世間の薬膳は実は健康とあまり関係ありません(本来の薬膳とは)
漢方相談をしていると「薬膳のことも詳しいですか?」とよく聞かれます。
はい、当然、詳しいというか、そもそも薬膳と漢方薬に隔たりはないので、本来は、薬膳を知っていれば、漢方薬で難病なんかも治療できるし、漢方薬のことを知っていれば、薬膳にも詳しいです。
それは、どちらも共通して、同じ東洋医学の医学理論に基づいているからです。
ところが、最近、ネットや動画、はては薬膳レストランなどの話を聞いていると、どうもよくわからない遊びのような、エンタメのような薬膳として説明されていることが多いようです。
国際中医師で日本漢方家の松村です。
大阪であらゆる病気の漢方相談をさせてもらっています。
薬膳を学びたい方というのは、今の不快な症状を治したかったり、健康になりたかったり、アンチエイジングを目指したかったり、だと思います。
そこで今回は、『巷の薬膳は、そういった健康とはあまり関係ない』という理由をお話しします。
そして本来の薬膳がそれらのことに本当に役立つのか?を解説し、薬膳や食べ物と健康とはどういった関係があるのかを本格的な東洋学理論を交えて説明していきたいと思います。
世間の薬膳は健康とは関係ないエンタメ
そもそもの話なのですが、薬膳とは、生薬とよばれるものと食べ物を合わせて料理したものです。
生薬とは、漢方薬を構成する原料でもあります。
例えば、葛根湯は、「葛根、麻黄、桂枝、芍薬、大棗、甘草、生姜」という「生薬」から成り立っています。
生薬も「植物の根や葉」なので食べ物ですが、通常の食べ物よりも薬的な効果の強いものです。
そして生薬のみで構成したものが漢方薬で、それに食べ物を合わせたものが薬膳となります。
そして、漢方薬は、風邪とかでもない限り、何ヶ月か飲み続けて、体を治していきます。
つまり、漢方薬よりも効果の弱い薬膳だと尚更、毎日、毎食、続けないと体は何も変わらない。ということです。
ですので、薬膳教室で習った料理をたまに作るとか、たまに薬膳レストランに行くのでは、まったく健康と関係がありません。
うちの患者さんで、自分のアトピーを治すのに薬膳教室に習いに行った。と話しておられましたが、その方のアトピーを薬膳で治そうと思ったら、リアルに休みなく毎日、毎食、2年ほど続ける必要があるかと思います。
そもそも生薬は、食べ物よりもはるかに金額が高く、また少ない分量では売ってません。
おまけに本格的な薬膳として料理するとものすごく不味いです。
かといって、生薬を使わなけば、不味くなくなりますが、効果がなくなります。
普通なら1ヶ月と続かないと思います。
また薬膳レストランの薬膳で体を良くしようと思ったら、1食1,500円として、3食90日でなんと40万円以上かかります。
これだったら漢方薬がいかに効率良く安上がりかがわかりますよね。
という感じで、実際、続けない限り、効果はないので、世間の薬膳って東洋医学「体験」でしかありません。
世間の薬膳の嘘
東洋医学って、難解なのか、世間ではテキトーなことを言ってることが多いです。
この間、息子が「薬膳のことを調べてみるわ」といって、僕に色々と調べたことの疑問を質問してきました。
そうすると出るわ、出るわ。ネットの薬膳情報は嘘だらけでした。
ひどかったのは、「スーパーの食材で作る薬膳」というもの、そもそも薬膳って生薬が入ったものです。
当然、スーパーに生薬は売ってません。
あえて、スーパーにある生薬をあげると「生姜」「ごぼう」「大葉」くらいなもので、これで何を作れというねんという話。
おまけにその効果の説明も間違っていて、「鉄が多いから貧血に良い」とか、「亜鉛が多く含まれている」とか、ただの料理を西洋医学の栄養学的に説明しているだけでした。
残念ながら、薬膳の東洋医学と西洋医学や栄養学は一切、関係がありません。
次によくあるのが、上中下品の嘘です。
生薬は、上品、中品、下品とランク分けされています。
その説明は間違っていないのですが、これは、かなりざっくりと毒性度などで生薬を区分けしているのですが、漢方薬を使う際に実は上中下品なんてランクで考えません。
「そういったランクがあるよ」程度の考え方で、実践では数種類の特殊な生薬でしかこういった分け方をしません。
五行論という図をみたことがあるでしょうか?
これ、実は、医学の話ではなく、人生や地球の法則も含めた古代の哲学なのです。
これを使って、あなたは、「肝」が悪いとか「腎」が悪いとか診断めいたことをしている人がいるのですが、これは、「どこか1つの臓器が悪い」というのを探すものではありません。
全体の傾向をざっくりと診るもので、あえていうなら五臓六腑は、どこが悪いのではなく、どれが何割ずつ悪いのか、五臓六腑全部をみていきます。
また、食べ物には温める。とか冷やす。という「薬性」というものがあるのですが、魚は冷たいところにいるから冷やす性質があるとか、ざっと簡素化しすぎて嘘になっていたり、冷やす性質も加熱したら温める性質になるとか嘘を言っている人もいます。
それだったら、寒い国のものは全部、冷やす性質だし、料理で加熱したら全部、温める性質になるので、「そもそもの性質とは?」って話になりますよね。
かなりざっくりと大まかにみれば、間違ってもないかもしれないですが、実践で実際に体を良くするためにと考えた時には解像度が粗すぎて、嘘になってしまって役に立ちません。
なによりも問題なのは、効果の説明が西洋医学や栄養学になっていて、誰も本来の薬膳としての効果の説明になっていないのです。
薬膳の効果とは?
生薬や食べ物の効果とは「血管を拡張して、血を巡らせる」とか、「亜鉛が豊富に含まれる」といったものではありません。
生薬や食べ物の効果は、自然界の働きと同じものとなります。
どういうことかというと、「冷やす」「温める」「昇らせる」「降ろす」「集める」「散じる」「潤す」「乾燥させる」といったものです。
これを寒熱、昇降、収散、潤燥という感じで呼びます。
この効果を西洋医学的な感覚で考えると混乱します。
というのも、東洋医学の世界では、どんな人にも良い効果というものが存在しません。
例えば、サプリ的な感覚だと「ビタミンEが血の巡りをよくしてくれる」と説明され、これだと一応、人間だったら誰でも効くという感じになりますね。
実際には、ほとんど誰にもあまり効果がなかったりしますが…。
一方、東洋医学では、誰にでも良い効果というものは存在しません。
例えば、頭痛で、漢方的には冷えて頭痛になる人、熱がこもって頭痛になる人がいます。
単純に同一人物でも、冬になった頭痛は冷えが原因でも、真夏の熱中症の頭痛は反対の熱が原因になったりします。
この時に、頭痛の原因が冷えの場合は、効果のあるものは「温めるもの」となります。
逆に冷やす効果のものは、毒になるのです。
原因は人によって違うし、同一人物でもその時の状況や状態によって原因が変わるので、こんな感じで、どんな体質の人の頭痛にでも効く、生薬や食べ物というのは存在しません。
他にも、頭痛には人それぞれ、色々な原因があり、気が下がって脳に気が不足していたら、昇らせて、逆に気や血が上がりすぎて留まっていれば、降ろして、緊張で気が滞っていれば、散じます。
湿疹なら、汁がでやすくジュクジュクなら乾燥させ、逆に乾燥して出血しているなら潤して治します。
つまり、生薬や食べ物の効果は、厳密には、その人の体質や原因によって、「毒にも薬にもなる」ということなのです。
ですので、薬膳も漢方薬も「ある条件」が必須となり、その条件を満たさなければ、効果がないどころか副作用の方が強くなってひどくなったりします。
生薬や食べ物を効かせるには
東洋医学の生薬や食べ物の効果は、「〇〇成分が〇〇の効果がある」というものではありません。
これは、西洋医学の医学理論で東洋医学とは一切、関係がありません。
東洋医学では、「どんな効果があるのか?」以前に、「自分の体はどんな効果が必要なのか?」
これが必須条件となります。
それは「どんな症状があるのか?」ではありません。
でないと温めれば良いのか?冷やせば良いのか?わからないし、この選択を間違えたら、効果がそのまま毒になります。
これは、生薬や食べものに限らず、漢方薬もこの原則で成り立っています。
ですので、「めまいに効く漢方薬」なんてものはなく、めまいの原因が熱なのか?冷えなのか?緊張なのか?水なのか?で、選ぶ漢方薬が色々と変わってくるのですね。
薬膳の効果とは、『あなたの今の体の状態に合ったもの』になるので、そもそも体質の分析をしてない時点で、何の生薬や食材を選べばいいのかわからないわけです。
本来の薬膳とは、何十人も薬膳師がいて、漢方医がいて、その先生たちが皇帝の体質を分析して、今日、何が必要なのかを考えて料理するわけです。
だから本当だと、薬膳教室に行った時や薬膳レストランに行った時に最初にやってもらわないといけないのは、体質を分析すること。
そうすると、生徒やお客さんとして来た人、一人一人、メニューが変わるわけです。
もちろん、ちょろっとアンケートみたいに症状を聞くことが体質分析ではありません。
うちでは、体質を知るために50項目、250箇所のチェックを行ってもらう問診票を用意していて、早い人でも終わるまでに15分はかかります。
そんなことが薬膳教室や薬膳レストランで、できるわけもないので、なんとなく選んだ生薬の入った薬膳っぽいものを提供するわけですね。
例えば、温める力が強い生薬や食材を使えば、食べた後に「あれ?なんかポカポカする」みたいに感じることができますが、結局、病気や体調を治したりするには、自分の体質に合っていないと毒にもなるし、毎日、コツコツと続けないと治ることもないので、単なる薬膳エンターテイメントで終わる#s143世間の薬膳は実は健康とあまり関係ありません(本来の薬膳とは)のですね。
その点、漢方薬は、料理しなくても強い効果の生薬が複数、絶妙なレシピに基づいて構成されていますので、体質分析ができれば、漢方薬の方が体を治すのに手っ取り早いと僕は思っています。
ちなみに食べ物で体を良くしようと思ったら、難解な薬膳や体質分析方法を勉強するよりも、砂糖、塩、アルコール、コーヒー(カフェイン)を控えることから始めるほうがよほど体によいです。
当店では、人それぞれの体質を分析して、その人独自の原因に合わせて漢方薬をお選びします。
ご希望の方は、概要欄にネット相談や店頭相談の予約カレンダーを貼ってありますので、ご相談ください。
あなたの現在の体質や原因を判断して、治療方針をご提案いたします。
相談は無料です。
また、今回のお話が面白かった、
役に立ちそうだと思われた方はぜひ高評価、チャンネル登録をお願いします。それではまた。
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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ 医心方:出版科学総合研究所
◯ 東方栄養新書:メディカルユーコン
◯ 中医薬膳学:東洋学術出版社
◯ 薬膳素材辞典:源草社
◯ 食養生の知恵 薬膳食典食物性味表:日本中医学院
◯ 薬膳と漢方の食材小事典:日本文芸社
◯ 素問:たにぐち書店