食べ物の効果に対する勘違い!?それ逆に体に悪いかも
うちの患者さんから、「足が冷えるので生姜を食べても良いでしょうか?」という質問がありました。
確かに西洋医学的には、血管運動を活発にして血の巡りを良くするので、それによって温まることもあるかもしれないですが、漢方的に見ると、その方の体質と生姜の性質は合わないので「あなたの体質だと足の冷えは大して温まらないと思います」とお伝えしました。
それどころか、もし何かにつけ生姜を食べていたら、体質的にのぼせが出てくる可能性もあります。
薬膳や漢方では、食べ物の効果に対してかなり細かな設定があります。
ざっくりと「生姜は冷えに良いよ」という感じではないのですね
一般的な成分から考える効果だけを考えて食べると、あなたの体質に合っていなくて、かえって体に悪かったりします。
ですので、本来、自分に合った食べ物を探す場合は細かく考えていかないとえらい目に合うこともあります。
今回は、漢方や薬膳の食べ物の細かな効果についてお話ししたいと思います。
今回の動画を見ていただければ、ざっくりとした食べ物の効果に騙されずに、体質に合った食べ物の効果を知ることができます。
ぜひ、お料理などにも役立てていただけたらと思います。
食べ物の効果と漢方薬の効果は同じ。
漢方を本格的に勉強していく中で衝撃的な事実にぶち当たりました。
それは、東洋医学の世界では、食べ物の効果と漢方薬の効果の考え方は同じなのですね
正に医食同源!食事、薬膳、漢方薬、どれも同じものだったのです。
漢方の世界では、食べ物の効果は、よくありがちな「〇〇成分が〇〇の働きがある」なんてものではありません。
なんと、基本の効果の正体は「味」なのです。
味の違いによって、効果が変わってくるのですね。
この時、料理する僕としては、すごく感動しました。
「そうか、美味しいって健康と関係があるのだな」と色々とつながりました。
よく考えてみたら、栄養成分だけが何かの効果を及ぼしているなら、お腹に入れば、全部同じものなので、あんなに料理の工夫もいらないのですよね。
漢方っ深いっ!
でも味によって、健康が変わってくるなら話は別です。
それでは、味ごとの効果の違いを紹介します。
味の効果「五味」
味の基本は五味となっています。
「酸味」、「苦味」、「甘味」、「辛味」「鹹味(これは塩味)」の5つです。
この味の違いによって、どこの臓器に効いていくかが決まっています。
「酸味」は肝の臓に効果があります。
ちなみに漢方の臓器は、西洋医学の臓器と似通っていますが厳密には、医学理論が違うので違うものです。
肝の臓は、目や筋肉、アレルギー反応などと関係していますので、目のトラブル、筋肉の痛み、花粉症、アトピーなどのある人は、酸味のものを摂ると良いのです。
この時に東洋医学のすごいところは、西洋医学やサプリの世界だと良さそうな効果のものはジャンジャン摂れば良いとされがちですが、漢方では不足しても多すぎてもダメ!というところ。
『あなたの体質にとってちょうど!』じゃないとダメなのですね。
例えば、西洋医学的に考えても、糖分って人間にとって絶対に必須なエネルギーなのですが、それを摂りすぎたのが糖尿病です。
「過ぎたるは及ばざるが如く」なのです。
摂りすぎると筋肉が引き攣ったりします。
「苦味」は心の臓に効果があります。
心の臓は、心臓だけでなく、漢方では精神的な領域も含みますので、血圧などの循環器系の問題だけでなく、不安感などがある人にも良いです。
摂りすぎると骨を傷つけます。
「甘味」は胃腸などの消化器系に効果があります。
皮膚や肉がなかなか再生しない、疲れやすい人に良いです。
摂りすぎると体に熱がこもりやすくなり炎症を促したり、不要な水を溜めやすくなります。
「辛味」は、肺に効果があります。
鼻炎や喉の炎症、咳がある人に良いです。
摂りすぎると粘膜を傷つけるので、腸粘膜などがやられて下痢になったり、腎臓が傷ついたりします。
「鹹味」は腎の臓に効果があります。
難聴や耳鳴りなどの耳のトラブル、頻尿や夜中のおしっこ、むくみがある人に良いです。
摂りすぎると血圧が高くなり、疲れやすくなったりします。
五味の効果
五味はどの臓器に効くかという他に、五味自体が持っている効果もあります。
「酸味」には「収」という効果があり、例えば更年期障害などで、汗がダラダラと止まらないという状態の汗を漏れ出ないようにする効果があります。
ただし、実際は、こういった単純な効果だけではなく、他の効果も複雑に絡み合ってきますので、単純に収のもので汗を収めれば良いというものではない点にはご注意ください。
摂りすぎると胃腸を傷つけやすいので、「酸」のみを単体で摂ると胃痛や軟便などが発生します。
甘味と合わせて摂ると、酸の強さが減弱されて、ちょうど体に良いという感じになります。
「苦味」には「降」という効果があり、めまいや耳鳴りなどで、水が肩から上に溜まりすぎている場合は、それらの不要な水を降ろして治してくれます。
摂りすぎると「燥」と言って乾燥させる効果もありますので、喉の炎症をひどくしたりすることもあります。
「甘味」には潤す「潤」という効果と筋肉や気などの緊張を緩める効果があります。
精神的に緊張がある場合は、甘味はその状態を緩めてくれます。
摂りすぎると潤は逆に水を溜めやすいので、むくみや軟便、下痢が発生したり、胃が緩んで消化不全に陥ったりします。
「辛味」は、「散」という効果があり、咳の原因になっているウィルスを体の外へ飛ばしたり、熱を発散させて解熱します。
冒頭の生姜は、こちらになりますので、足の冷えに生姜はちょっと違うのですね。
摂りすぎると汗が出過ぎて困ったり、気が抜けて、正にやる気が出ない状態になります。
湿疹は散によって、余計に爆発することもあります。
「鹹味」は堅い物をやわらかくする効果があります。
血栓などの血が固まって動きが悪いなどの解消をしてくれます。
摂りすぎで、腎の臓に対する負担が大きくなりやすく、年齢が高くなるほど、悪くなっていきやすいのである程度の年齢になってきたら塩辛いものには気をつけたいところです。
まとめ
食べ物の効果はこれだけでなく、味と関係なく「寒熱」と言って、体を冷やしたり、温めたりする効果や「昇」と言って、下がった気や臓器を引き上げる効果もあります。
例えば、胃下垂や脱肛などの下がった臓器を引き上げるのは「昇」の効果を持っているものを使います。
味も基本の五味以外に「淡味」、「渋味」、「旨味」もあります。
これらは基本のものの効果の補助的な働きがあります。
「香り」も薬膳や漢方では効果となり、食欲増進や胃腸の機能を引き上げることに使います。
料理というのは、これらの効果と総合的に組み合わせたものですね。
薬膳や漢方の考え方は、「頭痛ならトマトが良い」みたいなざっくりと症状に合わせて考えません。
もっと詳しくその人を分析して、頭痛の原因が水の滞りなら「降」の効果のあるものを使って、その水を体の下に降ろすことによって頭痛を治します。
違う人の頭痛の原因が、熱の滞りなら「散」のものを使ったりします。
漢方薬は、さらに様々な効果を持っている色々な生薬の組みあわあせますので、効果はかなり複雑になっていきます。
一人一人の体質を分析して、この人の場合は、「潤」と「昇」が必要で、臓器は、胃腸と腎の臓の補助することが必要だと考えながら、生薬の組み合わせを考えていきます。
ほとんどの医者や漢方薬局では症状や病名に当てはめて漢方薬を選んだりしますが、今回のお話からデタラメな方法であることがわかると思います。
食べ物も漢方薬も症状や病名ではなく、「自分の弱点が何なのか?」これが東洋医学的にわかっていないと、何が自分にとって良いのかがわからないのですね。
薬膳や漢方薬は、東洋医学の理論に基づいて使うものなのです。
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◯ 医心方:出版科学総合研究所
◯ 東方栄養新書:メディカルユーコン
◯ 中医薬膳学:東洋学術出版社
◯ 薬膳素材辞典:源草社
◯ 食養生の知恵 薬膳食典食物性味表:日本中医学院
◯ 薬膳と漢方の食材小事典:日本文芸社
◯ 素問:たにぐち書店