漢方薬相談ブログ

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加味逍遙散の本当の効能効果について

  1. 加味逍遙散の効果とは加味逍遙散の体質のこと
  2. 加味逍遙散の効果(日本漢方)
  3. 加味逍遙散の効果(中医学)
  4. 加味逍遙散の効果(病院)
  5. 漢方薬は合わなければ効果がないし副作用にもなる

加味逍遙散にはどんな効果があるのでしょうか?

病院ではツムラ24番が加味逍遙散ですね。

多分、みなさん「加味逍遙散が女性ホルモンを整えてくれる」とか「血管を広げて血の巡りを良くする」みたいな西洋医学の科学的なわかりやすい効果を期待していると思います。

または加味逍遙散は「どんな病気や症状が治るようになっているのか?」を知りたいですよね。

しかし、漢方薬は西洋医学とは全く違うルールの薬です。

残念ながら、漢方薬に西洋医学的なわかりやすい効果というのは存在しません。

『病院の薬』は、薬を作る際にネズミやウサギを使って、その薬には「どんな効果があって」「その効果はどんな成分があって」ということを研究してとして認められるので薬の効果成分の説明ができますが、漢方薬はあなたが理解できそうだと思っている西洋医学的な効果成分が存在しません。

そもそも漢方と西洋医学とは何の関係もなく『治療や薬の効果の考え方自体』が根本から違うのです。

ツムラなどの保険適応の漢方薬メーカーでは、例えば、加味逍遙散の効果(薬効薬理)というものを下記のように『医者の使っているマニュアル』に書いていますが、『更年期障害に対する作用 → (ラット、マウス)』だけでは、何のこっちゃ?という感じですね。

ツムラの医療用マニュアルを参照:
更年期障害に対する作用(ラット、マウス)

にこれが病院の薬の効果の根拠だったら、具体的に更年期障害に関連している『どの部分(神経?、ホルモン?、卵巣?、子宮?)』に加味逍遙散の『どんな成分』『どのように効いたのか』が、ハッキリとわからなければとして成り立ちません。

これだけでは『ちょっと聞いて!加味逍遙散を飲んだら更年期に効いた感じがするわ!』という近所のおばちゃんの口コミと変わらないわけです。

では『加味逍遙散には効果がないのか?』というと、そうではありません。

漢方で加味逍遙散の効果というのは『加味逍遙散が合う体質の人』ということになります。

加味逍遙散の効果とは加味逍遙散の体質のこと

実は加味逍遙散の効果の考え方は漢方の治療派閥によって考えが異なります。

大きく『日本漢方』『中医学』によって効果の考え方が変わってきます。

まずは日本漢方が考える加味逍遙散の効果から。

日本漢方では方証相対といって、『加味逍遙散の効果は加味逍遙散の体質の人に準ずる』という考えがあります。

何言ってるのかよくわからないですね。

『加味逍遙散的な体質の人』『加味逍遙散で治る』ということですね。

つまり、本来の漢方では、どんな効果があるのか?を考えるのではなく「加味逍遙散が合いますよ」と言われている条件あなたの全身の状態が合うかどうか?が重要になります。

『加味逍遙散の合う体全体の条件=加味逍遙散の効果』なんですね。

なので、加味逍遙散の効果を知りたい場合、『自分の体質が加味逍遙散の条件に合うかどうか』を考えれば、効果を知ることができます。

日本漢方が考える加味逍遙散が合う条件の体質とは…

【病位】少陽病、虚実中間から虚証。
【脈侯】弦やや弱・沈弱。
【舌侯】乾湿中間で微白苔。
【腹侯】腹力やや軟で、しばしば上腹部に振水音を認める。時に胸脇苦満、臍傍の抵抗と圧痛がある。
【証】胸脇の熱証、胸脇の熱証による精神症状の証、瘀血の証、虚証。

何が書いてあるのか、全然わからないですね。

でも、これが「あなたが上記のような体質であれば加味逍遙散が合います」という加味逍遥散で治せる体質の条件です。

『この条件の状態』を治すのが加味逍遙散なので、『加味逍遙散の合う条件=加味逍遙散の効果』となるのですね。

だから加味逍遙散を処方された際にネットなどで効果自体を確認することは意味がありません。

自分が上記のような加味逍遙散に合う条件なのか?をチェックする必要があります。

1つずつ、条件の細かな説明をしていきたいところですが、それをすると年単位で漢方を勉強してもらわないと理解できないので、ここでは効果として説明できそうな【証】を紹介します。

『証』は全身の症状や体の状態から判断していきます。

気をつけていただきたいのは、ある症状が当てはまるかどうかの話ではありません

あくまで、全身の症状や体の状態を総合的に判断して病的体質である『証』分析、推測します。

  • 証についてはコチラに詳しく書いています。

漢方薬で治したい人は「証」を知らなければ治らない

  • 症状から証を導き出す方法についてはコチラに詳しく書いています。

自分の症状をあてはめていけば効果のある漢方薬を選べるのか?

加味逍遙散の効果(日本漢方)

あえて『加味逍遙散の効果』として説明するなら、加味逍遙散の条件の中にある『証』から説明はできます。

条件にある【胸脇熱の証】とは、肝の臓が熱を持ちすぎて、胸あたりの気と熱が滞った状態で、加味逍遙散には、この余分な熱を肝の臓の熱を取り去って、巡らせ、気を体の外へ発散させることによって、気を巡らせる効果があります。

【胸脇の熱証による精神症状の証】とは、同じく胸脇熱の証によって、精神的な障害を受け、気のコントロールできなくなった状態を余分な気と熱の発散を促し、気と熱を巡らせることによって精神的なコントロールを調整する効果があります。

【瘀血の証】は血の巡りのバランスが悪くなっている状態で肝臓のコントロール機能が悪くなって、血の巡りが悪くなっていますので、これまた肝の臓の余分な熱を鎮めて、血の巡りを促す効果があります。

血の巡りが悪くなる瘀血にはいろいろな原因がありますが、加味逍遙散の場合は、肝の臓の熱が関わる血の巡りの悪さを調整する効果ですね。

虚証は、体力や代謝が弱っていたり、自分の体の調整能力が弱っている状態で、あまり強い漢方薬はかえって負担になります。

虚証に対しては気と血を補って回復させる効果があります。

気をつけなければいけないのは、柴胡剤とよばれる小柴胡湯や柴胡桂枝湯、柴胡桂枝乾姜湯などは、どれも似たような『証』であるということ。

どの漢方薬にも胸脇熱の証や瘀血の証などがあるのですが、だったら『みんな同じような効果なのか?』というと、漢方薬は『体質に合わせる=効果を発揮する』なので、他の漢方薬では、【病位】【脈侯】【舌侯】【腹侯】など他の条件が微妙に変わってきたりするので、『証』だけを考えるのではなく、他の条件もあてはまるのかをチェックする必要があります。

また『証』も胸脇熱の証に水滞の証というものが組み合わさってきたり、胸脇熱の熱の強さの違いなどでも選ぶ漢方薬は変わってきます。

『いろいろな体の条件の微妙な違い』で選ぶ漢方薬の種類が変わるのですね。

ややこしくってすみません。

漢方理論を簡単にするのは、ここらが限界です。

でも、だから、一人一人の体質に合わせた、人とは違った治療ができるのですね、

加味逍遙散の効果(中医学)

中医学は日本漢方とは加味逍遙散が合う条件効果の考え方も違ってきます。

【効果】疏肝解鬱、健脾補血、調経、清熱涼血。
【脈侯】弦細数。
【舌侯】紅、舌苔は黄。
【加味逍遙散が合う条件】イライラ、のぼせ、ほてり、喉の渇き、頭痛、微熱、寝汗、出血。

中医学はベタベタの伝統的な漢方に西洋医学の考え方を混ぜて、学校で教えやすいように作り直された学校漢方なので、日本漢方よりは、西洋医学的で少しわかりやすいです。

効果にある疏肝解鬱は肝臓の気や血の巡りを調整します。

健脾補血は胃腸を強めて、血を増やすようにします。

調経は血管を拡張させ、特に月経に関わる血の巡りを巡らせます。

清熱涼血は炎症や自律神経系の興奮を抑えて、熱を鎮めていきます。

なんか、中医学の方が日本漢方よりもわかりやすいですね。

日本漢方でも血管がどうたらこうたらとか、自律神経系がどうたらこうたらとか、説明できなくもないのですが、漢方は西洋医学と関係ないので、漢方薬は漢方の理論で理解しないと、細かく体質ごとに漢方薬を選べなくなるのですね。

体質ごとに細かく選べなくなるということは、『治療の精度が悪くなる』ということです。

なので、僕は国際中医師という中医学の医師である認定を受けていますが、中医学の説明はわかりやすくていいのですが、実際は治せないため、中医学の治療の考え方は捨てました。

加味逍遙散の効果(病院)

最後に保険適応のツムラの加味逍遙散の添付文書から引用したいと思います。

ツムラの加味逍遙散の効能効果

ツムラ24番加味逍遙散添付文書より引用:
体質虚弱な婦人で肩がこり、疲れやすく、精神不安なおの精神神経症状、ときに便秘の傾向のある次の諸症:冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症

これが効能効果?

医者は体質を一切、みないのだから、これを効能効果にしてはいけませんね。

これは効能効果ではなく加味逍遙散が合いそうな条件の一部である人の体の状態や病名です。

ちなみに、こんな少ない条件では、「この漢方薬でも」「あの漢方薬でも」似たようなことが書いてある漢方薬はいくらでも、かぶるものがあります。

真剣に漢方薬を人それぞれの体質に合わせようと思ったら、こんな少ない条件では選びわけられません。

こんなレベルでは選ぼうと思ってもテキトーにするしかなくなります。

医者は一人の患者さんに時間をかけられないし、漢方の医学理論を知らないのでテキトーくらいがちょうどいいのかもしれませんが…

当然、こんな低レベルな選び方で治るわけがなく、治るか治らないかは単なる運任せです。

漢方薬は合わなければ効果がないし副作用にもなる

ある漢方薬の効果の高さは『より自分の体質に合っているものか?』にかかっているわけです。

漢方薬は似たような条件のものが、いくらでもありますので、効果が高いかどうかよりも『合っている確率が高いかどうか?』が重要です。

そして、『漢方薬が合っているかどうか?』を知るためには体質(証)を判断していないと、合っているかどうかさえ確認できないので、東洋医学的体質を分析、判断しないで、効果があるかどうかは確認できないわけです。

また、あなたの体質と漢方薬が合ってない場合は、副作用となり、病気はよりひどくなる可能性もあります。

医者のように体質が分析できないような低レベル状態だと副作用を避けるために病院の漢方薬を飲まないことが1つの治療になるかもしれません。

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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ ツムラ医療用漢方製剤マニュアル
◯ クラシエ製品ガイドブック
◯ 小太郎漢方処方コンセプト
◯ オースギ医療用漢方製剤マニュアル
◯ 漢方方意辞典:緑書房
◯ 漢方診療医典:南山堂
◯ 類聚方広義解説:創元社
◯ 勿誤薬室方函:創元社
◯ 漢方処方応用の実際:南山堂
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅠⅡⅢ:薬局新聞社刊
◯ 平成薬証論:メディカルユーコン

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

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