風邪の漢方薬は葛根湯だけではありません
風邪の漢方薬と言えば葛根湯というのが、半ば常識になっていますが、葛根湯だけが風邪の時に使う漢方薬ではありません。
素人の方ならいざ知らず、医者でも風邪という病名だけでツムラの1番の葛根湯ばかりを処方しています。
漢方は病名や症状に当てはめて処方するものではないので、本来の体質論から考えると葛根湯は風邪だけでなく、ものすごく応用範囲の広い漢方薬というのがわかります。
葛根湯は、風邪の他にも『頭痛、肺炎、蕁麻疹、副鼻腔炎、高血圧、肩こり、破傷風、小児のひきつけ、神経痛、四十肩、五十肩、気管支喘息、乳腺炎、大腸炎など』いろいろ病気や症状に使います。
※ただし、これらの病気に対して葛根湯が効果があるのではなく、これらの病気で葛根湯を使うための体質的条件が合えば葛根湯が効くというものです。
また、上記の病気に葛根湯を使う場合は、いずれも『病気になってからそれほど日が経っていないこと』が葛根湯を使っても良い必要条件になります。
葛根湯は風邪だけでなく、いろいろ使えるので、昔は何も考えずにすぐに葛根湯を処方する医者を『葛根湯医者』とよんでいました。
要するにヤブ医者の代名詞なのですが、現在も風邪と言えば体質も診ずに葛根湯を処方する医者なら要はヤブ医者ということですね。
風邪の漢方薬は葛根湯だけではない
漢方薬は体質に合わせますが、これは風邪でも例外ではありません
風邪に漢方薬を処方する場合も当然、体質に合わせて処方します。
ただし、僕の実践経験では風邪の場合は、そのシーズンの流行りの型があり、大体の人が、その型にハマった体質の風邪になっていることが多いです。
例えば、今年なら11月は下痢が続き、それに喉痛や咳がある風邪が流行り、12月は咳だけが、やたらとしつこく残る風邪など、その年、時期によって、みんながかかりやすい風邪体質の型があったりします。
もちろん、元の体質的に風邪をひくと、かならず高熱が出るタイプだとか、鼻がひどく詰まるなど、その人の体質によって、いつもかかりやすい風邪もあります。
風邪では主に以下の処方が候補となります。
桂枝湯、葛根湯、麻黄湯、桂麻各半湯、桂枝二麻黄一湯、人参湯、桂枝人参湯、柴胡桂枝湯、香蘇散
これに桔梗や石膏、金銀花、人参末などをその時の体質に応じて合わせたりします。
ちなみに、一般的にみんなが使っている葛根湯を僕はあまり使いません。
使うとしても、本当にごく初期で「これ風邪なんだろうか?」的な時は葛根湯は良く効きます。
要するに葛根湯を飲むなら、病院に行っているタイミングでは、体と合ってないということです。
葛根湯を飲むなら、自分で持っておいて「風邪かな?風邪じゃないだろ?」の時から2日間ほど飲めばいいと思います。
葛根湯と麻黄湯には麻黄という生薬が含まれていて、桂麻各半湯などと違い、麻黄の持っている胃を荒らす効果が負担となり、大体、余計に風邪をこじらせたりします。
僕自身も正体不明の病気で倒れた時に最初、風邪のごく初期の症状っぽかったので、葛根湯を飲んだら、その後、吐いて吐いて、一気に体力をなくし、体の状態がひどくなっていきました。
友人を治す時も「ちょっと喉が痛い」とのことだったので、葛根湯を合わせたら、風邪ではなく扁桃炎で、これも、葛根湯のせいで一気に体の状態が悪くなり、よりひどくなりました。
僕も友達も葛根湯でかなりひどくなったりと、葛根湯は使いづらい薬なので、僕はあまり風邪では使いません。
風邪で病院に行く意味がない!?
病院で風邪を治療するという名目でみんな病院に行きますが、『西洋医学では基本的には風邪を治療する薬はありません』
あなたが処方されているのは、咳や鼻水を一時的に止めるものか、解熱するものか、栄養素を補うものです。
咳はあまりに頻繁に出たり、睡眠が妨げられるなら、一時的に病院の薬で抑えるのはアリだと思います。
解熱は、熱は風邪ウィルスと戦うために上げているので、一概に解熱したほうがいいとは言えません。
タイミングとその人の体力との相談です。
点滴は普段から痩せ型で胃腸の弱い体力のない人なんかは有効かもしれません。
抗菌剤などが処方されることがありますが、あれは風邪を治すのではなく、『風邪によって発生するかもしれない二次感染の菌に対しての治療』です。
抗菌剤などの問題は、漢方の自然治療からみると自分の持っている腸の菌などのバランスを破壊して、より体の状態をひどくしてしまうことです。
風邪によって強くなるかもしれない菌を予防的に対応するために抗菌剤を処方しますが問題は、
- 抗菌剤を飲むこと自体、より風邪をひどくするリスクがある。
- リスクがあるにも関わらず二次的感染である菌が本当に今、治療しないといけないのかを調べてもいない。
- 医者が「風邪は直接的に治療することはできない」ということをちゃんと説明していない。
という3点。
風邪ウィルスという本来の原因は放ったらかし(対応できない)で直接的には関係ない菌に対して治療しているのです。
的外れもいいところ。
誰でも「いやいや、そりゃ、二次的な感染も、よくないかもしれないけど、とにかく風邪ワイルスをなんとかしてよ」という話ですよね。
咳や鼻水も薬で一時的には止まりますが、大勢の風邪の患者さんが集まっている病院に行くという大きなリスクが同時にあります。
もし、風邪でないのに病院に行って、風邪にうつったのでは、目も当てられない状態になります。
なので、咳や鼻水を止めたいのであれば、ドラッグで十分じゃないかと思います。
いつも漢方薬で治している僕からすると風邪で病院に行く人って、何しに行ってるのだろうと不思議です。
漢方薬は風邪をどんな効果で治すのか?
漢方薬の風邪の治し方は非常にシンプルです。
基本的な治療方針は風邪(ウィルス)を体の外へ追い出すことです。
「なんだそれだけ?」と思うかもしれないですが、身体中に取り付いている風邪ウィルスを追い出すには、もちろん、免疫も関係するし、血の巡り、水の巡り、気の巡り、熱の巡り、胃や腸の消化器の状態、冷え、腎臓の機能、大腸の機能が関わってきます。
これらがうまく連携して働いていないとウィルスを追い出すことはできません。
主には水の巡りと腎臓の連携でウィルスを追い出します。
追い出しに使う経路はオシッコと汗です。
体力や体の温かさがなくなると、免疫力が下がり、ウィルスに負けますので、食欲や胃や腸は絶対に落としてはいけない重要な部分です。
ここが悪くなると、どの機能もうまく働かなくなり、どんどん悪くなっていくので、食欲と胃腸の状態は常に気をつけておく必要があります。
葛根湯や麻黄湯を風邪で使うのが難しいのは、胃腸にダメージを与える恐れがあり、胃腸がダメージを受けると簡単に風邪がこじれていくからです。
大きな治療方針はこんな感じですが、あなたの普段の体質によって、いろいろな体の部分の悪くなる種類や度合いが変わってきます。
桂枝湯、葛根湯、麻黄湯、桂麻各半湯、桂枝二麻黄一湯、人参湯、桂枝人参湯、柴胡桂枝湯、香蘇散
ここにある漢方薬は、その人それぞれの体質の弱点によって選び分けます。
また、風邪のひどさ具合によっても漢方薬を選び分ける必要があります。
漢方薬は強い効果のものほど、体に与える負担も大きくなりますので、例えば、麻黄湯が体質と合えば、治る効果も高いですが、体力のない人が麻黄湯など飲むと麻黄湯は効果が強いので、胃にダメージを与えるだけでなく麻黄湯の効果に体がついていけずにより、風邪はこじれます。
なので、インフルエンザみたいなヤバイ時に病名マニュアルで麻黄湯というのは、ある種の運まかせの賭けになってしまいます。
体力がなく病気が重い時ほど、漢方薬も慎重に選ばないと諸刃の剣で自分が切られます。
また、風邪は1日ごとに体質が変わっていくことが多いです。
1日目は喉痛、2日目は喉痛、咳、発熱といった風にだんだんと状態が変わり、体質が変わるので、漢方薬もそれに合わせて変更していきます。
漢方薬の場合は「風邪」という、あやふやな病名に合わせて治療しません。
病院で7日分、同じ種類の漢方薬を風邪に処方することがありますが、4日も5日も経って、葛根湯で治す。なんてことありえません。
風邪は実は漢方治療の中で最も高度な治療です。
漢方治療は急性になるほど治療が難しくなり、治療の腕が問われます。
つまり、風邪に漢方薬を処方できるということは、慢性病も漢方薬で対応できるということなのです。
ところが医者などは、普段の漢方薬の処方は、体質を診断できないので、病名マニュアル本をみて処方しているだけ。
当然、『風邪でも体質診断は必要』です。
風邪であろうと慢性病であろうと体質診断せずに漢方薬を処方する先生は、例えば、楽器を触ったことがなく、楽譜だけ読める人がプロのオーケストラに参加するほど間抜けなことです。
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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ ツムラ医療用漢方製剤マニュアル
◯ オースギ医療用漢方製剤マニュアル
◯ 漢方方意辞典:緑書房
◯ 類聚方広義解説:創元社
◯ 勿誤薬室方函:創元社
◯ 漢方診療医典:南山堂
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ 平成薬証論:メディカルユーコン
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅠ:薬局新聞社刊
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅡ:薬局新聞社刊
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅢ:薬局新聞社刊