漢方薬相談ブログ

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自分の症状から選んだ漢方薬が効かない理由

  1. 漢方には流派がある
  2. 漢方の治療理論 『方証相対』
  3. 漢方薬には有効成分や効果はない
  4. 漢方では体の検査と漢方薬の効果がセットになっている
  5. 漢方は人ぞれぞれの体質を分析しないと治療すら始まらない

「病院で漢方薬を処方してもらったけれど、効果がよくわからない…」

こんな方って多いのではないでしょうか?

漢方薬の処方箋の説明を読んでいたら、「めまいやアトピーを治す効果」が書いてあって、簡単に治りそうな感じがしますよね。

でも、実際には病院で出してもらった漢方薬が効くことは、ほぼ、ありません。

なぜなら、病名や症状に合わせて漢方薬を選んでいるからです。

例えば、耳鳴りに苓桂朮甘湯や、にきびやアトピーに十味敗毒湯などですね。

漢方薬は東洋医学的な体質である『証』に合わせて最適なものを選ばないと効果がありません。

「証」、「体質」とは病名や症状のことではなく、症状を発生させている「原因」のことになります。

体質を分析しないで漢方薬を選ぶと、漢方薬が効くかどうかは、ただの『運まかせ』になります。

今回は、なぜ医者がよくやっているような、マニュアルをみて病名や症状を当てはめて選ぶ漢方薬では、効果がなく、単なる『運頼み』になってしまうのか、その根拠を説明したいと思います。

漢方には流派がある

漢方の世界では治療の考え方の違いによって流派があります。

「漢方は漢方でしょ?」と思うかもしれないですが、その漢方医学の中には「古方派」、「中医学派」、「日本漢方派」というものがあって、漢方薬局のほとんどは中医学という近代の中国の医学の方法で漢方薬を処方しています。

中医学は、2千年前から続く、みなさんが思い浮かべる漢方ではなく、70年くらい前に学問用に再編された『学校漢方』とよばれているものです。

ちなみに僕は、この中医学の先生である国際中医師という認定を受けていますが、中医学は学校漢方らしく、勉強には向いていますが、現場で実際に治す治療としては、役立たなかったので、中医学の医学理論で治すことはやめました。

僕は日本漢方という、500年前に中国から日本に伝わり、日本独自で発展した日本人のための漢方の理論で治療しています。

ちなみに医者の漢方は…治療派閥があることすら、知らないのではないかと思います。

単に病名や症状と漢方薬が対応したマニュアルを見てるだけなので。

この病名や症状に対して漢方薬を合わせる方法は、漢方薬を医薬品として、販売する法律上の建まえ的な設定であって、本来の治療とは何の関係もありません。

なぜ、医者は、この販売上の建まえの病名や症状に対応している漢方薬を選んでいるのか、僕にはよくわかりません。

漢方の医学理論を勉強したら、体質に合わさないとダメなことに気づくと思うのですが。

漢方の治療理論 『方証相対』

日本漢方では、漢方薬を選ぶ、考え方として『方証相対』というものがあります。

『方証相対』とは、漢方では本来、その人独自の体質を分析しますが、『全身の病的な状態を分析した、体全体を調整するものが、すなわち、その漢方薬の効果となる』という考え方です。

なので、よく『私の漢方薬の効果はどんな効果ですか?』と聞かれますが、効果は1つじゃないので、日本漢方では、『あなたの今の全身の状態を整えるもの』というのが、あなたにあった漢方薬の効果になるのですね。

例えば、「冷えている人には、温める漢方薬を選ぶ」というものですが、実際は、下半身は冷えて、上半身は、熱があってのぼせ、血の巡りが悪く、不要な水が溢れていて…と、かなり複雑な状態全部を調整する漢方薬を探し出します。

漢方薬には有効成分や効果はない

西洋医学と漢方では、効果の考え方が根本から違います。

西洋医学においての効果というのは、表面上の症状を一定時間だけ抑えることです。

例えば、鎮痛剤は、体内で発生させる痛みを抑える効果があるので、鎮痛剤を飲めば、痛みが抑えられます。

しかし、ここで問題になるのは、痛みを抑える効果は、「原因に対して効いているわけではない」ということ。

何らかの原因があって、その原因によって発生した痛みを無理やり抑えることが効果となります。

そうすると厳密には、原因を治す必要が出てきます。

一方、漢方薬は、症状を一時的に抑えるのではなく、頭痛の原因になっているものを治します。

医者は漢方の医学理論を理解できてないので、例えば五苓散をマニュアル的に頭痛の人に処方したりしますが、五苓散に頭痛の痛みを抑える成分効果もありません。

五苓散は「水の巡りが悪く、その水は肩から上の上部でたまっていて、同時に気も体の上部で溜まってしまっている」という状態が原因で、頭痛という形で現れている体質を治すものです。

この「状態」を五苓散で治すと、体は不調な状態を知らせる必要がなくなるので、結果的に頭痛はなくなっていきます。

ちょっとややこしいですが、これが体質(つまり真の原因)の診断であり、この状態を調整してくれるものが五苓散となります。

なので、漢方薬は、頭痛自体を何かの成分で抑えられないので、あなたの頭痛の原因と五苓散の効果がピッタリと合わなければ、頭痛は治りません。

頭痛の原因は、人それぞれなので、体質(つまり原因)によっては、熱がこもっいることが原因で、頭痛が起こっている場合もありますが、五苓散で治せるのは、肩から上に水と気が滞っていることが原因になっている人だけです。

五苓散に熱を鎮める効果はないので、熱が原因の頭痛の人は、何年飲もうが、永遠に治ることはありません。

これは『原因と漢方薬の効果が合っていない状態』だからです。

病院の薬で例えれば、頭痛で相談しているのに、鎮痛剤を出さないで、下痢止めを処方するほどマヌケなことになっています。

漢方では体の検査と漢方薬の効果がセットになっている

ある患者さんの頭痛の原因を分析した際に『余分な水が体上部に溜まっている』ことと『体の上部に余分な気が溜まっている』状態であると診断した場合、この体質診断が、そのまま『五苓散が合う人』でもあるし『五苓散の効果』でもあります。

ざっくりとまとめると五苓散は水を巡らせる薬になりますが、実際には細かな設定があって、それらの条件とあなたが、ピッタリと合うかどうかが治療のポイントとなっています。

だから、『方』という治療の方向性と『証』というあなたの体質は、『相対』という互いに関連していれば治るという、『方証相対』になるのですね。

西洋医学と漢方の体の治し方は、全く違うものなのです。

頭痛は、他にも『血の巡りの悪さ』が原因だったり、『冷え』が原因だったり、『胃の冷え』が原因だったり、これらが全部、重なっている人もいます。

人によって、体質(つまり原因)が変わりますが、体質が変われば、その体質に応じた漢方薬を選ぶことが、すなわち治療となってきます。

でないと頭痛は治りません。

血の巡りの悪いことが原因なら血を巡らせる漢方薬。

水の巡りが悪いなら水を巡らせる漢方薬。

「頭痛」という症状は、原因のことではないのです。

漢方薬は『全身の体質を分析した時点で自動的に飲むべき漢方薬が決まっている』ということになります。

ちなみに頭痛の漢方的な原因のタイプは、30パターンほどあり、それに合わせた漢方薬がありますので、頭痛に効く漢方薬は30種類ほどあります。

30種類の中から、『自分の頭痛の原因』『漢方薬の効果』一致するものを探します。

漢方は人ぞれぞれの体質を分析しないと治療すら始まらない

医者が東医学的な体質である『証』を分析しないで、頭痛なら五苓散とマニュアル的に漢方薬を処方してしまっているのは、本当は『血の巡りの悪いこと』が原因で頭痛になっているかもしれない人にとっては、的外れもいいところ。

頭痛の原因を治す漢方薬が必要なのに、「頭痛」に合わせて選ぶとか意味不明。

やっかいなところは、治療上は、大間違いなのですが、漢方薬を販売する法律上のマニュアルでは、間違っていないこと。

漢方薬は、症状を一定時間、抑えることが目的ではないので、頭痛に効く成分があるわけではありません。

バランスの崩れた体内の要素を分析し、原因を特定し、そのバランスを整えるのに最適な漢方薬を選べば治りますが、1つ、やっかいなことがあります。

それは体質を分析した時点では、『その分析や診断は推測である』ということ。

西洋医学の薬の場合は、痛みを抑える成分が、理論上は誰の頭の痛みでも抑えてくれます。

でも、漢方薬は自分が分析した体質(つまり原因)と、それに合わせた漢方薬は、その時点では合っているかどうかがわからないのです。

そして、頭痛を治すための漢方薬は30種類もあります。

答えが分かるのは、五苓散を飲んだ後に頭痛が治った時に初めて、『あなたの頭痛の原因は水の巡りが悪かったこと』(五苓散が合う体質)となります。

場合によっては、漢方医が五苓散の体質と分析したとしても、それで一向に治らないか、もしくはひどくなれば、五苓散である水と気が体の上部に溜まっているという、先生の分析が間違っているということになります。

『分析した体質と合わせた漢方薬の2つのどちらもが正解だった』場合に漢方薬は効果を発揮するのですね。

ですので、医者のように東洋医学的に体質を分析しないで、治療の方針も立てずにマニュアルだけみて漢方薬を処方するという方法は、『治るかどうかわからない漢方薬を運まかせで選んでいる』ということになりますので、治るかどうかは、正に『運』に頼るしかないのですね。

一般の方がネットで調べて病名や症状に合わせて、漢方薬をギャンブル的に飲むことは、しょうがないですが、少なくとも治療の専門家がやることではないと僕は思います。

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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ 漢方概論:創元社
◯ 漢方方意ノート:創元社
◯ 漢方臨床ノート(論考編):創元社
◯ 金匱要略ハンドブック:医道の日本社
◯ 傷寒論ハンドブック:医道の日本社
◯ 素問:たにぐち書店
◯ 漢方治療の方証吟味:創元社
◯ 中医診断学ノート:東洋学術出版社
◯ 図説東洋医学:学研
◯ 中国医学の秘密:講談社
◯ 陰陽五行説:薬業時報社
◯ まんが漢方入門:医道の日本社

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

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