漢方薬相談ブログ

漢方薬でステロイドのように「かゆみ」だけをとることはできるのか?

漢方薬でステロイドのように「かゆみ」だけをとることはできるのか?

  1. みんな誤解しているステロイド剤の正味の働き
  2. 漢方薬のかゆみの抑え方はステロイドとは全く違う
  3. 体質を整えるとは?
  4. ステロイドと漢方薬の使いわけ方

アトピーの方からよく、「とにかく漢方薬で、かゆみをとってほしい」と言われます。

もちろん、漢方薬でアトピーのかゆみをとることはできるのですが、かゆみだけを即座に抑えるような、ステロイドのような効果はありません。

ステロイドは、どんなタイプの体質だろうと、塗れば、かゆみを止めてくれます。

ところが、漢方薬は、どんな体質のアトピーだろうと体質と関係なく、かゆみが止められるものはありません。

なぜなら、漢方薬では「かゆみが止められない」のではなくて、漢方薬は体質に合わせて調整し、漢方薬と体質が合っていて、初めて結果的かゆみが、徐々に治まってくるからです。

逆に『あなたの体質と漢方薬』が合っていなければ、ちっともかゆみが治らないどころか、逆に『かゆみがひどくなること』もあります。

漢方薬でアトピーやかゆみがひどくなるケースとしては、『東洋医学的な体質を判断しないでアトピーという病名だけで漢方薬を選ぶ』とひどくなったりする可能性が、かなり高くなります。

ですので、アトピーにマニュアル的によく使われている消風散十味敗毒湯という漢方薬は、決してかゆみを止める目的の漢方薬ではないのですね。

今回の話では、ステロイドと漢方薬の効果の違いや漢方薬とステロイドなどの病院の治療と漢方薬の治療はどう違うのかがわかるようになり、自分の状況に応じた最適な治療の方法がとれるようになります。

みんな誤解しているステロイド剤の正味の働き

漢方薬が、かゆみを止められないというのであれば、漢方薬を飲む意味がないのでしょうか?

実は、そんなことはありません。

ただ、ステロイドと効果が全く違ってきます。ここがわかっていないとどちらの治療も意味がなくなったりします。

たまに、漢方薬は、病院の薬の自然バージョンみたいな、都合よく便利なイメージを持っている人がいますが、病院の薬と漢方薬では『効き方』が全く違います。

ステロイド剤は、かゆみに関わっている炎症や免疫を抑えます。

ですので、ステロイドは免疫抑制剤ともよばれています。

逆に見れば、ステロイド剤は、炎症や免疫を抑えるという効果のみです。(副作用的にはもっといろいろな作用がありますが、ここではアトピーの方にとって良い方面の効果だけでお話しします)

この時に、病院では『アトピーの治療やアトピーを治す薬』なんて感じで説明をしていますが、ステロイドはあくまで、炎症反応や免疫を抑えて、かゆみのみ一時的に抑えているだけです。

これは、根本的に治りたいと思っている人からみたら、実は的を射た治療になっていません。

なぜなら、ステロイドが抑えている炎症反応や免疫反応というには、人間の正常な防御反応でもあるから「とにかく抑えればいい」というものではないからです。

炎症反応とは、例えば、怪我をして体のどこかが切れたりしたら、そこに炎症反応を起こして免疫を集めて、外からの菌が体の中に入らないようにします。

傷の部分は炎症反応と免疫反応で熱を持ちます。

同時に痛みやかゆみも発生します。

かゆみは、僕たちにとっては迷惑ですが、体的には体を良くしようとして起こっていることなのです。

もし痛みやかゆみという感覚がなくなると、人間は傷などに気づかずに放ったらかしにして、「気づいたら腐ってた」なんてことになりますので、かゆみや痛みって、ものすごく『重要な役立つ症状』なのですね。

ところがアトピーの方の場合、特に怪我がなくても炎症反応が起こってしまっています。

実は、『アトピーの真の原因』はココです!

言葉遊びみたいに聞こえますが、本当にココが重要で、『かゆみが起きることが、アトピーの原因ではありません』

かゆみの反応や湿疹などの『アレルギー反応が過剰に起きていること』がアトピーの原因なのです。

ですので、かゆみを抑えることができるステロイドは根本的な原因である『過剰になっているアレルギー反応』は、まったく治してくれません。

原因に対しての治療はゼロ!です。

一時しのぎの対症療法と言われるのは、そういった作用だからです。

漢方薬のかゆみの抑え方はステロイドとは全く違う

漢方薬はステロイド剤と違って、直接、かゆみを抑える効果も成分もありません。

もちろん、漢方薬でもかゆみはとれます。

ただし、ステロイドのように「塗れば、しばらくしたらかゆみが治まる」というものではありません。

ステロイドには、有効成分というものがあって、その成分が炎症や免疫反応を抑えます。

漢方薬は、西洋医学とは全く違うものなので、有効成分で効果を考えません。

それは、あくまで西洋医学の考え方やルールです。

漢方では、体内の健康を支えているバランスが崩れて、かゆみや痛みなどの症状が過剰に出ていると考えます。

かゆみや痛みなどは、いわば『警告サイン』です。

体内の真の不調を知らせようとして、湿疹のかゆみや、頭痛、耳鳴りなどの警告サインを出すのです。

漢方では、そういった全身の症状(警告サイン)を読み取って、その崩れたバランスを整えることのできる漢方薬を選びます。

かゆみなどの症状は、あくまで「警告サイン」ですので、症状自体をどうにかしようとしても意味がありません。

ステロイドの作用は、警告サインである症状をなくしてしまうことです。

もちろん、かゆみや痛みというのは、辛いものですから、症状をなくすことも必要だと思いますが、それでは根本治療から遠ざかるばかりです。

どれだけステロイド剤を使っても、根元の『過剰になってしまったアレルギー反応』という体内のシステム上の不調を治すことはありません。

体質を整えるとは?

体内の健康を保つシステムが不調になり、その不調を知らせるために、湿疹や、かゆみや痛みという症状が警告サインとして出てきます。

となると逆に考えれば、その不調を治せばかゆみや痛みを出す必要がなくなるわけです。

ややこしいかもしれないですが、西洋医学の治療は、不調を知らせるための「かゆみ」を抑え、体内の不調を治すことはありません。

漢方薬は、体内の不調自体を治し、結果的に「かゆみ」をなくしますが「かゆみ自体」を抑えることはありません。

漢方では、そのいろいろな症状をみて、体内の何が問題なのかをみていきます。

この体内の健康を保つシステムの不調が『体質』とよばれているものです。

『証』ともいいます。

ある人は、皮膚表面の水の巡りが悪く、不用な排水のような水がアレルギー反応を起こして、湿疹やかゆみが出ます。

こういったタイプに対して、漢方薬は、ステロイド剤のような、『かゆみを止める成分』が入っているわけではないので、皮膚表面の水の巡りを促して、アレルギー反応を起こらないようにして、かゆみをなくしていきます。

ある人は、血の巡りが悪く、余分な熱を持ち、その熱を発散しようとして、湿疹やかゆみが出ます。

そのタイプは血の巡りを促すことによって、かゆみをなくしていきます。

女性の場合は、月経が関係していたりするので、月経周期や月経の状態を整えることも、かゆみをなくしていくために治していかなければいけない要素です。

そのほか、アトピーといっても、いろいろな体質タイプの人がいます。

漢方薬は、その病気的な体質を整えることによって、結果的に、かゆみが徐々に治まってきます。

かゆみの治り方も、徐々にかゆさが弱くなったり、湿疹の出る面積が減っていったりとステロイド剤を塗った時のような治り方ではなく、徐々に良くなっていく感じです。

ステロイドと漢方薬の使いわけ方

ステロイド剤の良い点は、どんなタイプの体質であろうと、強制的に湿疹やかゆみを抑えてくれます。

悪い点は、いくら続けても根本的な治療にはならず、薬の効果が切れてくれば再発します。

また長期で使うと副作用が、いろいろとあることです。

漢方薬の良い点は、最終的にステロイドも漢方薬もどちらをやめても湿疹が出なくなることです。

つまり根本治療です。

逆に漢方薬の悪い点は、体質と漢方薬が合わなければ、かゆみが止まりません。

体質と合っていない漢方薬はいくら飲み続けても治りません。

更に体質と漢方薬が合っていなければ、湿疹がよりひどくなり、爆発することもあります。

また、かゆみだけをすぐに抑えることはできません。

どちらも得意分野と不得意分野がありますので、理想は、漢方薬を飲み始めた頃は、ステロイドと併用しながら、徐々にステロイドを減らしていって、漢方薬のみでしばらく続けて、最後は『漢方薬をやめても、湿疹がでない』という治し方が良いと思います。

注意点としては、ほとんどの医者や漢方薬局の先生は、体質(証)を分析して漢方薬を選ぶことをやっていません。

漢方薬がまるで副作用のないかゆみ止めかのように勘違いして十味敗毒湯とか、消風散とか決まりきった漢方薬を体質も考えずに誰にでも、同じものを処方していますので、証の診断がない漢方薬は副作用の方が強く出ることもあるので、お気をつけください。

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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ ツムラ医療用漢方製剤マニュアル
◯ オースギ医療用漢方製剤マニュアル
◯ 漢方方意辞典:緑書房
◯ 漢方診療医典:南山堂
◯ 類聚方広義解説:創元社
◯ 勿誤薬室方函:創元社
◯ 漢方処方応用の実際:南山堂
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅠⅡⅢ:薬局新聞社刊
◯ 平成薬証論:メディカルユーコン

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

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