漢方薬相談ブログ

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当帰芍薬散は自分の体に合っているのか?調べる方法

  1. いいかげんな当帰芍薬散を選ぶ根拠
  2. 当帰芍薬散が合う条件
  3. 虚実の条件
  4. 証の条件
  5. 合っているか合っていないかの最も大きなポイント

うちではネットで無料の漢方相談を受けつけています。

その相談から結構、ツムラの漢方薬などを処方されていて、現在、自分の飲んでいる漢方薬が本当に合っているのかどうかが気になって相談される方もいらっしゃるようです。

そりゃ、そうですよね。

一般の方でも『漢方薬は人それぞれの体質に合わせて選ぶ』ということがなんとなくわかっているのだけれど、実際、病院では、一切、体質を知るための問診や相談のやりとりもないし、漢方専門薬局では、詳しい問診や相談があったとしても、飲んでいるものが他のお客さんと同じものを飲んでいたり、漢方薬だと思っていたら実はサプリだったりと、まともに漢方をやっているところはものすごく少ないのです。

そもそも、『あなたの現在の体質と選んだ漢方薬が合っているかどうか?』というのは、『最初にちゃんと体質を分析してから選んだのか?』という前提が必要ですが、現実は、『最初にそもそも体質を分析していない』という根本的な問題から始まります。

病名はあなたの体質ではないし、かと言って症状をあてはめていって漢方薬は選ぶものでもありません。

「 病院でツムラの23番、当帰芍薬散を処方されたのですが合っていますか?」と聞かれても漢方では最初に絶対に必要な病的体質である『証』を判断されていないので、『合っているかどうか?』以前に、『体質をちゃんと分析、判断してもらってから漢方薬を選んでもらってください』としかいいようがないのです。

体質を分析、判断されていなければ、合っているも何もないのですが、逆に当帰芍薬散が明らかに合ってないポイント的な条件をお話ししたいと思います。

いいかげんな当帰芍薬散を選ぶ根拠

当帰芍薬散が合っているかどうを知るためには当帰芍薬散が、どんな体質に人に合わせて選ぶのかを考えていけばわかります。

医者や漢方の医学理論をよくわかっていない漢方薬局の先生などは、『当帰芍薬散がホルモンを活性化する』というような根拠でマニュアル的に処方します。

しかも、そのホルモンの活性化はネズミのホルモンのことです。

人間の体質に合わせて漢方薬を選ぶ方法がちゃんとした医学理論ではっきりしている漢方薬でネズミの実験の結果を根拠にするとは、漢方理論がわからないにしてもひどいですね。

当帰芍薬散が誰のホルモンに対しても活性化する効果があるのであれば、不妊症やPMSなど、女性ホルモンが関わる月経関連の病気は、全て当帰芍薬散で大丈夫ということになります。

でも、実際は月経関連で使うかもしれない漢方薬は他にも40種類ほどありますので、やはり、人それぞれの体質に合わせて、いろいろな漢方薬を選ばないといけないことがわかります。

当帰芍薬散が合う条件

当帰芍薬散は太陰病虚証という状態の方に合わせる漢方薬です。

太陰病とは、病気の状態がどれくらい進んでいるのか、時間経過などが含まれる状態を判断する条件です。

漢方では病気は太陽病というレベルから始まって、少陽病、太陰病、少陰病病、厥陰病という段階に進んでいくと考えられています。

風邪や急に膀胱炎になるなど、急性の病気が太陽病で、病気の状態が続き、治らないままの時間が経過すると病は体の深くまで悪くしていき、厥陰病は死にかけているステージのこととなります。

そして「太陽病 → 少陽病 → 太陰病 → 少陰病病 → 厥陰病」の中にそれぞれ、そのステージ内で使う漢方薬が決められています。

この病の流れは大きく「陽」の名称がついているステージと「陰」の名称がついているステージに分かれます。

太陽病、少陽病では「陽」のステージでこれは、体に熱の影響があることを示します。

太陰病、少陰病病、厥陰病のステージでは体が冷えの影響を受けていることを示します。

当帰芍薬散は太陰病という設定になっているので、この時点で、『冷えの症状が中心になっている』ことを表します。

「あっ私、足が冷えるから当帰芍薬散だ!」と思うのは早いですよ。

なぜなら、血の巡りが悪くても冷えは起こるからです。

血熱といって、熱の影響で血の巡りが悪くなると足などは冷えます。

この場合は、少陽病設定の桂枝茯苓丸などが候補として考えられます。

となると太陰病の冷えの場合は『手も足も冷える』という条件がはいってきます。

冬は外にいれば当然、手は冷えますが、太陰病までなっていない体質の人であれば、暖かい室内にしばらくいれば、手の冷えは気にならなくなります。

この場合は、太陰病まで進んでいないので、当帰芍薬散が合う体質ではありません。

虚実の条件

当帰芍薬散の最初の条件が太陰病虚証の人が合う条件となっています。

虚証、実症というのは、体力や病気に対抗する力をみます。

よく虚証は華奢で寒がりな人とか、実証は筋肉質のがっしりした人みたいな分け方をする先生がいますが、虚実はそんな単純ではありません

病気に対する反応性が高いと実証とみますので、例えば、「華奢な人がインフルエンザにかかり初日38℃が出ている時は実証」とみて「3日後あたりに熱が下がって鼻水がダラダラと出ている時は虚証」とみます。

つまり、1日目から3日目にかけて同じ人の病気が実証から虚証へと変わっていきます。

当帰芍薬散の虚証という条件は、今の時点で虚証か実証かをみますが、全体的に虚証か実証かの傾向もみます。

当帰芍薬散は虚証という設定ですから、「イメージ的には華奢で弱そうな人」となります。

なので、『足は冷えるけど、手は冷えない』『食欲はあるほうだ』などの方は当帰芍薬散が合う体質ではありません。

証の条件

当帰芍薬散が合う人の証の条件は、「血虚の証」、「瘀血の証」、「水毒の証」の3つの証が重なっている人です。

簡単に言えば、血が不足している人、血の巡りが悪い人、水の巡りが悪い人、そして、この3つの状態が全部ある人です。

血の不足だけで当帰芍薬散が合う体質とは考えませんので、「どれか1つでも当てはまればいいや」というものではありません。

気をつけないといけないのは、漢方での血の不足は、貧血があるかどうかで判断はしません。

貧血の検査でひっかからなくても、立ちくらみやめまいを起こしやすかったり、目がかすみやすいなどがあれば、血の不足と考えることもあります。

単純に「貧血の数値が悪かった人」ではないのですね。

瘀血の証というのは、2種類があり、熱系の影響の「陽の瘀血」と冷えの影響の「陰の瘀血」があり、当帰芍薬散は『陰の瘀血』になります。

これは冷えの影響で血管の動きが鈍り、血が少ないために起こる症状なので、血が多く、血自体の巡りが悪い経血に血の塊があるようなタイプは当帰芍薬散が合いません。

水毒の証とは水の巡りが悪い状態ですが、当帰芍薬散の場合は、太陰病、虚証という条件がありますので、主に下半身に水が滞りやすかったりします。

「足のむくみ」や「オシッコの回数が多い」、「一度、寝た後に夜中にオシッコに行く」などがなければ、当帰芍薬散は合いません。

また当帰芍薬散は、胃に負担をかけやすい生薬が含まれているので、当帰芍薬散を飲み始めて胃がもたれたり、胃が痛くなったりする場合は、当帰芍薬散は合いません。

合っているか合っていないかの最も大きなポイント

漢方薬は症状をあてはめて考えません。

病のレベルである太陰病かどうか、全体的な体質を示す虚実はどちらなのか?

証ごとの状態はどうなのか?

症状を順にあてはめて考えるのではなく、『全部の条件を総合的に捉えて』考えます。

そして、最も重要なのは、『鑑別』といって、他の候補になりそうな漢方薬と見比べるということです。

『本当に当帰芍薬散が合う体質なのか?』

または当帰芍薬散が合わないのかどうか?を考える場合、他にも桂枝茯苓丸や温経湯、逍遥散、人参湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯がより合う体質なのかどうかを比べて考えていきます。

他の漢方薬と見比べる場合も、当然、それぞれん漢方薬の太陰病などの病位や虚証、実証、漢方薬ごとに設定されている病的体質を示す証も考えて、最も、合っていそうな漢方薬を選びます。

当帰芍薬散が自分に合っているかどうかを考えるときに一番、難儀なのは、この鑑別だと思います。

なぜなら、他の候補になりそうな漢方薬のことを知っていないと合っているかどうかが判断できないからです。

また、他の漢方薬もことも検討しだすと「どの漢方薬も合ってそうだし、合ってなさそうだし…」という状態に陥ります。

ですので、当帰芍薬散を選ぶためには、東洋医学理論を駆使して、いろいろなことを考えなければいけないのですね。

不妊症に当帰芍薬散とか、貧血の冷えの人に当帰芍薬散を選んでいることが、いかにレベルの低いことをしているかがご理解いただけるかなと思います。

当然、これだけの条件があるわけですから、条件をよく考えないで処方された漢方薬は当然、効くか? 効かないか? ただの運になり、それは医療のプロがやることではありませんし、漢方の医学理論の知識のない医者や素人の人が合っているかどうかを調べるのは、ほぼ不可能です。

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【参考図書】

【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ ツムラ医療用漢方製剤マニュアル
◯ オースギ医療用漢方製剤マニュアル
◯ 漢方方意辞典:緑書房
◯ 漢方診療医典:南山堂
◯ 類聚方広義解説:創元社
◯ 勿誤薬室方函:創元社
◯ 漢方処方応用の実際:南山堂
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅠⅡⅢ:薬局新聞社刊
◯ 平成薬証論:メディカルユーコン

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

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