漢方薬相談ブログ

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加味逍遥散(かみしょうようさん)の本当の効能効果

一般の方だけでなく、始末の悪いことに医者も漢方薬の効果を思いっっっきり勘違いしています。

こんなことは言うまでもないですが、西洋医学の病名、症状と漢方は何の関係もありません。

漢方薬は、漢方の医学理論に基づいて、証(病気の原因や病気的な体質のこと)というものを分析、判断して、その証を治せる漢方薬を選びます。

ある漢方薬には、病名や症状のことが書いてありますが、何も書いてある病気や症状を治すという意味ではありません。

例えば、保険適用の漢方薬であるツムラのサイトから加味逍遥散の説明を元に説明してみたいと思います。

ツムラの加味逍遥散より抜粋:
女性の不定愁訴に用いられる代表的な漢方薬
“産婦人科の三大漢方薬”のひとつで、月経異常や更年期障害など、女性特有の症状によく用いられます。
体力があまりない人で、肩がこる、めまいや頭痛がするなどのほか、のぼせや発汗、イライラ、不安など、不定愁訴といわれる多様な心身の不調に広く用いられます

そもそも漢方の世界で産婦人科なんて分け方はなく、婦人科の三大漢方薬なんて呼ばれ方もないんですけどね。

自分のところで勝手に考えたのでしょうか。

確かに女性によく使う漢方薬ですが、月経異常や更年期障害の薬ではなく、月経異常や更年期障害を含む体質の人に使うことがある漢方薬です。

こういった説明では『肩がこる、めまい、頭痛、のぼせ、発汗、イライラ、不安、不定愁訴』の症状があてはまれば、加味逍遥散はその症状を治してくれるものという勘違い!

説明文の最後の『広く用いられる』という説明が、その誤解を誘っています。

まるで、加味逍遥散が、どの症状にも対応できるかのように書いてありますが、加味逍遥散は、ここで書かれている症状を治すわけではありません。

ココを医者も勘違いしていますが、ここに書いてある症状は、加味逍遥散が治せる症状や病気のことが書いてあるわけではないのです。

漢方薬は症状を当てはめて選ぶものではない

そもそも、ここに書かれている症状のどれかを治してくれるものなら、桂枝茯苓丸も柴胡桂枝乾姜湯なども似たような症状が書いてあります。

例えば、頭痛なんて、どの漢方薬にも書いてあるので、漢方薬なら何を飲んでもいいことになります。

かといって、全部の症状がぴったりと当てはまらないといけないのでしょうか?

全部の症状がピッタリと当てはまることもありえないですよね。

実際は、何か1つの症状はあったり、なかったりだと思います。

ここに書いてある病名や症状は、それが当てはまるかどうかの条件が書いてあるわけでもなく、それらを治すことができるわけでもありません。

ここに書かれている症状は、自分が加味逍遥散を飲んでもいいのかどうかを分析するための条件が、ほんの少しだけ簡単に書かれているだけなのです。

『書いてある病気や症状にあてはまったら治してくれるよ』なんて、2千年前からある宮廷医療の漢方がそんな小学生でも、できそうな医療なわけがないのです。

加味逍遥散の本当の効果

加味逍遥散の効果は『胸脇熱証』『胸脇の熱証による精神症状』『瘀血』『虚証』という体質を治すものです。

漢方薬は人それぞれの体質に合わせて選び、その漢方薬と体質が合っていれば体を調整してくれるので、漢方薬を飲む場合は、効果が何か?よりも自分の体質は何なのか?がわからないと漢方薬は選べません。

ですので、医者がやっているような症状や病気をあてはめて加味逍遥散を選んでいるのは、間違いで、何の意味もありません。

つまり、あなたが、『胸脇の熱証』『胸脇の熱証による精神症状』『瘀血』『虚証』という体質であれば、加味逍遥散が体の不調を整えてくれるので、結果的に病気や症状も治るわけです。

【加味逍遥散の効能効果】
1 胸の辺りに滞った気を部屋の換気をするように発散させ、気の巡りを促します。

2 胸の辺りに滞った熱を部屋の換気をするように発散させ、心の臓の不要な熱を取り去り気の巡りを促します。

3 肝の臓の不要な熱を取り去って、肝の臓の疏泄作用というものを活性化させて気と血の巡りを促します。

4 血管を温めて血の巡りを促します。

5 気の巡りと血の巡りを整えることによって、ホルモンや自律神経系の調整をはかります。

6 紹介の気を補い体力を回復させます。

なるべく、簡単にしてみましたが、多分、わけがわからないですよね。

もっと、こう「神経ホルモンを安定させる」とか「炎症を抑える」なんていうわかりやすい説明をしたいところですが、漢方薬は本来、西洋医学と関係ないのです。

漢方薬は東洋医学の理論に基づいて使うものです。

加味逍遥散の効果を簡単に説明したら、肝の清熱肝の疏泄駆お血補虚ですね。

加味逍遥散はどんな効果ですか?と聞かれたら、こうとしか答えようがありません。

漢方薬は、本来は効果すら基礎知識がないと理解できないものなのです。

加味逍遥散に書いてある病気の意味

では、漢方薬の条件に書かれている病名や症状は何なのでしょうか?

それが治るという意味ではありません。

病名は『加味逍遥散が治療薬として応用して使われることが多い』という参考の情報です。

べつに加味逍遥散が更年期障害や自律神経失調症を治す薬というわけではなく、更年期障害や自律神経があって、なおかつ『胸脇熱証』『胸脇の熱証による精神症状』『瘀血』『虚証』という原因をもっている体質の人。が合う漢方薬です。

応用的には下記の病気に使う可能性がありますが、決して、これらの病気を治す薬ではありません。

加味逍遥散を使う可能性のある病気:
自律神経失調症、血の道症、慢性肝炎、肝硬変、胆嚢炎、慢性胃炎、胃十二指腸潰瘍、膀胱炎、原因不明の微熱、蕁麻疹、ニキビ、アトピー、ノイローゼ、不眠症、不定愁訴、咽喉神経症、神経性胃炎、うつ、頭痛、過敏性大腸炎、月経異常、PMS、子宮内膜炎、シミ、腰痛症、冷え性、更年期障害、不妊症

加味逍遥散に書いてある症状の意味

条件として書いてある症状は、これまた、治せる症状が書いてあるのではなく、これらの症状を元に体質を分析していきます。

例えば、「症状が一定せずにいろいろな症状が出てきたり、場所が変わったする」とか「不安などになりやすい」「頭痛がある」「夜中に目が覚める」「めまいがある」などをつなぎ合わせ考え、これは『胸脇の熱証である』と推測し、漢方医が判断するわけです。

この時に「頭痛がある」「夜中に目がさめる」「めまいがある」などは、上焦の熱証とか、血虚証など他の原因でも起こる症状なので、『全身の症状』『症状の強さ』『症状が起こる時期』『関連して起こる症状』など、漢方医が分析して考えます。

これらの分析はマニュアルで決めることはできません。

ちなみに漢方薬を処方しいてる医者であっても、体質や原因を分析する能力は持っていません

こうやって、症状や状態をつなぎ合わせたりして、分析しながら、原因を探っていくためのヒントが加味逍遥散に書いてある症状となります。

加味逍遥散に関連する症状は以下となります。

加味逍遥散に関連する症状:
発作性の熱感、目の充血、目が疲れやすい、口が苦い、口が乾く、寝汗をかく、のぼせ、ほてり、胸が詰まる、胸が痞える、夕方に微熱が出る、胸焼け、症状が一定いない、症状を感じる場所が一定しない、不安が強い、気が小さい、神経質、頭痛、めまい、肩こり、寝つきが悪い、イライラしやすい、怒りっぽい、喉の狭まる感じがある、吐き気、月経異常、のぼせ冷え、足の冷え、不正出血、貧血、背中の湿疹、腰痛、便秘、下痢、疲れやすい、食欲不振、やる気が起きない

ツムラのサイトの症状の説明は、簡単すぎて役に立たないレベルだと思います。

『どれかの症状が、当てはまるのかどうか?』とか『全ての症状が当てはまるのか?』はなく、症状と症状を関連づけて考えたり、どの症状が主役になり、どの症状が脇役なのか、など、構成と原因を考えます。

その他、漢方独特の『加味逍遥散が合う条件』があります。

【病位】少陽病、虚実間証。
【脈侯】弦やや弱・沈弱。
【舌侯】乾湿中間、微白苔。
【腹侯】腹力やや軟。時に胸脇苦満足、臍傍の抵抗と圧痛上悸があり、しばしば上腹部には振水音が認められる。
【証】胸脇の熱証、胸脇の熱証による精神症状の証、瘀血の証、虚証。

ここに書いてあるのは、あなたの体の状態上記のような条件一致すると考えるなら加味逍遥散が合います。という加味逍遥散で治せる病的な体質の条件です。

この項目を理解しようと思ったら、漢方の基礎知識が必要ですので、割愛します。

加味逍遥散の効果の注意点

気をつけなければいけないのは、柴胡剤とよばれる加味逍遙散や柴胡桂枝湯、柴胡桂枝乾姜湯などは、どれも似たような『証』であるということ。

つまり、『似たような病気、似たような症状に使い、似たような効能効果』の漢方薬が、いくらでもあるということです。

どの漢方薬にも『胸脇熱の証』『水滞の証』などがあるのですが、だったら『みんな同じような効果なのか?』というと、漢方薬は『体質に合わせる=効果を発揮する』というものなので、他の漢方薬では、【病位】【脈侯】【舌侯】【腹侯】など証以外の他の条件が微妙に変わってきたりするので、『証』だけを考えるのではなく、他の条件もあてはまるのかをチェックする必要があります。

また『証』『胸脇熱の証』『気滞の証』というものが組み合わさってきたり、胸脇熱の熱の強さの違いなどでも選ぶ漢方薬は変わってきます。

『ちょっとしたの条件の違い』で選ぶ漢方薬の種類も微妙に変わります。

漢方薬は合わなければ効果がないし副作用にもなる

漢方薬の効果が高いかどうかは『より自分の体質に合っているものか?』で決まります。

漢方薬は似たような条件のものが、いくらでもありますので、効果が高いかどうかよりも『合っている確率が高いかどうか?』が重要です。

そして、『漢方薬が合っているかどうか?』を知るためには体質(証)を判断していないと、合っているかどうかさえ確認できないので、東洋医学的体質を判断していないと効果があるかどうかさえ、確認できないわけです。

また、漢方薬の副作用は、あなたの体質と漢方薬が合ってない場合に起こり、病気が、よりひどくなる可能性もあります。

また、加味逍遥散には、中医学的な効能効果や古方の効能効果の考え方がありますが、別の記事で書いてみたいと思います。

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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ ツムラ医療用漢方製剤マニュアル
◯ オースギ医療用漢方製剤マニュアル
◯ 漢方方意辞典:緑書房
◯ 類聚方広義解説:創元社
◯ 勿誤薬室方函:創元社
◯ 漢方診療医典:南山堂
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ 平成薬証論:メディカルユーコン

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

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