漢方薬相談ブログ

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抑肝散ってどんな効果?うつ病や不眠症にどう効くの?抑肝散の本来の効果と副作用

  1. 抑肝散はどんな病気で使われるか?
  2. 抑肝散の効果
  3. 抑肝散の3つの効果と3つの問題
  4. 抑肝散が合う人の条件
  5. たくさんの漢方薬の中から絞り込む。

病院では、ツムラの54番でよく出されている抑肝散。

「抑肝散を飲み始めたけれど、効果がよくわからない。本当に効いているの?」

こんな方は、結構、いるのではないのでしょうか?

抑肝散は、うつ病や不眠症の方に効果的ですが、実はどんな人のうつ病や不眠症の方にでも効くというわけではありません。

「漢方薬は体質に合わせないといけない」という話は聞いたことがあるかと思います。

抑肝散はその効果と体質が合った時に初めて効果を発揮します。

うつ病、不眠症で、なおかつ抑肝散の持っている効果が合う体質であれば、抜群に効果を発揮しますが、抑肝散の効果と自分自身の体質が合わなければ、うつ病や不眠症には全く効果がありません。

国際中医師で日本漢方家の松村です。

大阪であらゆる病気の漢方相談をさせてもらっています。

今回は、どんな体質の人やどんな状態であれば、抑肝散が効くのか?

また、抑肝散の効果とはどんなもので、なぜ、その効果だと、うつ病や不眠症が治るのか、そして抑肝散の副作用を解説します。

抑肝散はどんな病気で使われるか?

例えば、漢方薬の専門書に抑肝散は、どんな病気が治せると書かれているでしょうか?

例として書かれているのは、ノイローゼ、ヒステリー、自律神経失調症、更年期障害、不眠症、夜泣き症、夜驚症、麻痺、パーキンソン病、斜視、チック、歯ぎしり、ひきつけなどです。

では、これらの病気の人に「かならず効くのか?」というとそうではありません。

漢方では、『これらの病気や症状に効く』というわけではなく、その前に重要な条件があります。

それは、『そもそも抑肝散の持っている効果や条件と、あなたの体質が合っているのか?』ということをクリアしないと、どの病気や症状にも効果がありません。

例えば、病院の薬で不眠症で使われるベルソムラ、デエビゴ、クービビックは、薬の成分が、覚醒作用のある脳内の働きを遮断して、眠りのほうへ誘います。

これは、「薬の化学成分が強制的に強引に眠れる方向に持っていく」ということです。

本来、不眠症は、詳しくみていけば、人それぞれ原因が違ってきます。

でも、病院の薬は、原因や体質とは関係なく、薬の成分で強引に眠りの方へもっていきますので、一人一人違っている不眠症の原因とは関係がありません。

ここが漢方薬と決定的に違うところです。

抑肝散には、病院の薬のような強引に眠らせる成分などは、ありません。

そもそも、パーキンソン病と歯ぎしりに共通点などないので、普通に考えて、どっちにも効く成分なんてあるわけありません。

例えば、病院の不眠症の薬をパーキンソン病を治すためには使いません。

では、抑肝散は、なぜ、パーキンソン病にも使い、歯ぎしりにも使うことがあるのでしょうか?

それは、漢方薬は、本来、うつ病や不眠症などの病名や症状に合わせて選ぶのではなく、体全体の状態、つまり体質に合わせて選ぶからです。

病名や症状からみるとパーキンソン病と歯ぎしりに共通点はないですが、漢方の体質からみてみると、どちらにも共通している場合があるのです。

漢方の世界では、病名や症状が一致するから、その漢方薬で治るのではなく、抑肝散と自分の体質が一致していれば、不眠症もうつ病も、パーキンソン病も歯ぎしりも治るので、病名や症状はおまけみたいなものなのですね。

本質的には、抑肝散の効果が合う体質かどうかが重要になってきます。

抑肝散の効果

抑肝散に、睡眠に関わるホルモンに働きかける成分はありませんし、もちろん、パーキンソン病の治療に関係するドーパミンを働かせる成分もありません。

ましてや、歯ぎしりなんて、そもそも、何の原因かもわかってないので、何かの成分で治すことができませんよね。

抑肝散の本来の効果は、

1胸脇の熱を鎮める作用

2血を補い血の巡りを促す作用

3主に胃腸系の水の巡りを促す作用

です。

胸脇の熱を鎮める作用って、何言っているのか、全くわからないですよね。

漢方では、精神、感情は、各臓器と結びついていると考えます。

例えば、解決しないことを堂々めぐりで悩んだりするストレスは、胃腸と関係すると考えられ、胃もたれ、胃痛、胃潰瘍などを引き起こします。

臓器の中で肝臓と似たような、漢方的に「肝の臓」とよぶものがあります。

肝の臓は、胸あたりにある臓器で、この付近を漢方では「胸脇」といいます。

そして、その胸脇に不要な熱がこもっている状態を「胸脇の熱証」と言います。

肝の臓は、漢方では、イライラや焦燥感、怒りやすさなどの感情と関わっています。

肝の臓に不要な熱がこもると、イライラや焦燥感、怒りやすさが強くなり、これらは、不眠や精神疾患、歯ぎしりなどにつながっていきます。

抑肝散の胸脇の熱を鎮める作用というのは、抑肝散の名前の通り、肝の臓にこもった不要な熱を冷やす効果です。

他にも、不足した血を補いながら血を巡らせる効果があります。

これは、漢方では、イライラや焦燥感、怒りやすさは、血を無駄に使うと考えますので、しょっちゅう、こういったストレスがあると、肝の臓の血が減っていくので、これを補う効果があります。

そして、今度はその血が巡っていないと肝の臓に血が滞り、肝の臓の機能がまた悪くなるので、それを巡らせるのです。

その他に肝の臓が、熱を持つと、不要な熱が水の巡りを邪魔して、肝の臓のそばにある胃腸の水が滞るようになりますので、この水を巡らせる効果があります。

この3つの効果が抑肝散で、3つともの問題によって、不眠症やうつ病が起こっているのであれば、抑肝散が効きますが、この3つが問題ではない、もしくは、他に4つ目、5つ目の問題があるのであれば、それは、抑肝散以外の漢方薬を探す必要があります。

抑肝散の3つの効果と3つの問題

3つの問題自体が、どんな人の不眠症やうつ病の原因とは限りません。

例えば、うつ病の原因は、肝の臓のイライラと関係なく、不安が強い人もいます。

当然、不安が強い場合は、肝の臓の熱が関係ないことが多いので、抑肝散の効果とは合いませんので、抑肝散は全く効きません。

不眠症の場合も不安感や考えすぎて眠れない、ホルモンの悪影響など、肝の臓とは関係ない原因の場合があり、この場合も抑肝散は全く効果がありません。

漢方薬は、病名や症状を当てはめる前に、自分の体の状態、つまり体質が抑肝散の持っている効果とピッタリと合わないといけないのです。

うつ病や不眠症、パーキンソンや歯ぎしりのどれにも効くのではなく、その原因が、抑肝散の持っている肝臓の熱の問題、血の消耗と巡りの問題、胃腸の水の問題の3つの組み合わせから起こっているのかどうかが、漢方薬を選ぶ際には、ポイントになります。

そして、それ以外にも抑肝散があなたに合うのかどうかの条件があります。

抑肝散が合う人の条件

漢方薬は、効果を合わせるだけでなく、他にも病気の患った時間と合わせたり、脈の状態、舌の状態、あなたの現在の体力の状態も合わせる必要があります。

漢方薬には、病位という、「病気になってから、どれくらいの時期に使えるのか」という条件があります。

抑肝散は、少陽病といって、急性から慢性に移動した感じの時期に使うものです。

これは、1、2週間前から不眠症になったみたいな人には使えません。

2、3ヶ月くらいは、不眠症やうつ病になっている人に使うものと設定されています。

次に虚実中間といって、どれくらいの体力の人に使ってもいい漢方薬なのかという条件がありますが、これは、中間くらいの人に使えるという条件になります。

胃腸がものすごく弱いわけでもなく、極端に体力がないわけでもない。という普通の感じの人に使えます。

逆に胃腸がものすごく弱かったりしたら、抑肝散は使えません。

他の漢方薬を選びます。

これらの条件を無視して、飲み続けると胃腸にダメージが蓄積して、胃もたれや胃痛が続くようになったり、ひどくなると胃潰瘍になるなど、抑肝散を飲むことによって、新たな病気が増えることになります。

これが、『体質と漢方薬が合っていない』とか『漢方薬の副作用』となります。

次に脈は弦やや緊といって、脈をとった時に張っていて、硬さがみられる脈になっている人に使います。

舌の状態は、湿りすぎているわけでもなく、乾燥しているわけでもない普通で、舌の上に白い苔がついています。

これらの条件と抑肝散の効果と自分の体質がピッタリと合えば、うつ病でも不眠症でもパーキンソン病でも効果があります。

たくさんの漢方薬の中から絞り込む。

漢方薬は色々な効果があって、色々な部分に効くというわけではありません。

体の弱点を全て分析して、その弱点全部を調整してくれるものを選ぶ必要があります。

抑肝散の場合は、うつ病や不眠などが、主に肝熱が原因となっているということ、肝臓の血が不足して、流れも悪くなっているということ、胃腸も悪影響を受けて、胃腸の水の巡りが悪くなっているということ。

この3つの原因が揃っていれば、うつ病や不眠症、パーキンソン病、歯ぎしりの人には効くという意味です。

これらの病気に月経に関わるホルモンが関係していたり、気の滞りと筋肉の緊張があったりと、人それぞれ、微妙に色々な要素が加わってくるのですが、その場合は、他の効果がある漢方薬を選ぶ必要があります。

抑肝散で治そうと思ったら、自分の体全体が抑肝散の効果と合っていないといけないのです。

ですので、漢方薬で治療するには、まず、自分の体質がどんな体質なのか?を分析する必要があります。

『特に特別な問診なく医者に漢方薬を出してもらった』

『他のうつ病、不眠症の人が抑肝散で良くなったって紹介されていた』

『ネットや動画で抑肝散は、うつ病や不眠症、歯ぎしりに効く』と漠然と解説されていた。

こんな漢方薬の選び方は、意味がありません。

自分の体質は抑肝散と合うのか?

それを調べるためには、6つの東洋医学の体質分析理論を使って調べます。

かつて皇帝の体を調整していた、漢方が、病名や症状だけで選んで治るような、そんな単純な医学なわけがないのですね。

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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ ツムラ医療用漢方製剤マニュアル
◯ オースギ医療用漢方製剤マニュアル
◯ 漢方方意辞典:緑書房
◯ 漢方診療医典:南山堂
◯ 類聚方広義解説:創元社
◯ 勿誤薬室方函:創元社
◯ 漢方処方応用の実際:南山堂
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅠⅡⅢ:薬局新聞社刊
◯ 平成薬証論:メディカルユーコン

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

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