花粉症や鼻炎を漢方薬で治療する方法
花粉症を漢方薬で治すとなると、まっ先に小青竜湯という処方が浮かぶのではないかと思います。
これは、単純!安直!浅い!としか言いようがない低レベルな選び方ですね。
『花粉症=小青竜湯』という漢方薬の選び方は、病名漢方といって、「西洋医学の病名で東洋医学の漢方薬を選ぶ」という、本来の漢方から考えたら意味不明なマニュアル方法ですが、医者あたりは、漢方の医学理論の知識がないため、この意味不明な方法でしか漢方薬を選べません。
当然、漢方薬は、東洋医学の理論でもって、原因や病気的な体質を調べて、その原因を治せる漢方薬を選ぶので、花粉症だから小青竜湯ではないのです。
では、本来の東洋医学理論に則って治す場合は、どんな風に治すのでしょうか?
ちなみに漢方では、病名で漢方薬を選ぶわけではないので、鼻炎を治すのも花粉症を治すのも同じです。
病院の花粉症の治療
病院の花粉症の治療は、ほぼ、抗ヒスタミン剤ですね。
アレグラ 、ザイザル、タリオン 、デザレックスなどです。
抗ヒスタミン剤の効果は、炎症反応物質を抑えて、炎症反応を抑えるので、炎症のせいで起こっている鼻水や目のかゆみが治ります。
ステロイド剤なども処方します。
メカニズム的には違いますが、作用的には、同じように炎症を抑えます。
漢方薬で医者が好きなのは、小青竜湯ですね。
ちなみに漢方の医学理論で花粉症というものはありません。
そりゃそうですよね。漢方薬が生まれた2千年前から近年までは、花粉も何も自然の中で生活してたのですから。
大昔の人が「俺、花粉症なんだ」なんて言われても、都会だろうと、自然に囲まれているから、「ごめん、意味わかんない」となっちゃいます。
小青竜湯は、花粉症を抑える成分が含まれているわけでもなく、花粉症を抑える効果でもなく、『表の寒証』『水毒の証』『虚証』という原因もしくは病的な体質の人に使うものです。
花粉症に使うのものではなく、花粉症の人でこういった原因の人に使います。
ここのところ、めっちゃ重要です。
花粉症でも、その原因が『表の寒証』『肺の水毒の証』『脾胃の水毒の証』『虚証』でなければ、当然、小青竜湯とは違う漢方薬になります。
本当の花粉症の漢方治療の方法とポイント
それでは、本来の花粉症の漢方治療の方法を紹介します。
病院だと、原因がスギなの?とか、ヒノキなの?とか、はたまたPM2.5など、アレルゲンを調べようとしますが、結局、原因を調べようと調べまいと全員、抗ヒスタミン剤だったりするのですよね。
漢方では、アレルゲンは関係ありません。
現在の出ている症状や状態から『アレルギー反応が強くなっている体内の原因』を調べます。
花粉症といっても、細かにみていくと、『鼻水ズルズルの人』『目がかゆい人』『くしゃみがひどい人』『顔がかゆくなる人』『目もかゆく鼻水がズルズルの人』『全部の症状が合わさっている人』などなど、本当に人それぞれ。
もっと細かく分析すると、例えば、目のかゆい人でも、「目の付け根だけかゆい人」や「眼球を取り出して洗いたい!」という症状がひどい人もいます。
漢方では、この症状の種類とそれぞれの症状の深さというのが重要です。
実は、漢方薬があれだけの種類があるのは、似たような症状でも症状の強さと症状の組み合わせで選ぶ漢方薬が変わります。
なので、『鼻水ズルズルの人』だけの人と『鼻水ズルズルの人+目がかゆい人』は漢方薬が変わるし、同じ、『鼻水ズルズルの人+目がかゆい人』で症状が同じでも、症状が、よりひどかったら、漢方薬は変わります。
漢方的な花粉症や鼻炎の原因を分析する方法
漢方では、まず大まかにわけます。
大きくは水の巡り系と肝熱系です。
症状でいうと、鼻詰まりタイプと水鼻ズルズルタイプと目のかゆみタイプに分けます。
ちなみにくしゃみは、風邪などの場合は、『表の寒証』という体表面が冷えて、発生するタイプと鼻粘膜がなくなって、炎症が強くなって発生するタイプがあり、花粉症の場合は、大体が後者で、小青竜湯などは、前者となるので、小青竜湯に書いてあるクシャミは風邪が原因だったりするんですよね。
『〇〇の証』というのは、漢方独特の病気の原因や病的体質のことです。
鼻つまりタイプには、『実証』といって、病気を溜め込んでしまう体質が原因の場合や『上焦の熱証』といって、肩から上に熱がこもってしまうタイプや消化器が弱いことが原因の『脾虚の証』もあります。
その他にも『瘀血の証』『胸脇熱の証』『虚証』『寒証』『気の上衝の証』などなど、漢方は病名や症状に当てはめて選ぶものではないので、原因(病的体質)だけ鼻つまりだけでも、いくつも原因(病的体質)があるのですね。
あくまで東洋医学的な原因に対して漢方薬を選ぶので、これらの分析は、副鼻腔炎でも同じ考え方です。
原因が変われば、漢方薬も変わりますので鼻つまりだけでも結構な数の漢方薬がありますね。
水鼻タイプは、体表面が冷えて、気や水の巡りが滞る『表の寒証』、体表面の水の巡りが悪くなる『表の水滞証』という原因(病的体質)が多く、目のかゆみは、肩から上に熱がこもってしまう『上焦の熱証』や肝臓の熱を逃がせないようになっている『肝熱の証』という原因(病的体質)が多くなってきます。
まとめると花粉症の原因は、『実証』『表の寒証』『表の水滞証』『上焦の熱証』あたりでしょうか。
ややこしくなってきましたが、漢方はややこしいから、人それぞれの症状や状態に合わせられるのですね。
花粉症の漢方治療の難儀な点
通常、花粉症は、水系と熱系の原因が結びついて、『湿熱の証』というものが原因になっています。
基本は、この湿熱の証を治す漢方薬を選べば、良くなるのですが、そこは人それぞれをみる漢方。
中には、水鼻ズルズル系と目のかゆみ系の原因が分かれている場合があります。
原因が分かれている場合は、通常のどちらも治せる漢方薬だとどっちも治りません。
漢方は通常、全身の状態を調べて、全部の症状を治せるようにしていきますが、原因が分かれている場合は、治せる部分と治せない部分が出てきます。
この場合、根元の原因が分かれているので、2種類の漢方薬を飲みわけないといけないのですね。
この手のタイプは、飲み方を工夫しないといけません。
また、花粉症は期間限定の症状なので、『元の体質』と『その時期だけの体質』の両方を考える必要があります。
場合によっては、『元の体質』が悪すぎて、それを治さないと、花粉症対策の漢方薬がソコソコ効いても、体質から治ることは難しいかもしれません。
どちらにしろ、花粉症というものに合わせる漢方薬はありませんので、『小青竜湯でくしゃみがなくなったり、荊芥連翹湯で鼻つまりが取れる』なんて都合のよいことはありません。
しっかりと原因(病的な体質)を調べて漢方薬を選んでもらうようにしたほうがいいですよ。
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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ツムラ医療用漢方製剤マニュアル
◯オースギ医療用漢方製剤マニュアル
◯漢方方意辞典:緑書房
◯漢方診療医典:南山堂
◯漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯中医処方解説::神戸中医学研究会
◯平成薬証論:メディカルユーコン
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