漢方薬相談ブログ

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「インフルエンザに効く麻黄湯」という医者のデタラメな説明

『先生に絶対、質問したいと思っていたことがあります!!』

それは先日、医者から説明されたことに関してのことらしいです。

『インフルエンザに効く漢方薬って本当にあるんですか?』

はい、よくある医者のテッキトーな説明ですね。

はい、いきなり結論としてはインフルエンザに効く漢方薬なんてありません。

仮にインフルエンザに効く漢方薬っていうものがあって、しかも今回の医者のように、体質も何も調べずに「インフルエンザに◯◯の漢方薬」というものをポンッ!と簡単に処方して治るなら、今頃、インフルエンザは麻黄湯によって根絶されていますよね。

そんなのが本当にあるなら全世界に売り出すべきです!

インフルエンザっていったら抵抗力の弱い子供と老人だと死に至る可能性もある全世界で克服できていない凶悪な感染症です。

西洋医学のインフルエンザの薬であるイナビル、リレンザ、タミフルでも発症、48時間以内に飲まないと効かないし、それも治すわけではな、あくまで緩和するものです。

新しく出たゾフルーザだって、まだ、どれくらい効くのかわかりません。

大体、こういう鳴り物入りの新薬って、実際に使い始めると、以外と『ちょっとは緩和できるかも』程度だったりすることも多いのですよね。

『そのインフルエンザに効くって説明された漢方薬って、どうせツムラの27番、麻黄湯ですよね?』とお聞きすると「なんでわかったんですかっ!そうです!」とのこと。

それにしても医者は、すごいですね。『麻黄湯がインフルエンザに効く薬』と言い切れるところが。

今回は『麻黄湯は、インフルエンザの薬というわけではないよ』というお話です。

もちろん、その理由と実際に麻黄湯は、どんな薬かも解説したいと思います。

漢方では2千年前にインフルエンザの治療をしていたが…

無知なお医者さんに、こんなこと言っても無意味だろうけど、漢方って2千年前に医学として発祥しました。

そのきっかけはインフルエンザが含まれる感染症を治す方法なんです。

何人も何人もインフルエンザなどで死んでいく人をみていた張中景と言う人がインフルエンザなどの感染症を治療するために『傷寒論』という漢方の治療方法などを記した本を書きました。

つまり、漢方は2千年前に、すでにインフルエンザの治療をしているのです。

考えてみてください2千年前に効く薬があるなら、少なくとも漢方が存在する中国や日本ではインフルエンザは、とっくになくなってますよね。

だって、患者さんの体質をみれない今回のような医者が「はい、インフルエンザに効く漢方薬です」とただ、渡すだけで治ってるはずですから。

でも、インフルエンザはなくなっていません。

じゃあ、漢方薬はインフルエンザには効かないのか?

そんなことはありません。

漢方は西洋医学と効果の考え方が違うのです。

わけがわかっていないのに漢方薬を処方する医者

保険適応の漢方薬を処方しているほとんどの医者は漢方の医学理論を知りません。

ちなみに医大でも漢方をほとんど学びません。

勉強する時間は、「ほんの数時間」と時間が少ない上に漢方の診断方法や治療の考え方など、重要なことは何1つも学びません。

つまり、本当に素人と一緒なんですよ。

単に、漢方薬を販売する資格がある。というだけ。

じゃあ『どうやって、漢方薬を処方しているの?』と申しますと、ツムラなどが持ってきたマニュアルやデータをみたり、ツムラなどが主催する漢方の勉強会に何ヶ月に1回か出席したりして、『インフルエンザには麻黄湯』という呪文のようなマニュアルワードを小耳にはさんでおぼえます。

そして、患者さんの体質なんて一切、みないで漢方薬を売りまくらないといけないメーカーの話を鵜呑みにして今回のようにワンタッチで処方します。

漢方のことは全く勉強していないからか、元から適当な性格なのか、『麻黄湯はインフルエンザに効く薬』というデタラメな説明が飛び出すのです。

こんなデタラメの説明が飛び出すもう一つの理由は、真意はわかりませんが、未だに『自分達は医療の専門家なのだから、素人には効くと言っておけばよい』的な上から目線な態度もあるかもしれません。

でも、このお母さんは、なぜ、僕に質問してきたと思います?

お母さんは、漢方の素人ですが、「何言ってるの、この医者、おかしいな?」と疑って、漢方の専門家としてやっている僕に質問してきたわけです。

ということは、漢方に関しては医者の方が患者さんよりも感覚的にヤバイってことです。

自分の説明していることが『オカシイ』とも気づいていないわけですから。

もしくは、病院の化学薬品は、嫌がられるから、「漢方は知らないけど、こっちだったら儲かりそうだから、すすめよう!」みたいな思惑があるんでしょうか?

漢方治療での麻黄湯の使い方

麻黄湯がインフルエンザに効く薬ではなく、麻黄湯はインフルエンザにも使うことのあるお薬です。

漢方は西洋医学とは何の関係もないので、インフルエンザという『西洋医学の病名』に合わせて選びません。

したがって、インフルエンザに効く漢方薬(麻黄湯)という説明は根本的にオカシイのです。

2千年前もインフルエンザに効く漢方薬をつくったわけではなく、高熱、関節の痛み、頭痛、咳などの状態(病的体質)に対して治療する薬を作ったわけです。

詳しくはこちらを読んでいただきたいです。
インフルエンザに麻黄湯という素人すぎる医者の漢方薬

漢方では、風邪やインフルエンザは、体を温め、水の巡りの新陳代謝を行って、体力を回復させることで治します。

ですので、候補となる漢方薬は麻黄湯に限らず、たくさんあります。

例えば、インフルエンザは漢方では風邪の強いバージョンなので、体質によっては、葛根湯を使うし、他にも桂麻各半湯や桂枝二麻黄一湯などもつかいます。

確かに麻黄湯は、インフルエンザであれば、初期で使用することが多いです。

しかし、治療の目的は『インフルエンザを治す』と医者が言ってるようなボヤ〜とした曖昧なものではなく、『発熱させて免疫を高めて、水の巡りを促し、汗やオシッコで水の交換を促し治癒に向かわせる』ことです。

麻黄湯は非常に強い薬で、発熱するとウィルスをやっつける免疫が高まりますが、発熱は同時に体力を奪い、効果が高すぎたら、脱水することもあります。

なので、子供に使う場合は、普段から風邪を引いたら、「熱を出しやすいタイプなのか?」「 熱が出ないタイプなのか?」を考えて飲ませるかどうかを考えます。

更に麻黄湯は合わないと胃を荒らすことがあります。

漢方では風邪などは食べられなくなると、よりヒドくなると考えますので、『インフルエンザだったら麻黄湯』と医者のようにお気楽には処方できません。

麻黄湯をインフルエンザに使用した実例

例えば、うちの息子に麻黄湯を使う場合は、大体、1、2包です。

うちの息子は抗病力が高く熱がすぐ出るタイプなので、大体、1包で高熱が出て、次の日に引いて、一気に治癒に向かう感じです。

うちに来た患者さんで、熱は出やすいけど、インフルエンザや風邪はいつもグズグズと長引くという女の子が来ました。

この子の場合は、麻黄湯1包で高熱、その後、引きましたが、症状はあまり良くなっていませんので、もう1包、もう1包と続けたら2回目の高熱が出ました。

でも2回も高熱になったので麻黄湯は、ここで終了。

熱が引いた後は体の状態が変わっていくので、ここからは漢方薬の種類を変えていきます。

麻黄湯にインフルエンザというウソ

麻黄湯は発熱を促すことが多いので、タイミングも重要です。

患者さんは、かならずしも、最初からインフルエンザだとわかっていて、しかも第1日目なんて都合の良い状態で相談に来られるとは限りません。

本人も周りもインフルエンザだと気づかずに1回は発熱していることもあります。

この場合は、麻黄湯は使用できません。

こんな感じで、麻黄湯はインフルエンザになったタイミング体質を考えて、使いますが、『麻黄湯を使うことによって、より悪くなること』もあるので、『インフルエンザに効く漢方薬』という説明はウソなわけです。

悪意なく無知からのウソなんでしょうが…

(医療の専門家なのに無知のウソをばらまくのもどうかと思いますが…)

ちなみに麻黄湯の主成分はエフェドリンという覚せい剤の原料になるものです。

医者は、なんでもかんでも成分効果を考えるわけですから『インフルエンザに麻黄湯が効く』と説明しているということは、『覚せい剤でもインフルエンザは治せる』と考えているのでしょうか?

怖すぎる…

いずれにせよ、漢方と西洋医学は別物です。

インフルエンザに限らず、『◯◯の病気に効く漢方薬』なんてものは漢方では存在しません。

人それぞれの『体質』に合わせて、漢方薬を選びます。

体全体を調整した結果、病気が治るのですね。

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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ 図説東洋医学(基礎編):学研
◯ 図説東洋医学(湯液編Ⅰ):学研
◯ 図説東洋医学(湯液編Ⅱ):学研
◯ 漢方概論:創元社
◯ 漢方臨床ノート(論考編):創元社
◯ やさしい中医学入門:東洋学術出版社
◯ 中医診断学ノート:東洋学術出版社
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ まんが漢方入門:医道の日本社

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

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