漢方薬は3種類の効果を同時に考えないと効かない
漢方薬は体質に合わせて選ぶものです。
言うまでもないくらい、くだらないことですが不妊症という西洋医学的な病名に当帰芍薬散、アトピーという病名に十味敗毒散、頭痛という症状に五苓散など、医者や漢方を知らない素人の人がやっているような、病名にあてはめたり、症状にあてはめたりして漢方薬は選ぶ方法は、完全に間違った方法です。
漢方薬には『その漢方薬が合う人の条件』というものがありますが、そこに病名や症状が書いてあります。
ちなみに病名は漢方とは何の関係もありません。
実はこの条件(漢方薬に書いてある症状)を『それが、そのまま、あてはまったらその病名や症状が治る』と勘違いしている人が多いです。
その中で特にひどいのが医者です。
漢方薬も薬ですから、症状があてはまるかどうかとは別に『その漢方薬の効能効果』がないといけません。
例えば、当帰芍薬散に書いてある冷えや貧血傾向などの症状が、自分にあてはまったとします。
当帰芍薬散の条件にあてはまったからって、具体的にどう治るのでしょうか?
病院の薬なら「何かの成分がネズミやウサギの体内のどこかのホルモンに作用した」とか、そういった具体的なデータがあり、それが効果となります。
これをエビデンス(科学的根拠)と言います。
『証拠や根拠がない薬』なんて、ただの詐欺ですよね。
なのに、『漢方薬になると、その証拠や根拠はいらないのか?』
もちろん、必要です。
良くない状態の体質があって、その体質を治す効果が存在します。
漢方治療は『良くない状態の体質』に対して『漢方薬の効果』がマッチングするから治るのです。
漢方薬の効果と西洋医学の効果は全く違うもの
漢方薬の効果は、西洋医学とは何の関係もないので、西洋医学的な「血管を拡張する」とか、「胃酸を出すホルモンを抑える」などの成分や効果はありません。
漢方の効果は科学とは関係なく、『水の巡りを整える』とか『熱を発散させる』というような、イメージ的なものです。
『水の巡りが悪いから頭痛がしている』と漢方薬を処方する先生が考えるなら、『体の上の部分の水の巡りを整える漢方薬』を選べばいいのです。
この時に『頭痛の本当の原因は冷え』なのに、『体の上の部分の水の巡りを整える漢方薬』を選ぶとミスマッチで治りません。
体質を合わせるというのは、『あなたの現在の体質と漢方薬の効果を合わせる』こととも言えます。
そして、実は、どの漢方薬にも効果は2種類あります。
例えば当帰芍薬散の効果
漢方薬はいろいろな生薬から作られています。
例えば、当帰芍薬散散は『当帰、川芎、芍薬、白朮、茯苓、澤瀉』という6種類の生薬から成り立っています。
この6種類の生薬でつくられているものを当帰芍薬散散と呼びます。
漢方薬は薬として見るよりも料理で見るとわかりやすいです。
八宝菜は、豚肉、エビ、イカ、うずら卵、シイタケ、キクラゲ、タケノコ、ニンジン、ピーマン、白菜、玉ねぎ、チンゲンサイなどで作られた料理です。
八宝菜という食材はなく、いろいろな食材で構成されたものを八宝菜という料理名で呼んでいます。
八宝菜としては、鶏ガラ的な塩っぽい旨味と白菜や玉ねぎにエビイカなどが混ざったなんとも美味しい味があり、それぞれの食材にはそれぞれの味があります。
ちなみに八宝菜の八宝とは8つの食材ではなく、「たくさんの」という意味です。どうでもいいか。
当帰芍薬散散は『当帰芍薬散としての効果』と『それぞれの生薬の効果』があります。
『当帰芍薬散』としては以下の効果があります。
【補血】 少なくなった血を補う。
【陰性の駆瘀血】 温めて血の巡りを促す。
【利水】 水の巡りを促します。
【滋養強壮】 体力を高めます。
【精神状態の調整】 落ち込む、不安になるなど、どちらかというと沈みがち系の精神の調整をします。
ちなみに漢方薬はどれも、【利水】とか【補血】とか似たような作用です。
その『似たような作用の組み合わせの違い』や『効果の強さの違い』によって、効果が劇的に変わります。
それらの『効果の組み合わせの違い』は、人それぞれ違う体質に合わせるためです。
だから、漢方薬の治療は『体質と合わせる』というのですね。
『当帰芍薬散散はネズミのホルモンを活性化させる』なんて、医者が考えているような効果ではありません。
そもそも、ネズミのホルモンを活性化するにしても、『当帰芍薬散散』の『何』が『ネズミのホルモン』を『活性化』させるのでしょうか?
それは実は、何1つわかっていませんが、それが当帰芍薬散散のエビデンスだと思っているなら、医者って思っているよりも科学的でないし、いい加減ですよね。
当帰芍薬散に含まれる生薬の作用
当帰芍薬散のもう一つのは作用は、生薬それぞれ、『当帰、川芎、芍薬、白朮、茯苓、澤瀉』の作用です。
説明を簡単にはしましたが、
【当帰】 血を増やし、温めて血と気の巡りを促します。
【川芎】 温め、気を発散させ、気の活性化の方向から血の巡りを促す。
【芍薬】 水の巡りを促し、気や筋肉の緊張を緩めます。
【白朮】 消化器や体の表面の水の巡りを促します。
【茯苓】 胃内の余分な水を取り去ります。
【澤瀉】 水の巡りを促します。
生薬の効果でも似たような働きのものが多いです。
当帰芍薬散の生薬のほとんどが水の巡りを促す利水です。
説明を簡単にしましたので、似ているように見えますが、厳密には、それぞれの生薬が『体のどの部分に効くのか』『どれくらいの効果の強さなのか?』『薬の体に対する負担はどれくらいなのか』といったような違いや、それぞれの生薬が『温める性質』だったり『冷える性質』だったりします。
ちなみに澤瀉以外は温める性質ですが、澤瀉が冷やす効果なのですね。
効果の考え方には、まだまだあります。
それは生薬と生薬の組み合わせの効果です。
例えば『当帰+芍薬』とか『白朮+茯苓』とか、組み合わせによって効果が変わってきます。
となると漢方薬の効果は1種類の漢方薬につき、3種類の異なる効果がありますね。
漢方薬の効果は3つ
『当帰芍薬散全体としての効果』から、その人の体質や全体的な治したい方向性が合うかを考えます。
次に『それぞれの生薬の効果』は、体の各部分で、どのように効いていかないといけない効果なのかを考えます。
この時にその人の体質に合わない生薬の効果も検討します。
最後に『生薬と生薬の組み合わせの効果』は体の不調を整えるために、部分部分の体の機能の連携を助ける効果として考えます。
この3つの効果を同時に考えて、当帰芍薬散の効果が必要な体質なのかを考えて漢方薬を選ぶのですね。
医者がやっているような『漢方薬を売りたいメーカーさんがネズミのホルモンを活性化させるって言ってた!』なんてデタラメを鵜呑みにして子供が考えるみたいな単純な根拠で漢方薬を選んだりはしないのです。
3つの効果を同時に考えずに選ぶ漢方薬はお遊びレベルでレベルが低すぎて医療とは呼べません。
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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ ツムラ医療用漢方製剤マニュアル
◯ オースギ医療用漢方製剤マニュアル
◯ 漢方方意辞典:緑書房
◯ 漢方診療医典:南山堂
◯ 類聚方広義解説:創元社
◯ 勿誤薬室方函:創元社
◯ 漢方処方応用の実際:南山堂
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅠⅡⅢ:薬局新聞社刊
◯ 平成薬証論:メディカルユーコン