無月経の原因、症状、病院の治療方法について
- 原発性無月経の症状
- 原発性無月経の原因
- 原発性無月経の診断・問診
- 続発性無月経の症状
- 続発性無月経の原因
- 続発性無月経どうかの診断基準
- 続発性無月経を診断するための問診
- 続発性無月経を診断するための検査
- 無月経の原因になるかもしれない薬
- 続発性無月経の治療
- 現実の治療(病院で治らない理由)
西洋学的な立場からみた無月経をまとめてみました。
最後の『現実の治療(病院で治らない理由)』でなぜ病院やホルモン剤で無月経が治らないのか、その理由を説明しています。
無月経とは通常1ヶ月間隔位で起こる生理が全く起こらない状態です。
無月経には病的なものだけでなく妊娠中や授乳中、閉経後などの正常な状態での無月経もあります。
無月経の人は排卵がないことが多く、月経や排卵は妊娠するために必要なことなので、無月経の人は妊娠できません。
無月経には2つのタイプに分類されます。
一つは「原発性」の無月経ともう一つは「続発性」の無月経です。
どちらも原因や診断は変わってきます。
原発性無月経の症状
◉原発性無月経平均12歳で始まる月経が18歳になっても初経が起こらないことを原発性無月経といいます。
- 原発性無月経特有の症状はありません。何らかの症状から無月経を診断することはできません。
単に「最初からずっと月経がない」という状態のことを指します。
原発性無月経の原因
- 遺伝性疾患:染色体異常の場合が多く、視床下部、下垂体の異常、性管分化異常が続いていることが影響します。
ターナー症候群、カルマン症候群、先天性副腎過形成症、性別不明性器などの病気などが関係していることがあります。
- 先天性異常:子宮や卵巣の形や機能に先天的に異常がある。
原発性無月経の診断・問診
- 13歳までに乳房の発達など思春期の徴候がみられない。
- 14歳までに陰毛がみられない。
- 18歳まで月経が始まらない。
【問診】
「血縁者の中に無月経の人がいるか?」
「母親の妊娠中あるいは授乳中にホルモン剤等を使用したか?」
「第二次性徴の特徴がどんなものだったか?それが発現した時期はいつなのか?」
を調べることが重要です。
続発性無月経の症状
◉続発性無月経続発性無月経とは,これまであった生理が 3 カ月以上停止したもの(妊娠中、産褥、授乳期、閉経後除く)をいいます。
- 続発性無月経特有の症状はありません。何らかの症状から無月経を診断できません。
続発性無月経の原因
- 妊娠、授乳、閉経(病的な状態での無月経ではありません)
- ダイエットによる体重減少。
- 強いストレス。月経リズムには視床下部が関わっていて、視床下部や下垂体はストレスや自律神経などと深く関わっています。
うつや精神疾患で使用する抗うつ薬や抗精神病薬が下垂体の腫瘍を生み出したり、続発性無月経につながることがあります。
- 過度な運動。特に競技系スポーツや姿勢を低く保つスポーツの人に続発性無月経が起こりやすいです。
- 放射線やケガによって視床下部を損傷する。
- 下垂体の機能不全。プロラクチン濃度の上昇や抗うつ薬や抗精神病薬の影響、下垂体の腫瘍などで下垂体の機能不全がおこり月経のホルモンリズムに影響します。
- 多嚢胞性卵巣症候群。
- 子宮筋腫。
- 子宮内膜症。
- 早発閉経(早発卵巣不全)
- 経口避妊薬、抗うつ薬、抗精神病薬など特定の薬の使用。
- 慢性的な病気。
- 一部の自己免疫疾患。
その他、甲状腺の病気、がん、HIV感染症、放射線療法、頭部損傷、クッシング症候群、副腎の機能不全、感染または手術による子宮の瘢痕組織など。が原因として考えられます。
月経は視床下部や血の巡り、血そのものなど、いろいろな要因が関わっているので、ストレスや「健康でない」という状態で月経が来なくなったりします。
続発性無月経どうかの診断基準
- 妊娠していない状態で、月経が3回なかった。妊娠の可能性に思い当たるのであれば、妊娠検査薬を使用する。
- 1年の月経回数が9回未満である。
- 月経周期のリズムが急に変わった。
続発性無月経を診断するための問診
続発性無月経は、さまざまな影響や原因が考えられ、特定するのが非常に難しいので問診で詳しく知ってもらうことが重要です。
【医者に問診してもらわないといけないもの】
- 「月経期間はどれくらいだったか?」
- 「月経が規則的にあったことはあるか?それはいつくらいで、どれくらい続いたか?」
- 「月経時の状態はどれくらい重かったか?」
- 「月経に関連して乳房や胸の張りや痛み、気分の変動はあったか?」
- 「運動はどんなものをしているか?」「どんな運動の経験があるのか?」
- 「ダイエットの経験はあるか?」
- 「どんな薬を使用しているか?」「どんな薬を使用したことがあるか?」
- 「食べ物や間食はどんなものを食べているか?」
- 「頭部の怪我の経験があるか?」
- 「乳頭から乳白色の分泌物が出たりしているか?」
- 「放射線療法、化学療法薬を使用しているか?」「放射線療法、化学療法薬の使用の経験があるか?」
続発性無月経を診断するための検査
- ホルモンの血液検査
- 多嚢胞性卵巣症候群:ホルモンの血液検査、骨盤内のエコー検査。
- 子宮筋腫・子宮内膜症:エコー検査
- 甲状腺機能:甲状腺に関わるホルモンの血液検査。
- 下垂体の腫瘍や損傷:プロラクチンの血液検査、脳のMRI。
- 早期閉経の疑いの場合:染色体検査。
無月経の原因になるかもしれない薬
薬にはいろいろな副作用がありますので、薬自体が無月経の原因になっていることもあります。
特に心療内科で処方される薬は要注意の種類がかなりあります。
降圧薬:メチルドパ、レセルピン、ベラパミル
抗精神病薬:ハロペリドール、モリンドン、オランザピン、フェノチアジン系薬剤、ピモジド、リスペリドン。
抗うつ薬:パロキセチン、セレギリン、セルトラリン。
三環系抗うつ薬:クロミプラミン、デシプラミン。
消化器の病気の治療薬:シメチジン、メトクロプラミド、オピオイド、コデイン、モルヒネ。
女性ホルモンと男性ホルモンのバランスに影響を与える薬剤:合成アンドロゲン、ダナゾール
続発性無月経の治療
無月経は女性ホルモンの問題だけが原因ではありませんので、本来は、いろいろな角度から治療を考えていく必要がありますが、病院での治療は、ほぼホルモン剤を飲むことだけです。
【治療パターン1】
1 無月経が他の病気で起きている可能性があれば、それを先に治療します。
ストレスや体重減少などを改善するようにします。
病気の改善やストレス、体重減少の改善が難しいか、改善ができなさそうな場合はホルモン剤で治療します。
【治療パターン2】
最初にどの程度の無月経かを調べるための治療です。
1 黄体ホルモン剤を使用して月経的な出血が来るかをみます。この治療で月経のような出血がくる場合はしばらく、この治療を続けます。
2 黄体ホルモン剤で月経のような出血が来ない場合は、黄体ホルモンにエストロゲンも併用したピルで月経を来させるようにします。
【治療パターン2】
治療パターン2の2でピルを使用しないと月経のような出血が来ない場合は、こちらの「治療パターン2」に移ります。
1 カウフマン療法というホルモン補充療法で治療します。
プレマリン1錠を14日間服用し、プラノバールを1錠を14日間、服用し、これを1周期とします。
若い人の場合はカウフマン療法を3周期程、行います。
その後、治療を中止して無月経になった場合、再度、カウフマン療法を行います。
【治療パターン3】
排卵を起こした方がよいと判断した場合は、クロミフェンやクロミッドなどで排卵誘発剤を使用します。
1 排卵誘発剤をします。
2 排卵誘発剤で月経のような出血がなければ「治療パターン2のカウフマン療法」を3〜6周期、行います。
その後、治療を中止して、自然月経がくるかをみて、なければ、再度、排卵誘発剤を使用します。
現実の治療(病院で治らない理由)
西洋医学は理論的には、いろいろな検査を駆使して原因を探して治療していくようにみえますが、実際の現場では、ホルモン検査をするくらいで、ほぼ『ホルモン剤を補充すればなんとかなるだろう』と単純な発想しかなく、マニュアル的な治療になっています。
実際、全ての治療方法は、要は『ホルモンを補充しているだけ』です。
単純なホルモン不足で無月経になっているわけではないのですが、大体の病院は黄体ホルモン剤を使い、ピルを使用して月経のような出血をこさせて、ダメだったらカウフマン療法に移るといった感じです。
これを延々と繰り返しているだけのところがほとんどのように思います。
無月経はここに書いたように本来の西洋医学の理論からいけば、様々な要因と様々な要因が絡みあって起こっています。
漢方の根本治療の方向性からみると、人工的なホルモンを補充していることが、なぜ自然に月経を起こすことにつながるのか?
全く意味がわかりません。
ホルモン剤だけの治療では無月経のさまざまな要因や原因に対して治療していません。
人工ホルモン剤によって体を騙して『月経になったかのよう』 にしているだけのように思います。
言い方を変えれば、ホルモン剤という『薬による不正出血』が毎月、起こっているだけ。
まれにホルモン剤をきっかけに月経リズムが戻る人もいますが、残念ながら、なぜ人工ホルモン剤で自分自身の自然月経が戻るのか、エビデンス(科学的な根拠)はありません。
無月経の治療の本当の目的は『自分自身の力で月経が来るかどうか』です。
つまり、本来は本当に治っているかどうかは、ピルなどのホルモン剤をやめても自然月経が来ないと治っていることになりません。
月経はホルモンだけの問題ではなく、体全体で起こっているものですので、ホルモン剤で何ヶ月、治療しても、ホルモン剤を中止したら月経が来ない人は、漢方で体質全体を改善することも考えてみてください。
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【引用先及び参考図書、Webサイト】
◯今日の治療指針:医学書院
◯無月経 - 18. 婦人科および産科 - MSDマニュアル プロフェッショナル版 :
◯無月経 - 22. 女性の健康上の問題 - MSDマニュアル家庭版 :
◯月経不順・続発性無月経 - 日本産科婦人科学会
◯内分泌疾患 - 日本産科婦人科学会
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