている人に、温めて頭痛を治す漢方薬を選んだ場合は、効果どころか、頭痛がひどくなるだけなのです。
ですので、まず、『自分の頭痛の原因は何なのか?』を知る必要があります。
そして、原因は全身の症状や状態から分析して導き出します。
原因がわかれば、次にどんな漢方薬が最適なのかを探していきます。
漢方薬の効能効果に書いてある症状は、体質を分析するための参考の情報でしかありませんので、漠然と「頭痛って書いてあるから、頭痛を治してくれるだろう」と考えても効果がありません。
ある漢方薬自体が、東洋医学的には、どんな効果があるのかを具体的に知っておく必要があります。
例えば、五苓散は、水の巡りを巡らせるだけのものではなく、体全体の水の巡りの悪さである「水証」と、気が顔から上に滞る「気の上衝」の合わさった体質の人に合う漢方薬です。
ですので、効果としては、頭痛を治すというわけではなく、体全体の水の巡りを調整し、昇っている気を降ろす効果のあるものなので、頭痛だけでなく、あなたの体質が「水証」、「気の上衝の証」であれば、嘔吐性の腸炎、心不全、結膜炎、めまい、乗り物酔い、インフルエンザでも使います。
これらの色々な病気に使える。という意味ではなく、あくまで漢方薬は体質を調整するものなので、あなたの体質が「水証」、「気の上衝の証」なのか?ということが重要となります。
こんな感じで、他の漢方薬も、その漢方薬が治せる体質のパターンがあり、その体質のパターンと漢方薬の調整できる効果を合わせるのですね。
まとめ
長く業界を見てきましたが、体質を分析して、漢方薬を選んでいる医者には、今のところ会ったことがありません。
実際にどんな風に漢方薬を選んでいるのかは、処方された患者さん自身から詳しくお聞きしています。
医者が選んだ。というよりは、「なぜか漢方薬が出されていた」とか、冒頭にお話ししたようなマニュアルを見ながらとか、ツムラのシートを患者さんに確認してもらいながら、など、素人同然の選び方が大多数のようです。
たまに、漢方専門医とか東洋医学科がある医院の話を聞きますが、説明の時に東洋医学の専門用語を使っているだけで、結局、症状や病名をあてはめて選んでいる。というのが現状のようです。
漢方薬は、体質を分析し、その体質に合わせて選びます。
2、3個の症状をあてはめて選ぶのではなく、全身の症状から体質を分析します。
ですので、漢方薬を処方される際に以下の3点をチェックしていください。
1例えば、頭痛という1つの症状であっても全身の症状と状態をチェックしている。
2チェックした症状と状態を「証」として診断し、証の説明があった。
3どんな効果があり、どんな副作用の可能性があるのか、治療方針をきっちりと説明できている。
この3つがない場合は、マニュアルを見て出しているだけ。
つまりど素人でもできる選び方なので、治るも副作用でひどくなるのも運任せになります。
当店では、人それぞれの体質を分析して、その人独自の原因に合わせて漢方薬をお選びします。
ご希望の方は、下記、ネット相談や店頭相談の予約カレンダーから、ご相談ください。
あなたの現在の体質や原因を判断して、治療方針をご提案いたします。
相談は無料です。
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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ 漢方概論:創元社
◯ 漢方方意ノート:創元社
◯ 漢方臨床ノート(論考編):創元社
◯ 金匱要略ハンドブック:医道の日本社
◯ 傷寒論ハンドブック:医道の日本社
◯ 素問:たにぐち書店
◯ 漢方治療の方証吟味:創元社
◯ 中医診断学ノート:東洋学術出版社
◯ 図説東洋医学:学研
◯ 中国医学の秘密:講談社
◯ 陰陽五行説:薬業時報社
◯ まんが漢方入門:医道の日本社
