漢方薬の効果の証拠(エビデンス)を考えずに飲んでもよいものなのか?
近頃、普段は漢方薬を処方しているけれど実は病気を治すための漢方の医学理論のことは「ちーーーっとも知らないっ!」という医者達も、なんとなーく、『漢方薬は、体質に合わせて選ぶもの』ということに、うすうす気づいてきたようで、病院のホームページなんかを見ていると、『漢方治療は「証」という病気の体質を診断し、その「証」に合わせて処方します』なんて漢方っぽいことを書いていたりします。
びっくりしたのが、その病院のページを見ていたら『風邪には、葛根湯や麻黄附子細辛湯』とか、『ダイエットに防風通聖散』とか、「胃腸のトラブルに六君子湯』などを使用します。なんていう例を書いています。
素人の方はおかしく思わないでしょうけれど、この例って『体質を分析できる漢方医だったら、そんな例、恥ずかしくて絶対書かねーよ』っていうような例なのです。
なぜ、恥ずかしくて書かないか?
だって、この例って、バリバリのマニュアル本を見てしか漢方薬を処方できない人のテンプレの例なんですよ。
本格的に体質を分析できる先生から見たら、『実はぜーんぜーん、漢方ってわかりません!』と自らカミングアウトしているようなものなんですよ。
ホームページで公式にカミングアウトされても…って感じです。
病院のマニュアルてきとー漢方処方
あなたもそんな医者達も、なんとなーく『漢方薬って体質に合わせないといけないもの』ということを知っています。
で、わかっちゃいるけれど現状は、『はい、これがあなたに合わせた漢方薬です』って、実は、何の分析も根拠もなく処方されていたりします。(あえて根拠といえば「ツムラのマニュアルに書いてあったから」みたいな感じかな?)
先日も、ある相談で、『病院から、漢方薬を処方されていますが、一度も体質を診断されたこともないし、漢方薬の効果の具体的な説明もされたことがない。何より飲んでから体調が悪いのですが、とにかく漢方薬は続けないといけないと言われましたが、本当にこれでいいのでしょうか?』と質問がありました。
この質問は、うちでは特にめずらしい質問ではなく過去にいくつもこの質問を受けました。
病院で漢方薬を処方してもらっている人だったら、みんな同じような悩みを持っていると思います。
平たく言えば、『医者は何の根拠もなく、漢方薬を処方している』といってもいいと思います。
医者側からすれば、「マニュアルの効能効果に、病気や症状が書いてあるよ」ってなものでしょうが、漢方と西洋医学は治療理論が全く別物なので西洋医学の病名や症状を元に漢方薬を選んでも、ぶっちゃけそれは『体質を一切無視したデタラメな方法』なのですよ。
※病名や症状は体質のことではありません。
西洋医学の薬のエビエンス
病院の治療には、エビデンスがあります。
「科学的根拠」や「治る確率の指標」となるものですね。
病院のお薬なら、どんな成分が、体のどこの部分にどんな風に効いて、何の症状が抑えられるのか。
これがきっちりと科学的、理論的にわかっていることがエビデンスになります。
医者がよく、医者じゃない人が書いた健康記事には「エビデンスがないっ!」なんていってるのは、そこに西洋医学の専門的な理論や科学に基づいた根拠がなかったりするからです。
当たり前ですが、薬は毒になることもあるので、科学的に信頼できないと安心して飲めないですよね。
とは言え、実は病院のお薬の科学的根拠って、どの薬も元は「ネズミ」、「ウサギ」、「ネコ」、「イヌ」に効いたことを証拠って言ってるのですけれど…
それはおいといて、当然、治療するからには、医者はちゃんとした根拠があってお薬を処方するわけです。
『なんとなく、この薬だったら効きそう』なんてことで薬を処方したりはしてないということです。
漢方と西洋医学は別物の医学
漢方薬の効果のエビデンスってどんなものでしょうか?
実は漢方薬の中身の生薬の成分は西洋医学的に研究されています。
でも、漢方薬の成分って、成分だけでみるとどれも似たり寄ったりで研究の世界では結局、どの成分が、どう効いているのか?全くといっていいほどわかっていません。
例えば漢方薬に桂枝湯というものと桂枝加芍薬湯というものがあるのですが、この2つの処方、中の芍薬の量が違うだけなのです。
なのに、これらの漢方薬を使用する際の病気や体質は、互いに全く違ってきます。
これを成分で分析すると、成分は全く同じにも関わらずです。
どうも、医者などは「漢方薬は古臭いものだから、今の科学でちゃんと調べないと…」と考えているみたいですが、そもそも、西洋医学の薬と漢方薬は使い方も効果の考え方も何もかも違います。
『漢方は2千年前にすでに診断方法や使い方も決まっている』のです。
今みたいなの病院のお薬の治療は、漢方治療が行われてから1800年後に行われるようになります。
もっかい言っときます。病院の薬は漢方薬で治療していた1800年後から始まります。
→漢方には漢方の医学理論があって、そのルールにしたがって治療しないと漢方薬で治すことはできません。
漢方からすると、ゼロ一桁もキャリアが違う、西洋医学に今さらガタガタと言われたくないのです。(漢方は2000年前から、西洋医学の投薬治療は200年前から)
漢方のエビデンスとは
研究してもこんな感じなので、そもそも漢方薬の科学的なエビデンスを証明するのは難しいのですが、病気を治すために処方する薬なので、そこは「なんとなく効きそう」ではなく「こういう理由で治る!」という『根拠』は必要です。
(文の流れ上、根拠をエビデンスと表現しますね。)
漢方薬のエビデンスとは、西洋医学のような「血管を拡張する効果」とか「ステロイド剤は免疫機能を抑制する効果」とか、そんな部分的で科学的なものではありません。
漢方は、『水を巡らせる』『熱を発散させる』『温める』などが、効果であり、その根拠は『2000年の膨大な人体実験』から作られています。
2000年間、漢方の効果の考えた方に基づいて、いろいろな体質の人に漢方薬を使っていったら、ある漢方薬は体を温めたけど、違う症状の人がその漢方薬を飲んだらのぼせて鼻血が出た。
「なぜ、同じような症状を訴えているのに、ある人は体が温まって病気が治るのに、ある人はのぼせて鼻血が出るのか?」、その体質の差を徹底して研究してきました。
なんと2000年間も!
長い間、たくさんの人を、ある体質分析のルールに基づいて、実際に漢方薬を使い、漢方薬を飲んだ後の様子を観察するということを何度も、何度も繰り返してきたら、だんだんとどんな体質の人にはどんな漢方薬が合うのかが理論的にわかってきたのです。
それが、漢方の治療理論であり、漢方の体質分析方法でなのです。
なので、『漢方薬がなぜ効くのか?』というエビデンスは「温めたり、冷やしたりする寒熱の調整」や「血を巡らせる」、「水を巡らせる」、「気を補う」というものが効果としてあるから。となります。
漢方薬の効果は、「マニュアルに書いてある病気や症状をなんとなく治してくれるもの」ではありません!
そんなフワッとしたものではなく『冷えている人だったら、温める効果の漢方薬を合わせる』というのが漢方薬のエビデンスなのです。
となると、まずは『患者さんの体質が何なのか?』が、わからないと漢方薬を合わせることができません。
人の体質とは「足が冷える」とか、「のぼせる」といった症状でも「アトピー」とか、「無月経」といった病名でもありません。
体の熱や冷え、水や血や気の流れ、漢方的な内臓がどんな状態になっているのかを症状や状態から総合的に分析するのです。
『体内の状態を総合的に分析することが体質を診断すること』で、その状態を調整するのが、漢方薬ですので体質を診断するということは『その漢方薬を飲んでもらうエビデンス』にもなるということですね。
『どこかのメーカーがネズミの実験を元に作ったマニュアルの病名や症状があてはまる漢方薬』なんていうものはてエビデンスがないのと同じで、それは漢方的にはただのあてずぽっうや単なる思い込みになります。残念ながら。
体質を診断せず、漢方薬の東洋医学的な説明もない漢方薬の処方では治るのをラッキーで待つか、体質と合っていない漢方薬で更にややこしい病気になるかしかありません。
漢方薬の副作用に関して、詳しくは「漢方薬の副作用が病院の薬より怖い理由」をお読みください。
重要なのは「この漢方薬で治るなんじゃないか?いちかばちかだっ!」と賭け事みたいにするのではなく、『治るかどうかは結果だけど、自分自身がどういった東洋医学的な理論的根拠でその漢方薬を選んだのか?』をしっかりと構築することです。
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◯ 漢方概論:創元社
◯ 漢方方意ノート:創元社
◯ 漢方臨床ノート(論考編):創元社
◯ 金匱要略ハンドブック:医道の日本社
◯ 傷寒論ハンドブック:医道の日本社
◯ 素問:たにぐち書店
◯ 漢方治療の方証吟味:創元社
◯ 中医診断学ノート:東洋学術出版社
◯ 図説東洋医学:学研
◯ 中国医学の秘密:講談社
◯ 陰陽五行説:薬業時報社
◯ まんが漢方入門:医道の日本社
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