漢方薬相談ブログ

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補中益気湯の効果は疲れをとることではありません

この間、ある病院のサイトを見ていたら、そこの院長が『補中益気湯は疲れが取れる漢方薬なので僕も毎日、飲んで疲れ知らずです!」みたいな脳筋全開なページを見かけました。

病院の保険適用の漢方薬は、人それぞれの体質なんか完全無視で、マニュアルを見て選んでいるだけなので、こんなノリもしょうがないかとは思いますが、さすがに補中益気湯をサプリメント扱いとはひどすぎるので、漢方本来の補中益気湯の効果や副作用、補中益気湯はどんな人に合うのかを紹介したいと思います。

ちなみに男性不妊症で補中益気湯をマニュアル処方する病院が多いですが、もちろん!補中益気湯は男性不妊症の薬ではありません

保険適用の補中益気湯のおかしな効能効果

ツムラやクラシエなどの保険適用のそれぞれの漢方薬の項の説明を読んでいるとよく、下記のようなことが書かれています。

補中益気湯:添付文書より引用
【効能効果】
消化機能が衰え、四肢倦怠著しい虚弱体質者の次の諸症:夏やせ、病後の体力増強、結核症、食欲不振、胃下垂、感冒、痔、脱肛、子宮下垂、陰萎、半身不随、多汗症など

この効能効果を医者は完全に勘違いしているようなのですが、この説明、とんでもないウソというか、よく読んでみると日本語すらおかしいのです。

「夏やせ」っていう効能効果って何?

夏やせを補中益気湯がどうするのか?それが効能効果のはずです。

「胃下垂」っていう効能効果って意味がわかりませんよね。

治すなら、胃下垂を『どのようにして』治すのか?が効能効果のはずです。

例えば、結核症を治す場合、結核菌を殺す効能効果のある薬を使うわけです。

半身不随を治す効能効果って何?って話ですよね。

事故でも半身不随になったり、それこそ、人それぞれ原因が違うと思うのです、どんな半身不随でも治すって魔法の薬ですか!

これは単に病名と症状がズラズラと並んでいるだけですが、なぜか、「病後の体力増強」だけが効能効果っぽくなっているところが、より日本語が破綻していることがわかります。

ちなみに、効能効果の欄に症状が書かれているからといって、この症状を治すという意味ではありません

ここで書かれている病気や状態をヒントに、体質を分析して、補中益気湯が合うかどうかを考えていくのです。

どこかの病院サイトの脳筋先生みたいにサプリ代わりに飲むものじゃないですよ。

漢方薬の本来の効果と法律上の効果

漢方薬は、東洋医学の薬なので、本来は、西洋医学とは、何の関係もありません。

しかし、漢方薬を保険適用にするにあたって、法律上、おかしな効能効果の説明になってしまったのです。

では、本来の東洋医学の薬としての補中益気湯の正しい効能効果とは何でしょうか?

漢方治療では2大派閥があって、その治療派閥によって、効能効果が変わりますので、その派閥ごとの補中益気湯の効能効果を説明します。

補中益気湯の本来の効果(日本漢方)

補中益気湯が何に効くのか?というところが知りたいところではあると思いますが、漢方薬は病院の薬のように症状を一時的に抑えるものではないので、何か特定の病気や症状に効く成分や効果というものはありません。

(そもそも西洋医学の病名は漢方と何の関係もないのですが)

補中益気湯の日本漢方という派閥による効能効果は、

効能効果:滋養強壮し、汗を止め、水の巡りを促します。

【詳しい解説】
補中益気湯より気やエネルギーを補充し、汗を止めて、水の巡りを促します。

効能効果:消化器の気を補い消化能力を高め血を補い、気陥を升堤します。

【詳しい解説】
胃や腸の能力を高め、血を増やし、筋緊張低下により下がってしまった気や臓器を体の上部へと押し上げます。

効能効果:虚熱を清熱します。

【詳しい解説】
肝の臓や体力、気疲れなどから発生した虚熱を取り去ります。

この場合、注意しないといけないのは、虚熱というのは、弱りすぎて、冷えすぎて、熱が出ているという漢方独特の考え方の熱なので、単純に熱い状態を冷やすというわけではありません。

いろいろな作用がありますが、ここでよく勘違いされるのが、「どれかの効能効果があてはまればいい」という考え方。

これは完全な間違いです

これら全部があてはまる体質でないと漢方薬は効かないわけです。

例えば、補中益気湯の特徴は、疲れの強そうな体質にも関わらず、虚熱による体の不要な熱が発生している点です。

これは、同じ『疲れている体質』でも、不要な熱のこもりがなければ、人参湯や六君子湯などが合う体質かもしれないのです。

この、より自分の体質に合っている漢方薬を探すことを鑑別といいます。

なんだか、専門用語ばかりでよくわからない効能効果ですよね。

でもこれが、本来の補中益気湯の効能効果なのです。

漢方薬は、西洋医学の薬ではないので、こういった効能効果としての説明しか不可能なのです。

補中益気湯の副作用

漢方薬の副作用は、体質と合っていなければ、副作用が起こる可能性があります。

となると体質を分析せずにマニュアルだけで処方している保険適用の漢方薬は、どれもが副作用になる可能性があります。

だって、体質をみてませんので。

特に副作用になりやすいのは、補中益気湯は、虚証の虚熱ですので、胃腸状態が悪く、体力なく、冷えているにも関わらず、不要な熱がこもっているという者に合わせますので、この特殊な熱である『虚熱』がない方が飲むと副作用が出る可能性があります。

疲れていて、食欲不振で軟便だったりしても、虚熱症状がなければ、補中益気湯を飲んでも副作用を起こす可能性があるということですね。

補中益気湯は何に効くの?

漢方薬は、『その病気や症状がどんな原因なのか?』を突き止め、それに合わせた漢方薬を使います。

例えば、、疲れの原因に虚熱がないのであれば、、補中益気湯は合わないので、他の漢方薬を探す必要があります。

疲れや食欲不振でも、寒証といって、冷えが原因の場合もあれば、胃内停水といって、胃の中の水の巡りが悪い場合もあります。

『同じ症状でも原因は人それぞれ』です。

ちなみに疲れや疲労などの原因別に使うことがある漢方薬は、以下のものがあります。

というか、疲れの治療は、一般的には『エネルギー不足だから、エネルギー足せばいいじゃん!』的なイメージがありますが、漢方の体質からと体質のとの兼ね合いを考えると、疲れは、全身いろいろな部分が満遍なく疲れているので、その人の疲れの状態によって、漢方薬は全部の種類が候補として考えられますが、下記にエネルギー不足だった場合に使う漢方薬を記しておきます。

桂枝湯、四物湯、四君子湯、六君子湯、参苓白朮散、半夏白朮天麻湯、乾姜人参半夏丸、帰耆建中湯、当帰建中湯、人参養栄湯、桂枝加芍薬湯、大建中湯、八珍湯、柴胡桂枝乾姜湯、当帰芍薬散、補中益気湯、附子理中湯、温附湯、清暑益気湯、八味丸、六味丸、帰脾湯、加味帰脾湯、小建中湯、十全大浦湯、香蘇散、二陳湯、桂枝人参湯、黄耆建中湯、真附湯、補陰湯、牛車腎気丸、芎帰膠艾湯、八味丸帯下方など34種類

エネルギー不足という項目だけで、これだけの種類です。

これ以外に、人によって気疲れ、睡眠不足による疲れなどいろいろとあり、その場合は、また違う漢方薬を使います。

医者や漢方理論をよくわかっていない漢方薬局は、ツムラやクラシエなどの漢方薬メーカーからもらったマニュアルをみて、1、2種類の漢方薬の中からテキトーに選びます。

本来の漢方薬の効果

僕は日本漢方派ですが、中医学という派閥もあり、中医学は中医学の効能効果がありますので、それを紹介しておきます。

ちなみに中医学は、70年ほど前に教育のために再編された漢方で、学校漢方とも言われています。

僕は最初は中医学を学びましたが、勉学のための漢方で理論倒れなところがあるためか、実践の治療は役に立たなかったので、中医学はやめました。

◉ 効能効果:補気健脾・升陽挙陥・甘温除熱

【詳しい解説】
消化器の気を補います。

臓器の気が低下し、筋緊張低下したものを押し上げます。

筋緊張低下とは例えば、胃下垂や脱肛などです。

甘いものからエネルギーを補充し、気や体力を補い、 体を温めます。

気や体の疲労による不要な熱である虚熱を取り除きます。

補中益気湯の効能効果とはこういったもので、いわば、一般に知れ渡っている効能効果は、『漢方理論を知らない医者が利用するための法律上のウソの効能効果>みたいなものですね。

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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ ツムラ医療用漢方製剤マニュアル
◯ オースギ医療用漢方製剤マニュアル
◯ 漢方方意辞典:緑書房
◯ 類聚方広義解説:創元社
◯ 勿誤薬室方函:創元社
◯ 漢方診療医典:南山堂
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ 平成薬証論:メディカルユーコン

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

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