漢方薬相談ブログ

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当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)の 効能効果と対応している病気

当帰芍薬散は医者や漢方をよく知らないけど漢方相談をしている先生に悪用!? といっても言いレベルで利用されている漢方薬だと思います。

この間も、Webサイトを調べていたら、大阪市の某不妊治療のレディースクリニックのWebサイトでひどいことが書いてありました。

「自分の家業は代々、漢方をやっていて、当帰芍薬散が自分のところの処方である」と説明されています。

「いや、いや、当帰芍薬散って、つくられたの2千年前であなたの家で作られたんじゃないですから」

そのサイトでは一応、不妊症で、他の漢方薬も使うようなことを説明していますが、サイトページの構成を見てたら、当帰芍薬散一択!が丸出しです。

このクリニックで、実際に漢方薬を飲んでいた何人かの患者さんからも病気の原因で病気の体質である『証』は一切、診断せずに漢方薬を販売しているのは、すでに確認しています。

そもそも、当帰芍薬散しか詳しく説明してない時点で「私は体質を 分析できません。漢方を知りません」と言ってるのと同じですよね。

この病院に限らず、よく当帰芍薬散の臨床の効果をそれっぽく説明していますが、あれって、ネズミの実験でわかった効果であって、後述もしますが、大昔から人間での実験を繰り返してきた漢方薬をわざわざ、ネズミで実験して調べるって最早、コントですよ。

「肩こりの原因が、幽霊」という怪しげなブログもダメですが、医者なんて漢方理論をほぼ、わかってないし、医大でも実際、ほぼ何も学ばないのだから、医者や病院の漢方に関する情報も大概、怪しげなサイトに含まれると思いますよ。

当帰芍薬散の効能効果まとめ

ざっくりと当帰芍薬散の効能効果をまとめてみます。

【当帰芍薬散の効能効果】
どちらかというと普段体力がなく筋肉質でない体質の方が合うもので、血を補い、温めて血を巡らせ、水の巡りを促し、腎臓の力を補います。

【どんな病気に効くのか?】
月経関連の婦人科系、貧血、不妊症、冷え症、腎臓病関連、心臓病関連、精神疾患関連で使われます。

【どんな体質の人は飲んではいけないのか?】
当帰芍薬散は寒証といって、冷えが原因での血の巡りの悪い人に使いますので、逆に熱の影響で血の巡りの悪い人は当帰芍薬散でかえって悪くなることもあります。

例えば、桂枝茯苓丸は熱の影響で血の巡りが悪くなっているので、当帰芍薬散と桂枝茯苓丸は正反対の関係で、どちらかが合う人は反対の処方は毒になります。

ちなみに桂枝茯苓丸は、熱が原因とはいえ、足は冷えます。

また胃腸の弱い人も当帰芍薬散は飲んではいけません。

効能効果というと「毛細血管を拡張し血流を上げることによって温めて〜」とか「◯◯成分がホルモンを活性化して子宮内膜を厚くし〜」というものを期待したかもしれないですが、漢方にそんな西洋医学みたいな効能効果はありません。

『あなたの現在の体質(証)に → 当帰芍薬散の設定条件(証)が合えば → 良くなる』これだけ!これのみ!です。

だから、当帰芍薬散を2ヶ月も3ヶ月も、飲み続けていて、何も変化がなかったり、些細でも新しい症状が出てきたら当帰芍薬散は合ってないから他の漢方薬を選び直さないといけません。

簡単にまとめたらツムラのマニュアルみたいになっちゃいました。

当然、こんな簡単な感じから選んで治るほど、漢方は甘くありませんので、ここからは詳しく説明します。

どんな病気に使うのか?

漢方薬は病的体質である『証』を導き出し、その証に対して漢方薬を処方しますので、本来の漢方では西洋医学の病名から選ぶことはありません。

また、当帰芍薬散は漢方薬で漢方薬は、体質を調整するものなので、不妊症だけに使う漢方薬でもありません。

病気の原因で病気の体質である『証』を診断し、それに合わせて、当帰芍薬散を選びますが、いきなり病的体質から、候補となりそうな漢方薬を選ぼうとすると膨大な種類の漢方薬の候補が考えられるので、西洋医学の病名から、その病気によく使われる候補になりそうな漢方薬を絞る方法もあります。

詳しくはこちらをお読みください。病院の漢方薬は効かないのか!?(病名漢方とは)

●日本漢方では当帰芍薬散を以下の病気で応用します。

不妊症、月経不順、無月経、月経困難症、PMS、生理痛、月経過小、子宮筋腫、卵巣嚢腫、骨盤腹膜炎、習慣性流産、妊娠時の下血、妊娠腎、切迫流産、産褥熱、冷え性、貧血、しもやけ、乳腺症、前立腺炎、睾丸炎、痔疾、慢性肝炎、腰痛症、副鼻腔炎、ぶどう膜炎、高血圧、血栓症、動脈硬化、静脈炎、静脈瘤、バージャー病、心臓弁膜症、痔核、全身性エリテマトーデス、強皮症、シェーングレン症候群、白内障、緑内障、麦粒腫、中耳炎、鼻炎、アトピー、手湿疹、蕁麻疹、進行性手掌角化症、湿疹、肝斑、ニキビ、胆石症、乳腺炎、喘息、タンパク尿、むくみ、夜尿症、前立腺肥大、甲状腺機能低下症、腰痛、ヘルニア、リウマチ、低血圧症、子宮下垂、メニエル、慢性頭痛、顔面神経麻痺、不眠症、更年期障害、うつなどの精神疾患のある方

当帰芍薬散は、どんな病気にでも効きそうですね。

当帰芍薬散が上記のどれかの病気に効くのではなく、こういった病気の人の中で当帰芍薬散の体質の条件が合えば「当帰芍薬散を使う可能性がある」というだけです。

体質が当帰芍薬散が使える条件に合っていなければ使えませんし、病名から合わせて無理に当帰芍薬散を体質が条件と合っていなければ飲んだって治りません。

婦人科部分の病名をみれば桂枝茯苓丸 もだいたい同じ病気の人に使いますので、病名だけで漢方薬を選んじゃうと「どっちを使ってもいっか!鉛筆転がして決めよ」みたいになっちゃいます。

どんな症状の人に使うのか?

これも誤解している医者や漢方の先生が多いですが、当帰芍薬散があてはまる条件である「症状」に自分の状態が当てはまれば、当帰芍薬散で、その症状が治るわけではありません。

そもそも、条件の症状が全部ピタッと当てはまる人なんていないです。

詳しくはこちらをお読みください。症状別で漢方薬を選ぶのは間違い!?(症状漢方)

あくまで症状『証』を構築、診断するための材料の1つにすぎません。

そして、漢方では治療や漢方薬に対する考え方によって主に3つの派閥に分かれ効能効果の考え方も違ってきます。

その派閥ごとに『当帰芍薬散がどんな体質の人』に合うのか説明したいと思います。

ちなみに僕は国際中医師の資格を持っていて、中医学を知っていますが日本漢方で治療しています。

ツムラ23番 当帰芍薬散

専門的な漢方薬の説明の前に本来の漢方治療からは離れますが保険適応のツムラの当帰芍薬散の添付文書から引用したいと思います。

ツムラの当帰芍薬散を選ぶ条件となる諸症

ツムラ23番当帰芍薬散添付文書より引用:
「貧血、倦怠感、更年期障害(頭重、頭痛、めまい、肩こり等)、月経不順、月経困難、不妊症、動悸、慢性腎炎、妊娠中の諸病(むくみ、習慣性流産、痔、腹痛)、脚気、半身不随、心臓弁膜症」

また出ました。肩こり等です。医者のマニュアルにもなるのに「等」ってはっきりしないところがいいですね。

次に効能効果です。

ツムラ23番当帰芍薬散添付文書より引用:
「筋肉が一体に軟弱で疲労しやすく、腰脚の冷えやすいもの」

僕の日本語がおかしいのではないですよ。効能効果としてこれが書かれています。

本来、この文は当帰芍薬散が合うとされる病的体質である『証』なのですが、医者は証を理解できない人が多いので、無理やり効能効果という表記にして日本語がおかしくなっているのですね。

でも医者はかしこいので、効能効果の説明の部分の日本語がおかしいことにも気づいていないようです。

ツムラ23番当帰芍薬散添付文書より引用:
【薬効薬理】
ヒトでの作用
1.ホルモンに対する作用(invitro)
2.血液流動性に対する作用
【動物での作用】
1.ホルモンに対する作用(ラット)
2.排卵誘発作用(ラット)
3.血液流動性に対する作用(ラット)
4.更年期障害に対する作用(マウス)
5.子宮に対する作用(invitro)

( invitro)というのは人間の体そのものではなく細胞だけで実験してわかったことです。

後は、全部、ネズミで実験してわかった効果です。

医者は不妊症にマニュアル的に当帰芍薬散を使いますが、その効果のエビデンス(科学的根拠)はネズミです。

そして、ネズミの妊娠率は100%に近いです。

動物中で100%に近い妊娠率を誇るネズミの実験でわかった効果を人間の不妊症で使うって『何かの大掛かりなギャグなんでしょうか?』

西洋医学はネズミなど動物実験で効能効果を研究することが大きな特徴ですが、漢方は2千年前から人体実験されてきた経験が証の診断方法や漢方薬の運用方法に生かされています。

保険適応の漢方薬の効能効果は2千年間の膨大な人体実験の貴重なデータを全部、無視して、わざわざネズミで効果を調べた結果を効能効果にしているという意味不明な行動です。

ここまでの項目を知っていれば、医者もこのマニュアルで処方しているだけなので、あなたは保険適応の漢方薬を処方する医者と同等か、それ以上の漢方の知識を知っていることになります。

日本漢方からみた当帰芍薬散を選ぶ条件となる症状

【血虚・陰の瘀血の証】
貧血、寒がり、手足冷え、顔色が白い、お腹が硬い、月経周期が早い、月経周期が遅い。

【水滞の証】
お腹で水の音が鳴る、むくみ、腰痛、腰が冷える、筋肉や筋が硬い、関節痛、オシッコが多い、オシッコが少ない、軟便、下痢、便秘。

【虚証】
疲れやすい、やる気が起きない、皮膚がやわらかくブヨブヨ傾向、常に前かがみ、目が疲れる、声が小さい。

【陰の瘀血、水滞証による精神症状】めまい、肩こり、動悸、頭痛、頭重、不眠、落ちこみやすい、麻痺部分がある。

【脈候】
沈・遅・弱・軟弱・細小

【舌候】
淡白舌、潤いがあり舌苔はない。

【腹候】
腹力は軟。下腹部は硬く、上腹部には水のたまっている音があり、へその動悸もみられる。上腹部に比べて下腹部は冷たい。

日本漢方の場合は、これらのいずれかの症状があてはまるとかどうか?いった感じで症状だけをみて選びません。

複数の症状と生活環境や生活リズム、精神状態などを総合判断して『証』を決定します。

症状だけで選ぼうと思ったら「オシッコが多いと少ない」「下痢と便秘」の両方があって、おかしな条件になっています。

しかし、これは、体全体をみて病的体質である『証』を分析していけば、なぜ、両方の症状が条件にあるのかがわかります。

症状は『証』を構成する症状として採用するかを考え、上記の当帰芍薬散の『証』があてはまるゆえに当帰芍薬散が合うと考えますので、証の過不足やズレがある場合は、当帰芍薬散が合う体質とは考えません。

その場合は『証』を再検討して他の漢方薬が合うかどうかを考え直します。

中医学からみた当帰芍薬散を選ぶ条件となる症状

【中医学の適応症状】
皮膚につやがない、頭がボーッする、頭痛、手足のしびれ感、筋肉のけいれん、月経量が少ない、月経が遅れる、月経痛。

という症状がベースにあって、なおかつ、

食欲不振、疲れやすい、顔や手足のむくみ、頭が重い、腰や四肢の冷え、腹痛、軟便、水様便、白色オリモノ、尿路減少が伴う者となっています。

舌は淡紅で胖大、白苔、脈は軟滑あるいは細がみられます。

日本漢方からみた当帰芍薬散の効能効果と禁忌

日本漢方は本来の伝統的な漢方を日本人用にアレンジした漢方で西洋医学のような効能効果という考え方はありません。

ある証を持っている人に対して、当帰芍薬散の持っている証と合えば体質は調整されて病気や症状が結果的に治るという考え方ですので当帰芍薬散の「証」自体が効能効果と言えます。

当帰芍薬散の「証」は、
『虚証』
『血虚・陰の瘀血の証』
『水滞の証』
『陰の瘀血、水滞証による精神症状』
です。

この証の条件に体力的な部分と漢方薬の強さを合わせる基準である六病位の条件では太陰病の虚証となります。

【当帰芍薬散が合わない人】
血を補い温めて血を巡らせるので桂枝茯苓丸 のような熱の影響で血の滞りのある人には合いません。

また熱証タイプの体質の場合は余分な熱がこもる場合もありますので、余分な熱がある体質の人にも合いません。

胃もたれある人には合いません。また当帰芍薬散を飲んで胃もたれをする場合も加減法を使うか当帰芍薬散自体をやめなければいけません。

中医学からみた桂枝茯苓丸の効能効果と禁忌

中医学は2千年前から伝わる伝統的な漢方ではなく70年前くらいに西洋医学を半分混ぜて考えられた漢方で学問として統一し学校で教え広めることを目的に設立された派閥ですので、漢方らしい体質からみるというよりは、漢方とは直接関係なさそうな西洋医学的から考える部分もあるため、効能は西洋医学的な考え方です。

【効能効果】
当帰芍薬散の効能効果は補血活血、健脾利水、調経止痛です。

消化器機能が低下して水分の排泄がうまくできず、その結果、全身的な血の不足を起こし、この影響からホルモン分泌や自律神経系の機能低下が起こったものを治すもので血を補い、血の巡りを促し、消化管内の不要な水を排出させます。

【禁忌】
禁忌は特にありません。

古方からみた当帰芍薬散の効能効果

漢方の原典となる条文です。原文そのままだと意味不明なので、要約されているものを引用しました。

古方も効能効果という考えはなく当帰芍薬散をどんな体質に人に使うのがよいかの指示があります。

現在の日本漢方の漢方薬はこの条文の解釈と生薬それぞれの性味(効能効果的なもの)を組み合わせて何千年と検討されて改変されてきたルールを使っています。

金匱要略ハンドブックより引用:
第五条 「妊娠中に腹が張るように痛む時は当帰芍薬散が主治する」

原典では「妊娠中」とありますが現代は単純に妊婦さんだけに使うものではありまん。

漢方はこの原文を自分なりに解釈して応用して使用します。

当帰芍薬散を構成している生薬

当帰、芍薬、川芎、白朮、茯苓、澤瀉 の6種類の生薬で構成されています。

日本漢方では構成生薬の生薬のどれもが同等ランクの効能効果をもっているとは考えません。

漢方薬全体を「1つのチームとして働く」とみますので、そこにはリーダー役の生薬やリーダー補佐役、調整役など役割が別れていて、それらで1つの処方のバランスをとります。

西洋医学では、当帰芍薬散に含まれる構成生薬の連携を想定していないので、やみくもに症状ごとに複数の漢方薬を処方したりしますが、漢方ではそんな無軌道な治療方法はとりません。

鑑別

鑑別とは漢方で最も重要なことです。

漢方薬は病院の薬のようにあらかじめ決まった効果があるわけではなく、ある病的体質のアンバランスになった過不足を調整します。

体質に対して漢方薬を選びますが、みなさんの体質ははっきりとした違いがあるわけではなく微妙な違いで体質が別れますので、その微妙な違いに対して対応する漢方薬があります。

似たような効能効果の漢方薬からも自分の体質を治す漢方薬の候補になるかを吟味して最適な漢方薬を選ぶことも漢方治療で重要なことです。

逍遥散、加味逍遙散、人参湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯などが他に比較して検討すべき漢方薬です。

その他の漢方薬も治療方針が違えば候補処方として考えらます。

まとめ

「妊娠率ほぼ100%のネズミのホルモンを活性化する」などを証拠に当帰芍薬散を処方できる医者のお気楽さが、ある意味うらやましいです。

しかし2千年前から存在し続け、その昔は王宮で用いられてきた漢方治療がそんな簡単なわけがありません。

同時に簡単にマニュアルだけで漢方薬を選んで治るほど根本治療は甘くありません。

漢方薬は深いのです。

漢方の理論は非常に難しいものですが東洋医学理論を踏まえて使用するとすばらしい力を発揮するものだと、ご理解いただけたら幸いです。

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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ ツムラ医療用漢方製剤マニュアル
◯ オースギ医療用漢方製剤マニュアル
◯ 漢方方意辞典:緑書房
◯ 類聚方広義解説:創元社
◯ 勿誤薬室方函:創元社
◯ 漢方診療医典:南山堂
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ 平成薬証論:メディカルユーコン
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅠ:薬局新聞社刊
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅡ:薬局新聞社刊
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅢ:薬局新聞社刊

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

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