漢方薬相談ブログ

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問診も取らずにどうやって漢方薬を選ぶのでしょうか?(病院の漢方薬)

  1. まともな方法で漢方薬を選ぶ先生は実はほとんどいない
  2. 問診をとらないで漢方薬を選ぶ本当の理由は?
  3. 適当にマニュアルでしか漢方薬を扱えない2つの理由
  4. まとめ

ある患者さんから質問されました。

「前に通っていた病院では一切、問診をとらないで漢方薬を処方していました。あれってどうやって漢方薬を選んでいるのでしょうか?」

ここで言う「問診」とは通常の「今まで薬でアレルギーが起こったことがありますか?」みたいなものでなく、漢方薬を選ぶために必要な体質を知るための全身の問診のことです。

その病院に通っていた当時は漢方のこと自体を知らなかったので、「なんか、おかしい…」と思いつつも、答えがわからなかったとのこと。

現在も保険適応の漢方薬を処方してもらっている患者さんの中には、同じように

『問診はいらないの?』

『体質の説明ってされたことがないけれど』

『漢方薬の効果の説明がないのだけれど』

と、どこか疑問、不安があるかもしれません。

患者さんが、こんな質問をされたのは、うちでは本来の漢方治療のやり方に則って病的体質である『証』を分析、診断し、証に基づいて今後の治療方針を決めて、漢方薬を選び、『現在の体質』『体質に対しての漢方薬の役割』『次に飲み終わる時の目標』を説明するからです。

あまりのなので気になったのだと思います。

まともな方法で漢方薬を選ぶ先生は実はほとんどいない

さて、その医者が「問診もとらないで漢方薬を処方した理由」は本人に聞いていないのでわかりません。

また、仮に僕が患者のフリをして説明を求めても、医者の得意とする能力である「オールスルー」で都合の悪いことは無視されると思います。

実は病院や漢方薬局も含めた漢方業界では病的体質である『証』を診て漢方薬を選べる先生は、ほとんどいません。

漢方治療の本来の方法は『証を診断し治療方針を決めて漢方薬を選ぶ』というのがスタンダードなのですが、なぜか、その基本中の基本は無視なのです。

証を立てて治療方針を考えて漢方薬を選ぶという様子はこちらの本を読むとよくわかります。

>漢方治療の方証吟味(1978年):創元社

誰かが処方した漢方薬を他の漢方の専門家や漢方の大先生達が、

「なぜ、その漢方薬を選んだのか?」

「その体質だと考えた根拠は何か?」

「今後、どう治っていくと考えたのか?」

をあーだこーだと話しあっていて、根拠の薄い説明には「勉強不足ですね」なんてキツイつっこみも入ったりしています。

とにかく選んだ漢方薬の根拠をこれでもかと周りの専門家がイジメのように質問し、それに答えていく様子が書かれている本です。

まかり間違っても、この治療論議の場で「ツムラのマニュアルに書いてあったからですよ」なんて言ったら、「お前は馬鹿か」と周りの専門家から袋叩きに合うと思います。

話がそれましたが、昔はこうやって、まともに証を立てて治療方針を考えて漢方薬を選んでいました。

では患者さんの質問にあったように、なぜ、最近の先生は問診もとらず、証も診断せず、漢方薬の説明もしないのでしょうか?

問診をとらないで漢方薬を選ぶ本当の理由は?

多分、答えは『できないから』です。

ある漢方薬局の先生と本音で話した時は誤魔化さずに「漢方の医学理論は難しすぎて、できない!」と言っておられました。

ちなみに、その先生は漢方専門薬局の先生で何十年もお店をされています。

悲しいですが業界の裏側はこんな感じです。

医者はどうなのか?

本音で漢方のことについて話したことがあるのは数名ですが、その人達は、はっきり『漢方はよくわからないから、マニュアルで出してる』と漢方薬局の先生と同じ意見を言ってました。

なので、『証を診断し治療方針を決めて漢方薬を選ぶ』ことはしないのではなく、やりたくてもできないというのが答えだと思います。

それ以外にも推測される理由があります。

適当にマニュアルでしか漢方薬を扱えない2つの理由

漢方薬を適当にマニュアルでしか扱えない理由は医者や病院の持っている元々の性質もあると思います。

人それぞれの体質を見極めようと思ったら、2、3の症状だけを聞いたって、それがその人独自の体質を現しているわけではありません。

「頭痛がする」「足が冷える」「月経痛がある」などの2、3くらいの症状だったら、女性だったら誰でもある症状です。

これでは、あなた独自の体質として判断できません。

隣の人も、その隣の人も、みんな同じ体質で同じ漢方薬になってしまうからです。

これでは漢方の『体質に合わせて選ぶ』という意味自体がなくなります。

かといって、人それぞれの体質を判断していこうと思ったら、うちみたいに230箇所もチェックがある問診票を書いてもらわないといけなくなります。

そもそも、問診票に細かく書いてもらったところで病的体質である『証』を診断できないし、仮に診断できたとしても、普段は3分診療で、実質、『薬を配っているだけ状態』の病院で、一人一人にそんな時間がかけられるでしょうか?

かけられません。

一人ずつに1時間とかかけてたら、24時間、待合室は一杯で、自分の番なんて回ってきません。

待合室にいるたくさんの人をこなしていこうと思ったら、現実は一人ずつの体質なんて診てられないのです。

また、医者が共通して持っていると思われるマニュアル思考があります。

医者は漢方薬を病名マニュアルで選びますが、実は西洋医学の薬も、ほぼマニュアルです。

皮膚科ならステロイドか、抗菌剤か、抗ヒスタミン剤のどれか。

胃腸内科なら胃酸を抑制する薬か胃酸分泌を促す薬。

検査の方法はいろいろありますが、肝心の治療薬はそれほどバリエーションがありません。

多分、その病院に通っている人は、みんな同じ薬を飲んでいます。

本職の西洋医学での治療でもこんな感じなので、漢方薬だからといって一から漢方の医学理論に基づいて勉強するわけがありません。

ヘタしたら良いとか悪い以前にマニュアル思考自体がいい加減な治療になると思ってないですから。

医者が参加しているツムラの漢方薬の勉強会に参加したことがありますが、その時は医者が講師の先生に「糖尿病には何の漢方薬を出せばいいですか?」って質問していました。

こういった質問は漢方薬局の先生も大好きで、昔、漢方薬局の先生向けに僕が公演した時も「◯◯病には何の漢方薬を出せばいいですか?」って質問が多かったです。

何にしろ、僕が最も聞きたいのは『なぜ、漢方独特の医学理論をわかってないのに漢方薬に手を出すのか?』を聞きたいですね。

今度、近所の耳鼻科にでも行って、漢方薬を出すように、それとなく誘導して、理由、聞こうかな?

まとめ

『前に通っていた病院では一切、問診をとらないで漢方薬を処方していました。あれってどうやって漢方薬を選んでいるのでしょうか?』

という患者さんからの質問。

答えは
『問診をとっても体質判断できないし、漢方薬の効果も治療方針も説明できないから』だと思います。

漢方薬局の先生も漢方薬の処方をしている医者も、どちらも『漢方の医学理論』わからないけど、処方したいみたいです。

これが、漢方業界の真実です。

「えー嘘でしょ?」と思う方は、漢方薬局、病院で漢方薬を処方された場合に『自分の証』『漢方薬の効果』『今後の見通しと治療見解(治療方針)』つまり、マニュアルで選んだという以外の根拠を聞いてみてください。

もしくは、これらの『漢方の基本的な診断理論や医学理論がなぜ、必要ないと思ったのか?』を聞いてみてください。

明確で理論的な答えを聞いた人がいたら、できれば僕にも教えてください。

僕もなぜ、「証や治療方針など考えずに漢方薬を処方してもよい」と考えたのか知りたいです。

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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ツムラ医療用漢方マニュアル
◯ 漢方概論:創元社
◯ 漢方方意ノート:創元社
◯ 漢方臨床ノート(論考編):創元社
◯ 金匱要略ハンドブック:医道の日本社
◯ 傷寒論ハンドブック:医道の日本社
◯ 素問:たにぐち書店
◯ 漢方治療の方証吟味:創元社
◯ 中医診断学ノート:東洋学術出版社
◯ 図説東洋医学:学研
◯ 中国医学の秘密:講談社
◯ 陰陽五行説:薬業時報社
◯ まんが漢方入門:医道の日本社

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

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