よく効く漢方薬は副作用で「毒」にもなります
漢方薬や薬というと、「効果が強いもの」「効果が高いもの」が良いと考えることが多いと思います。
でも、漢方薬で体質から治していきたいと思うのであれば、漢方薬の効果が高そうかどうかを一番に考えても実は意味がありません。
漢方の根本的治療や体質改善の真髄というのは、そこじゃないのですね。
今回は、病院の薬とは全く違う漢方薬の効果と副作用の怖さをお話ししたいと思います。
病院の薬は根本治療からみれば悪魔の契約
「薬の効果が強ければ治りやすい」という考えは、病院の薬のように『一時的に症状さえ抑えればいい』という治療であれば、非常に良いことです。
体内のバランスなんか関係なく、化学薬品の力で強引に症状を抑えにいくわけですから、ごまかす力、強引な力は、強いほどいいわけです。
例えば、アトピー性皮膚炎に使うステロイド剤は、効果が強ければ、強いほど湿疹やかゆみを抑える力が強くなります。
ところが、ステロイドには副作用があります。
副作用というか、ステロイドが本来、持っている、もう一つの作用といったほうがわかりやすいですが、かゆみ自体は、ステロイドの炎症、免疫反応を強制的に抑えることによって治ります。
そして、炎症や免疫反応というのは、本来、身体を病気から守る為の人間のバリアーなのです。
つまり、効果が強いステロイド剤は、自分自身の免疫力を抑える力が強くなりますので、かゆみを抑える力が強いほど、同時に菌やウィルス、何らかの異物からの病気になりやすくなるということです。
悪魔の契約みたいなものですね。
『かゆみは止めてやるが、病気にはかかりやすくなるが、それでいいか?』
悪魔だったら、こんな感じで問いかけるでしょうから、「なんとなくステロイドを続ければ、根本的に治るかのような嘘のイメージを醸し出している皮膚科の医者」よりも、ハッキリと言ってくれる悪魔の方がいくらか良心的かもしれません。
なので、長期間、ステロイドを使っている人は風邪をひきやすかったり、腸炎などになりやすかったり、元のアトピーの湿疹に加えて、ステロイド剤が原因じゃないかと考えられる菌が原因の湿疹が増えたりと、「最初の湿疹状態よりもひどくなってるんじゃないか?」みたいなことになっていることがよくあります。
なので残念ながら、『効果が強い』→『より治りやすい』とはならないのですね。
効果というのは、『人間の身体に与える変化』であって、『自分にとって都合の良さそうな部分の効果だけが高い』のではなく、ステロイドのように、『かゆみを止める効果が高ければ、高いほど、免疫は抑えられて、体は弱って病気になる可能性が高くなる』とう状況に陥っていきます。
だったら、漢方薬は自然のものだから、副作用なくお得ですよね!と思われるかもしれません。
はい、そんなことは一切、ありません!
漢方薬も、そんな都合の良いものではありません。
でも、漢方には、すごい考え方があるのです。
漢方の陰陽という考え方
漢方に「附子」という生薬があります。
真附湯という漢方薬に含まれていたりするのですが、トリカブトと言えばわかりやすいですね。
昔、毒殺事件に使われた『猛毒』です。
でも、これ漢方薬なのです。
「なんで、毒なんか、飲ませるの?」と思われるかもしれませんが、漢方の世界では、基本的な考えに「こっちは良い作用」とか「あっちは悪い作用」なんて考えはありません。
『どんなものも良い面もあるし、悪い面もある』という陰陽の考え方です。
トリカブトである附子は、猛毒ですが強烈な鎮痛効果と強烈に温める力があります。
こういった性質なので、弱りきって、体力がなく自分で熱を生み出せない人、強烈に痛みがひどい人には、とても良い薬になります。
ところが、ところが、そこまで冷えが強くない人はどうなるでしょう?
余分な熱がこもります。のぼせてぼーっとします。下手したら鼻血がでます。激烈な頭痛が発生します。
痛みもそこまで酷くなければ、関係ないところがシビレ始めます。
何せ猛毒ですから。
本来の漢方理論から考えたら、『冷え性があるから』とか、『痛みがあるから』などの症状だけを当てはめて真附湯を処方することなんてありえません。
しつこいですが、何せ猛毒ですから。
その人の体質に合わせて、強烈に温めてはいけない場合は、ソコソコ温め、痛みがソコソコなら、ソコソコ痛みを止めてくれる漢方薬を選びます。
『効果が最強そうだから、猛毒のトリカブトの入ってる真附湯にしました!てへ!』って、そんな単純すぎる考えでは漢方薬は扱えないのですね。
漢方の医学理論のすごいところは、最初から薬の裏表の作用を考えていることなのです。
「治るか、治らないか」に関わる陰陽という法則
漢方の治療原則で最も重要なのが、陰陽です。
「光が明るければ、明るいほど、影が暗くなる」
これは避けようのない地球の法則です。
漢方薬は、陰陽を考えて処方します。
人の体質には『体が冷えているので、温めることが治療となる人』もいるし、僕のように『常に余分な熱が発生して、不用な熱を冷やすことが治療となる人』もいます。
体が冷えている体質の人にとっては、温める漢方薬は、効果の高い薬となりますが、僕のような熱がこもるタイプには、その漢方薬がそのまま毒となります。
まさに陰陽で、これが『体質に合っているかどうか?』ですね。
なので、医者がやっているような、体質もみないで「アトピー」とか「冷え性」という病名や1、2個の症状だけで、漢方薬を選ぶことなんて、本来の漢方を知っている人間からしたら、狂気の沙汰です。
ちなみに、実際の人の体質は、「冷えている人」とか「熱がこもっている人」なんて単純ではありません。(解説上、単純にしましたがそんな単純な人はいません)
実際は『上半身は熱がこもって、手足と胃腸は冷えて、大腸は熱がある』とか、『皮膚表面は乾燥しているけれど、足はむくみ、体には不用な水が溜まっている」など、ものすごく複雑です。
そんな、ややこしい、その人独自の体質に対して『どんな性質で、どれくらいの強さの薬だったら合うのか』を組み立てながら考えるのが漢方なのですね。
効果が強そうな漢方薬、効果が高そうな漢方薬なんていうのは、結局、合わなければ漢方ではちっとも良いことではないのです。
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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ 漢方概論:創元社
◯ 漢方方意ノート:創元社
◯ 漢方臨床ノート(論考編):創元社
◯ 金匱要略ハンドブック:医道の日本社
◯ 傷寒論ハンドブック:医道の日本社
◯ 素問:たにぐち書店
◯ 漢方治療の方証吟味:創元社
◯ 中医診断学ノート:東洋学術出版社
◯ 図説東洋医学:学研
◯ 中国医学の秘密:講談社
◯ 陰陽五行説:薬業時報社
◯ まんが漢方入門:医道の日本社
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