漢方薬相談ブログ

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ニキビ(尋常性痤瘡)で使う漢方薬

漢方薬は全身をみて『証』という病的体質を診断して、その証に合わせて漢方薬を選びますので、正式には「ニキビ」という西洋医学の病名で漢方薬を選ぶことはありませんが、体質のみで漢方薬を選ぶとなると何百種類の漢方薬全部が候補として考えられるので、これでは選ぶのに物凄い分析時間がかかってしまいます。

そこで、ニキビという病名によく使われてきた漢方薬をある程度、候補としてリスト化して、その中から漢方薬と患者さんの体質が合うものを選びます。

一般の人や漢方薬を処方している医者は、『ニキビという病名と、いくつかの症状が当てはまる漢方薬を選べばよい』と思っている感じがありますが、そんな方法は本来の漢方治療では存在しません

ニキビ(尋常性痤瘡)に使う漢方薬

僕はニキビを治す際の漢方薬の候補として主に次のものをリストアップします。

【ニキビ(尋常性挫創)でよく使用される漢方薬】
荊芥連翹湯、清上防風湯、十味敗毒湯、温清飲、大柴胡湯、小柴胡湯、柴胡桂枝湯、逍遥散、加味逍遙散、大黄牡丹皮湯、桃核承気湯、桂枝茯苓丸、当帰芍薬散、温経湯、五苓散、半夏瀉心湯、越婢加朮湯、消風散、黄連解毒湯、柴胡桂枝乾姜湯、防風通聖散、黄耆建中湯、人参湯、桂枝加芍薬湯、十全大補湯、白虎加人参湯、白虎加桂枝湯

にきびといっても一人一人体質は違うわけですから、体質別から考えられる漢方薬の候補は27種類位です。

これらの漢方薬をリストアップ後、体質を詳しく分析して、上記の候補処方の中から体質的に合うものを選びます。

女性のニキビの場合は、月経リズムを整える必要があるので、さらに月経リズムを整えるためによく使われる漢方薬が何種類か候補として追加されます。

漢方薬には思春期のニキビの原因とされているアクネ菌をなくしたり、角質を減らすような成分や効果はありません。

『体質の不調が、ニキビという症状で現れている』と考えますので、人それぞれ、”月経リズムを整える”必要があったり、”消化器系を強くしたりする”必要があるので、これだけの種類の漢方薬がニキビを治す漢方薬として考えられます。

医者のニキビの漢方薬マニュアル

次に医者が使っている漢方薬マニュアルから見てみましょう。

【医者が使っているマニュアルにあるニキビ(尋常性痤瘡)で使う漢方薬】
荊芥連翹湯、清上防風湯、桂枝茯苓丸加薏苡仁、十味敗毒湯

保険適応の漢方薬を処方している医者はマニュアルだけ見て選びますので、この4種類から選ぶようです。

(医者は東洋医学的な体質を分析できる知識も能力も持っていませんので)

実質は4種類の中から選ぶというよりは、その医者が『ニキビには桂枝茯苓丸加薏苡仁を処方する』と事前に勝手に決めていたりしていて、体質なんかは関係なく、ニキビなら性別や年齢が違っても、みんなに桂枝茯苓丸加薏苡仁を処方するといった感じです。

後は、飲んでもらって、うまくいかなかったら、単純に他の漢方薬を順番に試していくだけみたいな感じですね。

ちなみにこの4種類の漢方薬を知っていれば、医者の選び方自体も漢方理論に基づいているわけではないので、あなたも医者と同レベルの知識を持っていることになります。

候補になる漢方薬の種類は増やすほど難しくなる

大体、ある病気の体質タイプの種類は30種類〜40種類くらいあります。

漢方薬は体質に合わせて選ぶものなので、体質とはその漢方薬そのものと言えます。

ややこしい話ですが、『漢方薬=体質』『体質=漢方薬』ということですね。

同じニキビでも30種類の体質タイプにわかれるので、漢方薬も30種類の中から分析して選ぶといった感じです。

保険適応の場合、医者は体質を分析できませんので、『ニキビの人に飲んでもらったら良くなったことが多かった』というような感じの根拠がないに等しい勝手な思い込みで選んでいます。

数も4種類しかありませんので、簡単です。

その分、治らなかったら即、詰まって治療終了ですが…

症状だけを当てはめて漢方薬を選ぶのは不可能

症状のことを体質だと誤解している人が多いですが、体質とは症状のことではありません。

全身の症状を調べて、症状だけでなく体格や体力なども症状と絡めて体質を考えます。

大体、その漢方薬が合う条件になっているように設定されている症状は1つの漢方薬につき20種類位の症状があります。

医者のマニュアルやネットの漢方薬の設定だと、漢方薬が合う条件である症状が少ないことが多いですが、実は条件となる症状の数は決まっていません。

基本的に漢方に詳しい本や情報ほど、1つの漢方薬の条件に設定されている症状は、多く複雑になり、知識のない人用の簡単な漢方の本やネットの情報ほど、条件となる症状は単純で少なくなります。

多けりゃ、いいってものではないですが、『体質をみる』ということは、人とは違う個性をみていくわけですので、多くなるほど『治る確率』は高くなります。

例えば、1ニキビである』という1つの条件だけで桂枝茯苓丸加薏苡仁を処方するよりも、

1ニキビである。
2ニキビは顔だけでなく背中や胸にもできる。
3女性である。
4月経前から月経中にニキビがひどくなる。
5便が2、3日に1回で硬い…など全身の不調がたくさんわかるほど、選べる漢方薬の種類が増えていって、より自分に合っている治す確率の高い漢方薬を選ぶことができます。

ただ、全身の症状や状態が細かにわかることはいいことですが、治療者側は膨大な情報を処理しなければいけませんので、それが面倒臭かったり、能力がなく、やりたくてもできない先生は1ニキビである。だから桂枝茯苓丸加薏苡仁』というマニュアル処方が楽だし、その方法しかできません。

また、思春期の時でない大人ニキビは、ほぼアクネ菌や角質の問題ではなく、胃腸の問題や自律神経の問題、女性なら月経リズムや女性ホルモンなど、全身の状態と関わってきますので、結局、何十種類もの漢方薬を候補として考えることが必要ですが、この際に『症状だけ』を当てはめて漢方薬を選ぼうとすると、『どれも当てはまるし』『どれも当てはまらない』という状態に陥ります。

適当に漢方薬を選ぶと副作用が待っている

当たり前ですが、漢方薬を1ニキビである。だから桂枝茯苓丸加薏苡仁』というマニュアル処方でやってしまうと、治るか治らないかは『ただの運まかせ』です。

『運悪く、桂枝茯苓丸加薏苡仁で治らなければ、次の漢方薬を試せばいいか!』というと、そうはいきません。

なぜなら漢方薬の副作用は『たまに出る人もいる症状』ではありません。

漢方薬はアクネ菌を殺したり、角質を減らす目的ではなく、あなたの体質に対して調整する漢方薬を選んでその影響で結果的に治します。

例えば、単純に説明すれば、冷えている人には温める漢方薬で治し、余分な熱がある人には冷やす漢方薬で治します。

これを逆にすると、冷えている人に冷やす漢方薬、余分な熱のある人に温める漢方薬を処方すると病気がねじれて、「誤治壊病」といって、今の病気がもっとひどくなるか、今とは違う病的体質になるリスクもあります。

「そんな、間違いしないでしょ!」と思われるかもしれませんが、実際は、冷えてるだけの体質とか余分な熱のある体質などのように単純なものではなく、医者のように東洋医学的な体質を判断せず、漢方薬の東洋医学的な効果がわからなければ、間違って処方しているのかどうかすらわかりません。

おまけに患者さんも、『それが副作用がどうかなのかわからずに飲み続ける』という最悪の事態が続きます。

こうなると、飲まなかった方がマシということもあるのが漢方薬です。

『漢方薬は自然の薬だから、マニュアルで手軽に選んでもらったものを後は、飲み続けさえしていれば、治る』なんて、ファンタジーな薬ではないのですね。

漢方薬を処方している医者(漢方専門医を名乗っている人含む)は『ペーバードライバーのプロレーサー』みたいな意味不明な人達なので、ちゃんとした専門家にみてもらいましょう。

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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ ツムラ医療用漢方製剤マニュアル
◯ オースギ医療用漢方製剤マニュアル
◯ 漢方方意辞典:緑書房
◯ 漢方診療医典:南山堂
◯ 類聚方広義解説:創元社
◯ 勿誤薬室方函:創元社
◯ 漢方処方応用の実際:南山堂
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅠⅡⅢ:薬局新聞社刊
◯ 平成薬証論:メディカルユーコン

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

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