漢方と病院の治療の違いをわかってないと病気は治らない!
西洋医学(病院)はウィルスや菌が原因の病気を治すことからその歴史が始まっていますので、慢性病の治療もそれらと同じように考えて1つの原因で病気が起こっていると考えたり、体の臓器や組織、皮膚などが部分的にダメージを受けて病気になっていると考えます。
体全体を診ないで「皮膚科」や「消化器内科」など体をバラバラに分けて考えて、治療しようとしているのがその証拠です。
実際にアトピーやニキビ、蕁麻疹などを例にとると、これらの病態は当然、皮膚という部分だけで起こっている問題ではなく、体全体の問題です。
食事や睡眠、更にいろいろな臓器が関わっているのです。
言うまでもないですが体は全てつながっているのです。
私たちの体はロボットではないので、完治のためには部分的な修理ではなく体全体のバランスをとる治療が必要なのです。
漢方の「健康」の考え方
漢方の治療理念は実は単純です。
取り入れられた良質な食べもの、空気、水が体内の五臓六腑の正常な働きによって代謝されて、活動するためのエネルギーが作られ、そのエネルギーが細胞でうまく使われ、エネルギーの生産過程で作られたゴミ(乳酸や排泄物など)を回収して体の外に出す。
この単純なサイクルができていれば『健康』なのです。
(まとめ)健康を保つサイクル
『良質な食べ物、水、空気』 → 『体内の臓器で代謝してエネルギーに変える』 → 『体全体でそのエネルギーを使う』 → 『エネルギーの生成過程でできた老廃物を体の外に追い出す』
この働きの中に食べ物などのエネルギーを配る 『気・血・水』の巡りと外敵(ウィルス、菌など)から守る『免疫』、これらの働きをコントロールしている『自律神経』が加わって健康を保っています。
病気の本当の原因
このサイクルは言葉で説明すると単純ですが、実際は体内のいろいろな臓器や組織が関わっています。
やっかいなのは臓器が機械のように一定で働いてくれれば、ウィルスと菌にさえ気をつけていれば、誰も病気にならないのですが臓器の作業は単独で働いているのではなく、全身のいろいろな臓器が連携して働いています。
1つの臓器が、疲れても、いろいろな病気が現れてきますが、臓器と臓器の連携が乱れても病気になります。
体は言わば、チームワークで健康状態から外れないように日々、バランスをとっています。
体自体が冷えることや逆に余分な熱がこもること、食べ物や水の質や量、空気の質が悪いこと、疲労をためることなどが体内の臓器や組織に負担やダメージを与え、やがて病気につながっていきます。
その臓器を自動で働かせているのは自律神経が行なっていて、その自律神経は生活環境や季節ごとに変わる夏の暑さや冬の寒さ、睡眠やストレスなどの影響を受けて不調になります。
自律神経と感情(不安、不満、恐怖など)も密接に結びついているので、ストレスと自律神経は密接な関係がありますので、ストレスが強いと自律神経にも影響し、健康を保つサイクルに悪影響を及ぼします。
ストレスから自律神経への影響に限らず、季節、生活環境などが臓器や自律神経に負担を与えることもあり、これも徐々に大きな病気へとつながっていきます。
(まとめ)病気の原因
『自律神経やストレスが体内の各臓器の負担につながり病気につながる』
『暑い寒いなどの生活環境や食べ物、水、空気の質の悪さなど生活に関わる問題が体内の臓器や組織に負担やダメージを与え病気につながる』
健康を保つのは臓器・組織の絶妙なバランス
体内の臓器、組織は、それぞれバラバラの働きのものが寄せ集まって、それらが絶妙なバランスの上で健康な状態が成り立っています。
それぞれ違う仕事をしている複数のチーム(臓器・組織)が『健康を保つ』という1つの大きなプロジェクトを毎日、遂行している感じをイメージしてください。
誰か1人(臓器や組織)がさぼっても、逆にどこかのチーム(臓器・組織)だけが残業でがんばっても、それぞれのチームが絶妙なバランスをとった仕事の量と質で体内の健康を保っていますのでバランスを崩すこと自体が病気につながります。
ウィルスや菌の影響がなくとも、何かの拍子に、すぐにその絶妙なバランスが崩れます。
外の環境やストレスのことを考えると健康を保ているほうが不思議なくらいです。
病院の治療はなぜ完治しないのか?
その絶妙なバランスが崩れると体は『症状という警告サイン』を出して、体のシステムの不調を伝えます。
病院の薬はこの『症状という警告サイン』を薬の効果で無理やり無くすことを目的としています。
しかし『症状という警告サイン』は何も、体に対する嫌がらせをしているわけではなく、修復するべきサインを送っているので、病院の薬で症状を消してしまうのは『体内の不調の本当の問題』を誤魔化して先送りしているにしかすぎないのです。
病院の薬が『延々と再発を繰り返して飲み続けないといけない』『姑息療法』『対症療法』と言われるのは薬の効果の目的が、こういったものだからです。
漢方は病院の薬のように一時的に部分的な症状を抑えたり遮断したりすることが目的ではありません。
『体内の健康を保つシステム全体の不調を正すことが目的です』
症状は体内の不調を知らせる警告サインと考えますので、当然、体全体の健康を保つシステムが元に戻れば、体は『警告サイン』を出す必要はなくなり、自ずと『症状』は消滅します。
本当に完治する治療とは
病院や漢方専門薬局であっても東洋医学的な体質である『証』を判断しないで、西洋医学の病気名や症状をマニュアル的にあてはめて漢方薬を処方する先生がいます。
詳しくはこちらを読んでみてください。
これらが、おかしいのはこういった漢方の治療原則ともいうべき、漢方の根本の治療理念を完全に無視した方法だからです。
西洋医学の薬は西洋医学のルールに基づいて、処方、治療し漢方薬は東洋医学のルールに基づいて処方します。
誰が野球のルールでサッカーをするでしょうか。
そんなバカな人はいません。
また、体内の不調は周囲の環境が関わっていますので、薬だけを飲んでいれば治るというものではありません。
極端な例でいえば、ものずごく寒いところに住んでいる人が、暖房を一切使わずに冷え性は治りません。
日々、冷やされるわけですから。
漢方薬でも強烈に温めるというものもあります。
しかし、これも長期間、続ければ、自分が本来、持っている力を超えているわけですから、熱の過剰(温める力が強すぎる)は元々の熱の調節のバランスを崩していきますので、今度は違う病的な体質に向かっていきます。
根本治療とは、漢方薬の効果と環境などを調整する、2つの要素を合わせて、自分の本来もっているバランスやペースを崩さないようにしながらチューニングすることなのです。
漢方薬がなんとなく症状を抑えるわけではありません。
ですから、漢方薬を効果的に効かそうと思ったら、
1 自分の今の体質に合った漢方薬を証(本当の原因)に基づいて選ぶ。
2 健康な体に調整するための体質に合わせた生活養生を実践する。
この2つが、不可欠です。
漢方の本来の治療理念というのはそういったものだとご理解いただけると幸いです。
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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ 漢方概論:創元社
◯ 漢方方意ノート:創元社
◯ 漢方臨床ノート(論考編):創元社
◯ 金匱要略ハンドブック:医道の日本社
◯ 傷寒論ハンドブック:医道の日本社
◯ 素問:たにぐち書店
◯ 漢方治療の方証吟味:創元社
◯ 中医診断学ノート:東洋学術出版社
◯ 図説東洋医学:学研
◯ 中国医学の秘密:講談社
◯ 陰陽五行説:薬業時報社
◯ まんが漢方入門:医道の日本社