漢方薬相談ブログ

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小柴胡湯(しょうさいことう)の効能効果

残念ながら、漢方薬は西洋医学とは治療のルールや理論が全く違うものなので、『肝炎の炎症を抑えてくれる』とか『しつこい咳を止めてくれる』などのわかりやすい効果というのは存在しません。

『病院の薬』は薬を作る際にネズミやウサギを使って、その薬には『化学的にどんな効果があって』『化学的にその効果にはどんな成分があって』ということを研究して『薬』として認められるので『薬の効果や成分の説明』ができますが、漢方薬にはあなたが理解できそうだと思っている西洋医学的な効果成分というものは存在しません。

では、『漢方薬は効能効果と関係なく治るのか?』というと、そんなことはなく、漢方薬の効能効果は、漢方薬独特の考え方(東洋医学の医学理論)に基づいて考えます。

1つの漢方薬には2種類の効能効果の考え方がある

漢方には治療派閥というものがあり、治療漢方薬の効果の考え方の違いによって、2つの治療派閥があります。

小柴胡湯の効能効果は、『日本漢方派』『中医学派』という2つの派閥のそれぞれの効能効果があるので2種類あるということになります。

また1種類の漢方薬自体に3種類の異なる効能効果がありますので、治療派閥と考え合わせると、1種類の漢方薬の効能効果を考える時は合計6種類の効能を考えなければいけないということです。

詳しくは「漢方薬は3種類の効果を同時に考えないと効かない」をお読みください。

つまり、あなたが処方された。もしくは選んだ漢方薬は、『どの治療の考え方によって選んだものか?』によって、効能効果も変わってくるということです。

ちなみに、医者は治療派閥があることすらわかっていないと思います。

治療に対して、エビデンス(科学的根拠)が必要であると言っておきながら、漢方薬に関しては具体的な治療の根拠をわかっていないし求めてもいません。

まずはツムラの漢方薬を例に小柴胡湯の効能効果、そして日本漢方の考える効能効果、中医学の効能効果を順に説明します。

小柴胡湯の効能効果(病院)

保険適応のツムラの小柴胡湯の添付文書から引用したいと思います。

ツムラの小柴胡湯の効能効果

ツムラ9番 小柴胡湯 添付文書より引用:
Ⅰ.体力中等度で上腹部が張って苦しく、舌苔を生じ、口内不快、食欲不振、時に微熱、悪心などのあるものの次の諸症:諸種の急性熱性病、肺炎、気管支炎、感冒、胸膜炎・肺結核などの結核性諸疾患の補助療法、リンパ腺炎、慢性胃腸障害、産後回復不全。
Ⅱ.慢性肝炎における肝機能障害の改善

よく読むとここに書いてあるのは効能効果ではないですね。

小柴胡湯が合うとされる体の症状や状態の条件をごくごく簡単にして書かれているだけです。

ちゃんとした薬としてみるなら小柴胡湯の『何の成分』『体のどこの部位』『どのようにして』効くのかということが効能効果ですが『ここに書かれている状態』の人に『どう効くのか?』という効能効果は何一つ書かれていません。

そもそも、この条件って「全部、あてはまればいいのでしょうか?」

「何か1つでもあてはまればいいのでしょうか?」

全部だったら「肺結核」と「慢性肝炎」の両方を患っている人でないと小柴胡湯は合わないのでしょうか?

何か1つの症状か、いくつかだけ当てはまればいいのなら、逆にどの漢方薬でも当てはまりそうです。

こういう体の状態や病気の人に小柴胡湯が使えそうなのはわかったけど、その具体的な効能効果は?という話。

これでは(診断→治療)になっていませんね。

漢方薬の効果とは? 漢方薬の体質条件のこと

日本漢方では『どんな効果があるのか?』を考えるのではなく、『小柴胡湯が合いますよ』と言われている条件あなたの全身の状態が合うかどうか? が『効能効果』と関係します。

『小柴胡湯の合う体全体の条件=小柴胡湯の効果』になります。

この条件というのは、さっきのツムラの小柴胡湯に書いてあった『症状』『病気』のことではありません。

例えば、小柴胡湯は以下の条件が当てはまれば、小柴胡湯で治る確率が高いことになります。

日本漢方が考える小柴胡湯が合う条件の体質とは…

【病位】少陽病、虚実中間からやや実証。
【脈侯】多くは弦・沈弦・弦軟。
【舌侯】紅舌、乾燥した白舌、時にやや湿潤。
【腹侯】腹力中程度。胸脇苦満および心下痞硬があり、時に復直筋の異常緊張がみられる。
【証】胸脇の熱証、脾胃の熱証、脾胃の水毒、肺の熱証、胸脇の熱証による精神症状の証。

ここに書いてあるのは、あなたの体の状態上記のような条件一致すると考えるなら小柴胡湯が合います。という小柴胡湯で治せる病的な体質の条件です。

『この条件の体の状態』を治すのが小柴胡湯なので、『小柴胡湯の合う条件=小柴胡湯の効果』となるのですね。

だから、ネットなどで小柴胡湯に関して西洋医学的な理解できそうな効果が書かれているのはデタラメなものなので、残念ながらネットで確認することに意味がありません。

小柴胡湯の効果を知りたい場合、上記の条件に自分の体全体の状態が当てはまるかどうかを1つずつ、チェックしていくしかありません。

どの漢方薬にもこういった『複雑な条件』がありますので、条件の1つ、1つの意味を理解することも重要です。

この記事で、項目ごとに説明していくと、延々と終わりませんので、他の記事で追い追い説明していきたいと思います。

気をつけていただきたいのは、病名を当てはめたり、症状が当てはまるかどうかの話ではないということ。

そもそも、『肝臓病の人に小柴胡湯を処方したら、結構、治った人が多かった』というような、ド素人真っ青な説明をする人がいますが、そこには具体的な効能効果の説明も根拠も何一つないのです。

漢方薬は『なんとなく、たくさんの肝臓病の人が治った』なんていう、いい加減な根拠で処方するものではありません。

あくまで、全身の症状や体の状態を総合的に判断して病的体質である『証』を分析、推測します。

  • 証についてはコチラに詳しく書いています。

漢方薬で治したい人は「証」を知らなければ治らない

  • 症状から証を導き出す方法についてはコチラに詳しく書いています。

自分の症状をあてはめていけば効果のある漢方薬を選べるのか?

小柴胡湯の効果(日本漢方)

あえて『小柴胡湯の効果』として説明するなら、小柴胡湯の条件の中にある『証』から効能効果の説明はできます。

条件にある胸脇熱の証とは、肝の臓が熱を持ちすぎて、胸あたりの気と熱が滞った状態で、小柴胡湯は、この余分な熱を肝の臓の熱を取り去って巡らせ、気を体の外へ発散させることによって、気を巡らせる効果があります。

胸脇の熱証による精神症状の証とは、同じく胸脇熱の証によって、精神的な障害を受け、気のコントロールできなくなった状態を余分な気と熱の発散を促し、気と熱を巡らせることによって精神的なコントロールを調整する効果があります。

脾胃の熱証、脾胃の水毒の証とは胃などにこもっている余分な熱をなくしていく効果があります。

肺の熱証は、熱の影響で起こっている咳をしずめます。(ちなみに咳は熱の影響だけでなく水や冷えでも起こります)

この3つの証(病的体質)が揃い、病気や症状の原因がこの3つの証だと考えるのであれば小柴胡湯が合うし、小柴胡湯が治してくれます。

気をつけなければいけないのは、柴胡剤とよばれる加味逍遙散や柴胡桂枝湯、柴胡桂枝乾姜湯などは、どれも『似たような証』であるということ。

つまり、『似たような効能効果』の漢方薬が、いくらでもあるということです。

どの漢方薬にも胸脇熱の証や瘀血の証などがあるのですが、だったら『みんな同じような効果なのか?』というと、漢方薬は『体質に合わせる=効果を発揮する』なので、他の漢方薬では、【病位】【脈侯】【舌侯】【腹侯】など証以外の他の条件が微妙に変わってきたりするので、『証』だけを考えるのではなく、他の条件もあてはまるのかをチェックする必要があります。

また『証』も胸脇熱の証に水滞の証というものが組み合わさってきたり、胸脇熱の熱の強さの違いなどでも選ぶ漢方薬は変わってきます。

『いろいろな、体の条件の違い』で選ぶ漢方薬の種類が変わるのですね。

小柴胡湯の効果(中医学)

中医学は日本漢方とは小柴胡湯が合う条件効果の考え方も違ってきます。

【効果】肝火清熱、補気健脾、去痰
【脈侯】弦軟。
【舌侯】紅、舌苔は白。
【小柴胡湯が合う条件】発熱、往来寒熱、胸脇部が張る、口が苦い、悪心、嘔吐、咳嗽、喉の乾き、食欲がない、目がくらむ、ゆううつ感、イライラ、怒りっぽい、寝つきが悪い、元気がない、疲れやすい、

中医学は伝統的な漢方の考え方に西洋医学の考え方を混ぜて、学校で教えやすいように作り直された『学校用漢方』なので、日本漢方よりは、西洋医学的で、一般の人にも少しわかりやすいです。

効果にある疏火清熱は肝臓の余分な熱を鎮める効果です。

補気健脾は消化器の気を高めて胃の機能を高める効果です。

去痰は肺や喉に滞っている余分な水を排出させる効果です。

ちなみに、僕は『国際中医師』という中医学の医師である認定を受けていますが、中医学は説明には向いていますが、実際は治せないため、僕は『中医学で治療すること』は早々に捨てました。

漢方薬の販売には向いているのですけれど…

漢方薬は合わなければ効果がないし副作用にもなる

ある漢方薬の効果の高いかどうかは『より自分の体質に合っているものか?』に関係します。

漢方薬は似たような条件のものが、いくらでもありますので、効果が高いかどうかよりも『合っている確率が高いかどうか?』を気にするほうが重要です。

そして、『漢方薬が合っているかどうか?』を知るためには体質(証)を判断していないと、合っているかどうかさえ確認できないので、東洋医学的体質を判断していないと効果があるかどうかさえ、確認できないわけです。

また、漢方薬の副作用は、あなたの体質と漢方薬が合ってない場合に起こり、病気が、よりひどくなる可能性もあります。

小柴胡湯は病院的には副作用が強いみたいに誤解されていますが、そもそも、皆さんもご存知のように医者は体質を診断できません。

皆さんと同じように病名や症状を当てはめてマニュアルを見ながら漢方薬を選んでいるだけです。

となると間違った方法で合っているかどうかもわからない小柴胡湯を飲ませて副作用になった。ってちょっと詐欺みたいな話ですよね。

どう考えても、小柴胡湯が悪いのではなく医者の漢方薬に対するレベルの低さではないかと思います。

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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ ツムラ医療用漢方製剤マニュアル
◯ オースギ医療用漢方製剤マニュアル
◯ 漢方方意辞典:緑書房
◯ 漢方診療医典:南山堂
◯ 類聚方広義解説:創元社
◯ 勿誤薬室方函:創元社
◯ 漢方処方応用の実際:南山堂
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅠⅡⅢ:薬局新聞社刊
◯ 平成薬証論:メディカルユーコン

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

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