漢方薬相談ブログ

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漢方薬モドキや漢方薬風サプリメントに気をつけて!

この間、患者さんから素朴な疑問がありました。

「先生はよく漢方薬や生薬と話しされていますが、漢方薬と生薬って何が違うのですか?」

今更、聞けない質問シリーズです。

生薬というのは、漢方薬を構成しているものです。

例えば、葛根湯なら「葛根、麻黄、桂枝、大棗、甘草、生姜」が生薬になります。

葛根湯がカレーというメニューだとしたら、生薬は、カレーをつくる材料にあたる「牛肉、たまねぎ、人参、じゃがいも、カレー粉」などですね。

生薬は、『自然のもので、薬のような効果があるもの』ですが、実は食べ物と大差がないものもたくさんあります。

例えば、さっきの葛根湯の生姜は漢方的には、ちょっとカッコつけて、「しょうきょう」といいますが、要は、ショウガです。

大棗も生薬的には「たいそう」と呼びますが、要はナツメですね。

葛根もクズとも呼ばれます。

葛根湯の中には、ショウガやらフルーツも入っていて、ちょっと変わった食べ物みたいな感じです。

漢方薬は生薬というもので構成されているのですが、漢方薬の効果のポイントは、その比率と設定にあります。

最近は漢方風サプリメントなるものも増えたりして、漢方薬という概念を悪用している商品が多くなりましたので、『漢方薬』『生薬』『漢方薬サプリメント』の大きな違いを知らないと全く治す力なんかなかったりするので、正しく知ってもらえたら幸いです。

漢方薬のキモはバランス

例えば、カレーは牛肉、たまねぎ、人参、じゃがいも、カレー粉で作れますが、この中の比率を牛肉を6割、たまねぎを1.5割、人参を1割、じゃがいもを1割、カレー粉0.5割にして水で煮たら、カレーになると思います?

答えは、ややカレー風味の牛肉のスープになりますね。

牛肉が得意でない方は、ちょっとしつこくてダメかもしれません。

今度はこの材料でカレーを作って、牛乳を結構、加えたらどうなるでしょう?

かなりマイルドなシチュー風カレーになりますね。

同じ材料でも比率が変わったり、何かが加わったりするだけで、違う食べ物になったりします。

カレーにはカレーになる基本的な比率があります。

これがしっかりしていて、鉄板メニューになっているのですね。

漢方薬も同じで、『生薬の種類と比率』で、葛根湯とか、当帰芍薬散とか、鉄板メニューが決まっています。

漢方薬の効果と生薬の効果に対する勘違い

たまに生薬と漢方薬を勘違いしている人がいます。

漢方専門とか言ってる先生もでこんな人がいるので、気をつけてください。

その勘違いは、生薬がいろいろと入っているといろいろな効果があると思っている人です。

漢方薬は生薬が一杯、入っているからアレコレと効果があるわけではなく、生薬、それぞれの役割が絶妙に組み合わさっているから、効果があるのです。

いわば、チームですね。

ネットや雑誌の漢方の説明を読んでいると当帰は女性ホルモンに効き、芍薬は血の巡りを促し…といろいろな効果があるから『当帰芍薬散はいろいろ効く!』みたいに説明していることがありますが、とんでもないデタラメです。

確かにそれぞれの生薬に効果があるのですが、それぞれの生薬がバラバラに症状を治すわけではありません。

漢方薬は1つのチームのような効果

生薬が、いろいろな症状を抑えてくれるなら、症状のある分だけ生薬をいれたスーパー漢方薬を作ればいいのです。

でも、漢方薬はそんな効果で病気を治すわけではありません。

例えば、当帰芍薬散は、当帰、川芎、芍薬、白朮、茯苓、澤瀉という生薬で作られているメニューです。

当帰は、温める効果があり、川芎と合わさると血を増やし効果にもなります。

芍薬は筋肉の緊張や気の緊張をゆるめてくれますが、当帰と合わさると温めて筋や筋肉の緊張を緩めながら、血と水の巡りの道をつくってくれます。

白朮、茯苓、澤瀉は、水の巡りを促すものなので、さっきの当帰+川芎と協力して、体の水の巡りを整えてくれるのですね。

こんな感じで、どんどん、生薬を足していくと良いものができるかというと、そんなことはなく、生薬の構成からすると、冷えて、水と血の巡りが悪く、血の不足している人を治す目的で作られています。

逆に血が普通もしくは多く、肝臓の余分な熱の影響によって、血の滞りが起こっている人は、効果が正反対になるので、当帰芍薬散を飲むとよけいに体が悪くなります。

ちなみに肝臓の熱の影響で血の巡りが悪くなっていても、足への血の巡りなども悪くなるので、熱が原因なのに足は冷えます

つまり、足が冷えるから『冷えている』とは限らないのです。

こんな風に生薬は、いろいろな効果を持っていますが、1つの目的のためにみんなが協力して、チームとして働いています。

ですので、最終的にどんな体質の人に使うのかが決まっているのです。

『好きな食材をなんでもぶち込めば美味しいものができるのか』というとそんなことはないですね。

さっきのカレーと同じで、ある程度の黄金比率というものは決まっていて、それに基づいて作るからカレーができるのです。

自分勝手なルールの漢方薬では効かない

1種類の生薬だけをサプリメントにしていたり、オリジナルな生薬の組み合わせを漢方薬と称してすすめていたりすることがよくあります。

実は、漢方薬というのは、2千年前からレシピ(生薬構成)が決まっていて、『どんな体質に使うのか』、その設定も決まっています。

オリジナルな漢方薬?は、良さそうな生薬を自分勝手に組み合わせているだけ。

いわば、創作料理ですが、食べ物でも、創作料理は、結局、失敗だったりすることが多く、結局、昔からのメニューの方が美味しかったりするのですね。

漢方薬局の中には、こういった1生薬だけのサプリメントオリジナルな自分勝手なルール設定になっている漢方薬もどきをすすめていることが多いのでお気をつけください。

それは漢方薬ではありません。

漢方薬は、病気の原因や病的体質である『証』を見極めて選ぶものです。

ですので、あなたの『証』を分析するための全身の問診もとらず、証をどのように治すのかの説明もない場合は、漢方薬風サプリメントか漢方薬もどきだと思ったほうがいいです。

そんなものは、医学理論がないため、治るか?治らないか?さらに悪くなるか?は、ただの運まかせとなります。

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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ 漢方方意辞典:緑書房
◯ 類聚方広義解説:創元社
◯ 勿誤薬室方函:創元社
◯ 漢方診療医典:南山堂
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ 平成薬証論:メディカルユーコン
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅠ:薬局新聞社刊
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅡ:薬局新聞社刊
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅢ:薬局新聞社刊

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

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