漢方薬相談ブログ

柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)の本当の効能効果

柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)の本当の効能効果

  1. 柴胡桂枝乾姜湯の効能効果(保険適応)
  2. 柴胡桂枝乾姜湯の効能効果(日本漢方)
  3. 柴胡桂枝乾姜湯の効果(日本漢方)の注意点
  4. 漢方薬は合わなければ効果がないし副作用にもなる

漢方には体の治す考え方の違いによって、3つの派閥があります。

『古方』『日本漢方』『中医学』です。

この3つの治療派閥は、それぞれ『漢方薬の効果』に対する考え方や『治療の考え方』が違います。

ちなみに保険適応の漢方薬の効能効果は、このどれにもあてはまりません。

某漢方薬メーカーが、東洋医学の治療の知識がなくても、誰でもマニュアルで選べるように効能効果も勝手なものを設定しています。

残念ながら、漢方の治療理論に西洋医学の病名や症状から漢方薬を選ぶ方法などは存在しません。

『漢方薬の効能効果』『漢方薬独特の考え方』に基づいています。

柴胡桂枝乾姜湯の効能効果(保険適応)

まずは、本来の漢方薬の効能効果としては意味がないですが、病院の漢方薬の効能効果を一応、紹介しておきます。

保険適応のツムラの柴胡桂枝乾姜湯の添付文書から引用したいと思います。

ツムラの柴胡桂枝乾姜湯の効能効果

ツムラ11番 柴胡桂枝乾姜湯 添付文書より引用:
■効能又は効果 体力が弱く、冷え症、貧血気味で、動悸、息切れがあり、神経過敏なものの次の諸症:更年期障害、血の道症、神経症、不眠症。

一見、冷え症やら動悸を抑えてくれて、更年期障害に効くように見えますが、よく読んでみるとここに書いてあるのは効能効果ではないです。

これは、本来、漢方薬を体質で選ぶ場合の柴胡桂枝乾姜湯が合うとされる体の症状や状態の条件をごくごく簡単にして書かれているだけです。

効能効果とは「この状態をどんな風に治すのか?」ですね。

本来の効能効果のお話しは詳しくはこちらの「漢方薬の「効能効果」の説明を参考にしても意味がない!?」をお読みください。

効能や効果というからには、『なんとなく、その症状や病気が治るよ』というものではありません。

西洋医学的に考えるなら、柴胡桂枝乾姜湯の『何の成分』『体のどこの部分』『どのようにして』効くのかということが効能効果です。

例えば、「貧血に対しては、漢方薬が鉄などを補ってくれるのか?」

「更年期障害に対しては、ホルモンを補充するのか?」

でも、柴胡桂枝乾姜湯は東洋医学の薬ですので、そんな西洋医学のような鉄剤の成分とかホルモンの作用なんてありません。

よく読んでみると『ここに書かれている体の状態』の人に『具体的にどう効くのか?』は何一つ書かれていません。

そもそも、この症状や病気の条件って、全部、あてはまれば柴胡桂枝乾姜湯等が合う体質なのでしょうか?

何か1つの症状だけでもあてはまればいいのでしょうか?

病名や症状が当てはまればいいのなら、柴胡桂枝乾姜湯でなくとも、これくらいの少ない条件ならあてはまる漢方薬が他にもいくらでもあります。

保険適応の漢方薬は、実は『処方している先生が効能効果を理解もしてないし、ちゃんと説明できない』のに処方していることが多いのです。

なので、治るか、治らないかは単なる『運』になると思います。

柴胡桂枝乾姜湯の効能効果(日本漢方)

日本漢方では『柴胡桂枝乾姜湯にどんな効果があるのか?』を考えるのではなく、『柴胡桂枝乾姜湯が合いますよ』と言われている体質の条件あなたの全身の状態が合うかどうか? が『効能効果』と関係します。

当たり前ですが、『西洋医学の薬の効能効果の考え方』『東洋医学の漢方薬の効能効果の考え方』全く違うのです。

日本漢方では『柴胡桂枝乾姜湯の合う体全体の状態=柴胡桂枝乾姜湯の効果』になります。

柴胡桂枝乾姜湯を使う病気は、下記の引用部分を参考にしてください。

柴胡桂枝乾姜湯を使う可能性のある病気:
肺炎、胆嚢炎、気管支炎、糖尿病、突発性難聴、腎盂炎、中耳炎、肩周囲炎、PMS、急性肝炎、慢性肝炎、鬱、花粉症の体質改善、膵臓炎、無月経、蕁麻疹、胆石症、十二指腸潰瘍、メニエル、更年期、不眠症、アトピー、肺気腫、不妊症、慢性胃炎、気管支喘息、肋膜炎

これらの病気は、日本漢方の本にも書いてある病名で、実際に僕が柴胡桂枝乾姜湯を使って治した病名です。

どんな病気でも効きそうですね。

漢方薬の場合は、どんな病気にでも効くのではなく柴胡桂枝乾姜湯が合う体質であれば、その人の持っている病気が治ります。

漢方では病名は直接的には関係ありません。

体全体から分析したときの体質に対して、どんな漢方薬が合うのかを考えないと効能効果を発揮しません。

そもそも、漢方薬の効果を東洋医学の基礎知識なしに理解するのは不可能なのですが、あえて簡単に『柴胡桂枝乾姜湯の効能効果』を説明すると…

【柴胡桂枝乾姜湯の効能効果】

1 胸の辺りに滞った熱を取り去って、胸の辺りに滞っていた気と熱を巡らせます。

2 ストレスと熱の部分から体力がなくなっている方の体力を熱の回りを整えることによって回復させます。

3 皮膚表面を引き締めて汗を止めます。

4 気が頭に溜まってストレスになっている気を体の下の方に巡らせて滞りを取ります。

5 口や皮膚の乾燥を潤します。

6 腎臓の気を補いオシッコや便に関係する体の水の巡りを整えます。

7 肺や気管支に滞った余分な水を巡らせます。

8 精神の上がりすぎや落ち込みすぎな状態をニュートラルな状態に合わせます。

9 胃酸を抑え、胃の機能を回復させます。

なるべく、簡単にしてみましたが、多分、わけがわからないですよね。

なぜなら、漢方は西洋医学とは別物だからです。

西洋医学的にわかりやすくしても意味がありません。だって、それじゃあ、体質と合っていないから効かないからです。

これらが、柴胡桂枝乾姜湯の効能効果で、このうちのどれかの効果があてはまればいいのではなく、9つの効果が必要な体質であれば、柴胡桂枝乾姜湯が合います。

柴胡桂枝乾姜湯が合う人の症状:
口が苦い、口が乾く、胸が詰まる、胸が痞える、夕方に微熱が出る、皮膚が乾燥する、胸焼け、肩こり、肩が痛い、乾いた咳、吐き気、寝汗、のぼせ、無月経、不眠、動悸、息切れ、疲労、るいそう、手足の冷え、息切れ、貧血、食欲不振、胃痛、軟便、便秘、オシッコが少ない、夜中にオシッコにいく、痰が多く出るなど

こちらも、どれかの2、3症状が、あてはまるのかどうかではなく、『全体的にこんな傾向の症状なのか?』 を分析します。

うちの問診が全身250箇所のチェックをしてもらうのは、詳しく分析するためです。

その他、漢方独特の『柴胡桂枝乾姜湯が合う条件』があります。

【病位】少陽病、虚証。
【脈侯】弦弱・弱・浮弱・浮数・沈弦細。
【舌侯】乾燥あるいは湿潤、無苔あるいは微白苔。
【腹侯】腹力やや軟。心下部、季肋下は陥没して弱い抵抗(自覚的には逆に膨満)。しばしば臍上悸があり、臍下悸があり、特に上腹部には振水音が認められる。
【証】胸脇の熱証、胸脇の燥証、気の上衝の証、虚労の証、脾胃の水毒、胸脇の熱証による精神症状の証。

ここに書いてあるのは、あなたの体の状態上記のような条件一致すると考えるなら柴胡桂枝乾姜湯が合います。というのと同時に柴胡桂枝乾姜湯で治せる病的な体質の条件です。

この記事で、項目を1つずつ説明していくと、延々と終わりませんので、他の記事で追い追い説明していきたいと思います。

ただ1つだけ、重要なものがあります。

それは【証】です。これが、あなたの体質を表していて、同時に先に説明した柴胡桂枝乾姜湯等の効能効果になります。

『この条件の体の状態』を治すのが柴胡桂枝乾姜湯なので、『柴胡桂枝乾姜湯の合う条件=柴胡桂枝乾姜湯の効能効果』となるのですね。

だから、ネットなどで柴胡桂枝乾姜湯で書かれている病名や症状は、その病名や症状を治すものでありません。

全身の症状や状態から、柴胡桂枝乾姜湯が合うかどうか、『体質を分析』しないといけないのです。

柴胡桂枝乾姜湯等の効能効果を知りたい場合、地味ですが、上記の条件に自分の体全体の状態が当てはまるかどうかを1つずつ、チェックしていくしかありません。

どの漢方薬にもこういった『複雑な条件』がありますので、他の漢方薬の条件の1つ、1つの意味を理解することも重要です。

漢方薬は『書いてある病名や症状を2、3個、当てはめたらなんとなく治った』なんていう、いい加減な根拠で処方するものではありません。

あくまで、全身の症状や体の状態を総合的に判断して病的体質である『証』を分析、推測します。

  • 証についてはコチラに詳しく書いています。

漢方薬で治したい人は「証」を知らなければ治らない

  • 症状から証を導き出す方法についてはコチラに詳しく書いています。

自分の症状をあてはめていけば効果のある漢方薬を選べるのか?

柴胡桂枝乾姜湯の効果(日本漢方)の注意点

気をつけなければいけないのは、柴胡剤とよばれる加味逍遙散や柴胡桂枝湯、柴胡桂枝乾姜湯などは、どれも似たような『証』であるということ。

つまり、『似たような効能効果』の漢方薬が、いくらでもあるということです。

どの漢方薬にも『胸脇熱の証』『水滞の証』などがあるのですが、だったら『みんな同じような効果なのか?』というと、漢方薬は『体質に合わせる=効果を発揮する』というものなので、他の漢方薬では、【病位】【脈侯】【舌侯】【腹侯】など病名や全身の症状以外の他の条件が微妙に変わってきたりするので、『証』だけを考えるのではなく、他の条件もあてはまるのかをチェックする必要があります。

また『証』『胸脇熱の証』『気滞の証』というものが組み合わさってきたり、胸脇熱の熱の強さの違いなどでも選ぶ漢方薬は変わってきます。

『いろいろな、体の条件の違い』で選ぶ漢方薬の種類も微妙に変わります。

漢方薬は合わなければ効果がないし副作用にもなる

漢方薬の効果が高いかどうかは『より自分の体質に合っているものか?』で決まります。

漢方薬は似たような条件のものが、いくらでもありますので、効果が高いかどうかよりも『合っている確率が高いかどうか?』が重要です。

そして、『漢方薬が合っているかどうか?』を知るためには体質(証)を判断していないと、合っているかどうかさえ確認できないので、東洋医学的体質を判断していないと効果があるかどうかさえ、確認できないわけです。

また、漢方薬の副作用は、あなたの体質と漢方薬が合ってない場合に起こり、病気が、よりひどくなる可能性もあります。

あと、中医学的な柴胡桂枝乾姜湯の効能効果や古法の効能効果がありますが、別の記事で書いてみたいと思います。

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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ ツムラ医療用漢方製剤マニュアル
◯ オースギ医療用漢方製剤マニュアル
◯ 漢方方意辞典:緑書房
◯ 漢方診療医典:南山堂
◯ 類聚方広義解説:創元社
◯ 勿誤薬室方函:創元社
◯ 漢方処方応用の実際:南山堂
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅠⅡⅢ:薬局新聞社刊
◯ 平成薬証論:メディカルユーコン

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

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